フリーランスや外部の事業者に、自社の業務の一部を委託する際に、多くの担当者が悩むポイントの1つが報酬です。自社の従業員として雇う雇用契約と異なり、業務委託の報酬はどのように決めるべきか悩むケースも多いでしょう。業務委託で仕事を依頼する際は、トラブルを回避するためにも、最低賃金以下にならないようにすることがポイントです。本記事では、企業が業務委託で最低賃金以下を避けるべき4つの理由を解説します。スキルと実績を備えた人材を見つけるためのポイントも解説するので、これからフリーランスに業務委託を検討している担当者の方は、ぜひ参考にしてください。【基礎知識】業務委託と最低賃金とは?はじめに、「業務委託」と「最低賃金」とはどのようなものなのか、基本的な知識を整理しておきましょう。業務委託とは?業務委託とは、自社の特定の業務をフリーランスや外部の事業者に委託することです。自社の従業員として働いてもらう「雇用契約」とは異なり、依頼した成果物を納品してもらったり、特定の業務を遂行してもらったりすることを目的としています。業務委託は、請負契約・委任契約・準委任契約の3つの契約形態があります。それぞれの契約の目的や、業務内容の例は次の通りです。契約形態目的業務例請負契約成果物の完成システム開発Webサイト制作委任契約法律行為を対象とした業務の遂行法律相談税務処理準委任契約士業以外の業務の遂行SNSマーケティング新規開拓営業請負契約は、システム開発やWebサイト制作など、特定の成果物の完成を目的とする契約です。委任契約や準委任契約は、特定の業務を遂行してもらうことを目的としています。委任契約は、主に弁護士や税理士などの士業を対象とし、法律行為を含む業務を依頼する際に締結します。一方、準委任契約は、士業以外の職種に適用され、法律行為以外の業務(コンサルティングやデータ入力など)を依頼する際に用います。最低賃金とは?最低賃金とは、労働基準法に基づき、労働者の賃金の最低額を保証する制度です。年齢や性別に関係なく、企業の従業員として働く「雇用契約」を結ぶ全ての人に適用されます。最低賃金は、労働者の生活を保障するとともに、過度な低賃金労働を防ぐことを目的としています。そのため、雇用契約で従業員を雇う事業者が必ず守るべき基準であり、最低賃金以下で雇った場合は違法となります。また、最低賃金には「地域別最低賃金」と「特定最低賃金」の2つの種別があります。地域別最低賃金:都道府県ごとに設定された最低賃金特定最低賃金:特定地域の特定産業に適用される最低賃金地域別最低賃金は、都道府県別に設定されている最低賃金です。例えば、2025年1月現在、東京都の最低賃金は1,163円、沖縄県は952円というように、地域ごとに金額が異なります。特定最低賃金は、地域別の最低賃金より高水準の最低賃金を定めるべきと指定されたものです。例えば、北海道では乳産業、千葉県では鉄工業が特定最低賃金の対象となっています。業務委託で最低賃金が適用されない理由労働基準法では、最低賃金の適用対象を「雇用契約に基づく労働者」としています。業務委託契約は、雇用契約ではないため、最低賃金法が適用されません。業務委託契約では、発注者と受注者が対等な立場で契約を交わし、成果物の納品や作業の遂行に対する報酬の授受が行われます。そのため、労働者としての保護を受ける対象にはならず、法律上、企業は最低賃金を適用させる義務はありません。最低賃金以下での業務委託を避けるべき理由業務委託は最低賃金の適用外ですが、基本的に最低賃金以下で仕事を依頼することはおすすめしません。例えば、最低賃金以下でフリーランスと契約すると、違法行為と判断されるリスクや、企業のイメージダウンにつながります。ここでは、最低賃金以下での業務委託を避けるべき4つの詳しい理由を解説します。フリーランス新法に違反するリスクがあるフリーランス新法とは、フリーランスの労働環境などを保護するために、2024年11月に施行された法律です。フリーランス新法では、発注事業者に6つの義務と7つの禁止事項が定められています。そのなかの1つに、「報酬は相場より著しく低く設定してはいけない」という項目があります。例えば、時給相場が3,000円の職種に対して、時給換算で1,000円以下になる報酬を設定すると、フリーランス新法に反する可能性が非常に高くなります。「フリーランス新法を知らなかった」は言い訳にならないので、必ず確認して、遵守するようにしましょう。▼関連記事:世界一分かりやすく!採用企業が知っておくべきフリーランス新法▼関連記事:【2024最新】フリーランス・副業の平均時給・月収ランキング(職種別)フリーランスから敬遠される報酬や時給が著しく低い場合は、フリーランスから敬遠され、応募されない恐れがあります。基本的にフリーランスは、条件がよい案件を選択します。例えば、他社が同じ業務内容でより高い報酬を提示している場合は、優秀な人材がそちらに流れる可能性が高いです。報酬設定は、フリーランスにとって「仕事を選ぶ基準」となるため、自社の条件がフリーランスにとって適正価格であるかを客観的に考えましょう。企業のイメージダウンにつながる最低賃金以下で募集をかけたり、条件を提案したりすると、「フリーランスを搾取する企業」というイメージを抱かれます。特に、SNSや口コミで「最低賃金以下で募集をかけている」と評判が広がると、採用や業務委託が難しくなります。マイナス評価は、企業ブランドに悪影響を及ぼし、優秀な人材や取引先からの信頼を失うリスクがあることを心得ておきましょう。優秀な人材が集まらない報酬は、フリーランスにとって仕事へのモチベーションや責任感を高める重要な要素の1つです。報酬が低すぎると、スキルややる気が低い人材しか集まらず、納期遅れや低品質な納品物が発生しやすくなります。自社の従業員を含めた優秀な人材との継続的な関係構築が難しくなり、長期的に企業運営が不安定になるリスクもあるので気をつけましょう。業務委託で適切な報酬を決めるためのポイント優秀な人材を確保するには、適切な報酬を設定することが不可欠です。ここでは、業務委託で適切な報酬を決めるためのポイントを3つ紹介します。職種ごとの相場を確認する業務委託で適切な報酬を設定するためには、職種ごとの相場を事前に確認し、基準となる報酬額を把握することが大切です。企業とフリーランス双方が納得できる一定の条件を設けましょう。例えば、フリーランス・副業向けマッチングサイト「SOKUDAN」の調査では、コンサルティング職の平均時給は5,124円、マーケティング職の平均時給は3,707円という結果が出ています。相場を参考にしつつ、仕事内容に応じて適切な報酬を設定することで、必要な人材を確保できます。▼参考:【2024最新】フリーランス・副業の平均時給・月収ランキング(職種別)▼関連記事:【職種別】業務委託の時給相場は?時給で依頼するメリット・デメリットも解説業務の難易度や専門性を考慮する依頼する業務内容の複雑さや専門性に応じて、報酬を調整しましょう。専門性が求められる仕事ほど、高い報酬を提示することが一般的です。適切な価格設定ができていれば、優秀な人材を確保しやすくなります。例えば、高度なプログラミングスキルが必要なシステム開発や、責任者として立ち回るディレクションの案件などでは、報酬額を高く設定したほうがよいでしょう。フリーランスの経験年数やスキルを考慮するフリーランスが持つ、スキルや経験年数に応じて報酬を設定することも大切です。スキルや経験に見合った報酬を提示することで、質の高い成果物が期待できます。例えば、経験3年以上のライターには文字単価を上げるなどの調整を行うことで、信頼関係を構築しやすくなります。また、〇〇ジャンルでの執筆経験、〇〇の有資格者など、特定の「歓迎条件」を満たしているライターには、追加報酬を設定するのも効果的です。【Q&A】業務委託や最低賃金に関するよくある質問最後に、業務委託や最低賃金に関するよくある3つの質問に回答します。疑問を解消したうえで、業務委託契約を結べるように準備していきましょう。業務委託の最低賃金とフリーランス新法の関係はある?業務委託の最低賃金とフリーランス新法に、直接的なつながりはありません。しかし、フリーランス新法では「報酬は相場より著しく低く設定してはいけない」と定められているため、業務委託する場合は最低賃金を意識することが求められます。適正な報酬を設定することで、トラブル回避や信頼関係の構築が期待できます。業務委託契約で最低賃金以下の報酬は違法?業務委託は最低賃金法の適用外なので、違法ではありません。ただし、最低賃金以下で業務委託契約を結ぶことには、次のデメリットがあります。フリーランス新法に違反する恐れがあるフリーランスから敬遠されて優秀な人材が集まらない企業のイメージダウンにつながる人材を募集する際は、これらのデメリットを考慮したうえで、慎重に報酬を決めるようにしましょう。業務委託で最低賃金が適用されるケースはある?以下のケースでは、業務委託契約であっても、実態が「雇用契約」「労働者」とみなされ、最低賃金が適用すべき状態であると判断されます。発注者が業務の進め方について細かく指示を出している勤務場所や勤務時間を指定しているまた、同時に偽装フリーランスと判断される恐れがある状態のため、早急に契約形態や業務の依頼の仕方を見直す必要があります。▼関連記事:偽装フリーランスとは?企業が気をつけるべき8ケースや対策を徹底解説業務委託とアルバイトの違いは?業務委託とアルバイトには、「雇用形態」「報酬」「指揮命令下」の観点で違いがあります。業務委託は、発注者と受注者が対等な立場で契約を結びます。そのため、業務の進め方や働く時間・場所は受注者に委ねられ、指揮命令下に入ることはありません。一方で、アルバイトは雇用契約に基づき、企業が勤務時間や業務内容を管理します。また、業務委託は基本的に成果物や業務結果に対して報酬が支払われるのに対し、アルバイトは労働時間に応じて支払われる点が異なります。▼関連記事:業務委託とアルバイトの4つの違いとは?企業が押さえておきたい雇用形態の判断基準を解説業務委託の報酬に源泉徴収は必要?業務委託で依頼した内容が、国税庁が定めた「源泉徴収の対象となる範囲」の内容に該当する場合は、源泉徴収が必要です。例えば、原稿料や講演料、弁護士や司法書士など、特定の資格を持つ人に支払う報酬が該当します。▼参考:No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁優秀なフリーランス人材を探すなら「SOKUDAN」業務委託で優秀な人材を探している企業におすすめのサービスが「SOKUDAN」です。SOKUDANは、フリーランスや副業人材を探す企業と、専門スキルを持つプロ人材と呼べるスキルと経験を備えた人材をマッチングするサービスです。【SOKUDANの特徴】利用者の6割が実務経験5年以上AIを利用した独自のマッチング制度複業から正社員化も可能SOKUDANに登録しているプロ人材のうち、6割が実務経験5年以上の経験者です。エンジニアやマーケター、デザイナーなど、幅広い職種のプロ人材が登録しています。AIを利用した独自の自動マッチング機能で、スピーディにー求める人材を見つけることが可能です。さらに、業務委託契約からスタートし、業務を通じて相互理解を深めた後に、正社員採用する仕組みも導入しています。SOKUDANは初期費用0円で導入可能です。ぜひ一度ご検討ください。まとめ業務委託は、最低賃金の対象外です。業務委託で仕事を依頼する際に、必ずしも最低賃金を遵守する必要はありません。しかし、最低賃金以下での採用・募集では、フリーランスを搾取しているなど、マイナスイメージを与え、人材が集まらない可能性が高いです。また、フリーランス新法にも抵触する可能性があります。そのため、業務委託する際は、相場や業務内容の難易度に応じた、適切な報酬を設定することを意識しましょう。適切な報酬を設定することで、優秀な人材の確保につながり、契約後も質の高いパフォーマンスを発揮してもらいやすくなります。