「業務委託」と「業務請負」の違いをきちんと説明できますか?実は、この2つの言葉には大きな違いがあり、理解しておかないと企業は法的リスクを抱える可能性もあります。この記事では、フリーランスや外部の専門家を活用する企業向けに、「業務委託」と「業務請負」の違いを分かりやすく解説します。契約形態の選び方や注意点を押さえて、安心して外部人材を活用できるようにしましょう。業務委託とは?業務委託とは、企業が自社の業務の一部をフリーランスなどに依頼する契約形態の総称です。契約形態は、「請負契約」「委任契約」「準委任契約」の3つがあります。この3つの契約形態は、責任範囲や成果物の扱いが異なります。それぞれの契約形態の違いを詳しく見ていきましょう。請負契約請負契約は、成果物の完成を目的とする契約形態です。受注者は成果物を完成させる責任を負い、発注者はその成果物に対して報酬を支払います。例えば、Webサイトの制作や建物の建設、製品の製造などが請負契約に該当します。請負契約では、発注者が受注者に対して、直接的に指揮命令・指示することが法的に禁止されています。そのため、基本的に業務の進め方は、受注者に委ねることになります。委任契約委任契約は、特定の業務や法律行為を依頼する契約形態です。弁護士への法律相談や税理士への税務処理の依頼が該当します。委任契約では、受注者は業務を誠実に遂行する義務がありますが、成果物の完成を保証するものではありません。柔軟に業務内容を調整できる反面、責任範囲を明確にしておくことが重要です。準委任契約準委任契約は、法律行為以外の業務を依頼する契約です。システムの保守・運用やコンサルティング業務などが該当します。委任契約と同様に、受注者は業務遂行の義務を負いますが、成果物の完成は保証されません。業務プロセスを共有しながら進めるため、継続的なサポートが必要な業務に適しています。業務請負とは?業務委託の一種業務請負とは、「業務委託」の中に含まれる契約形態の1つであり、民法第632条に基づく請負契約のことを指します。【民法632条】請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。▼引用:e-Gov 法令検索業務請負では、業務委託の請負契約と同様に、受注者が成果物の完成を約束し、発注者はその成果物に対して報酬を支払います。例えば、Webサイトのデザイン制作やプログラムの開発、SEO記事の作成など、明確な成果物がある業務が該当します。業務請負では、発注者が完成した成果物の品質や納期を重視する一方で、業務の進行や方法は受注者に一任されます。業務委託と業務請負の違い業務委託は、「請負契約」と「委任・準委任契約」を含む広い概念です。業務請負は、業務委託の契約種別の1つである請負契約を指します。つまり、「請負契約=業務請負」と認識してよいでしょう。請負契約(業務請負)と委任・準委任契約の主な違いは、契約の目的と責任範囲です。特徴業務例請負契約(業務請負)成果物の「完成」を目的とし、受注者は完成責任を負うWebサイト制作やプログラム開発など、明確な成果物がある業務委任・準委任契約業務の「遂行」そのものが目的であり、受注者の成果物の完成責任はない弁護士の法律相談やコンサルティング業務など、継続的な支援が求められる業務このように、業務委託の中でも契約形態によって業務の進め方や求める成果が異なります。企業は、自社の業務内容や目的に合った契約形態を選ぶことが重要です。請負契約(業務請負)のメリット・デメリットここで、請負契約(業務請負)のメリット・デメリットを解説します。成果物の納品を持って報酬を支払う請負契約が、自社にとって適切な契約か考えてみましょう。請負契約(業務請負)のメリット請負契約では、業務の「成果物完成」が契約条件となるため、品質の確保が期待できます。Webサイト制作や翻訳の依頼など、成果物が明確な業務に向いています。また、進行管理は受注者の責任となるため、発注者(企業)が細かく指示を出す必要がなく、管理の負担を軽減できます。自社のリソースを他の業務に集中させやすくなるでしょう。加えて、成果物単位で報酬を支払うため、コストが明確になり、予算の見通しを立てやすい点もメリットです。請負契約(業務請負)のデメリット請負契約では、成果物完成が契約条件となるため、基本的に業務の途中経過や進捗に発注者が関与できません。そのため、完成まで期待通りの成果物になるかを確認することが難しい場合があります。また、発注者が受注者に対して、業務の進め方に細かく指示を出したり、管理を行ったりすることは禁止されています。法的な問題にもつながる可能性があるため、契約内容や進め方に注意が必要です。委任・準委任契約のメリット・デメリット委任・準委任契約は、成果物の完成ではなく、業務遂行そのものを依頼する契約形態です。委任・準委任契約のメリット・デメリットを確認し、業務を依頼する前にクリアにすべき課題を見つけていきましょう。委任・準委任契約のメリット委任・準委任契約では、業務内容や遂行方法に柔軟な対応が可能です。例えば、弁護士の法律相談や税理士の税務代行のように、専門スキルを必要とする業務でも柔軟に対応できます。業務の進捗を共有しながら進められるため、状況に応じて軌道修正しやすく、業務の質を高めやすいでしょう。自社のリソース不足を的確に補えるため、システム保守やコンサルティングのような継続的な業務に適しています。委任・準委任契約のデメリット委任・準委任契約では、業務の遂行が目的であり、成果物の完成は保証されません。そのため、業務の質や成果が期待と異なる場合があります。 また、業務の遂行を目的とした契約のため、業務内容や業務範囲を曖昧にしがちです。 2024年11月に施行されたフリーランス新法では、「書面などによる取引条件の明示」が定められました。業務内容をメールやチャット、契約書など、書面に残さないと違反となる恐れがあるため注意が必要です。業務委託の契約形態を選ぶ判断基準業務委託を活用する際には、業務内容や目的に合わせて契約形態を選ぶことが重要です。契約内容を正しく判断することで、トラブルを避け、効率的に業務を進められます。ここでは、企業が業務委託の契約形態を選ぶ際の判断基準を解説します。成果物重視・プロセス重視成果物が必要なら「請負契約」、プロセスを重視するなら「委任・準委任契約」を選びましょう。例えば、WebサイトやSEO記事のように、明確な成果物が必要な業務は「請負契約」が適しています。成果物の完成が条件となるため、納期を守りながら品質の高い仕事をしてもらいやすいです。しかし、業務の進捗に直接関与できないため、完成するまで成果物の品質が確認できない点には注意が必要です。コンサルティング業務やシステム運用のように、業務遂行そのものを依頼したい場合は「委任・準委任契約」が適しています。業務の進捗を発注者と共有しながら柔軟に調整できるため、状況に合わせた対応が可能です。進捗確認や調整がしやすい反面、成果物の品質や完成保証はありません。業務の目的が「完成物」なのか「業務の遂行」なのかを明確にしたうえで、契約形態を選びましょう。単発業務・継続業務単発の業務なら「請負契約」、継続的な業務なら「委任・準委任契約」が適しています。例えば、Web制作や動画編集のように一度きりの業務で、成果物の完成を求める場合は請負契約が適しています。成果物ごとに報酬を設定できるため、コストの管理がしやすい点が特徴です。一方、システム保守やマーケティング支援など、長期にわたって業務を依頼する場合は委任契約が適しています。状況に応じて柔軟に対応できるため、継続的な業務のサポートが必要な場面で有効です。業務の期間やプロジェクトの規模を踏まえ、自社に合った契約形態を選びましょう。偽装フリーランスとは?業務委託の注意点企業がフリーランスと業務委託契約を結んで業務を依頼する場合は、「偽装フリーランス」に注意が必要です。偽装フリーランスとは、業務委託契約を結んでいるにも関わらず、企業がフリーランスに直接的な指示や管理を行い、労働者と変わらない条件で働いている状態のことです。偽装フリーランスが発覚すると、労働基準法に反するため、罰則や企業のイメージダウンにつながります。ここでは、偽装フリーランスを回避するために、企業が押さえておくべきポイントを解説します。指示・管理を行わないようにする偽装フリーランスの主な原因は、企業がフリーランスに直接的な指示や管理を行うことです。業務委託契約では、基本的に業務の進め方や工程管理はフリーランスの責任です。企業が具体的な作業指示を出したり、勤務時間や場所を指定したりすると、労働者(雇用契約)とほぼ変わらない状態とみなされるリスクが高まります。しかし、全てをフリーランスに丸投げしてしまうと、業務の遅延や成果物のズレを生む原因になり得ます。そのため、定例ミーティングを開催したり、メールやチャットツールで進捗を共有してもらったりするなど、定期的にコミュニケーションを図る仕組みを作るとよいでしょう。契約書に明確な成果物の内容を記載する成果物の詳細や納期、報酬の支払い条件などを明確に定めることで、企業とフリーランス双方の責任範囲をはっきりさせることができます。契約内容が曖昧だと、企業が業務に関与しすぎる原因となり、偽装フリーランスのリスクを高める恐れがあります。契約締結前に十分に話し合い、業務の範囲や進め方の共通認識を持つことがトラブル防止につながります。【Q&A】業務委託や業務請負に関するよくある質問最後に、業務委託や業務請負に関するよくある3つの質問にお答えします。疑問を解消して、業務を依頼する際に役立ててください。業務委託と業務請負の違いは何ですか?業務委託は「請負契約」と「委任・準委任契約」の総称です。その中で、業務請負は請負契約に該当し、業務の成果物完成が目的となる契約形態です。例えば、Webサイト制作やシステム開発のように、明確な成果物がある業務には請負契約が用いられます。一方で、委任・準委任契約では、成果物の完成ではなく、業務遂行そのものが契約の対象となります。企業が業務委託を活用するメリットは何ですか?企業が業務委託を活用するメリットは、主に次の3つです。コスト削減につながる業務効率化につながる柔軟な契約が可能になる業務委託を活用することで、自社で人材を雇用する場合にかかる採用・教育コストを削減できます。また、専門性の高い業務や大量のタスクを外部に任せることで、社内のリソースを重要な業務に集中させられる点も魅力です。さらに、単発の案件には請負契約、継続的な業務には委任契約といったように、業務内容や期間に応じて柔軟な契約が可能です。偽装フリーランスとは具体的に何ですか?偽装フリーランスとは、業務委託契約を結んでいるものの、発注者(企業)が受注者(フリーランス)に直接指示や管理を行い、労働者とみなされることを指します。業務委託契約では、業務の進め方や工程管理は受注者の責任です。しかし、発注者が業務内容や勤務時間を細かく指示すると、雇用契約と変わらない状態になります。偽装フリーランスとみなされると、労働基準法に違反したとして罰金や懲役などの刑事罰に処せられる恐れがあるため、注意してください。まとめ業務委託は、企業が外部の専門家やフリーランスに業務を依頼する際に非常に有効な手段です。「請負契約」では成果物の完成、「委任・準委任契約」では業務遂行そのものが契約の目的となるため、業務の内容や目的に合わせて適切な契約形態を選ぶことが重要です。また、偽装フリーランスのリスクを避けるためにも、契約書には成果物や業務範囲を明確に記載し、業務の進行管理は受注者に任せるよう注意しましょう。本記事を参考に、安心してフリーランスをはじめとした外部パートナーと協力しながら、自社の業務を効率的に進めてください。