フリーランスで仕事をしている人の中には、業務委託契約を結んでいるクライアントとの取引をやめたいと思っている人もいるのではないでしょうか。業務委託契約を辞める時は、契約形態や法律に関する知識がないと、トラブルに発展してしまう可能性もあります。この記事では、フリーランスが業務委託を辞める際に知っておきたい情報を紹介します。業務委託の解除を検討しているフリーランスは、本記事で紹介するステップや適切な流れを参考にしながら、次のアクションに役立ててみてください。フリーランスが業務委託を辞めるタイミングフリーランスが業務委託を辞めるタイミングとしては、一定の契約期間を終え、更新しないパターンと、契約期間中に途中解約するパターンがあります。契約満了した後に更新しないまずは、業務委託の契約期間を終えた後に、更新せずに辞めるのが1つのタイミングです。契約期間満了で辞めるのは契約通りなので、特に大きな心配事はないでしょう。ただし、契約期間を終えても自動更新される契約内容になっている場合もあるので、きちんと辞める意志を伝えておく必要があるでしょう。事前に伝える時は契約が切れる直前ではなく、事前通告の期間を守って余裕を持って伝えるようにしましょう。契約期間中に途中解約するさまざまな理由から、契約期間中に辞めたいと思う人もいるでしょう。この場合は、途中解約となり、一般的には契約違反となります。最悪の場合、損害賠償を請求される可能性もあります。しかし、受注者と発注者の双方の合意がある場合や、報酬が支払われないなどの契約違反があった場合、健康上の理由などのやむを得ない事情がある場合など、途中解約が可能なケースもあります。フリーランスが業務委託を辞めたくなる理由フリーランスが業務委託契約を結んだものの、途中で辞めたいと思う場面に出くわすのは珍しいことではありません。理由の程度によっては我慢できたり、続けていくうちに改善されたりするケースもあるため、辞めない人もいますが、実際に契約解除に至る場合もあります。ここでは、業務委託を辞めたくなるよくある理由を見ていきましょう。業務内容の相違いざ業務が始まると、業務内容が契約時に話していたものと違っているケースも少なくありません。想定していた業務と異なる仕事をしなければいけない状況に、耐えられないフリーランスもいます。想定していた業務と異なっていても、自分のスキルアップや経験につながる業務ならば続けてみようと思えるかもしれません。しかし、なんの意味も見出せない業務を続けるのは得策とは言えず、辞める決意をするフリーランスも多いです。健康上の問題健康上の問題から、業務委託を辞める人もいます。契約期間中に突然病気が発覚したり持病が悪化したりする場合もあります。また、仕事のストレスから体調を崩してしまうケースもあるでしょう。健康上の問題で辞める場合は、クライアントとしても引き止めにくく、業務委託を辞める正当な理由として扱ってもらえるケースが多いです。報酬額の不満契約時に報酬額には納得したものの、業務内容が想定よりもハードで、合意した報酬額と業務内容が見合っていないと感じた時に辞めたいと思う人もいます。特に業務委託は、会社員と違ってボーナスもなく、会社の福利厚生なども享受できないため、報酬に関しては納得できないとモチベーションが維持しにくいかもしれません。報酬に関して不満がある場合は、辞めることを決意する前にクライアントに業務内容の調整や単価アップを相談してみるとよいでしょう。クライアントが報酬の増額に応じない場合は、できれば契約期間満了をもって取引を終了するのがベターです。ハラスメントなどの職場環境仕事を一緒にする人からのパワハラやセクハラなどのハラスメントが理由で、業務委託を辞めたくなる人もいます。会社員の場合は、人事や相談窓口が社内にあります。しかし、業務委託という関わり方だと相談する人がいない場合も多いため、相談できずに1人で抱え込みがちです。ハラスメントに耐えられず、契約期間が終わるタイミングが近いなら、さっさと見切りをつけるのも1つの手です。契約途中で解除するのが難しい場合は、フリーランスの相談窓口に相談してみるとよいでしょう。▼関連記事:フリーランスは誰に相談すればいい?無料窓口やトラブル回避方法も紹介他に優先事項ができたフリーランスはいくつかの案件を同時並行で進める人も多く、常に他の仕事との兼ね合いを考えながら仕事をしています。そのため、他の案件により時間を割きたいと思った時に、現在従事している案件を手放す判断をすることもあるでしょう。または、プライベートにもっと時間を使いたくなったり、勉強に時間を費やしたりしたくなったりする場合もあるでしょう。優先したい事柄が出てきた時に、業務委託で従事している仕事を辞める決断に至るようです。業務委託の解約条件は契約形態によって異なる業務委託は、請負契約・委任契約・準委任契約の3つの契約形態に分けられます。どの契約を結んでいるかによって契約解除の条件が変わってくるため、まずは自分がどの契約形態で仕事をしているのかを確認しましょう。請負契約請負契約は、仕事の完成を目的とする契約形態です。受注者(フリーランス)が成果物を納品し、発注者(クライアント)がその成果に対して報酬を支払います。例えば、Webサイトやアプリの開発、デザイン制作などの成果物を納めるケースでは、請負契約となる場合が多いです。仕事が完成していない段階で、フリーランスが契約解除を求めるのは契約不履行となってしまいます。ただし、クライアントと話し合って、合意が得られれば、仕事や契約期間の途中であっても契約を解除できる場合があります。委任契約・準委任契約委任契約と準委任契約は、業務の遂行を目的とする契約形態です。定められた業務を行うことで、報酬を受け取れます。両者の違いは、依頼する業務内容です。委任契約は業務内容が法律行為に関わる際の契約で、準委任契約は法律行為以外の業務の契約です。いずれの契約も、請負契約のように成果物の納品などがなくても、フリーランスは好きなタイミングで契約解除を申し出られます。ただし、契約期間などは契約書の内容を考慮する必要があります。フリーランスが業務委託を辞める時のステップフリーランスが業務委託を辞める時は、正しいステップを踏みながら、冷静に対処する必要があります。時には、フリーランスが使える相談窓口や弁護士などの専門家に助言を求め、適切に手続きを進めていきましょう。契約書を確認するまずは、自分がどの契約形態で業務委託契約を結んでいるのか、契約書を確認しましょう。また、辞める場合は何日前までに伝える必要があるか、損害賠償請求に関する記述があるかなど、辞める際に必要になりそうな情報をきちんとチェックしておきましょう。クライアントと話し合う契約書の内容を踏まえ、クライアントと話し合いましょう。誠実な態度で辞めたい意志を伝え、双方が合意するように努める必要があります。期間に余裕を持って辞める意志を伝える、やむを得ない正当な辞める理由を説明できるようにしておく、残った仕事の引き継ぎ書を作るなど、クライアントの心象を悪くしない試みも重要です。契約解除通知書・契約解除合意書を締結するフリーランスが途中解約で業務委託を辞めたい場合は、クライアントとの協議の結果、書類を締結して辞めるのが一般的な流れです。ポイントは話し合いの結果によって、作成・締結する書類が異なる点です。【契約解除に合意した場合】契約解除合意書話し合いによって双方が契約解除に合意した場合は、契約解除合意書を作成します。契約解除合意書は、発注者と受注者どちらが作成しても問題ありませんが、知識がない場合は専門家に相談して作成するとよいでしょう。書類に双方が署名捺印をしたら、契約解除が成立します。捺印した契約解約合意書は、契約解除の証拠として必ず保管しておきましょう。【契約解除に合意しない場合】契約解除通知書クライアントが契約解除に合意しなかった場合は、契約解除通知書を作成します。契約解除通知書も、できるだけ専門家のアドバイスのもと作成するようにしましょう。契約解除通知書は、フリーランスがクライアントに向けて一方的に送付します。場合によっては、クライアントが受け取っていないと主張してトラブルに発展する恐れがあります。そのため、契約解除通知書を送る際には、内容証明郵便で送付することが重要です。フリーランスが業務委託を辞める時のメール例文業務委託を辞めると決めたら、クライアントに伝えましょう。チャットや対面、電話などさまざまな手段がありますが、今回は記録に残るメールを使って業務委託を辞める際の伝え方を紹介します。〇〇様平素より大変お世話になっております。業務委託契約についてお話させていただきたく、メールをお送りいたしました。△△(契約解除したい理由)により、現在契約中の業務委託契約のお仕事を辞めさせていただきたく存じます。◆◆会社様との取引では、多くのことを学ばせていただき、大変感謝しております。今回の決断につきましては大変難しい決断でしたが、ご理解いただけますと幸いです。引き継ぎ資料を作成するなど、次に業務を担当する方が取り組みやすいようにできる限りの努力はいたします。契約終了にあたって必要な書類や手続きがございましたら、お手数ですがご教示いただけますでしょうか。何卒よろしくお願い申し上げます。XX太郎業務委託を辞めたい理由とともに、契約解除の意志を丁寧かつ明確に伝えます。そして、クライアントに対する感謝を表明し、契約解除は難しい決断だったことなど、読み手に対する配慮も添えましょう。「引き継ぎ資料を作成する」「できる限りの努力をする」など、自分が辞めることでクライアントが被るデメリットに対しても、できる範囲で誠意を見せられるとよいでしょう。辞める際には契約解除に関する書類や手続きが必要になるので、どのように対応するか聞いておくと安心です。▼関連記事:【メール例文】フリーランスが業務委託を辞める時の伝え方とは?タイミング・理由別に紹介フリーランスが業務委託を辞める際のポイント・注意点フリーランスが業務委託を契約途中で辞める場合には、リスクが伴うことを忘れてはいけません。クライアントとの関係や態度によってはトラブルに発展する可能性もあるため、慎重に行動する必要があります。業務委託を辞める際の注意点をチェックして、円滑な契約解除を目指しましょう。やり取りを記録・保存しておくクライアントとのメールやチャットのやり取りは、必ず記録・保存しておきましょう。話し合いの場で話した内容も、議事録にして残しておきましょう。一旦は解約に合意しても、後々トラブルになる可能性もあります。やり取りを記録しておけば、トラブルに発展してしまった時に証拠として使えます。自分の身を守るためにも、書類の保存ややり取りの記録は忘れないようにしましょう。双方合意を目指す契約解除の際には、できる限り双方合意の形を目指しましょう。双方に言い分があり、納得できないこともあるかもしれませんが、誠意を持って話し合いに臨むことで、トラブルに発展したり協議が長期化したりする可能性も低くなります。損害賠償を請求される可能性もある契約によっては、途中解約すると損害賠償請求が発生するリスクが伴います。特に請負契約を結んでいる場合は、成果物が未納の状態で辞めるとクライアントに不利益が生じるため、違約金や損害賠償を請求される可能性があります。報酬が支払われない可能性もある委任契約や準委任契約は履行した業務に対して報酬が発生するため、途中解約したとしても報酬は受け取れます。一方、請負契約では、成果物を納めた結果として報酬が発生するため、未納で契約解除した場合は報酬を受け取れない可能性があります。多くの労力を費やしても、未納であれば報酬が得られないリスクは考慮する必要があるでしょう。フリーランスが業務委託を辞める時に気になる5つの疑問点業務委託を辞める時には、「何日前までに伝えなければならないのか」「契約書を交わしていなかったけど、どうすればいいか」など、疑問に思うことも出てくるでしょう。フリーランスが抱えるよくある疑問点を整理しながら、取るべき行動をチェックしていきましょう。何日前までにクライアントに伝えればいい?まずは、契約書を確認しましょう。辞める場合に何日前までに伝えるべきかが明記されていることがあります。契約書に明記されていたら、その期間を守ってクライアントに辞める意志を伝えましょう。明記されていない場合は、一方的に通告してすぐに辞めるのではなく、クライアントに相談して、双方が納得するタイミングを話し合ってから辞めるようにしましょう。契約書を交わしていない場合はどうすればいい?契約書を交わさずに仕事を引き受けてしまった場合は、メールやチャットなどに残っている業務に関する情報を振り返ってみましょう。契約期間や途中解約について会話した記録があれば、その情報に基づいて契約解除のステップを踏んでいきます。契約書がないからといって突然辞めるのは、クライアントと問題を引き起こす可能性があります。きちんとクライアントと話し合い、双方合意に至るように努めましょう。▼関連記事:契約書なしの業務委託は違反?フリーランスが知っておきたいリスクやトラブル時の対応策を紹介クライアントから一方的に契約解除された場合はどうすればいい?クライアントから一方的に契約解除を言い渡された場合も、まずは契約書を確認しましょう。場合によっては、クライアントが一方的に契約解除する条項が明示されているかもしれません。契約書に沿って、冷静に次のアクションに移りましょう。自分では対処できないと感じたら、専門家やフリーランスが利用できる相談窓口に相談して、アドバイスを求めましょう。クライアントが契約解除に応じてくれない時はどうすればいい?クライアントが契約解除に応じない時は、専門家や相談窓口などに相談しましょう。1人で解決しようとするよりも、専門家に意見を求めることでリスクが回避でき、とるべき手段が明確になります。フリーランスが無料で相談できる窓口もいくつかあるので、まずは第三者に相談してみましょう。▼関連記事:フリーランスは誰に相談すればいい?無料窓口やトラブル回避方法も紹介まとめフリーランスが業務委託を辞めたい時は、まずは自分がどのような業務形態で契約を結んでいるかを確認し、契約書に沿って話を進めていきましょう。業務委託契約の解除には、双方の合意を目指して話し合っていく必要があります。今回紹介した注意点に気をつけながら、トラブルが起こらないように手続きを進めましょう。もし1人では解決できなさそうなら、専門家や相談窓口にアドバイスを仰ぐなど、適切な対応を取っていきましょう。