「AIは、マーケティング業界にどのような影響を与えるのだろうか?」マーケティング業界では既に、AIがさまざまな場面で活用されており、人間との役割分担も凄まじいスピードで変化しています。そこで本記事では、マーケティング業界がAIを導入するメリットや実際の導入事例を紹介します。記事の後半で紹介するAIを活用したマーケティングツールのように、マーケティング業務の効率化も進んでいます。今後のマーケティング業界でのAIへの期待、Webマーケターとして必要な姿勢など、参考にしてみてください。AIが得意なマーケティング業務ここからは、AIツールができる5つのマーケティング業務を紹介します。需要予測・売上予測まず、AIツールができるマーケティング業務の一つが需要予測・売上予測です。AIは過去の売上データや売上に影響を及ぼす天候や時間帯、周辺店舗の情報などさまざまなデータを蓄積しています。これらのデータも用いて、過去の実績に基づいた需要・売上の予測をすることが可能です。データと理論に基づいた需要・売上予測ができることで、適切な在庫数を仕入れ、販売機会の損失や在庫ロスを最小限に抑えることができます。データの管理・データの分析AIツールは、膨大なデータを収集し・整理して、ターゲット層の策定や現状分析を行う際に役立ちます。データ管理の面において、AIはデータの整理やクレンジング、カテゴリ分類などを自動的に実行することが可能です。データの分類と品質管理を一元化できるので、貴重な時間とリソースを節約できます。またデータ分析の面でAIは大規模なデータからパターンや傾向を発見・提案してくれます。そのため、ターゲット層の特定やニーズに合わせたアプローチをスムーズに考えやすくなるでしょう。人流分析AIツールは、人がいつどこにいて、何をしていたのか、どこに向かったのか……などのデータを集め分析する、人流分析でも活用されています。GPSなどの位置情報データやカメラを使用して、人の流れを調査し、マーケティングの際にデータを活用する場面が増えつつあります。人の目に止まる広告の配置を考える実店舗の導線・レイアウトを考える新店舗立ち上げの際の立地策定人の動向や行動パターンを把握することで、実店舗の広告の配置や店舗レイアウトなどを考える際にデータを活かせます。ハイパーパーソナライズAIツールを活用して、ユーザーの行動・好み・リアルタイムの購買データなど、より詳細な情報を活用してマーケティングに生かすハイパーパーソナライズを行うことも可能です。これまでマーケティングの場面で活用されてきたパーソナライズでは、ユーザーの購買履歴や興味関心などに基づいたデータを活用して、ターゲットに合わせたアプローチをしてきました。ハイパーパーソナライズは、パーソナライズよりもさらに進化したパーソナライズが可能です。ユーザー一人ひとりの過去の行動やリアルタイムのデータを活用して、より詳細で個別化されたアプローチを実現できます。SEO対策コンテンツマーケティングにおいて、AIツールを活用したSEO対策が可能です。実際にAIを活用して、次のような作業をサポートしてくれます。競合サイトの流入キーワードのリサーチアクセス解析SEOキーワードの提案コンテンツの構成作成文章の作成や添削コンテンツを作成する際に必要なキーワードのリサーチや、現状把握するためのアクセス解析などを実施します。さらに、コンテンツの構成や文章の作成、完成した記事の添削もできるので、コンテンツマーケティングの上流から下流工程までAIがサポートしてくれます。マーケティングにAIを導入するメリット次に、マーケティングがAIを導入する3つのメリットを紹介します。データを活用してパーソナライゼーションができる一つ目のメリットは、AIでデータを活用してパーソナライズできる点です。パーソナライズとは、顧客やユーザーに合わせてコンテンツや広告を最適化することです。AIは膨大なデータから傾向やパターンを発見し、マーケティング戦略を最適化するのに役立ちます。例えば、AIを活用すると次のようなことができます。大量のデータから顧客やユーザーの趣味や行動パターンを分析する分析したターゲット層に最適なコンテンツや広告を表示する表示されたコンテンツや広告に対する反応を分析し、反応に応じて適切なマーケティング施策を追加する人間が1から10まで細かいデータを確認しながら、パーソナライズするのは非常に時間がかかります。しかし、AIは顧客の詳細なデータを収集・分析して顧客一人ひとりのニーズにあった情報を提供することが得意です。AIを活用することで、それぞれの顧客に効果的なマーケティング施策を実施することができ、認知獲得や購買行動、継続利用などが期待できます。データ管理・データ分析業務を効率化できるAIを活用することで、手作業で行うと時間の掛かるデータ管理業務・データ分析業務を効率化できます。AIは指示に基づいて、大量のデータを自動で整理することができます。パターンを推測して、特定のカテゴリに分類することも得意としています。さらにこの管理されたデータと、オンライン上の最新のデータの中からトレンドや顧客の関心を分析し、ターゲット層の策定や広告手法の選定に役立てられます。市場のデータや競合サービスのデータを与えることで、自社のサービスの分析を行うこともできるでしょう。マーケティングの基礎となる、リサーチ部分の業務効率化にAIは最適なパートナーといえるでしょう。人件費の削減・事務作業の削減につながる前述したデータ管理・分析業務でAIを活用することによって、人件費・事務作業の削減につながります。例えば、これまで人間が行っていた業務をAIが代替することで、人員を削減できるかもしれません。データ管理を紙ベースで集計していた場合の手間や、分析にかかる地道な工程などの事務作業もAIによって削減されます。これまで発生していた人件費を別の費用に充てたり、空いたリソースでより高度でクリエイティブな業務を行ったり、「人間だからこそできるマーケティング」により集中できる環境を創り出せます。マーケティングにおけるAI導入事例ここからは、実際にマーケティングでAIツールを導入して実績を上げた事例を4つ紹介します。AIを活用した需要予測・仕入れの標準化九州地方を中心にホームセンター64店舗を運営する株式会社グッディは、約8万点の商品を取り扱っています。過去の販売データと在庫を見ながら発注作業を実施していましたが、次のような課題を抱えていました。【従来抱えていた課題】最終的な発注数の判断は担当者の経験値に委ねられてしまう在庫に過不足が発生し、商機を逃してしまうそこで株式会社グッディは、AIツール「MAGELLAN BLOCKS」を導入し、売上予測モデルを作成。AIツールに過去3年分の販売データと気象データを学習させたところ、次のような結果を得ました。【AIツール導入後の結果】402個の販売予測に対し、413の実売達成AIの予測の精度は98%人の経験値に依存せず、客観的な視点とデータに基づいた発注業務を行うことができるようになりました。AIの販売予測の精度の高さによって、過不足のない商品提供を行っています。AIを活用した顧客別のアプローチ大手ファストフード店「ケンタッキー・フライド・チキン」を運営する日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社は、はSNSに力を入れており、自社アプリダウンロード数2,300万件以上、公式X(旧Twitter)フォロワー数260万人以上と、多くのフォロワーを獲得しています。しかし、次の課題を抱えていました。【従来抱えていた課題】取得したデータが散在しており、施策を考える際にデータを活用できない同じ内容のキャンペーン告知を一括配信しており、顧客に合わせたアプローチができていない日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社は、AIツール「Braze」を導入し、適切なデータの蓄積とSNSごとのIDをつなげて顧客を分類できるように体制を構築。蓄積したデータを活用し、前年にクリスマス商品を予約してくれた人にはクリスマス限定メニューの案内を送る、特定のメニューが好きなユーザーに関連商品をレコメンドするなど、一人ひとりに合わせたアプローチを実現しました。各種SNSから得られる顧客データを活用し、顧客別のアプローチ強化によって売上向上やファン化に成功しています。AIを活用してユーザーエクスペリエンスを向上ユーザー数全世界2億4,720万人を誇る動画配信サービス「Netflix」では、AIを活用してユーザーエクスペリエンス向上につなげています。NetflixがAIを活用して行ったユーザーエクスペリエンス向上の施策は、次のとおりです。視聴履歴と蓄積されたデータを元におすすめの番組や映画を紹介AIを活用してユーザーの興味を引くサムネイルを分析視聴履歴とNetflixに蓄積されたデータを元に、AIがユーザー一人ひとりに合った番組や映画を紹介する機能を搭載しています。さらに、AIがデータを元にどのサムネイル画像がユーザーの興味・関心を惹けるかを調査。1番効果のあるサムネイルをデータに基づいて選定することで、ユーザーに作品を見てもらう確率を向上し、更なる利用促進につなげています。マーケティングにAIを活用するときの注意点AIツールはとても便利ですが、AIに依存してしまうとマーケターが発揮できる価値を損ねてしまう可能性があります。AIを適切に活用する上で、マーケターが忘れてはいけない2つのポイントをお伝えします。AIに関する知識を深めるまず、AIに関する知識を深めるようにしましょう。AIの原理や仕組みを理解することで、AIツールを効果的に使用出来るようになります。またAIは便利ですが、完璧に何でもこなせるツールではありません。そのため、AIの得意分野と苦手分野をそれぞれ把握しておきましょう。さらにプライバシー管理やセキュリティなど、使用する際の留意点を把握しておくことで、適切に利用できるようになります。そして、AIの進化は早いため、最新のトレンドや技術を把握できるよう常に情報のチェックは必須です。知識のアップデートを怠らず、常に最新情報を元にAIを活用できる状態を目指してください。マーケティングの勉強を怠らないAIツールを効果的に利用するためにも、マーケティングの勉強を怠らないようにしましょう。AIはあくまでもマーケティングを円滑に進めるためのツールです。そのため、マーケターとして戦略を練ったり、施策を考えたりするスキルがなければ、AIを最大現活用できません。マーケターが最新のマーケティングの知識と情報を把握することで、AIをデータ分析に活用したり、戦略の中に導入したりできるようになります。マーケティングとAIを結びつけ、成功に導くためにも勉強を怠らず、ぜひAIを活用できるマーケターを目指してください。AIを活用したマーケティングツール最後に、AIを活用したマーケティングツールを広告・SEO・SNS運用・MAの分野ごとに紹介します。広告ツール1:H-AI SEARCH「H-AI SEARCH」は、株式会社アイレップが提供するAIが広告テキストの自動生成及び配信効果の予測を行うツールです。AIが事前に効果が高いと予想されるテキストに絞って提案してくれるので、質を担保しつつスピーディーに広告運用ができます。【主な機能】ターゲット・キーワードに適した広告テキストをAIで自動生成広告テキストの配信効果を事前に予測品質スコアや広告配信成果を分析できるダッシュボード機能【費用】 要問い合わせまた、キーワード別品質スコアや広告の配信効果を分析できるダッシュボード機能を活用して、次の施策に向けた打ち合わせに活用することも可能です。広告ツール2:感性AIアナリティクス感性AI株式会社が提供する「感性AIアナリティクス」では、AIを用いて人の感性を可視化し、広告運用のサポートを行ってくれます。なかなかうまく言語化できない感覚的な部分を、データに基づいてアドバイスしてくれるのが特徴です。【主な機能】キーワードから連想される言葉をマップ形式で表示音の響きや商品名との親和性などか商品のネーミングを評価パッケージデザインの色・模様・好感度からパッケージデザインを評価【費用】 要問い合わせ商品名やパッケージデザインなどを性別・年代別に評価してくれるので、アンケート調査やマーケティングリサーチを行わずに商品テストを行えます。SEOツール1:BringRitera(リテラ)「BringRitera(リテラ)」はSEOに特化したライティングツールです。検索上位に入れる質のよいSEO記事をスピーディーに作りたい企業をサポートします。【主な機能】ChatGPTによる検索意図を踏まえた見出し・文章の作成付加ポイントの提案【費用】フリープラン0円~エンタープライズプラン月3万円AIが作成する記事は汎用的な内容になりがちという欠点を踏まえ、一度AIが作成した文章に対し、オリジナリティを出すための付加ポイントを提案してくれます。そのため、AIで文章のベースを作り、人の手で原稿をブラッシュアップするという流れで、コンテンツ作成を進めることが可能です。SEOツール2:Catchy「Catchy」は、SEO記事をはじめ、キャッチコピーや会社名、YouTubeの企画サポートなど、100種類の機能を搭載したSEOツールです。マーケティングやWebサイト制作など、幅広い場面で使える便利なツールとなっています。【主な機能】SEO記事作成キャッチコピー作成YouTubeのコンテンツ企画サポート会社名の提案【費用】Freeプラン:無料Starterプラン3,000円~/月Proプラン:9,800円Enterpriseプラン:要問い合わせ話題のAI「ChatGPT」を搭載しており、広告やSEO記事などで使えるキャッチーでユーザーに響く文章作成をサポート。実際に「Catchy」を導入した企業では、これまで約3~5日かけて1記事作成していたところ、1日で完了するように。さらに人間らしい文章を生成してくれるので、リライトの手間がほとんどかからない点が魅力と評価されています。SNS運用ツール1:Tofu AnalyticsTofu Analyticsは、SNS運用の改善に特化したAIツールです。X(旧Twitter)・Instagram・Facebook・LINE・YouTube・TikTok、日本国内の主要SNS6つに対応しています。【主な機能】ソーシャルリスニング機能各種分析機能:競合比較・インバウンド・リスク・広告ターゲティングなど新卒採用や中途採用候補のリストアップ【費用】月1万円~ ※無料トライアル有ソーシャルリスニング機能で業界のトレンドや競合の最新データを把握した上で、豊富な分析機能を用いて自社のSNS運用を改善していくことが可能です。また各SNSに精通したツールである点を活かし、最適な新卒・中途採用候補のSNSをリストアップし、プッシュ型の採用活動も実現できます。SNSツール2:モニタリングDX炎上予防コンサルティングやインターネット上でのクレーム対応を行うシエンプレ株式会社が運営する「モニタリングDX」は、AIを活用しSNS投稿・口コミの仕分けをサポートしてくれます。【主な機能】投稿自動カテゴリー分けネガティブ・ポジティブ判定投稿の自動カテゴリ分け判定候補ワードの自動抽出【費用】月額93,500円~SNSに投稿した内容がユーザーからどのように評価されているかを細かくレベル別に判定。判定データを元にソーシャルリスニング、キャンペーンの効果分析をはじめ、炎上やクレームなどのリスク対策も同時にできる仕組みになっています。MAツール1:aimstar「aimstar」は、BtoCの売上拡大支援に特化したMAサポートツールです。優れたSaaSを審査・表彰する「BOXIL SaaS AWARD Summer 2023」にて、機能満足度・お役立ち度・カスタマイズ性・サービスの安定性4部門で1位に輝いた実績があります。【主な機能】AIによる顧客抽出レコメンド商品最適化シナリオ設計・自動化【費用】要問い合わせAIが抽出データを元にMAシナリオを作成したり、対象顧客へのレコメンド商品最適化を自動で行うことが可能です。これらの機能を活用することで、クーポンを使用した購入率の高い顧客にクーポンを送付したり、反応率が高いと予測される顧客にDMを送付したりするなど、効果の高いと予想される顧客に適切なアプローチを図れます。MAツール2:Adobe Marketo Engage「Adobe Marketo Engage」は、良好な顧客関係の構築と継続のサポートをコンセプトとしたMAツールです。国内外問わず、大手企業からスタートアップ企業まで、幅広く導入されてきた実績があります。【主な機能】AIによる予測オーディエンス・セグメント構築リード管理クロスチャネルエンゲージメント「Adobe Marketo Engage」は、他のAdobe製品と組み合わせることで、スムーズに商談プロファイルを構築したり、施策パフォーマンスの可視化を行ったりすることも可能です。また利用中の外部ツールや他のAdobe Exeprrience Cloudと統合できるので、他媒体からの移管や併用もしやすいメリットがあります。まとめAIはマーケティングの分野にも活用されており、マーケティング施策の効果を高めたり、業務の効率化に役立っています。膨大なデータを活用し、ターゲットの選定や施策の策定などを行うマーケティングを中心に、広告やSEO、SNS、MAなどさまざまな分野にも応用されています。しかし、AIには苦手分野やできることへの限界もあります。また、マーケティングはトレンドやスピード感が重要な分野だからこそ、常に最新の知識を身につけなくてはなりません。人間だからこそできる部分で価値を発揮しつつ、AIを活用できるマーケターを目指しましょう。既にAIを活用している方も、これから活用する方も、ぜひ今後AIをマーケティング活動における良きサポーターとして活用してください。