副業を始めてみたものの、「思った以上に税金の負担が大きい…」と感じたことはありませんか?会社員が副業を行うと、住民税や所得税の負担が増加します。特に、所得税は累進課税のため、副業所得が増えるほど税金の負担が高いと感じます。しかし、税金がかかる仕組みや節税の知識を知って、適切に対策することで、副業にかかる税金の負担を減らせます。この記事では、副業する会社員が実践できる節税対策を分かりやすく解説します。必要経費の申告方法や退職金制度の活用方法などを理解して、節税に取り組んでいきましょう。副業はどれくらい稼いだら税金がかかる?税金は、年間の合計所得が45万円を超えたらかかる仕組みとなっています。具体的には、合計所得が45万円を超えると住民税がかかり、48万円を超えると所得税がかかります。ただし、会社員は休職していない限り、本業の給与所得だけで年間の合計所得が45万円を超えることが多いでしょう。そのため、副業を行えば、基本的に住民税も所得税も課税対象となると覚えておくとよいでしょう。なお、税金は副業で得た収入全額にかかるのではなく、収入から必要経費を引いた「課税所得」に対してかかります。また、所得税の税率は、副業の所得が高いほど高くなる仕組みで、所得金額に応じて以下のように5%から最大45%まで段階的に上がります。課税される所得金額税率控除額1,000円~194万9,000円5%0円195万円~329万9,000円10%9万7,500円330万円~694万9,000円20%42万7,500円695万円~899万9,000円23%63万6,000円900万円円~1799万9,000円33%153万6,000円1800万円~3999万9,000円40%279万6,000円4000万円以上45%479万6,000円そのため、控除や必要経費を上手に活用することで、税負担を軽減することが大切なのです。また、以下の記事では、副業の所得金額別に税金がどれくらい上乗せされるか表で記載しているので、参考にしてください。▼関連記事:【年収別早見表】副業にかかる税金シミュレーション!節税対策から必要な申告手続きまでまるわかりガイド会社員ができる副業の節税対策とは?副業をする会社員が節税で意識したいポイントは、「課税所得をどれだけ減らすか」です。課税所得を減らす具体的な方法としては、大きく分けて以下の4つのアプローチが挙げられます。青色申告で確定申告をする経費や所得控除を適用する資産運用を行う法人化する上記のポイントを適切に組み合わせることで、副業の税金負担を軽減し、副業収入を多く手元に残せます。次の段落からは、これらの対策を1つずつ具体的に解説していきます。①青色申告で確定申告をする青色申告を活用して確定申告を行うと、特別控除を受けられたり、赤字の繰り越しができたりするため、節税に大きく役立ちます。そもそも青色申告とは何かを理解したうえで、具体的な節税効果を見ていきましょう。青色申告とは?白色申告との違い青色申告とは、一定の条件を満たすと利用できる確定申告の制度です。確定申告には、白色申告と青色申告の2種類があります。白色申告は、簡易な記帳だけで済む反面、控除額が少なくなるため、税金の負担が大きくなりがちです。一方で、青色申告は、最大65万円の特別控除を受けられるほか、赤字の繰り越しや家族への給与の経費計上ができるため、節税効果が高いのが特徴です。ただし、青色申告を利用するには、以下の条件を満たす必要があります。事前に税務署へ開業届や青色申告承認申請書を提出する事業所得または不動産所得で事業を営む複式簿記で帳簿をつけるe-Taxで確定申告を行う、または仕訳帳などを電子帳簿保存する青色申告を利用する場合は、確定申告の時期になってから慌てないよう、あらかじめ準備を進めておきましょう。▼関連記事:フリーランスは青色申告で確定申告しよう!控除の活用や節税のコツを解説最大65万円の青色申告特別控除を受けられる青色申告特別控除とは、正確な帳簿をつけることで、課税所得から最大65万円の控除を受けられる制度です。これは、税率が10%の場合であれば、約6.5万円の節税に相当します。例えば、年間で120万円の副業所得がある場合では、青色申告特別控除を利用すれば、課税所得を55万円(120万円-65万円)に減らせます。なお、特別控除を受けるためには複式簿記での記帳が必要です。副業の赤字を最大3年繰り越しできる青色申告を行うと、事業所得の赤字を最大3年間繰り越せます。例えば、副業の初年度に50万円の赤字が出た場合は、翌年以降に黒字になったときに、その赤字分を差し引いて課税所得を計算できます。次年度以降の税金負担を軽減し、長期的な収支改善につなげられます。家族への給料を経費計上できる副業をしている会社員は、基本的に家族に副業を手伝ってもらって給料を支払っても経費に計上できません。しかし、青色申告を行っている場合は、例外として家族への給料を経費として計上できます。ただし、家族への給料を経費計上するためには、給与の支払いや業務内容の記録をしっかりと管理することはもちろん、給料が適正金額であることや、業務内容が明確であることなどが求められます。税務調査が入る場合を想定して、給与明細や振込証明などをしっかり保存して、証明できるようにしておくことが大切です。貸倒引当金を経費計上できる副業をしていると、稀に請求書の不備や手続きの遅れなどが原因で「報酬が回収できない」といった状況に直面する可能性があります。このような場合は、「貸倒引当金」として経費に計上しましょう。貸倒引当金とは、売掛金や貸付金の回収が困難となった場合に、あらかじめ引当金を計上することで、その分の金額を経費として扱える制度です。回収困難となった報酬金額を経費として申告することで、課税対象額を減らし、税金の負担を軽減できます。ただし、貸倒引当金として計上するためには、明確な証拠の準備と手続きが必要です。30万円までの資産を一度に経費計上できるPCやカメラなど、副業で使用する機器を購入した場合は、通常であれば複数年に渡って少しずつ経費計上しなければならない(減価償却)というルールがあります。しかし、「少額減価償却資産の特例」を活用すれば、30万円以下の機器を合計300万円までなら一括で経費として計上できます。少額減価償却資産の特例とは、30万円までの資産を一度に経費として計上できる制度です。購入した年に全額を経費として計上できるため、大きな節税効果があります。会社員が副業で青色申告を検討する際の注意点青色申告は、事業所得を得ている人が対象となります。しかし、副業の多くは青色申告ができない「雑所得」の扱いとなります。事業所得と雑所得の違いは以下の通りです。事業所得継続的に行う事業活動による所得商売やフリーランスの仕事、サービス提供などによる所得が該当する雑所得事業所得をはじめ、ほかの所得に該当しない所得一時的なアルバイト収入や、趣味で得た収入、副業による収入(条件による)などが該当する副業の所得を「事業所得」として申告することができれば、青色申告を利用することが可能になります。事業所得として認められるためには、事業で生計を立てていると判断される必要があります。例えば、毎月安定して副業で収益を上げていることや、帳簿書類を記帳・保存してることが求められます。▼関連記事:【フリーランス向け】事業所得と雑所得の違いとは?確定申告での注意点も解説②経費や所得控除を適用する経費を漏れなく申告することは、節税の基本です。副業にかかった経費をしっかり計上すれば、課税所得を大幅に減らせるため、支払う税金も抑えられます。経費は、白色申告と青色申告とで、計上できる金額などに違いはありません。どちらで申告するにせよ、副業でかかった経費は漏れなく計上しましょう。副業にかかった費用を漏れなく計上する副業にかかった支出は、すべて経費として計上できます。なお、計上できる経費金額に上限は設けられていません。副業の経費として計上されることの多い項目としては、以下のような例が挙げられます。PCやスマホの購入費・通信費コピー用紙や文房具などの事務用品代クライアントとの打ち合わせのための交通費(自宅で仕事をしている場合)家賃や水道光熱費正確な記録を残すために、副業に関する出費が発生した場合は、レシートや領収書を保管しておきましょう。なお、上記のうち通信費や家賃、水道光熱費は、プライベートとしっかり分け、副業で使用している分のみを計上(家事按分)する必要があります。家事按分の計算式は厳密に定められていません。使用頻度や面積などにもとづいて個人で計算します。【通信費の家事按分例】インターネット代:1万円/月副業の作業時間:20時間/月インターネットの使用時間:100時間/月(副業の作業時間も含む)経費計上できる額:1万円×20%=2,000円▼関連記事:副業の経費を徹底解説!初心者でも分かる計上のポイントと節税のコツ該当する所得控除をすべて適用させる所得控除は、所得額から一定の金額を差し引くことができる制度です。主な所得控除として、以下が挙げられます。所得控除特徴基礎控除納税者の合計所得金額に応じて、一律で適用される控除・2,400万円以下:48万円・2,400万円超2,450万円以下:32万円・2,450万円超2,500万円以下:16万円・2,500万円超:0円社会保険料控除健康保険料や年金保険料、雇用保険料など、支払った社会保険料を全額控除できる医療費控除医療費が年間10万円(または総所得金額の5%)を超える場合は、その超過分を控除できる生命保険料控除生命保険や医療保険の保険料を一定額まで控除できる・所得税:最大12万円・住民税:最大7万円(一般生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料それぞれ:所得税4万円、住民税2万8,000円)小規模企業共済等掛金控除小規模企業共済やiDeCo(個人型確定拠出年金)の掛け金を全額控除できる該当する所得控除をすべて適用することで、課税所得が大幅に減るため、支払う税金も減らせます。ふるさと納税を活用するふるさと納税は、任意の自治体に寄付することで所得税や住民税が控除される制度です。寄付額のうち2,000円を超える部分が控除され、希望すれば寄付先の自治体から特産品をもらえる点が大きな特徴です。実際には「寄付金」という形ですが、実質的には税金を別の形で前払いしているような形となります。返礼品も楽しみながら、効率よく税金を節約できる仕組みのため、副業の年間所得が確定したら早めにふるさと納税を活用してみましょう。▼関連記事:フリーランスのふるさと納税のやり方は?確定申告までの流れやメリットも解説③資産運用を行う資産運用に挑戦することも、副業の節税に効果的です。特に、小規模企業共済やiDeco(個人型確定拠出年金)を活用することで、節税と資産形成を同時に行えます。小規模企業共済に加入する小規模企業共済は、フリーランスなどが将来の退職金代わりに積み立てを行える共済制度です。主にフリーランスや小規模企業の経営者・役員が対象となる制度ですが、事業所得で確定申告をしていれば副業をしている会社員も加入できます。掛金は「小規模企業共済等掛金控除」として全額所得控除の対象となります。月々の掛金は1,000円から7万円の範囲で、500円単位で自由に設定可能です。節税と老後の資産形成を同時に行える点がメリットです。▼関連記事:小規模企業共済とは?フリーランスの将来の備えと節税効果を解説iDecoを活用するiDeCoとは、自分で積み立てた掛金を運用し、60歳以降に受け取ることができる私的年金制度です。掛金は「小規模企業共済等掛金控除」の対象となり、全額が所得控除の対象になるため、課税所得を減らして所得税と住民税の負担を軽減できます。ただし、iDeCoでは、運用する商品を自分で選ばなければならない点や、原則として60歳まで引き出せない制約がある点には注意が必要です。▼関連記事:フリーランスがiDeCoに加入するメリット・デメリットは?年代別シミュレーションも紹介④法人化する副業が軌道に乗って収入が増えてくると、法人化することで節税効果を見込めます。例えば、個人に課される所得税率は、所得に応じて5%から45%まで段階的に上がります。一方で、法人税率は原則で23.2%(一律)です。副業の収入が500万円を超える場合は、法人税の方が所得税よりも税負担が軽くなるケースが多いといわれています。また、法人化することで、経費計上できる範囲が広がるため、課税所得を大きく減らすこともできます。法人化するために、会社設立の費用や手続きは発生しますが、長期的な節税効果を考えれば、大きなメリットを享受できるでしょう。▼関連記事:フリーランスが法人化する7つのメリット!インボイス制度後の注意点も解説副業で赤字が出た!収支がマイナスでも節税できる?副業で赤字になってしまった場合でも、適切に手続きを行うことで、本業の所得税や住民税を軽減させることができます。ただし、制度を活用するには条件や注意点もあるため、正しく理解して活用しましょう。確定申告することで本業の所得税の節税が可能副業で赤字が出た場合は、確定申告をすることで本業の所得税を節税できる可能性があります。その際にポイントとなるのが、「損益通算」と「繰越控除」という仕組みです。損益通算とは、副業の赤字を本業の所得から差し引くことで、課税所得を減らし、所得税や住民税を軽減する制度です。副業の収入が100万円、経費が150万円で、50万円の赤字が出た場合は、この赤字を本業の所得から50万円を差し引くことで、税金の負担が少なくなります。一方で繰越控除とは、赤字が出た年に控除しきれなかった分を翌年以降に繰り越せる制度です。赤字は、翌年以降の利益から最大で3年間差し引くことでき、税金の負担を減らせます。例えば、1年目に50万円の赤字、2年目に100万円の利益が出た場合、1年目の赤字を繰り越して2年目の利益から差し引けるため、2年目の課税所得は50万円となります。ただし、損益通算と繰越控除を受けるには青色申告を行う必要がある点には注意が必要です。損益通算は会社に副業がバレる可能性がある損益通算を行うと税金の負担を減らすことができます。しかし、自治体から所属する会社に住民税の通知がされるため、会社に副業が知られる可能性があります。通知書には副業による所得や控除内容も反映されます。赤字を損益通算した場合は、住民税が減るため、会社側が副業に気づく可能性があります。副業をしていることを会社に知られたくない場合は、確定申告の際に申告書内の住民税欄で「自分で納付」を選択すると、副業の内容が会社に通知されるリスクを減らせます。▼関連記事:副業がバレない方法4選!確定申告のポイントも解説まとめ副業の税金対策は、特に副業初心者の方にとってハードルが高いかもしれません。しかし、節税は複雑な手続きばかりではなく、しっかり経費を計上するだけでも大きな節税効果があります。また、小規模企業共済やiDeCoなどの制度を上手に使えば、節税だけでなく将来の資産形成にもつなげられるでしょう。副業利益が増えた場合は、法人化を検討することで社会保険料の負担を抑えられたり、経費として認められる範囲が広がったりするため、手取りをより増やせる可能性もあります。ただし、それぞれの節税対策には適応条件などがあるため、正しい知識を身につけることが大切です。しっかり準備をして、税負担を減らせるようにしましょう。