フリーランスとして働く魅力の1つは、自分のペースで仕事を進められる自由さです。しかし、「休みたいけど、休むと収入が減るのでは…」という不安や悩みに直面したことのあるフリーランスは多いでしょう。会社員であれば、体調不良や急な家庭の用事などが発生した際も有給休暇を活用できるため、収入を確保しつつ、安心して休むことができます。業務委託のフリーランスにも、有給休暇と同様の制度があると、収入の減少リスクを抑えられ、安心できますよね。この記事では、業務委託に有給休暇や類似する休暇制度はあるのかを解説します。また、フリーランスが収入を減らさずに休みを取るための具体的な方法も紹介します。自由と責任が表裏一体のフリーランスだからこそ、休みを上手に取り入れるコツを知ることは重要です。心身ともに健康を保ちながら働くためのヒントを一緒に探っていきましょう。業務委託のフリーランスに有給休暇はある?結論をお伝えすると、基本的に業務委託契約のフリーランスに有給休暇はありません。有給休暇は、労働基準法第39条で定められた「労働者の権利」です。労働者とは、会社などと雇用契約を結ぶ従業員のことで、正社員や会社員、アルバイトなどが該当します。一方で、業務委託のフリーランスは、雇用契約ではなく業務委託契約を結びます。そのため、労働者に該当せず、有給休暇を取得することはできません。フリーランスが休みを取る際は、自分でスケジュールを管理して休みを確保する必要があります。また、休業期間中は、対策を打たなければ収入が一時的に減少するリスクを伴います。アルバイトや派遣社員として働く場合は有給を取得できる基本的に、業務委託で働くフリーランスに有給休暇はありませんが、一部例外があります。それは、パート・アルバイトや派遣社員のように、特定の組織に所属する仕事を掛け持ちしている場合です。労働基準法では、雇用形態にかかわらず、以下2点の条件を満たす労働者に10日間の有給休暇を付与するよう定められています。入社日(雇用された日)から6ヶ月経過しているその期間の全労働日の8割以上出勤したこの条件を満たせば、パート・アルバイトや派遣社員なども有給が付与されます。週あたりの稼働日数が少ない場合は、週の勤務日数に応じて以下のように有給日数が決まります。継続勤務年数1週間の半年1年半2年半3年半4年半5年半6年半以上週1日1日2日2日2日3日3日3日週2日3日4日4日5日6日6日7日週3日5日6日6日8日9日10日11日週4日7日8日9日10日12日13日15日週5日10日11日12日14日16日18日20日なお、アルバイトや派遣社員も、継続勤務年数が長くなるほど有給の付与日数は増えます。アルバイトや派遣社員としての労働をうまく活用し、フリーランスとしての収入と安定した働き方を両立させるのも1つの方法です。▼関連記事:【体験談】フリーランスとアルバイトは兼業できる!メリット・デメリットを解説正社員から業務委託になった場合の有給休暇はどうなる?正社員から業務委託へ契約を切り替える際に、正社員時に使いきれなかった有給休暇がある場合は、業務委託契約が発効した時点で未使用の有給休暇は消滅します。これは、有給休暇が労働者としての権利であり、業務委託契約における立場では適用されないためです。そのため、正社員から業務委託になる前に、有給休暇を計画的に消化することが重要です。消化できなかった場合は、会社の規定や交渉によっては有給休暇分の「買い取り」が行われる場合もありますが、法的に義務付けられているものではありません。正社員の権利を無駄にしないためにも、退職が決まったら、会社の規定を確認して有給の使用期限や消化方法を確認し、有給休暇を取得する期間を調整しましょう。どうしても有給休暇をすべて消化するのが難しい場合は、有給分の買い取りや代替手当の可能性を相談するなどし、早めの準備を心がけましょう。業務委託のフリーランスが突然休みを取りたくなったら?フリーランスは自分の裁量で休みを取得できるため、体調不良や家庭の用事などが発生しても自由に休むことができます。しかし、納期が迫っていたり、クライアント先に常駐したりしている場合などは、急な休みを取ると業務に影響を与える可能性があります。ここでは、フリーランスが当日に休みを取りたくなった場合に、業務への影響を最小限に抑えつつ、クライアントとの信頼関係を維持する方法を解説します。納期への影響を最小限に抑える案を考えるまずは、クライアントとの信頼関係などに影響が出ないよう、適切に対応することが重要です。クライアントへ連絡する前に、以下2点の対応案を検討しましょう。①クライアントが安心できるようスケジュールを明示する突然の休みは、クライアントにとっても不安材料となります。そのため、単に「休みます」と伝えるのではなく、進行中の仕事についてどのように対応するかの案を提示することが重要です。例えば、休み明けにどのように作業を再開し、納期に間に合わせるのか、明確なスケジュールを考えて伝えるとよいでしょう。②信頼できるパートナーに業務を引き継ぐ契約でほかのフリーランスなどに再委託が認められている場合は、信頼できるフリーランス仲間に業務を引き継いでもらうことで、仕事を滞りなく進められる可能性が高まります。ただし、責任の所在が不明確になるなどの理由で再委託が契約上容認されないケースも多いため、必ず事前にクライアントへ許可を取りましょう。無理のない範囲でリモート作業を検討する当日の対応が必要なタスクがあるなど、完全に休むのが難しい場合は、リモートで最低限の対応だけ行う選択肢もあります。その場合は、クライアントからのメールに返信する、資料を簡単にまとめるなど、負担の少ない業務だけに絞るのがポイントです。これにより、休みを確保しつつ、業務の進行を止めずに済みます。その後は、タスク管理ツールやコミュニケーションツールを活用して、対応したことを報告しておくと、クライアントも安心できるでしょう。クライアントに迅速に連絡する急に休みを取る際には、クライアントに速やかに連絡を入れることが大切です。以下のポイントを押さえて、連絡内容を簡潔にまとめましょう。休む理由:体調不良や家庭の事情など簡潔に伝える休む期間:どれくらい休むのかを明示する進行中の仕事の状況:作業の進捗や未完了のタスクを伝える【文面例】いつも大変お世話になっております。大変申し訳ございませんが、体調不良により、本日お休みをいただきたくご連絡いたしました。進行中の〇〇プロジェクトは、現在××まで進めております。復帰後の〇日には、午前中のうちに残りの××について対応させていただきます。ご迷惑をおかけしますが、何卒よろしくお願い申し上げます。自身の体調や進捗を具体的に伝えることで、クライアントも次の対応を取りやすくなります。迅速かつ誠実な対応を心がけて、急な休みでも信頼を損なうリスクを抑えましょう。業務委託のフリーランスが収入を減らさずに休みを取る方法フリーランスには有給休暇がないため、基本的に休むと収入が減少します。収入への不安があると、ゆっくり体や心を休ませるのが難しくなるため、収入の心配をせずに休みを取れる方法を知っておくことが非常に重要です。この段落では、フリーランスが収入減少の不安なく休むために、日頃から意識しておきたいポイントを紹介します。クライアントとの事前調整・納期の前倒し対応する休暇をスムーズに取るためには、クライアントとのコミュニケーションが重要です。できる限り早めにスケジュール調整を行うことでトラブルを防げます。旅行などで休む予定がわかっている場合は、決まった段階で納期を前倒しに設定し、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。例えば、普段の納期を1週間など早めに設定することで、休暇直前の作業負担を軽減できます。クライアントには休業期間を共有し、前述した納期の前倒しなどのスケジュールを提示することで信頼感を高められるでしょう。自動化ツールを活用する自動化ツールを使うことで、手作業でかかっていた工数を大幅に削減でき、仕事にかかる時間を短縮できます。納期の前倒しもしやすくなり、収入を減らさず休みを取ることができます。エンジニアの場合は、開発作業を効率化する自動化ツールがおすすめです。例えば、コードのテストやビルド、デプロイを自動化するCI/CDツールや、AIを活用してコード生成や最適化を行うツールが挙げられます。ライターの場合は、リサーチや誤字脱字チェックを効率化する自動化ツールを使用すれば、時間を節約しつつクオリティを保つことが可能です。また、構成案や見出しの案を考える際にAIを活用することで、執筆の下準備がスムーズになるでしょう。信頼できるパートナーを探す休暇中でも進行が必要な案件は、信頼できるパートナーと業務を分担したり、アシスタントを雇って依頼したりすることでカバーできます。事前に業務内容と報酬を設定しておくことで、休暇中でもスムーズに業務を進められるため、休暇明けに対応に追われるというリスクも減らせるでしょう。ただし、前述したように契約書で再委託を禁じているケースがあります。また、外注するにはコストがかかるため、予算を計算しておく必要がある点には注意が必要です。不労所得の副業を仕込んでおく休暇中の収入減を補うためには、不労所得を得る仕組みを整えておくと安心です。例としては、投資やアフィリエイトブログなどが挙げられます。収入に波は生じるものの、NISAやiDecoなどを活用して資産運用を行うと、休暇期間中も収入を補填できる仕組みが作れます。また、アフィリエイトブログを作成すると、休暇中も広告収入を得られて、長期間にわたって収益を生む可能性があります。そのほか、特定の高い専門スキルのある場合は、オンライン教材を提供するコンテンツビジネスに着手する方法もあります。コンテンツビジネスの例としては、以下が挙げられます。テキストコンテンツ:Kindleなどの電子書籍、noteなどでの有料記事の販売動画コンテンツ:Udemyなどでの動画コンテンツの販売音声コンテンツ:standFMやVoicyなどでの音声コンテンツの販売オンライン講座:Zoomなどを使ったオンライン講座の実施単価を上げる収入を減らさず休むためには、単価の向上を図り、少ない作業時間でも同じ収益を確保することが重要です。受注案件の単価を上げる方法としては、スキルアップを図って専門性を高め、市場価値の高い分野にシフトするとよいでしょう。そのほか、質の高い成果物を納品してクライアントに価格交渉する、案件マッチングサイトなどを活用して高単価の案件を探す、などの方法が挙げられます。▼関連記事:フリーランスの単価交渉のコツ!印象良く高単価な契約を結ぶ方法▼関連記事:【2024最新】単価上昇中のフリーランス職種ランキング収入保障保険を活用する突然のケガや病気などで長期間仕事ができなくなってしまった場合に備えて、収入を保証してくれる保険を活用することもおすすめです。収入保障保険は、病気やケガで働けなくなった場合に一定の収入を得られる保険です。フリーランス向けに特化したプランを提供している団体もあります。一例としては、フリーランス協会の福利厚生制度「ベネフィットプラン」や、フリーナンスの「あんしん保障プラス」が挙げられます。プラン選びの際は、保険料が収益を圧迫しないよう、自分の収入やライフスタイルに合ったプランを選ぶことが大切です。▼関連記事:フリーランスも利用できる福利厚生サービス13選!選ぶポイントや注意点を解説【契約形態別】業務委託の休みの取り方のポイント業務委託では、契約形態によって休暇の取り方や調整の仕方が異なります。ここでは、請負契約や委任・準委任契約の特徴に応じた具体的な方法を解説します。請負契約の場合請負契約では、納期を守れば、ある程度働く時間や休みは自分で自由に決められます。そのため、休みを取る際は、スケジュールを見直し、納期に間に合うよう作業を前倒しで進めることが重要です。また、休み明けに体調を崩したり、予期せぬトラブルで作業が遅れたりする可能性も考慮して余裕を持ったスケジュールを組むのがよいでしょう。クライアントに対しては、前もって休暇期間と納期の計画を共有しておくことで信頼関係を保てるでしょう。委任・準委任契約の場合委任契約や準委任契約では、作業時間の設定や出社が必要になることがあります。クライアントとの密接な連携が求められる傾向にあるため、休暇の取り方にも配慮が必要です。チームでプロジェクトを進めている場合は、休暇中のタスクの引き継ぎや進捗報告を事前に行うことで、ほかのメンバーが困らないように配慮しましょう。例えば、休暇前に進捗をまとめたレポートを提出したり、必要に応じてミーティングを設定してタスクを引き継いだりするとスムーズです。休みが確定した際は、なるべく早めにクライアントに知らせましょう。十分な時間を確保することで、クライアントも余裕を持って対応でき、スムーズな調整が可能になります。なお、委任契約や準委任契約は、月間の稼働時間があらかじめ決まっていることが多く、その場合は休んだ時間の分だけ収入が減少します。夜間や週末などに稼働を分散させることができれば、収入の減少を避けられるため、クライアントに相談するのも1つの手でしょう。まとめ業務委託では有給休暇がないため、休むと収入が減るのではと不安に感じ、無理をして働いてしまうフリーランスも多いでしょう。しかし、休むことを諦めてしまうと、さらなる体調不良を招いたり、自分の時間を確保できなかったりしてQOLの低下につながりかねません。業務委託のフリーランスが安心して休むためには、作業の進捗をコントロールし、クライアントとの信頼関係を築くことが大切です。また、自動化ツールの導入やキャリアアップを図るなどして収入アップも目指しましょう。フリーランスの魅力である「自由さ」を活かしつつ、計画的に休暇を取ることで、より充実した働き方を実現しましょう。