フリーランスになって初めて確定申告する方は、どんな節税ができるのか分からないという方も多いのではないでしょうか。また、これまでなんとなく確定申告を行ってきたけど、税金対策を意識していなかった方もいると思います。しかし、手元にお金をしっかり残すために、フリーランスに節税は必須です!そこで本記事では、フリーランスが行うべき節税を11個まとめました!税金に関する基礎知識から、節税の基礎・応用をそれぞれお伝えしていくので、ぜひ参考にしてみてください。押さえていきたい基礎知識!フリーランスが支払う4つの税金はじめに、フリーランスが支払う4つの税金を確認していきましょう。所得税所得税は、一定の収入がある人が支払うべき国税です。フリーランスの方は、1月1日から12月31日までの1年間の所得に対して課せられます。フリーランスにおける収入と所得は次のとおりです。収入:事業によって発生した売上金所得:収入から経費を差し引いた金額フリーランスは、毎年2月16日から3月15日に確定申告によって所得税を確定させ、自分で所得税を納めます。所得税の税率は、所得金額が多いほど高くなり「5・10・20・23・33・40・45%」の7段階です。▼関連記事:フリーランスが理解すべき所得税の基礎知識を解説【初めての確定申告でも安心】消費税2023年9月30日までは、前年の売上が1,000万円を超えたフリーランスに限り、消費税を納める義務がありました。売上1,000万円を超える事業者を「課税事業者」といい、売上1,000万円以下の事業者を「免税事業者」といいます。しかし2023年10月インボイス制度の施行に伴い、免税事業者も買い手に適格請求書発行を求められた場合は、消費税の納税の義務が発生するようになりました。クライアント(買い手)から適格請求書発行を求められていない場合、免税事業者のフリーランスは、適格請求書発行事業者の申請をしない限り、納税の義務はありません。▼関連記事:フリーランスは消費税を請求できる?免税事業者と課税事業者の対応の違いや計算方法を解説住民税住民税は、住んでいる自治体に対して納める地方税です。住民税には「区市町村民税」と「都民税・道府県民税」の2種類あります。納付額は、前年の所得と住んでいる地域によって金額が異なり、「所得割」と「均等割」と税額の計算が複雑です。確定申告後に納付額が確定し、毎年5~6月頃に届く通知書の金額を自分で納めます。▼関連記事:フリーランスが知っておきたい住民税の基礎知識!計算・納付方法を解説個人事業税個人事業税は、地方税の一種で、会社員には課税されない税金です。地方税法で定められた法定業種、年間所得290万円以上のフリーランスや個人事業主にのみ課されます。法定業種には、第1種〜第3種まで70種類があります。業種の種類・税率は東京都主税局のホームページで確認できるので、自分の職種が当てはまるか確認しましょう。まずはここから!フリーランスが最低限行うべき3つの節税対策次に、フリーランスが最低限行うべき3つの節税対策をお伝えします。確定申告は必ず青色申告で行うまず確定申告は、青色申告で行いましょう。青色申告は白色申告と比べると申請時に手間が掛かりますが、その分節税効果が大きいメリットがあります。【青色申告と白色申告の違い】青色申告白色申告最大控除額65万円・55万円・10万円10万円税務署への届出必須不要記帳方法複式簿記簡易簿記メリット最大65万円の控除が受けられる確定申告の手続きが簡単デメリット確定申告の準備に時間が掛かりやすい最大控除額が10万円のため節税効果が低い白色申告は税務署への届け出が不要、また記帳方法は簡易簿記でよいなど、申請時の負担がかなり少ないです。しかし、最大控除額が10万円と少なめな点が大きなデメリットです。白色申告はどうしても経理業務が苦手な方や副業で収入が少ない段階の方に向いていますが、節税効果が少ないのであまりおすすめできません。対して青色申告は、税務署の届け出や複式簿記での記帳が必須となりますが、最大控除額65万円と節税効果が非常に高いです。記帳や確定申告の申請手続きは、確定申告ソフトを使ったり、税理士に委託したりするなどの工夫で解消できます。フリーランスとして節税していくための第一歩として、確定申告は青色申告で行うことをおすすめします。必要経費を計上する仕事で使った経費は、必ず計上しましょう。売上から経費を差し引いた金額が課税対象の所得になるので、適切に経費を計上することで課税所得が減り、課される税金を少なくすることができます。勘定項目と経費として計上できるものの一例は、次のとおりです。勘定項目計上内容例消耗品費パソコン、キーボード、文房具、など10万円以下の消耗品会議費コワーキングスペースやカフェで作業した際の費用新聞図書費業界誌や専門書の書籍代金交通費打ち合わせや出社時の交通費通信費電話やWi-Fi、サーバー費用接待交際費食事会の費用など外注費業務を外注した際の費用これらの経費は、必ず事業で発生したもののみ計上しましょう。▼関連記事:フリーランスの気になる経費事情!経費計上する時の注意点やQ&Aも 所得控除と税額控除をフル活用する課税所得を減らせる所得控除と納める税金を軽減できる税額控除もフル活用しましょう。所得控除は15種類、税額控除も20種類以上あり、該当する場合は併用可能です。どちらも原則として、確定申告の際に自ら申告しないと適用されません。確定申告の際に忘れずに申告するようにしましょう。所得控除の一覧所得控除の一覧は、次のとおりです。控除名控除の条件雑損控除災害や盗難などで資産に損害を受けた場合医療費控除医療費が年間10万円を超えた場合、超過分が控除される社会保険料控除配偶者やその他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合、支払った金額に対して所得控除を受けられる小規模企業共済等掛金控除規模企業共済の掛金を支払った場合、掛金対して所得控除を受けられる生命保険料控除生命保険料、介護医療保険料および個人年金保険料を支払った場合地震保険料控除特定の損害保険契約等に係る地震等損害部分の保険料または掛金を支払った場合寄付金控除国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対して「特定寄附金」を支出した場合障害者控除納税者自身、同一生計配偶者や扶養親族が障害者である場合寡婦控除寡婦の条件に当てはまり、「ひとり親控除」の条件に該当しない場合ひとり親控除ひとり親であり、合計所得500万円以下の場合勤労学生控除納税者本人が勤労学生である場合配偶者控除配偶者の年間の合計所得金額が48万円以下の場合配偶者特別控除下記条件に当てはまる場合に適用扶養控除下記条件に当てはまる場合に適用基礎控除確定申告の際にすべての人に適用参考:国税庁 No.1100 所得控除のあらましさらに具体的な条件が定められているので、当てはまりそうな控除があった場合、国税庁のホームページで確認、もしくはお住まいの市町村の役所に問い合わせて確認しましょう。税額控除の一覧次に、税額控除の一例を紹介します。控除名適用条件配当控除国内株式などの配当がある場合認定NPO法人等寄附金特別控除認定NPO法人などに対して一定の寄附金を支払った場合(特定増改築等)住宅借入金等特別控除新築の住宅を購入した場合、もしくは増改築した場合住宅耐震改修特別控除昭和56年5月31日以前に建築された家屋の住宅耐震改修をした場合給与等の支給額が増加した場合の所得税額の特別控除国内雇用者への給与等支給増加割合が3%以上増加した場合参考:国税庁 No.1200 税額控除この他にも、試験研究を行った場合や中小事業者が新品の特定機械装置を購入した場合に利用できる税額控除があります。詳しくは国税庁のホームページを参考にしてください。フリーランスが活用すべき節税対策8選ここで、フリーランスが活用すべき節税対策8選を紹介します。これから紹介する節税対策は、最大8つ全て併用可能です。ふるさと納税ふるさと納税は、日本国内の市町村や地方自治体に寄付を行い、地方創生や地域活性化を支援する制度です。フリーランスがふるさと納税を利用した場合、寄付金額のうち2,000円を超える金額が所得税と住民税から控除されます。例えば、フリーランスがふるさと納税で3万円を寄付した場合、28,000円が所得税と住民税から控除されます。【計算式】30,000円(納税額)ー2,000円(自己負担)=28,000円(控除額)一時的に持ちだし金が発生しますが、最終的に自己負担2,000円で大幅な控除を受けることが可能です。ただし、ふるさと納税の寄付金には上限金額があるので注意しましょう。寄付金の上限金額は、当年度の所得によって決まります。フリーランスの場合、突然収入がなくなる、予定外の経費がかかるなどのイレギュラーが起こりやすいため年末まで所得の予想が難しいです。また、上限金額を越えてしまうと控除の対象外になってしまいます。なるべく年度末に寄付金の上限額を算出してくれるシュミレーターで上限額を確認した上でふるさと納税を利用することをおすすめします。▼関連記事:フリーランスのふるさと納税のやり方は?確定申告までの流れやメリットも解説小規模企業共済小規模企業共済は、フリーランス・小規模企業向けの退職金積み立て制度です。退職金制度がない環境で働く方も、将来安心できる資金を貯められるよう、設立されました。小規模企業共済はフリーランス、もしくは従業員数20人以下の小規模企業の役員が加入できます。小規模企業共済では、毎月1,000円〜最大7万円積み立てることができ、積み立てた掛け金は全額控除対象となります。途中解約をしない限り、元本保証がされているため、安心して積み立てられます。例えば、毎月7万円を積み立てる場合、1年間で84万円の所得控除を受けることが可能です。iDeCo(イデコ)iDeCoは、老後の生活資金を増やせる私的年金制度です。毎月5,000円~6万8,000円を掛け金として拠出して、投資信託もしくは元本確保型商品を運用し、原則60歳以降に年金または一時金として受け取れます。運用期間中は、利息や売却益が非課税であることに加え、毎年の所得税・住民税が控除されます。ただし、iDeCoは運用したお金を60歳まで引き出せないこと、また元本割れが起こる場合もあるので注意しましょう。【運用例】≪30歳・年収500万円のフリーランスが、毎月1万円を59歳まで積み立てた場合≫貯まる金額 5,827,368円積立金額 360万円運用収益 220万円※年率3%の複利計算【節税金額】30年間:108万円1年あたり:36,000円※課税所得=年収-給与所得控除-社会保険料控除(年収の15%)-基礎控除、住民税10%で計算しています。復興特別所得税は考慮していません。※自営業の方は、所得控除額が人によって大きく異なるので、基礎控除のみを考慮した課税所得を元に試算しています。▼関連記事:フリーランスがiDeCoに加入するメリット・デメリットは?年代別シミュレーションも紹介医療費控除医療費控除は、1年間に支払った医療費のうち、10万円を超えた部分が所得控除になる制度です。自分だけでなく、世帯全体に掛かった医療費が対象となるため、生活をともにする家族や親族の医療費も合算可能です。医療費控除では、病院に支払った医療費をはじめ、薬代や通院費も控除の対象となります。治療費の明細書や交通費のレシートを保管しておきましょう。ただし、人間ドックや健康診断、予防接種代などは対象外です。医療費控除を利用する場合は確定申告の際に、医療費控除の金額を記入します。家事按分自宅で仕事をしているフリーランスが使うべき節税対策が、家事按分です。家事按分では、仕事をしている自宅の家賃や光熱費、水道代を経費として計上できます。家事按分できる経費は、主に次の5つです。家賃電気代光熱費通信費自動車関連の費用経費として計上できるのは、あくまでも事業で使った分だけです。自分の勤務時間や作業スペースなどを加味して、適切な按分比率を決める必要があります。節税対策のために、わざと按分比率を高めると、税務調査が入る恐れがあるので気をつけましょう。減価償却資産減価償却資産とは、デスクやパソコンなど、長期にわたって使用する資産を経費として計上する仕組みです。税法上で定められた耐用年数に応じて、毎年経費として計上できるので、長期に渡って節税効果が得られます。フリーランスの場合は、10万円以上30万円以上の資産を一括で計上できる「少額減価償却資産の特例」も利用可能です。本来長期にわたって計上する備品を、当年度にまとめて一括計上できます。そのため、最大30万円分を経費として計上できるので、大幅な節税につながります。専業専従者給与専業専従者給与は、家族を従業員として雇い給与を支払った場合に、全額経費として計上可能です。経費として計上できる条件は、下記です。青色申告者と生計を共にする配偶者その他の親族であること年齢が15歳以上であること6カ月以上にわたって、青色申告者の事業に専従していること参考:国税庁確定申告書等作成コーナーよくある質問労働の対価として支払うので所得税や消費税が発生しますが、結果的に世帯から収入が減っていないことが大きなメリットのひとつです。家族で経営している方は、ぜひ活用してみてください。国民年金の追納フリーランスの方の中には、開業当初収入が安定せず、国民年金を減額、もしくは免除していた方もいるでしょう。そのような方には、国民年金未納分の追納がおすすめです。未納分を追納すると、支払った額が控除対象となり、所得税と住民税を減額できます。さらに年金受給額も増やせるので、将来的な安心も得られるでしょう。国民年金の追納は、過去10年の未納分が対象です。10年を過ぎると追納できなくなってしまうので、早めに対応しましょう。売上アップしたら法人化も視野に!節税につながる理由フリーランス・個人事業主の所得税は、利益が高くなればなるほど、税率が高くなる累進課税制度が採用されており、最高税率は45%です。対して法人の場合、最高税率が23.2%のため、法人化した方が大幅に節税できる可能性があります。法人化の目安は次のとおりです。所得が800万円を超えた時売上高が1,000万円を超えた時どちらかに該当する場合は、法人化した方が節税につながる可能性が高いです。また法人化すると、社会的信用を得やすくなる、資金調達がしやすいなどのメリットもあります。▼関連記事:フリーランスが法人化する7つのメリット!インボイス制度後の注意点も解説(11月公開予定)節税するときに覚えておきたい3つのポイント最後に、節税するときに覚えておきたい3つのポイントを3つ紹介します。所得を減らし過ぎないように注意する課税所得を減らすために経費を計上しすぎて、所得を減らし過ぎないように注意しましょう。経費を計上して、課税所得を減らすと支払うべき税金を軽減できます。しかし、何でもかんでも経費にしてしまうと不自然な経費が多いと判断され、税務署から税務調査が入る恐れがあります。税務調査によって経費を不正に計上していると判断されると、重加算税を課される可能性があるので注意してください。節税対策のために無駄な購入をしない節税につながるからといって、経費になるものを何でも好き勝手に購入しないように気をつけましょう。もちろん、仕事に関わるものはしっかりと経費計上しなくてはいけませんが、本当に必要か購入前に考えてみましょう。また、購入したものを仕事で使わなければ経費にすることはできないので、お金の無駄遣いです。会計ソフトを活用する節税をはじめ、確定申告を行うにあたって、会計ソフトの活用は必須です。会計ソフトを利用するのには、次のようなメリットがあります。売上や経費が可視化される常に経営状況を正しく把握できる確定申告をスムーズに行えるフリーランスは1人の経営者として、売上や経費、自分の経営状況を適切に把握しておくことが大切です。自分の経営状況を把握することで、今後の方向性を定めたり、節税が必要な箇所を把握したりできるようになります。また会計ソフトを利用すれば、確定申告に必要な資料をスピーディーに作成可能です。手間の掛かる確定申告がスムーズにできるようになるので、freeeや弥生会計、マネーフォワード クラウド会計・確定申告などのサービスをぜひ活用してください。まとめフリーランスは、適切に経営していくために節税は必須です。青色申告や経費の計上、所得控除と税額控除などをフル活用しましょう。その他にも実は、見落としている税金対策があるかもしれません。ただし、節税することを目的にしてしまうと、経費を無駄遣いしているだけだった……ということになりかねません。節税することをゴールにせず、ルールを守った上で損をしないように節税をしていきましょう。また税金に関する知識は馴染みがない分、一度記事を読んだだけでは理解を深めきれない部分もあると思います。本記事を繰り返し読んでひとつずつ知識を深めたり、国税庁のサイトを確認したりするなどして、正しい税金の知識を深めた上で、節税対策ができるようにしましょう!