副業を始めて収入が増えたのに、「手元に残るお金が思ったより少ない…」と感じたことはありませんか?その原因の1つは、税金対策が不十分なためかもしれません。特に、副業で発生する経費を正しく計上することは、節税の基本です。しかし、「どこまで経費として認められるの?」「この支出は経費になるのだろうか?」と悩む方も多いでしょう。例えば、自宅で副業を行っている場合の光熱費や、業務で使うPCの購入費など、計上ルールが分かりづらい項目もありますよね。この記事では、副業を始めたばかりの方でも理解できるように、経費計上のポイントや節税につながる実践的なコツを分かりやすく解説します。経費を正しく計上・申告して、副業の収益を少しでも多く手元に残しましょう。副業でも経費を計上できる?適切に経費を計上すれば、所得税や住民税が課税される所得(課税所得)を減らし、税金の負担を抑えられます。経費計上は難しそうに思えますが、基本的なルールを押さえられれば初心者でも計上できます。まずは、副業で経費を計上する際の基本知識を解説します。そもそも経費とは?経費とは、収入を得るために使用した費用を指します。例えば、副業の仕事に使ったPCやインターネット代、取引先との打ち合わせのために乗った電車代などが挙げられます。税金は、副業で得た収入全体にかかるのではなく、収入から経費や所得控除を差し引いた後に残る所得(課税所得)にかかります。経費を漏れなく計上すると、課税所得が減って税金の負担を軽減できるため、経費をしっかり把握することは節税に欠かせないのです。なお、経費には上限金額がありません。たとえ高額であっても、業務に必要なものであれば計上可能です。ただし、副業への関連性が不明確な支出は経費に含めても認められないことがあります。▼関連記事:フリーランスの気になる経費事情!経費計上する時の注意点やQ&Aも所得区分に該当すれば副業でも経費計上できる経費は副業でも計上できますが、すべての副業収入に計上できるというわけではありません。所得は、所得税法によって以下の10種類に区分され、経費を計上できるのは雑所得と事業所得、山林所得、不動産所得の4つのみです。所得区分概要経費計上の可否給与所得給料、賞与、手当などの働いて得た利益例)会社員の給与、アルバイトの賃金など×事業所得個人事業主が業務から得た利益例)フリーランスの収入、小売業、農業などの事業所得など〇不動産所得土地や建物の貸付によって得た利益例)アパートやマンションの家賃収入、土地の貸付収入など〇山林所得山林を伐採、または立木のままで譲渡して得た利益例)自分が所有する山林の売却収入など〇退職所得退職金、企業年金の一時金などで得た利益例)退職金、企業年金の一時金など×譲渡所得資産を譲渡して得た利益例)不動産の売却益、株式の譲渡益など×一時所得労働や事業とは関係のない一時的な所得例)懸賞の当選金、生命保険の一時金など×利子所得預貯金や公社債などの利子によって得た利益例)定期預金の利息、国債や地方債の利子など×配当所得株式や投資信託などから得られる配当金の利益例)上場企業の株式配当、投資信託の分配金など×雑所得ほかの所得に分類されない利益例)年金収入、FXや仮想通貨の利益など〇会社員やパート・アルバイトが毎月もらう「給与所得」には、もともと「給与所得控除」があるため、別途経費を計上できません。そのため、パート・アルバイトや派遣の副業を行っている人は注意が必要です。一般的な副業経費の勘定科目副業で計上できる経費にはさまざまな種類があるため、「勘定科目」に振り分けてしっかり記録する必要があります。勘定科目とは、お金の動きを記録・管理するために使う「分類名」です。副業で発生した収支を種類ごとに分けて記録する際に、どの目的で使ったお金なのかを明確にします。副業の経費で使うことの多い勘定科目には、以下が挙げられます。勘定科目内容具体例消耗品費業務に必要な10万円未満の備品の購入費ノート代、文房具代、プリンター用紙代通信費インターネットや電話の利用料金プロバイダ料金、携帯電話代交通費業務に関連する移動にかかる費用電車代、バス代、タクシー代接待交際費取引先との打ち合わせや接待にかかった費用飲食代、贈答品代水道光熱費事務所や作業場で使用する電気代など電気代、水道代、ガス代地代家賃業務用のオフィスやスペースの賃料自宅の一部を事務所として使う場合の家賃仮に税務調査が入った場合でも、しっかりと証拠を提示できるよう、日々の取引は正確に記録し、領収書やレシートをしっかり保管しておきましょう。プライベートでも使うものは家事按分が必要副業の経費に計上できるもののなかには、自宅の光熱費や通信費などのように、プライベートでも使用するものが含まれる場合があります。このような場合は、業務に使用する割合を計算してから経費として申告する必要があります。これを家事按分といいます。家事按分の計算方法は法律で厳密に定められていませんが、一般的に、使用時間やスペースの面積割合などを根拠として計算します。副業で家事按分が発生しやすい経費には、以下のようなものがあります。家賃副業で使用している自宅のスペースを経費にする通信費業務で使用するインターネットや携帯電話の料金を経費にする光熱費業務に関連する部分の電気代や水道代などを経費にする例えば、1週間のうち毎週土曜日と日曜日に計10時間の副業を行っている場合では、1ヶ月の合計時間720時間(24時間×30日)のうち、40時間を副業に充てています。そのため、家賃の40時間/720時間を按分して経費として計上できます。つまり、経費に計上できる家賃は、10万円×(40時間÷720時間)=5,555円となります。副業で経費にできるものの具体例経費として認められるかどうかは、事業のために使ったかどうかがポイントとなります。この段落では、具体的な例を挙げながら、経費計上の考え方を解説します。家事按分の計算例や注意点も解説するので、それぞれ詳しく見ていきましょう。家賃自宅で副業をしている場合は、その部分にかかる家賃を経費として計上できます。ただし、自宅全体の家賃を経費にするのではなく、事業で使う割合(家事按分率)を計算する必要があります。【家賃の家事按分例】家賃が10万円の1LDKの部屋(50㎡)に住んでおり、そのうち仕事部屋として使うスペースが10㎡(20%)の場合、10万円×20%で2万円が経費として計上可能です。按分率を証明するために、間取り図や写真などを保管しておくとよいでしょう。▼関連記事:フリーランスは家賃を経費計上できる!家事按分の計算方法や確定申告の注意点を解説光熱費電気代や水道代、ガス代も、家事按分して経費に計上できます。【光熱費の家事按分例】1ヶ月の電気代:2万円自宅で副業を行う時間:40時間/月(1週間に10時間×4週間)副業に利用した時間の割合:40時間÷720時間(1ヶ月の総時間)=約5.56%副業で使用したとみなせる光熱費:2万円×5.56%=1,112円PC・スマホの購入費PCやスマホは、副業で使う頻度が高ければ経費の対象となります。ただし、購入価格によって計上方法が異なる点に注意が必要です。本体価格が10万円未満の場合は、「消耗品費」として、その年の経費に一括計上できます。一方で、本体価格が10万円以上の場合は、減価償却を行い、経費計上します。減価償却とは、購入した年から数年間にわたって費用を分割して経費に計上する方法です。15万円のPCを5年間で減価償却する場合、1年あたりの経費は15万円÷5年で3万円となります。通信費インターネット代やスマホの料金も、副業で使用した部分は経費として計上できます。【通信費の家事按分例】インターネット代が月5,000円で、副業で使用している割合を50%と見積もった場合は、2,500円を経費として計上できます。スマホの場合も同様に、仕事での使用頻度や通話時間に基づいて合理的に割合を算出しましょう。飲食費副業に関連する接待や、打ち合わせで使った飲食費も経費になります。具体的には、取引先とのミーティングで利用したカフェ代や、商談のためのランチ代などが該当します。一方で、家族や友人とのプライベートな食事代や、仕事に直接関係しない飲み会代などは経費にできません。レシートや領収書に接待相手や目的をメモしておくと、帳簿を付ける際や税務調査が入った際もスムーズでしょう。交通費・車のガソリン代電車やバスの利用料金は、出張や打ち合わせなど仕事に関係する移動であれば経費に含められます。車を使う場合は、ガソリン代や駐車場代も対象です。車をプライベートで使用する場合には家事按分が必要となります。【ガソリン代の家事按分例】1ヶ月のガソリン代が1万円で、そのうち20%を副業のための移動で使った場合は、2,000円が経費として計上できます。経費を計上する際には、仕事での移動距離や頻度を記録しておくと安心です。副業の経費として計上できないものの一例副業の経費として申告できるかどうかは、事業に直接関連しているかが基準となります。しかし、なかには「これは経費に含まれるのでは?」と迷う支出も多いでしょう。経費に該当しないものを計上・申告すると、税務調査で否認されるリスクがあります。この段落では、経費に含められないものの代表例を取り上げ、経費にできない理由や注意点を解説します。生命保険料生命保険料は事業に関連しない個人の生活費とみなされるため、経費には含まれません。フリーランスの場合であれば、確定申告の際に「生命保険料控除」を利用することで、一定額の所得控除を受けられます。しかし、会社員の場合は、所属する会社が行う年末調整の所得控除に含まれています。そのため、確定申告では生命保険料控除に記載しないようにしましょう。健康診断費用健康診断や人間ドックの費用も、個人の健康管理を目的とした支出であり、事業との直接的な関連性が認められないため、原則として経費にはなりません。ちなみに、従業員を雇用しているフリーランスであれば、従業員の健康診断費用を福利厚生費として計上することが認められます。家族への給料生計を共にしている(財布が同じ)家族に副業を手伝ってもらい、給料を支払ったとしても、原則経費として計上できません。ただし、青色申告で確定申告を行っている人が、以下3点の条件を満たす人に給料を支払っている場合は、「青色事業専従者」に該当し、経費計上が認められます。青色申告者と生計を共にする配偶者または、そのほかの親族であるその年の12月31日現在で15歳以上である1年のうち6ヶ月を超える期間、その事業に従事している所得税・住民税所得税や住民税などの税金は、個人が納めなければならない税金のため、事業経費には含まれません。一方で、事業活動に関係する個人事業税や消費税などの税金は経費として計上可能です。▼関連記事:フリーランスが理解すべき所得税の基礎知識を解説【初めての確定申告でも安心】▼関連記事:フリーランスが知っておきたい住民税の基礎知識!計算・納付方法を解説副業で経費計上する際の注意点誤った経費の申告はトラブルを招く可能性があります。経費計上のポイントやルールを正しく理解して、正しく確定申告を行いましょう。経費は事業に使用するものだけ正しく計上する経費として認められるのは、副業の事業活動に直接関係する費用に限られます。以下のように、副業に関係のない支出を経費に含めると、税務調査の対象となり、追徴課税を受けるリスクがあります。家族の食事代を「接待交際費」として申告する趣味に関する買い物を「消耗品費」として経費に含める過剰に経費を計上した結果、所得税の納付額が少ないと税務署に判断されると、過少申告加算税が課されます。過少申告加算税とは、納税の不足額に対し10%(場合によっては15%*)が加算されるペナルティです。悪質と判断された場合は、重加算税として35%もの追加負担が発生します。計上する経費は、必ず副業の事業に直接関係するものに限定しましょう。*追加で納める所得税のうち、「当初の申告納税額」または「50万円」の、どちらか大きい金額を超える部分に15%が加算される。▼関連記事:フリーランスも税務調査の対象になる!税務調査の確率や対象になりやすい人の特徴を解説領収書・レシートを保管する経費計上を正しく行うため、また経費の正当性を証明するために、領収書やレシートはしっかり保管しましょう。なお、領収書やレシートには以下の情報が必要です。店舗名発行日金額購入内容また、領収書やレシートの保存期間にも注意しましょう。青色申告の場合は確定申告の翌日から7年間、白色申告では5年間の保存が義務付けられています。税務署から提出を求められた際に、迅速に対応できるよう整理しておきましょう。副業で節税するためのポイント副業で得た収入をできる限り手元に残すためには、適切な節税対策が鍵となります。しかし、節税にはさまざまなルールがあるため、特に副業を始めたばかりの方にとってはハードルが高いかもしれません。この段落では、青色申告や特例制度など、無理なく税金の負担を抑える方法を紹介します。経費を漏れなく計上する見落としがちな経費も漏れなく正確に計上することで、課税所得が減り、税金額に大きな差が生じます。以下の例をもとに、経費を計上した場合としなかった場合で、どれくらい税金の負担差が生じるかを比較してみましょう。副業の年間収入:300万円経費の合計:50万円所得控除(社会保険料控除や基礎控除など):50万円税率:所得税10%、住民税10%(合計20%で計算)①経費を計上しなかった場合課税所得:300万円(収入)−50万円(所得控除)=250万円税額:250万円×20%=50万円②経費50万円を計上した場合課税所得:300万円−50万円−50万円=200万円税額:200万円×20%=40万円納税額の差:50万円−40万円=10万円上記の例では、経費50万円を計上することで、年間で10万円も節税できます。経費が大きいほど節税効果も高くなるため、副業での収入が多いほど漏れなく経費を計上することが重要です。青色申告で確定申告を行う確定申告で青色申告を選択すると、さまざまな税制優遇が受けられます。最大の特典は、青色申告特別控除です。正確な帳簿を付けることで、最大65万円の控除が認められます。青色申告を行うためには、税務署に届出を行い、複式簿記を使用して帳簿を作成する必要があります。帳簿作成の手間は増えますが、節税効果が非常に大きいため検討してみましょう。▼関連記事:フリーランスは青色申告で確定申告しよう!控除の活用や節税のコツを解説少額減価償却資産の特例を利用する10万円以上の備品を購入した場合は、通常数年間にわたって分割して経費計上します。しかし、青色申告を行っている人が10万円から30万円の備品を購入した場合は、購入した年度に一括で計上できる「少額減価償却資産の特例」を活用できます。少額減価償却資産の特例を利用すると、その年に全額を経費として申告できるため、課税所得を大きく減らすことができます。副業が赤字の場合は損益通算を使う副業が赤字となった場合は、損益通算を活用することで節税できます。損益通算とは、副業で発生した赤字を本業の給与所得と合算し、課税所得を減らす制度です。【副業が赤字の場合の計算例】本業の給与所得:400万円副業の赤字(事業所得):▲50万円所得控除:100万円課税所得=400万円−50万円−100万円=250万円所得税=250万円×10%−9万7,500円=15万2,500円【副業していない場合の計算例】課税所得=400万円−100万円=300万円所得税=300万円×10%−9万7,500円=20万2,500円上記の例では、副業の赤字を加味することで所得税が5万円も安くなります。なお、損益通算は、事業所得で計上している場合に限られる点には注意が必要です。▼関連記事:副業の節税対策完全ガイド!会社員が税負担を減らす方法を徹底解説副業はいくら稼いだら確定申告が必要?副業を始めたばかりの人が迷いやすいのが、確定申告を行うタイミングです。「いくら稼いだら申告が必要なのか?」「収入が少ない場合でも申告したほうがいいのか?」と疑問を感じる人も多いでしょう。確定申告は行わなければならない場合と、節税や還付を受けるために自発的に行ったほうがよい場合があるので、詳しく見てみましょう。副業の年間所得が20万円を超えたら確定申告が必要副業で得た所得が年間20万円を超えると、確定申告を行わなければなりません。例えば、副業収入が40万円で経費が25万円かかった場合は、所得は15万円となるため確定申告は不要です。副業所得が20万円を超えているにもかかわらず申告を怠ると、延滞税や無申告加算税のペナルティが課される可能性があります。ペナルティは本来納めるべき税金に上乗せされるため、正しく早めに申告することが重要です。▼関連記事:副業所得が20万円を超えたら確定申告が必要!初めてでも分かる経費計上の仕方や手続きの流れガイド20万円以下でも確定申告をしたほうがよいケース副業の年間所得が20万円以下の場合は、確定申告の義務はありません。ただし、状況によっては確定申告をすることで、節税や税金の還付を受けられる場合があります。例えば、報酬が源泉徴収されている場合や、医療費控除・ふるさと納税を利用している場合は、確定申告を行うことで払い過ぎた税金や控除額が正確に把握されるため、還付金を得られる可能性があります。なお、年間所得が20万円以下の場合は、確定申告は不要ですが、住民税の申告は必要となる点には注意が必要です。▼関連記事:副業所得20万円以下の場合にするべきこと!住民税の申告方法や無申告のリスクを解説まとめ副業を始めたばかりだと、経費の計上や節税は難しく感じるかもしれません。しかし、正しく経費を管理することで、税金の負担を減らし、より多くの収入を手元に残せます。家事按分や赤字の申告など、少し手間をかけることで得られるメリットは大きいものです。「慣れるまでが大変そう」と感じるかもしれませんが、一度仕組みを理解すれば難しくありませんし、対応してみれば自然と経費管理が身につきます。節税のコツを取り入れて、時間もお金も効率的に使いながら、収入アップを目指してくださいね。