「フリーランスは、売上が800万円超えたら法人化がいいと聞くけれど、基準が分からない」「事業拡大を目指すなら法人化したほうがいいのかな……」このような疑問を抱えるフリーランスや個人事業主の方も多いのではないでしょうか。一定の売上が上がるようになったら法人化……というイメージがあるかもしれませんが、実際に法人化した方がいいかは、人それぞれです。そこで本記事では、フリーランスが法人化する7つのメリットを紹介!インボイス制度開始後の注意点も踏まえてお伝えするので、法人化するか悩んでいるフリーランスの方はぜひ参考にしてみてくださいね。【基礎知識】フリーランス(個人事業主)と法人の違いはじめに、そもそもフリーランス(個人事業主)と法人にはどのような違いがあるのか、確認していきましょう。フリーランスと法人の1番の違いは、法人登記の有無です。フリーランスは税務署に開業届の提出が必要なのに対し、法人の場合は法務局に登記申請を行う必要があります。個人か法人かの違いによって、税金や社会的信用などさまざまな部分で影響があります。フリーランス(個人事業主)とはフリーランスは、企業や組織と自由に契約を結び、業務を請け負う働き方をする人のことを指します。会社組織に属して働くサラリーマンと比較されることが多いです。個人事業主は、税務署に開業届を出し、個人で働いている人の税務上の呼称です。フリーランスや個人事業主として仕事をするには、開業届の提出が必要です。税務署に申請をし、処理されれば即日で開業できます。開業届提出時に費用は発生しません。決算日は、毎年12月31日で1年間の売上や経費などを計算します。決算内容を確定申告として税務署に申告し、自分で税金を納めます。確定申告と納税の期限は、原則2月16日〜3月15日の間です。法人とは法人とは、個人が事業を行うにあたって設立する組織のことを指します。法人には、合同会社や株式会社、NPO法人、一般社団法人などの種類があります。フリーランスの方が設立する法人の多くは、合同会社もしくは株式会社です。それぞれの違いは次のとおりです。合同会社株式会社会社の所有者出資者(社員)株主経営する人出資者(社員)会社の社員(所有者と別)登記費用約10万円~約25万円~設立にかかる期間約2~3週間約1ヶ月社会的信用度中高合同会社と株式会社の1番の違いは、会社の所有者と実際の経営者です。合同会社は、会社の所有者も実際の経営者も同じです。出資した人たちが会社の所有者となりますが、実際に経営も行っており、意思決定は出資者(社員)で行われるのが特徴です。対して、株式会社は、会社の所有者と実際の経営者が別です。出資した株主が会社の所有者ですが、実際に経営を行うのは社長や社員です。意思決定は、株主の意思を問う株主総会で行われるため、合同会社よりは自由度に欠ける部分があるでしょう。それぞれ一長一短があるため、自分の今後の経営方針に合わせて、どちらの形態がよいか選ぶ必要があります。フリーランスから法人化する際の判断基準ここからは、フリーランスから法人化するか否か3つの判断基準を紹介します。所得が800万円を超えた時フリーランスから法人化する一つ目の基準は、所得が800万円を超えた時です。フリーランスの場合、所得に応じて所得税を支払います。所得税は、所得が高くなるほど税率が高くなる累進課税制度が適用されています。法人の場合、資本金や所得に応じて法人税を支払います。法人税は、所得税に比べて税率が緩やかで最大税率も23.2%です。法人化の基準である所得800万円において、フリーランスの場合は税率が23%に対し、法人の場合(資本金1億円以下)は税率が15%です。またさらに所得が増えた場合、フリーランスは所得900万円以上で税率33%と税率が上がりますが、法人の場合は所得800万円以上で一律23.2%です。所得800万円を基準に、所得が同じでもフリーランスと法人では税率が10%以上も異なります。売上高が1,000万円を超えた時売上高が1,000万円を超えた時も、法人化するタイミングの1つです。先ほどは、売上から経費を差し引いた所得を基準にしていましたが、経費を考慮せずに売上高も基準となります。売上高1,000万円以下のフリーランスは、免税事業者として消費税が免除されています。売上高が1,000万円を超えるフリーランスは、課税事業者として消費税を納めなくてはいけません。しかし、フリーランスから法人化すると消費税が実質2年間免除されます。消費税が課税されるかの判断期間は、フリーランス、法人ともに前々年度の売上高です。フリーランスから法人化すると、法人化したタイミングで課税対象となる売上高の計算対象がリセットされます。そのため、法人化してから最初の2年間は消費税の計算対象になる売上がなくなるため、実質2年間納税が免除される仕組みとなっています。ただし、これは法人化する前に免税事業者であることが条件です。詳しくは、後述の【2023年10月以降】インボイス開始後に法人化する場合の注意点の見出しで詳しく解説します。事業拡大に向けて資金調達したい時事業拡大に向けて資金調達をしたい場合、法人化は必須です。フリーランスでも資金調達はできますが、法人と比べて社会的信用度が劣ります。そのため、金融機関からの借り入れや他社からの出資を受けるハードルが高いです。しかし、法人化すれば社会的信用度があがり、金融機関から資金調達をしたり、株式の発行での資金調達が可能になります。フリーランスが法人化する7つのメリット法人化する判断基準を理解したところで、法人化にはどのようなメリットがあるかを詳しく解説します。節税対策につながるフリーランスが法人化する1番のメリットは、節税です。フリーランスから法人化する際の判断基準の見出しでも紹介した通り、一定の所得が上がると、フリーランスより法人の方が収める税金が少なくなります。少しでも多く手元に金額を残すためには、所得が上がるごとに税率が上がる累進課税が適用されるフリーランスより、税率が一定の法人税が適用される法人の方がお得です。社会保険に加入できる法人化した場合、社会保険(厚生年金・健康保険)への加入が必須となります。フリーランスが加入する国民年金や国民健康保険より手厚い保証が受けられるので、生活するうえで大きな安心感につながるでしょう。特に法人化した場合、国民年金に加え厚生年金にも加入することになるので将来の受け取れる年金額が増えます。老後資金への安心も得られることもメリットです。社会的信用を得て資金調達をしやすくなる法人化すると、フリーランスより大きな社会的信用を得られるようになります。銀行からの融資や企業からの出資が受けやすくなり、資金調達がしやすくなります。フリーランスの段階では難しかった、大きな事業へのチャレンジができるようになるでしょう。また、企業によっては取引先を法人に限定している企業もあり、販路拡大やアライアンスが組みやすくなります。役員報酬を経費として計上可能フリーランスと異なり、法人化した場合は役員報酬をはじめ、給与や退職金を経費として計上できるようになります。フリーランスの場合、給与と経費が入り混じってしまいやすく、仕分け業務が煩雑……という人も多いのではないでしょうか。けれども、法人化した場合、役員報酬や給与を経費として計上できるので、明確に計算しつつ、節税につなげることが可能です。また、給与所得控除も利用できるようになります。最大10年にわたって赤字を繰り越せる法人化すると、万が一赤字が発生しても最大10年にわたって繰り越すことが可能です。フリーランスが赤字になった場合の繰り越し期間は、最大3年間のため、法人化すると繰り越し期間を大幅に伸ばせます。赤字にならないに越したことはありませんが、事業が絶対安定するとは限りません。欠損金の繰越控除を利用すれば、長期にわたって節税効果を得ることが可能です。負債を有限責任にできる業務内で発生した負債を有限責任にできるのも、法人化のメリットです。フリーランスの場合、滞納している借入金や税金があった場合、全て個人の負債として自分で支払う義務があります。これを無限責任と呼びます。対して、法人の場合は負債を有限責任にできるので、個人的に負債を追う必要はなくなります。出資金の範囲で責任を負う有限責任になるので、万が一負債が500万円発生したとしても、出資金が100万円の場合、背負う負債は100万円までとなります。決算月を設定できるフリーランスの場合、決算月は12月と定められていますが、法人化すると決算月が自分たちで設定できるようになります。事業によっては繁忙期と決算月、確定申告が重なってしまい、業務と経理作業に負われてしまうケースもあるでしょう。しかし、法人化すると決算月を選べるので、繁忙期を避けて落ち着いて決算処理をできるタイミングに設定できるのがメリットです。また決算月は、後から再設定することもできます。フリーランスが法人化するデメリットフリーランスが法人化するメリットと合わせて、デメリットも確認しましょう。メリット・デメリットをそれぞれ理解した上で、法人化するか考えてみてください。設立費用が発生する法人化する場合、合同会社の場合約10万円、株式会社の場合約25万円の設立費用が発生します。これらの費用は、登記の際に必要となる登記代と印紙代です。税理士や司法書士、行政書士に登記の代行を依頼する場合はプラス約10万円ほど掛かります。また費用だけでなく、登記には時間も掛かります。1ヶ月前後の時間が掛かるため、費用や労力を踏まえて、法人化するタイミングを考えましょう。赤字でも税金の支払いが発生する法人の場合、赤字でも税金の支払いが発生することを覚えておきましょう。フリーランスが赤字になった場合、所得税は発生しないうえ、住民税も軽減されます。けれども、法人は、赤字でも毎年必ず法人住民税の均等割という税金を支払わなければなりません。法人住民税は県民税と市民税の2つで構成されており、資本金や従業員数によって納税額が変わります。資本金などの額都道府県民税均等割市町村民税均等割市町村民税均等割1,000万円以下2万円5万円12万円1,000万円超1億円以下5万円13万円15万円1億円超10億円以下13万円16万円40万円10億円超50億円以下54万円41万円175万円50億円超80万円41万円300万円参考:総務省 地方税制度例えば資本金1,000万円以下で、従業員数50人以下の場合、毎年最低7万円の法人税の支払いが発生します。【計算例】都道府県民税均等割2万円 + 市町村民税均等割5万円 = 合計7万円資本金の額や従業員数にもよりますが、毎年最低7万円の支払が発生することをあらかじめ認識しておきましょう。登記可能な事務所が必要法人化する際には、登記ができる事務所が必要です。自宅を事務所として登記することもできますが、国税庁の法人番号公表サイトに掲載されるのでプライバシー管理上おすすめしません。また、登記不可と設定している物件もあるので、事務所を賃貸で借りている場合は大家さんへの確認を忘れずに行いましょう。経理業務が複雑になるフリーランスより法人の方が勘定項目が増えるため、経理業務が複雑になります。また節税を目的の1つとして法人化した場合こそ、適切な経理業務が節税につながるので丁寧な対応が必要です。扱う金額も大きくなるため、なるべく費用を払ってでも税理士に経理業を委託することをおすすめします。フリーランスに戻る場合、手間がかかる法人化したものの売上が落ちてしまった……という場合は、フリーランス(個人事業主)に戻ることも可能です。ただし、法人からフリーランスに戻る場合、次のような手間やデメリットが発生します。会社の解散もしくは解散手続きを行わなければならない取引先に不安を与えてしまいやすい社会的信用が下がる会社の解散手続きを行う場合は、約4万円の費用がかかります。また法人からフリーランスに戻る場合は、取引先にマイナスの印象を与えてしまいがちなので注意が必要です。さらに、法人からフリーランスに戻ることで、社会的信用が下がるので、事業の範囲も限定されてしまう恐れがあります。フリーランスに戻って、また法人化……といったことも可能ですが、手間と費用がかかるので、慎重に考えましょう。【2023年10月以降】インボイス開始後に法人化する場合の注意点ここで2023年10月以降、インボイス開始後に法人化する場合の注意点をお伝えします。売上高が1,000万円を超えた時の見出しでお伝えしたとおり、本来フリーランスから法人化すると、最長2年間にわたって消費税が免除されます。しかし、フリーランスがインボイスに登録していた場合、既に課税事業者となっているので、最長2年間の免税期間は適用されません。現時点では、フリーランスから法人化して最長2年間の免税期間が適用されるのは、インボイスに登録していない免税事業者のみになるので注意しましょう。フリーランスから法人化への手順「フリーランスから法人になろう!」と決心ができたら、法人設立の手続きに移りましょう。法人化するまでの5ステップをお伝えします。1:設立手続きの準備まず、法人設立にあたって次の内容を決めていきます。発起人や商号の設定定款の作成と認証手続き資本金の決定から入金法人用の実印作成はじめに、出資や会社設立手続きを担当する発起人、社名となる商号を決めます。商号はフリーランスの時代の屋号をそのまま引き継ぐことも可能です。また、そのほかに事業内容の詳細や会社の所在地、資本金の金額なども決定していきます。これらが完了したら、会社の基本ルールである約款を定め、公証役場で認証を受けましょう。そして、法人用の実印を作成したら、申請手続きに移ります。2:設立登記の申請手続き準備が整ったら、会社所在地の管轄する法務局で登記申請を行います。登記申請の際に必要な書類は、次の通りです。合同会社株式会社必要書類登記申請書設立登記申請書合同会社と株式会社で準備する書類が異なるので注意しましょう。登録手続きは、管轄の法務局窓口・郵送・オンラインのいずれかで行えます。3:法人口座の作成登記が完了したら、銀行で法人口座の作成ができるようになります。申請に少し手間がかかりますが、法人口座を作ると次のようなメリットがあります。法人名義のクレジットカードが作れるようになる個人のお金と会社のお金を明確に分けられる社会的信用を得やすい法人口座解説に必要な書類は、銀行ごとに異なるので、申請を進める前にWebで確認しておくとスムーズに準備できるでしょう。また法人口座は個人口座より、審査が厳しいため、登記が完了したらなるべく早めに申請することをおすすめします。4:役員報酬の設定法人設立後、3ヶ月以内に初年度の役員報酬を支払う義務があるため、役員報酬の金額を設定します。役員報酬は事業開始日である期首から3ヶ月以内であれば変更できますが、期間を過ぎてしまうと次の決算月まで変更できないので、慎重に設定しましょう。想定させる売上を見越して、無理のない範囲で設定することをおすすめします。5:法人設立届出書を提出法人設立が完了したら、税務署と都道府県・市町村役場の税務事務局に届出を提出しましょう。これらの届出が完了すると、公に法人設立を報告できるようになります。また各書類は提出期限が定められています。例えば法人設立届出書の提出は、法人設立後2ヶ月以内、青色申告の承認申請書は法人設立後3ヶ月以内です。法人設立後は特に慌ただしい日々が続くからこそ、期日内に提出できるように余裕を持って行動しましょう。フリーランスとして売上を拡大しよう!法人化への第一歩は、売上の拡大です。フリーランスの時点で一定の売上を上げて、売上をキープする仕組みやスキル、信頼を得ることが法人化につながります。そこでおすすめのサービスが、フリーランス・副業向けマッチングサービスSOKUDANです。SOKUDANでは、「プロ人材」と呼べる優秀なフリーランスと企業をつなぐことをコンセプトにしていることから、経験値の高い人材を求めた求人が多くあります。自分の成長につながるハイレベルな案件に挑戦し、フリーランスとして更にスキルアップを図ることが可能です。さらにSOKUDANでは、案件の平均単価が32.1万円と高単価です。法人化を目指した売上アップにも直結しやすいので、ぜひフリーランスの方はご利用ください。▼SOKUDANのフリーランス・副業案件一覧優秀なビジネスパートナーを探すなら「SOKUDAN」法人化後、事業拡大をともに目指す優秀なビジネスパートナーを探す際に、SOKUDANがおすすめです。SOKUDANでは、採用コストを押さえながら優秀な人材と出会うための仕組みを用意しています。契約前から直接やり取り、即日面談も可能募集掲載や優秀人材へのオファーまで無制限に活用可能募集掲載からマッチングまでSOKUDAN独自のサポート体制を完備これらの特徴から、SOKUDANではマッチング率79%、採用コスト84%削減を実現。また人材を見つけるまでのリードタイムは最短即日、平均14.5日と短期間となっています。SOKUDANの利用者は、エンジニアやマーケター、営業やデザインを中心に、専門領域で数年以上の経験を重ねてきた人材が中心です。経験と知見を持った優秀なフリーランス・副業人材がそろっているので、ビジネスパートナーを探す際にも、ぜひSOKUDANを利用してみてください。▼SOKUDANの採用担当者様向けページまとめフリーランスから法人化することで、節税効果を得たり、社会的信用を得て事業拡大を目指したりできるようになります。負債を有限責任にできたり、最大10年にわたって赤字を繰越したりできるようになることから、フリーランスより明確に個人と仕事の線引きを設けられるのも法人化のメリットといえるでしょう。フリーランスから法人化を目指すためには、安定した売上や取引先からの信頼、専門分野での経験スキルなどが必要になります。まずはフリーランスとして経験を積み、確かな自信と明確な次へのステップを見据えて法人化を目指しましょう。