給与から税金が自動的に天引きされる会社員と異なり、フリーランスは自分で所得税や住民税を納めなくてはいけません。経費を計上したり控除を利用したりすることで節税が可能なので、フリーランスの税金の仕組みについて知っておくことは大切です。この記事では、フリーランスや個人事業主が支払う税金の種類や税金の負担を抑えるための仕組みを解説します。まずは、基本的な税金の理解から始めていきましょう!フリーランスの所得税所得税は、フリーランスなどの個人が1年間の所得(利益)に対して国に支払う税金のことです。サラリーマンの場合は、毎月の給与から天引きされている「源泉所得税」がありますが、フリーランスは自分で収める必要があります。所得税は所得金額によって異なり、以下の表のように、所得に応じて段階的に税率が上がっていく仕組みとなっています。課税される所得金額税率控除額1,000円から1,949,000円まで5%0円1,950,000円 から 3,299,000円まで10%97,500円3,300,000円 から 6,949,000円まで20%427,500円6,950,000円 から 8,999,000円まで23%636,000円9,000,000円 から 17,999,000円まで33%1,536,000円18,000,000円 から 39,999,000円まで40%2,796,000円40,000,000円 以上45%4,796,000円▼参考:国税庁 No.2260 所得税の税率▼関連記事:フリーランスが理解すべき所得税の基礎知識を解説【初めての確定申告でも安心】所得と収入の違い所得税として課税されるのはその名の通り「所得」の部分であり「収入」ではありません。「所得」とは、売り上げから必要経費を引いた利益の部分です。一方で「収入」は、会社員が給与として受け取る金額だったり、フリーランスが売り上げた金額そのもののことを指します。フリーランスの場合は、収入の中から「パソコンの購入代金」「交通費」「オフィスの家賃」など、さまざまな必要経費を差し引くことができます。所得から必要経費を差し引いた所得を「課税所得」と呼び、その金額に応じて所得税額が決定されます。所得税の節税対策・控除フリーランスは、さまざまな方法で所得税を節税することが可能です。例えば以下のような方法があります。青色申告を行うフリーランスの方は「青色申告」で確定申告を行うのがおすすめです。青色申告は白色申告よりも帳簿の手間がかかりますが、その分得られる節税メリットも多いのが特徴です。開業届の提出がまだの人は一緒に「青色申告承認申請書」も提出するとよいでしょう。その際、次に説明する所得控除や税額控除も活用しましょう。所得控除と税額控除をフル活用する確定申告を行う際、最大65万円の「基礎控除」や「医療費控除」、「社会保険料控除」などさまざまな所得控除の項目があるのでチェックしておきましょう。また、税額控除も20種類以上あり、該当する場合は併用可能です。住宅を購入した人が利用可能な「住宅借入金等特別控除」や人件費が上がった人が利用可能な「特別控除」などがあります。必要経費を計上するフリーランスは売り上げから必要経費を差し引くことで、課税される所得金額を減らすことができます。経費にできる項目は、10万円以下の消耗品や会議費、仕事で使った分の通信費、カフェで作業した際の飲食費など多岐にわたります。こちらの記事でより詳しく解説しているので、節税について知りたいフリーランスの方は読んでみてください。▶︎関連記事:フリーランス・個人事業主なら節税は必須!税金の基礎知識も解説フリーランスの住民税住民税とは、フリーランスなどが都道府県や市区町村に対して支払う税金です。会社員の場合は、給与から住民税が差し引かれた金額が振り込まれますが、フリーランスは自分で納付する必要があります。前年の所得に応じた金額の納付書が毎年6月に届きます。住民税の金額も前年の所得金額に応じて決まります。「課税所得×10%」が基本的な住民税の金額です。そこから税額控除分を引いた金額に定額で課税される「均等割」の金額が追加されます。所得に関わらず定額で課税される「均等割」の金額は、一般的に市区町村民税が「3,000円」、都道府県民税が「1,000円」とされています。▼関連記事:フリーランスが知っておきたい住民税の基礎知識!計算・納付方法を解説フリーランスの個人事業税個人事業税とは、個人事業主やフリーランスが事業を行なっていることに対して課税される税金です。個人事業税は業種によってかかるものとかからないものがあります。業種と税率の表は以下になります。区分税率事業の種類第1種事業(37業種)5%物品販売業運送取扱業料理店業遊覧所業保険業船舶定係場業飲食店業商品取引業金銭貸付業遊技場業旅館業運送業演劇興行業席貸業電気通信事業電気通信事業写真業土石採取業冠婚葬祭業両替業出版業電気供給業案内業問屋業印刷業製造業興信所業仲立業請負業不動産貸付業広告業代理業駐車場業物品貸付業不動産売買業周旋業倉庫業第2種事業(3業種)4%畜産業水産業薪炭製造業第3種事業5%歯科技工士業公証人業設計監督者業公衆浴場業(銭湯)歯科医業印刷製版業クリーニング業コンサルタント業行政書士業海事代理士業美容業社会保険労務士業司法書士業土地家屋調査士業理容業計理士業弁護士業測量士業諸芸師匠業公認会計士業獣医業医業弁理士業不動産鑑定業歯科衛生士業薬剤師業税理士業デザイン業3%あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復装蹄師業▼参考:東京都主税局 個人事業税個人事業税の納付期限は8月と11月で、管轄の都税事務所・支庁に納めます。業種によってかからないものもある個人事業税ですが、事業所得が290万円以下の場合もかかりません。「事業主控除」という項目も存在し、290万円の控除が可能です。フリーランスの消費税モノやサービスを購入した際にかかる消費税とは別に、個人事業主やフリーランスが支払う消費税があります。フリーランスに課される消費税の計算方法は2種類あります。「本則課税」と「簡易課税」です。基本的には本則課税で計算され、課税対象の売上高の消費税額から課税仕入高の消費税額を差し引いたものを指します。次の項目で説明する「インボイス制度」を活用することで「仕入額控除」を受けることができます。また、以下の条件に当てはまる個人事業主やフリーランスの場合は免税対象となります。開業から2年未満2年以内の年間売上が1,000万円未満インボイス制度とは?2023年10月に導入された「インボイス制度」。インボイス制度とは、事業者の取引における、消費税複数税率に対応した消費税の仕入税額控除の方式です。「仕入税額控除」とは、課税事業者が消費税を納税する際に、仕入れ時に発生した消費税を控除できる仕組みです。仕入税額控除を受けたい場合、取引を記録した帳簿と請求書等の保存と提出が必須となります。免税事業者からの仕入れでは、仕入税額控除が使えません。フリーランスの場合、「課税事業者」と「免税事業者」の場合でインボイス制度への対応が、以下のように異なります。課税事業者のフリーランスの場合「適格請求書発行事業者の登録申請」がまだの課税事業者は、申請するとよいでしょう。登録が完了するまでには最大3ヶ月程度の期間を要するため、早めに行うのがおすすめです。インボイス制度での税額計算方法には、一般課税(本則課税)と簡易課税の2種類があります。基本的には本則課税が適用されますが、自分はどちらで計算を行うのかも確認しておきましょう。免税事業者のフリーランスの場合免税事業者の場合、インボイス制度導入から6年間は経過措置が認められています。2026年までは、免税事業者からの仕入れの80%は控除でき、その後、2029年までは免税事業者からの仕入れの50%が控除できます。免税事業者が仕入税額控除を利用したい場合には、適格請求書発行事業者になる必要があります。ただし、取引先の中で適格請求書を求められる取引がどの程度あるか確認しましょう。そもそも取引相手が消費者、または免税事業者の場合には、仕入税額控除は行わないので、適格請求書発行事業者になる必要がない場合もあります。現在の取引状況に応じて、インボイス制度への対応が必要かどうか見極めるようにしましょう。▼関連記事:フリーランスは消費税を請求できる?免税事業者と課税事業者の対応の違いや計算方法を解説フリーランスの固定資産税土地や建物といった固定資産に対して課される税金を「固定資産税」といい、納税通知書が毎年4月から6月頃に送付されます。パソコンなどの機器で10万円以上のものも固定資産に分類されます。フリーランスや個人事業主は、固定資産税を経費計上できる場合があります。フリーランスが固定資産をオフィスとして利用して事業に活用している場合、経費にすることが可能です。ただし、自宅兼オフィスとしている場合などは、実際に業務に使用している時間を計算して経費を算出する「家事按分(かじあんぶん)」をして経費計上します。仕訳時の勘定科目は「租税公課(そぜいこうか)」とするのが一般的です。▼関連記事:フリーランスの気になる経費事情!経費計上する時の注意点やQ&Aも フリーランスの税金の注意点フリーランスになると、さまざまな税金の計算や支払い業務が発生し、はじめてのことに混乱する人が多いと思います。その他にも、フリーランスならではの注意点があるのでチェックしておきましょう!同じ年収でもフリーランスと会社員と手取り額が異なるフリーランスは、会社員と同じ金額を稼いでいたとしても、実際に受け取る手取りは会社員よりも少ないです。会社員の手取りは額面年収の8割といわれているのに対して、フリーランスの手取りは年収の6~7割といわれています。これは支払う保険料や税金が会社員よりも多いためです。こちらの記事では、年収300〜1,000万円ごとにフリーランスの手取り金額を紹介しています。フリーランスとして働いている人で、支払っている税金や手取り金額を知りたい人はチェックしてみてください。▶︎関連記事:年収別早見表:フリーランスの手取りとは?節税や手取りを増やす方法を解説所得が増えたら法人化した方がお得一般的に、所得が800万円を超えたタイミング、もしくは売り上げが1000万円を超えたタイミングで法人化するのがよいとされています。所得が800万円のフリーランスの所得税は23%ですが、法人(資本金が1億円以下)の税率は15%のため、法人の方が納める税金が少なく、節税になります。売上高が1,000万円を超える場合も、フリーランスは課税事業者になるため消費税の支払いが発生します。そのため、一定の収入を超えるフリーランスの場合は、法人化した方が節税となる場合があります。詳しくはこちらの記事で解説しています。▶︎関連記事:フリーランスが法人化する7つのメリット!インボイス制度後の注意点も解説フリーランスは必ず確定申告をするフリーランスの人は、確定申告を忘れずに行いましょう。会社員の場合は基本的に必要のない確定申告ですが、フリーランスは売り上げと経費を記録して、青色申告を行うことで節税につながるというメリットもあります。青色申告は、白色申告と比べると帳簿が複雑にはなりますが、最大65万円の控除を受けることができます。初めての確定申告でわからないことがある場合には、管轄の税務署にいけば教えてもらえるので相談してみましょう。フリーランスが確定申告を行わなかった場合は最悪の場合、「脱税」とみなされ、追徴課税が必要になるケースもあるので注意しましょう。 フリーランスの国民健康保険会社員の場合、給与から健康保険料が天引きされていますが、フリーランスは自分で国民健康保険に入ったり、民間の保険を契約したりする必要があります。多くのフリーランスは国民健康保険に加入しています。フリーランスは国民健康保険料をいくら払ってる?国民健康保険料は「前年の1月〜12月の所得」「加入者数」「年齢」に基づいて決定されます。フリーランスの年収のボリュームゾーンである「200〜400万円」で計算すると、国民健康保険料は年間「約16万円」となります。月額の支払いは「1万3千円」となります。年収が増えると、その分支払う金額も増えていく仕組みです。そのため、収入によっては、フリーランス向けの組合や協会に加入した方が、国民健康保険に加入するよりも保険料が安く済む場合もあります。▼参考:フリーランス白書2023国民健康保険は経費にできる?結論からいうと、経費にはできません。しかし、確定申告で青色申告をしている場合には、「社会保険料控除」の項目に記載することで節税が可能です。▼関連記事:フリーランスが加入できる健康保険は?国民健康保険料を抑えるコツやおすすめの制度も紹介フリーランスの国民年金会社員の場合は厚生年金に加入していて、保険料の半額を会社が負担してくれています。フリーランスの場合は国民年金のみに加入していて、保険料を全額自分で支払う必要があります。国民年金の保険料は定額で、月額「16,410円」です。会社員とフリーランスでは、将来受け取れる年金額も異なります。<厚生年金に40年間加入していた会社員の場合※月額平均給与を42.8万円と仮定>月額「約6.5万円」の基礎年金+月額「約9.1万円」の厚生年金=月額合計「約15.6万円」<フリーランス・個人事業主の場合>月額「約6.5万円」このように、受け取れる年金額に2倍以上の差があります。▼関連記事:フリーランスが加入する国民年金とは?将来の年金受給額を増やす方法も解説!将来の年金に不安があるフリーランスは国民年金基金への加入やiDeCo(個人型確定拠出年金)を検討するとよいでしょう。国民年金基金とは?国民年金基金とは、フリーランスなどが自分で加入して将来受け取る年金額を増やせる年金制度です。会社員の厚生年金のように、公的な年金を上乗せできるものです。国民年金基金は、掛け金が全額所得控除できるので節税メリットが大きい制度です。一度加入した後は、自由に解約することができない点に注意が必要です。▼関連記事:フリーランスは国民年金基金で老後に備える!iDeCo・付加年金との違いを解説iDeCo(個人型確定拠出年金)とは?iDeCoとは、掛け金を自分で積み立てて、金融商品を運用し、年金として60歳以降に受け取れる私的年金制度です。iDeCoも国民年金基金と同様に掛け金が全額所得控除できるので節税になります。あくまで金融商品を自分で運用するため、絶対に元本割れしない、という保証はない点は認識しておきましょう。▼関連記事:フリーランスがiDeCoに加入するメリット・デメリットは?年代別シミュレーションも紹介まとめフリーランスになると、会社員の時には意識しなかったようなさまざまな種類の税金や年金の存在に気付かされます。所得税、住民税、個人事業税、消費税をはじめ、社会保険料の支払いも発生します。節税につながる制度についても知っておくことで、フリーランスならではの節税メリットを受けることもできるので、この記事を参考に活用してみてください。