フリーランスは、会社員と比較すると「保育園の入園審査が不利になる」といわれる場面が多くあります。地域によっては、在宅で働くフリーランスは保育園の入園審査の点数が低くなり、不利になるケースがあることも事実です。しかし、事前準備やリサーチを徹底することで、フリーランスも保育園の入園審査を通過することが可能です!この記事では、フリーランスの家庭が保育園の入園審査を通過するためのポイントを解説します。子育てと仕事の両立を目指すフリーランスは、ぜひ参考にしてください。フリーランスの家庭は保育園の審査が不利といわれる理由はじめに、フリーランスの家庭が保育園の入園審査が不利といわれる3つの理由を解説します。「審査が不利になる」といわれる理由を理解して、保育園の入園の準備に備えられるようにしましょう。基準指数が低くなる場合があるフリーランスは、保育園の入園審査で考慮される「基準指数」が低くなる場合があります。基準指数とは、保護者の就労状況や家庭環境に基づいて算出される、保育の必要性を数値化した指標です。基準指数の点数は、自治体によって異なります。そのため、自治体によっては、自宅で働く時間が長いと「在宅で保育が可能」とみなされたり、開業届を出しておらず「内職」と判断されたりすると、基準指数が低くなり、入園審査が不利になってしまいます。就労の証明が難しいフリーランスは、個人で働いているため雇用証明書がなく、就労中であることを証明しにくいです。会社員であれば、在籍証明書を提出すればよいですが、フリーランスは自分自身で就労中であることを証明しなければなりません。書類を保管していないと、就労中であることを証明できなくなるので注意が必要です。後述の「フリーランスが保育園申請時に準備する書類」で準備すべき書類を紹介するので、あわせて確認してください。収入の安定性が低いフリーランスとしての収入が不安定と判断されると、入園審査が不利になる場合があります。自治体は保育料の支払い能力を考慮し、安定した収入のある家庭を優先することもあることを覚えておきましょう。特に、開業届を提出して間もない人や、収入が変動しやすい職種の人は、収入の安定性が低いと判断されやすいです。入園審査だけでなく、毎月の保育料を必ず支払うためにも、入園の申請をする前に収入を安定させられるように意識して、計画的に行動しましょう。【基礎知識】保育園入園の審査基準保育園の入園審査では、保育の必要性や家庭の状況を総合的に加味して、入園できるかが決まります。審査の基準となるのが「基準指数」「調整指数」「優先順位」の3つです。これら3つの基準が、どのように審査に影響するのかを見ていきましょう。基準指数:保護者の就労状況や健康状態基準指数とは、保護者の就労状況をはじめ、家庭環境や健康状態に基づいて算出される、保育の必要性を数値化した指標です。基準指数が高ければ高いほど、保育の必要性が高いと判断されます。例えば、勤務時間が長い場合や、家庭状況的に保育が難しい場合は、保育の必要性が高いと判断され、基準指数が高くなります。【基準指数の点数が高い例】指数20:月20日以上1日8時間以上の就労を常態指数20:居宅内での寝たきり高齢者・重度心身障害者等の常時介護一方で、働く意思はあるものの現時点で就業していない場合は、保育の必要性が低いと判断されて、基準指数が低くなります。【基準指数の点数が低い例】指数10:語学習得のための各種専門学校等通学している場合指数8:求職中基準指数は自治体によって異なるので、必ず確認するようにしましょう。▼参考:保育実施基準(指数)|荒川区公式サイト調整指数:保育の必要度や緊急性調整指数は、家庭環境や育児負担の状況に応じて、追加点が加算される指標です。ひとり親世帯や障がいのある家族がいる場合は、保育の必要性が高いと判断され、調整指数が加算されます。調整指数の例は、次の通りです。指数+4:ひとり親世帯の場合指数+4:児童福祉の観点から配慮を要する場合指数+2:申込児以外のきょうだいが入園希望園に在園中の場合調整指数の条件や加点は、基準指数と同様に、自治体ごとに異なるので覚えておきましょう。▼参考:保育実施基準(指数)|荒川区公式サイト優先順位:点数が同じ場合の決定基準基準指数の点数が同じ人が複数人いる場合は、自治体が設定する優先順位に沿って入園者が決定します。優先順位の例は、次の通りです。自治体の居住歴が長い家庭を優先低所得世帯を優先認可外保育園に預けた実績がある家庭を優先優先順位は自治体によっては非公開となっていますが、確認したい人は担当者に聞いてみることをおすすめします。フリーランスが保育園申請時に準備する書類フリーランスは、個人で働いているため、申請書類を全て自分で準備しなければなりません。仕事と子育ての合間に準備を進める必要があるため、何が必要かを把握して、早めに準備できるようにしましょう。ここでは、フリーランスが保育園の入園申請時に必要な4つの書類を紹介します。就労証明書就労証明書は、保護者が働いていることを証明する書類です。保育園の入園手続きに必須で、保護者の氏名などの基本情報をはじめ、業務内容や就労時間、復職予定日などを記入します。フリーランスの場合は、自分自身で就労証明書を記入しなければならないため、早めに用意しましょう。就労証明書のフォーマットは、子ども家庭庁や自治体のホームページからダウンロード可能です。就労証明書の書き方は、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。▼関連記事:【フリーランス向け】就労証明書の書き方を解説!保育園の入園手続きで必要な書類や準備もフリーランスとして働いていることを証明する書類フリーランス(個人事業主)として就業中であることを証明できる書類の一例は、次の通りです。開業届業務委託契約書営業許可書履歴事項証明書なかでも、開業届は、税務署に提出して承認された書類のため信頼性が高いです。開業届を提出していないフリーランスは、申請を機に提出するか、業務委託契約書などで代用しましょう。▼関連記事:フリーランスが開業届を出すメリット!不要な場合やインボイス対応も解説収入を証明する書類フリーランスとして収入を得ていることを証明する書類も必須です。最新の確定申告書源泉徴収票納税証明書報酬の振込が確認できる通帳のコピー最新の確定申告書や源泉徴収票など、なるべく収入証明となる公的な書類を用意することをおすすめします。自治体から指定された書類就労証明書や収入を証明する書類など以外にも、自治体が指定した独自の書類を提出する場合もあるので注意してください。例えば、神奈川県横浜市では、月2回以上夜勤がある保護者に対して「夜勤証明書」の提出を求めています。自治体によって申請に必要な書類は異なるので、必ず自治体に確認しましょう。▼参考:令和7年度に保育所等の利用を希望する方へ|横浜市フリーランスが保育園申請を成功させるための年間スケジュール希望する保育園を選んで、申請を滞りなく行うためには、春から約1年間かけて準備する必要があります。ここでは、春夏秋冬それぞれの時期に行うべき申請の準備のポイントを解説します。家庭やお子さんに合った保育園を見つけて、スムーズに準備を進められるように1つずつ確認していきましょう。【春:4~6月】情報収集・自治体への相談4〜6月に保育園の情報収集と自治体への相談を行います。保育園の空き状況や申請条件は自治体ごとに異なるため、計画を立てるための準備が必要です。例えば、保育園のパンフレットを取り寄せたり、自治体の保育園の入園手続きに関するページを確認したりするとよいでしょう。不明点があった場合は、自治体の担当者に確認すると、早めに疑問を解消できて安心できます。【夏:7~9月】保育園の見学・希望保育園の決定7〜9月にかけては、実際に保育園に見学・お試し保育を通して、希望する保育園を決めます。保育園の見学では、次のポイントを確認しましょう。家からの距離感施設の雰囲気・状態保育士の雰囲気・接し方子どもが馴染めそうか通い始めたことを想定して、家からの距離感や子どもが保育園に馴染めそうかを、実際に見て感じて確かめるようにしてください。【秋:10~12月】入園の申し込み・必要書類の提出多くの保育園では、10〜12月の間が入園の申し込み・申請書類の提出時期となっています。原則、期限を過ぎてからの提出は受理されないので、期限を守るようにしてください。必要な書類を早めに準備しておくことが大切です。特に、フリーランスは就労証明書を自分で記入しなければならないので、準備の負担が大きいです。「どのように書けばいいのだろう」とつまづくことも想定されます。早めに準備をして、不明点は担当者に確認した上で余裕を持って提出できる状態を目指しましょう。【冬:1~3月】入園内定・二次募集の情報収集入園審査の結果は、1〜2月の間に行われます。審査が通った場合は、決められた日時までに必要書類の提出や、入園グッズの準備を進めましょう。一次募集で落選した場合でも、二次募集に応募することが可能です。二次募集は、欠員が生じた場合に募集が出ます。二次募集をしている保育園や申請期限を確認し、期間内に申請できるようにしましょう。また、二次募集の結果発表は、3月に入るケースが大半です。二次募集で審査が通った場合は、入園までの準備期間が短いので、速やかに準備を進めてください。フリーランスが保育園の審査を通過するポイントフリーランスの家庭が保育園の審査を通過するためには、基準指数が高くなるように工夫したり、入園審査が通りやすい地域を選んだりするなどのコツを押さえるのが重要です。次に紹介する5つのポイントを確認して、入園審査の通過率を上げられるようにしましょう。常駐案件を獲得するフリーランスとして保育園の審査を通過するには、「常駐案件を持っていること」が有利に働くことがあります。常駐案件の場合は、出社の義務が発生するため、フリーランスでも「決まった時間働いている」という点が保育の必要性を示す大きなポイントになります。また、就労時間や働き方も明確になるため、「安定した働き方をしている」と自治体に判断してもらいやすくなるでしょう。就労・保育実績を作る保育園の審査を有利に進めるためには、「継続して働いている」という実績を示すことがポイントです。過去に手がけた案件の契約内容を整理しておき、働いていることを具体的に説明できる準備をしておきましょう。また、過去に一時保育サービスや認可外保育園を利用した実績があると「保育の必要性が高い」と判断されて、優先順位が高くなる場合があります。お子さんを外に預けるという経験を積むことも兼ねて、一度保育サービスを利用しておくのもよいでしょう。0歳児クラスに申し込む0歳児クラスは定員が多いだけでなく、途中入園がないため、他のクラスに比べて比較的入りやすいといわれています。いち早くフリーランスとして仕事に復帰したい場合や、1歳児クラス以降に申請して審査に落ちるのが不安な場合は、0歳児クラスへの申し込みを検討してもよいでしょう。ただし、0歳からお子さんを預けるかは家庭の教育方針次第です。お子さんへの教育方針や、自身の働き方に関わるため、家族間でよく話し合って、申し込みするかどうかを検討しましょう。入園しやすい地域を選ぶ保育園の空き状況は地域によって大きく異なるため、定員に余裕がある地域を選ぶことで、入園審査の通過確率を高められます。4〜6月の情報収集の時期には、通勤や通園が可能な範囲で、空き状況が多い地域をリサーチしてみましょう。自治体によっては、保育園がある地域に住む住民を優先して入園審査を行うケースも多いため、引っ越しを検討するのも1つの方法です。もちろん、引っ越しは大きな決断ですが、働きやすさや子育てのしやすさを重視して地域を選ぶことで、ワークライフバランスの向上にもつながります。▼関連記事:フリーランスの引っ越し完全ガイド!必要な手続きと経費計上方法を解説必要書類(就労証明書・開業届など)を揃える保育園の申請では、指定された書類を全て揃えることが何よりも大切です。就労証明書や開業届、確定申告書など、働いている証拠となる書類を準備しておきましょう。書類の不備は審査を遅らせる原因となるため、役所の担当者に確認しながら進めることをおすすめします。提出期限に余裕を持って準備し、慌てずに対応できるようにしましょう。フリーランスが保育園の審査に落ちた場合の対処法保育園には定員数が決まっているため、しっかりと準備をしていても審査に落ちてしまう場合もあります。ここでは、フリーランスが保育園の審査に落ちた場合の対処法を4つ紹介します。万が一の場合に備えて、事前に対処法を確認しておきましょう。認可保育園の二次募集に申し込む希望する保育園が一次募集で定員に達していても、空きが出て二次募集がかかる可能性もあります。二次募集は、2月ごろから始まり、3月に審査結果が出る自治体が多いです。二次募集のスケジュールを忘れずに確認し、必要書類を揃えて期限までに申請を済ませましょう。認可外保育園・幼稚園への入園を検討する認可保育園以外にも、認可外保育園や幼稚園を選択肢に入れてみましょう。認可外保育園は、自治体の審査が不要なため、利用条件が比較的柔軟です。一方で、幼稚園は保育時間が短いものの、費用を抑えられる場合もあります。ただし、認可外保育園は費用が高めなことが多く、幼稚園は預かり時間が限られるため、家庭の状況や働き方に合わせて選ぶことがポイントです。認可外保育園の無償化制度を活用したり、幼稚園の預かり保育を組み合わせたりしながら利用するのもおすすめです。▼参考:幼児教育・保育の無償化制度でよくあるご質問はこちら(1)|こども家庭庁ベビーシッターを利用するベビーシッターは、一時的な保育や不規則な就労時間にも対応してくれるため、フリーランスの急な案件や在宅勤務の際にも便利です。信頼できるシッターを見つけるには、ベビーシッター派遣サービスを利用し、事前に口コミや評判を確認するとよいでしょう。また、自治体によっては、ベビーシッター利用に対する補助金制度が用意されている場合もあります。例えば、東京都調布市では、ベビーシッター業者に支払った利用料の2分の1を負担する助成制度が用意されています。補助金制度を活用すれば、費用面の不安を軽減しつつ、仕事と子育ての両立を実現しやすくなるでしょう。▼参考:ベビーシッター及び家事・育児支援サービス利用料助成|調布市一時保育や地域の子育て支援サービスを活用する一時保育は、必要な時間だけ子どもを預けられ、地域の子育て支援センターが提供するサービスは、比較的リーズナブルな料金で利用できます。ともに仕事と育児の両立に役立ち、フリーランスにとって利用しやすい保育サービスです。サービスの内容や利用条件は自治体ごとに異なるため、事前にホームページや窓口で確認しておくと安心です。【Q&A】フリーランスと保育園に関するよくある質問最後に、フリーランスと保育園に関するよくある4つの質問に回答します。入園審査を進める前に疑問を解消して、安心して準備に入れるようにしましょう。開業届がなくても保育園の申請はできる?開業届がなくても保育園の申請は可能です。ただし、就労証明書や業務委託契約書などの「働いている証拠」となる書類を用意する必要があります。また、自治体ごとに求められる書類が異なる場合があるため、事前に確認しておきましょう。▼関連記事:フリーランスは開業届なしだとどうなる?確定申告や経費計上への影響を徹底解説一定期間収入がなくても保育園を継続できる?一定期間収入がなくても、保育園を継続できるケースもあります。自治体は「保育の必要性」を重視しているため、たとえ収入が一時的に途切れていても、就労準備中であることを示せれば、認められることが多いです。例えば、収入がなくても、会計ソフトの利用料や、案件獲得に向けた打ち合わせの交通費など、事業に関する領収書があれば、事業を継続していると判断される場合があります。入園後にフリーランスになった場合も保育園に預けられる?入園後にフリーランスとして働き始めた場合でも、保育園の継続利用は可能です。自治体に就労状況を申請・証明すれば、保育の必要性が引き続き認められることが多いです。開業届や契約書、請求書など、仕事をしていることを示す書類を定期的に提出することで、継続して保育園を利用できます。自営業・在宅勤務者が保育園を利用するのはずるい?自営業や在宅勤務者が保育園を利用するのは、正当な権利なのでずるくありません。保育園の利用基準は「就労時間や家庭環境」に基づいており、在宅勤務者やフリーランスも、育児と仕事を両立するために保育の必要性が認められるケースが多いからです。ただし、中には「ラクそうなのに保育園を利用するのはずるい」と考える人もいるかもしれません。このような誤解が生まれたときは、自治体の利用基準や保育の必要性を説明し、周囲に理解を求めることが大切です。利用する権利がある以上、堂々と保育園を活用してくださいね。まとめフリーランスも、入園審査に向けた準備を徹底することで、保育園を利用できる可能性は十分にあります!ただし、フリーランスは入園審査に必要な書類を全て自分で用意する必要があるので、準備の負担が大きいです。なかでも、就労証明書は自分で記入するため、早めに準備をするとよいでしょう。また、フリーランスが保育園の入園審査を通過するには、常駐案件を獲得したり、入園しやすい0歳児クラスに申し込んだりするなどのポイントを押さえることも大切です。子育てや仕事の状況を考慮しながら、できる範囲で入園審査を通過できる可能性を上げましょう。