フリーランスとして仕事を進める中で、クライアントから「こちらの作業もついでにお願いできますか?」と契約外の作業を依頼されることは珍しくありません。一見、クライアントの期待に応えることで信頼を得られるようにも思えますが、契約外の作業の依頼には思わぬリスクが潜んでいます。契約に明記されていない業務を引き受けることで、フリーランスの作業量が増えるだけでなく、スケジュールが圧迫される場合があります。また、「ここまでは無料でやってもらえる」とクライアントに誤解されることで、後々の取引に悪影響を及ぼす可能性もあるのです。こうした状況を避けるためには、契約外の仕事とは何かを明確に理解し、そのリスクを見極めたうえで、適切な対応策を講じることが重要です。この記事では、フリーランスが契約外の仕事を請け負うことのリスクや、トラブルを回避するための対応策・交渉術を、事例や具体例を用いながら徹底的に解説します。フリーランス新法で契約外の仕事の無償提供は禁止に2024年11月に施行されたフリーランス新法では、フリーランスが安心して働く環境を築くため、買いたたきや報酬の減額など、発注事業者側にさまざまな禁止事項が課されました。その中で、フリーランスに対して契約外の作業を無償で依頼することは、「不当な経済上の利益の提供要請」として禁止事項の1つとして定められました。金銭だけでなく、契約外の労務を無償で提供させるような指示も含まれます。例えば、納品後に無償で資料作成を依頼し、なおかつその作業が契約書に明記されていない場合は、フリーランス新法違反となる可能性があります。公正取引委員会と厚生労働省が共同で行った「フリーランス取引の状況についての実態調査」によると、フリーランスの41.8%が契約外の無償業務を強いられた経験があると回答しています。それに対して、このような行為が禁止されていると自覚している発注事業者の割合はわずか10.4%と、この問題の深刻さが浮き彫りになっています。▼関連記事:【2024年11月施行】フリーランス新法とは?変更内容や注意点を解説▼関連記事:世界一分かりやすく!フリーランス新法をフリーランス向けに解説フリーランスが契約外の仕事を受けることで生じ得るトラブルクライアントから契約外の仕事を頼まれた際に、二つ返事で対応するフリーランスもいるでしょう。しかし、追加業務を安易に引き受けると、思わぬトラブルを招くことがあります。この段落では、フリーランスが契約外の仕事を受ける具体的な問題点とリスクを掘り下げていきます。報酬の未払いフリーランスが「契約外の仕事だから、追加で報酬が発生するはず」と思っていたとしても、クライアントが「契約内の付随業務として対応可能だと思っていた」などと考えてしまう可能性があります。その結果、契約外の業務を引き受けても報酬が支払われないリスクが生じます。▼関連記事:業務委託で給料・報酬の未払い被害に遭ったら?フリーランスが今すぐすべき対処法や法的手段を解説クライアントとの関係悪化口頭のみで軽作業を依頼された場合は、依頼された内容を証明する手段がありません。そのため、メールやチャットなどで依頼を受けた場合よりもトラブルに発展しやすくなります。クライアントとフリーランスの間で認識や期待値にズレが生じると、不満や誤解が増幅しやすくなります。その結果、信頼関係が悪化する可能性があります。作業範囲の拡大による負担の増加一度契約外の作業を引き受けると、その後も「同じ条件でお願いできるだろう」と思い、クライアントからの要求が次第にエスカレートするリスクがあります。また、契約外の仕事が増えると、ほかの業務やプライベートにかけられる時間も減ります。そのため、本来の業務やほかのクライアントへの対応、プライベートに悪影響が出る可能性があります。フリーランスへの契約外の仕事に該当する事例契約外の仕事は、作業量としては些細であることが多いですが、積み重なると大きな負担やトラブルに発展する可能性があります。この段落では、フリーランス新法で違反とされる具体的な契約外の仕事に関する事例を紹介し、注意点も解説します。無償での緊急対応無償でWebサイトの緊急対応の要求を受けたフリーランスエンジニアのAさんの事例です。事例詳細Aさんは、ECサイトを運営するB社と契約を結び、定期的なメンテナンスを担当していました。ある日、B社から「サイトが突然ダウンしたので、すぐに復旧作業をお願いしたい」と緊急の連絡が入りました。Aさんは契約内容を確認しましたが、復旧作業は契約の範囲外でした。それでもB社は「今は急ぎだから無償で対応してほしい」「契約更新の際に報酬を見直すから」と持ちかけてきたのです。Aさんは断りきれず、結果的に数時間にわたる作業を無償で引き受けることにしました。解説契約の範囲外の作業である上に、緊急対応は技術的な負荷や時間的な制約が大きいため、労務に見合う対価を受け取る権利があります。しかし、「契約更新時に考慮する」というクライアントの対応は、不透明な約束であり、具体的な補償もありません。フリーランスが後から報酬を主張しても「そのような話はしていない」と否定される可能性があるため、作業開始前に報酬を明確にしておくことが重要です。契約外の資料作成契約外の資料作成の依頼を受けたフリーランスライターのCさんの事例です。事例詳細Cさんは、D社からWebサイトの記事執筆を依頼され、契約通りの記事を納品していました。しかし、D社から「記事を社内資料として使いたいので、プレゼン資料にまとめてほしい」と追加の依頼が舞い込みました。Cさんが報酬について確認すると、「軽作業だからサービスでやってほしい」と一方的に要求されました。結局、Cさんは次の案件を考えて無償で対応しましたが、納得感のないまま仕事を終えることになりました。解説資料作成はライター業務とは異なるスキルを必要とする作業です。このような要求を受け入れると、クライアントは「また頼めば無料で対応してくれる」と認識し、追加作業がエスカレートする可能性があります。追加依頼を受けた場合は、必ず業務に取り掛かる前に報酬について話し合い、契約書やメールなどで合意を取ることが大切です。無償での長時間のミーティング参加無償での長時間のミーティング参加の要請を受けた、フリーランス動画クリエイターのEさんの事例です。事例詳細Eさんは、F社からイベントのプロモーション動画の制作を依頼されました。契約内容は編集作業のみでしたが、F社の担当者から「クライアントが細かく要望を出してきたので、次回の打ち合わせからも毎回参加してほしい」と依頼されました。さらに、「会議で使う資料も作ってくれると助かる」と追加作業を要請されました。いずれも契約には含まれていない業務であり、F社からの追加報酬の提示もありませんでしたが、Eさんは断りきれず無償で対応しました。解説動画編集のみの契約だったにもかかわらず、本来の契約範囲を大幅に超えた作業が求められています。また、クライアントは「会議資料作りも手伝ってくれると助かる」と依頼していますが、このような曖昧な表現で要請される作業は、「それくらいやって当然」と主張されることがあります。こうした依頼を安易に受けると、作業負担が増えてほかの仕事にも影響が生じる可能性があります。最初に契約の範囲を明確にし、追加の依頼があった場合には適切な報酬を求める姿勢を持つことが重要です。契約外の仕事の相談でフリーランスがするべき対応契約外の仕事を安易に受け入れてしまうと、後々ストレスが増えたりトラブルに発展したりすることも少なくありません。この段落では、冷静に判断するための基準や交渉のコツ、契約書の取り決めなどを具体的に解説します。しっかりと対応することで、スムーズに業務を進め、トラブルを回避できます。仕事を受けるかどうかを冷静に判断するまずは、契約外の仕事を受けるかどうかを冷静に判断しましょう。その際は以下のような判断基準を設けることがおすすめです。仕事の内容や負担の大きさどれだけの時間と労力を要するかを確認する小規模な作業や簡単な内容であれば、無償でも問題ないケースが多いものの、納期が急な場合など負荷が高いものは無償で引き受けることに慎重になる時間やリソースの余裕自分のリソースが十分に確保でき、ほかのクライアントや案件に迷惑をかけない状態であれば対応を検討するスキル適性と自己成長依頼された仕事が自分の得意分野やスキルにマッチしているかどうかを考える未経験分野の場合は、新しい分野やスキルを学べるチャンスとして捉え、自己成長を目的に受ける判断をする手もある人間関係の維持や信頼構築長く付き合いたいクライアントからの依頼や、今後の仕事を得たい場合などは、依頼に応じることで将来の自分への投資につながると捉えるワークライフバランス追加の仕事を受けることで、健康やプライベートのバランスに悪影響が出ないかを考慮する上記のような判断基準を持つことで冷静かつ合理的に判断できるため、あらゆるケースでトラブルを回避できるでしょう。契約外の仕事に対して報酬額を決める契約外の仕事を受けると判断したら、無償で受けるか有償で受けるかをはっきりさせます。無償で受ける際は、負担が増え続けないよう業務範囲を確定させて、「〇〇の業務に限り、無償で対応させていただきます」と伝えることが重要です。もし、有償で受けると判断した場合は、慎重に報酬額を決定しましょう。まずは、市場相場を調べることが大切です。クラウドソーシングサイトや案件マッチングサイトなどでは、類似した業務の報酬額や相場が表示されていることが多いので参考になるでしょう。また、自分の時給を算出する方法も有効です。時給換算の仕方は、現在行っているほかの業務や過去の同様の案件から計算する方法などがあります。希望する時給をそのまま提示するだけでは、クライアントに納得してもらえない場合もあるので、実績に基づいて報酬を提示すると納得を得やすいでしょう。さらに、短納期で依頼を受けた場合には割増料金を設定することをおすすめします。急な納期であれば、20~50%の割増を加算して報酬額を決めることで、不公平感が緩和されるでしょう。急ぎの案件に対応するための労力と時間を考慮に入れ、適切な報酬を設定しましょう。クライアントに報酬を交渉する契約外の仕事をいくらで請け負うかを決めたら、クライアントに報酬の交渉を行います。報酬を交渉する際は、メールやチャット、文書でやり取りして証跡を残すことも大切です。交渉する際は、クライアントに納得してもらえるよう、以下のように理由を丁寧に説明しましょう。ほかの案件を理由に無償で受けられない理由を提示する「現在、ほかの仕事でも案件の打診をいただいており、追加作業を無償で受けるのは難しい状況です」契約書の内容や過去の取り決めを活用する「追加の業務について、ぜひ対応させていただければと思いますが、契約書を確認いたしましたところ、こちらの内容は契約の範囲外となりますので、別途お見積もりをお願いできますと幸いです」契約書に追加項目を盛り込む契約外の仕事を受ける場合は、有償・無償にかかわらず、必ず契約書を巻き直すことが重要です。特に無償で対応する場合は、クライアントとフリーランス双方で期待する範囲や業務内容が不明確になりやすいです。契約書がないと、クライアントがさらに作業や責任を求めてくる可能性があります。そのため、契約書で「どこまで対応するのか」「何を提供しないのか」を明確にしておくことが重要です。有償で対応する場合は、追加業務や報酬の取り決めを盛り込みましょう。また、初回のみ無償で対応し、次回から有償とする場合もその旨を記載します。必ず契約書を交わしてから作業に取り掛かりましょう。時間管理と自己管理をしっかり行う契約外の仕事を受ける場合は、過労やストレスを避けるためにも、いつも以上に時間管理と自己管理が大切になります。作業やタスクを効率よくスケジュール化し、仕事の優先順位を決めましょう。また、体調やモチベーション、ストレスなど、仕事をする上でのコンディション調整も意識します。想定外に契約外の業務の負担が大きくなった場合は、できるだけ早い段階でクライアントに業務量の軽減を打診するか、報酬アップをお願いしましょう。無理に業務を抱え込んでしまうと、成果物のクオリティが下がったり、心身に支障が出たりする可能性もあります。トラブル時には相談窓口を利用するトラブルが発生した場合は、自分だけで解決しようと無理をせず、専門の相談窓口を活用することがおすすめです。例えば、「フリーランス・トラブル110番」や「下請かけこみ寺」などの無料相談窓口がフリーランスのトラブルに対応しています。フリーランス・トラブル110番は、厚生労働省の委託を受けて東京第二弁護士会が運営しています。発注事業者の規模に関わらず、フリーランスが抱えやすい契約や業務上のトラブルに対して、弁護士がワンストップでサポートしてくれます。下請かけこみ寺は、中小企業庁の委託事業で全国中小企業振興機関協会が運営しています。フリーランスだけでなく、中小企業からの相談も受け付けており、幅広いトラブルに対応しています。▼関連記事:フリーランスは誰に相談すればいい?無料窓口やトラブル回避方法も紹介【理由別】フリーランスが契約外の仕事を断る際のメール例文契約外の仕事を受けないと判断した場合は、クライアントとの関係値を維持するために丁寧に断ることが重要です。依頼があったことに対して感謝の気持ちを伝え、その後で断りの理由を簡潔に説明します。もし、「無償の案件相談は今後一切受けない」という姿勢をやんわり伝えたい場合は、フリーランス新法を根拠にして断るのもよいでしょう。この段落では、理由別にメールのテンプレートを3つ紹介します。適切に断ることで、今後もクライアントと良好な関係を築きながら自分の立場を守ることができます。テンプレートを参考にして、スムーズに対応しましょう。納期に間に合わない場合の断り方納期に間に合わないことを理由に断る際のメール例文を紹介します。メール例文件名:〇〇(業務内容)の追加対応について〇〇様お世話になっております。〇〇です。この度は〇〇(依頼内容)の追加対応についてお声がけいただき、誠にありがとうございます。しかしながら、現在進行中の案件やスケジュールの状況を鑑みますと、指定いただいた納期までに対応することが難しい状況でございます。納期に間に合わせるために品質を落とすことは避けたいと考えておりますので、大変申し訳ございませんが、今回の追加対応についてはお引き受けすることができかねます。もし、納期に余裕をいただけるようでしたら、改めてご相談いただけますと幸いです。どうぞご理解いただけますよう、お願い申し上げます。引き続き、何卒よろしくお願いいたします。解説十分な作業時間が取れないことで、成果物の品質の低下を懸念する姿勢を示すと、仕事への誠実さをアピールできます。また、納期に余裕をもらえれば対応可能であるという1文を盛り込むことで、ネガティブな印象を緩和でき、関係値を維持できるでしょう。スキル不足で対応が難しい場合の断り方スキル不足で対応が難しいことを理由に断る際のメール例文を紹介します。メール例文件名:〇〇(業務内容)の追加対応について〇〇様お世話になっております。〇〇です。この度は〇〇(業務内容)の追加対応についてお声がけいただき、誠にありがとうございます。しかしながら、今回ご依頼いただいた業務内容は、私の〇〇に関する知識や経験の範囲を超えていると判断しております。クオリティの担保が難しいため、誠に恐縮ではございますが、今回のご依頼はお受けできない状況です。代わりに、信頼できる専門家やサービスを紹介させていただくことも可能ですので、ご希望がございましたらお知らせください。ご期待に添えず心苦しい限りですが、何卒ご理解いただけますようお願い申し上げます。また、別件でお力になれる際には、ぜひお声がけいただけますと幸いです。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。解説スキルが伴わないことで品質の低い納品となる点を懸念しており、真摯な姿勢が伝わります。さらに、断るだけでなく、別の専門家やフリーランスを紹介するなどの代替案を提示することで、クライアントにより誠意が伝わり好印象を残せるでしょう。報酬に納得できない場合の断り方報酬に納得できないことを理由に断る際のメール例文を紹介します。メール例文件名:〇〇(業務内容)の追加対応について〇〇様お世話になっております。〇〇です。この度は〇〇(業務内容)の追加対応についてご相談いただき、誠にありがとうございます。ご提案いただいた案件について慎重に検討させていただきましたが、対応に必要な工数や労力を考慮すると、今回の条件ではお引き受けするのが難しい状況でございます。もし、再度条件をご検討いただける場合は、具体的な対応案を提示させていただくことも可能でございます。ご期待に添えず心苦しい限りですが、今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。解説料金面の配慮が不足している事実を柔らかく伝えられている一例です。「条件の再考を検討してもらえる場合は…」と提案することで、報酬を調整すれば対応可能という余地を残すことができます。契約外の仕事によるトラブルを避けるための予防策契約外の仕事は、負担の増加や買いたたき、報酬の未払いといったトラブルに発展するリスクがあります。このような問題を未然に防ぐためには、事前の取り決めや準備が欠かせません。この段落では、契約時や日頃の業務で役立つ具体的な予防策を紹介します。契約時点で追加業務に関する取り決めをしておく「契約外業務が発生した場合は別途料金を設定する」といった追加業務に関する条項を契約書に盛り込んでおくことで、後から業務が増えても報酬の交渉がスムーズになります。また、契約書に記載する業務範囲は、「その他付随する業務」のような曖昧な表現を避け、具体的に記載することが大切です。どこまでが契約範囲かを明確にし、双方が認識のズレなく業務を進められます。事前に細かく取り決めすることは一見手間に思えますが、トラブルが発生してから対処するよりも遥かに効果的です。明確な料金表・見積書を作成するクライアントから頻繁に契約外の業務の依頼が舞い込む場合は、自分専用の「追加タスク用料金表」を作成しておくと便利です。以下のような料金表を作成しておくことで、新しいクライアントにも提示しやすくなり、時間の節約にもつながります。軽微なデザイン修正:3,000円/回大幅なデザイン修正:7,000円/回資料作成補助:2,000円/件料金表には、料金が目安であることと、最終金額は詳細確認後に確定する旨を明記しておくとよいでしょう。料金のすり合わせを事前に行え、後々のトラブルを防ぎやすくなります。▼関連記事:【フリーランス向け】見積書の役割・書き方とは?おすすめツールも紹介【体験談】無償での契約外の仕事を断れず案件を継続筆者も以前、無償で契約外の仕事を受けたことがあります。この体験を通じて、実際に無償で契約外業務を行うことのリスクを実感したので、当時の契約内容や実際の作業内容などをあわせて紹介します。当初の契約内容かつて筆者は、とある企業と週に1本記事制作を行う業務委託契約を結びました。当時、筆者は扶養内で働いていたため、クライアントに収入制限があることを伝えました。クライアントは、小規模な会社で予算に厳しかったこともあり、報酬を抑えて働きたいことはかえって喜ばれたのです。協議の結果、月間の記事更新数を守ることを前提に、報酬は筆者が希望する上限金額で、定額支払いしてくれることで契約書を締結しました。1本の記事作成に20時間以上かかっても無償…契約外の仕事の中身当初は契約通り、週に1本の記事作成だけでしたが、仕事に慣れるにつれ、当初の契約を超える以下の業務が次々に追加されました。取引先の企業のホームページに掲載する取材記事の作成メルマガ作成補助簡単なニュース記事の作成社長がメディアに寄稿する原稿の編集特に、取引先企業の取材記事は業務量が多く、インタビューシートの作成や取材相手とのやり取り、取材、文字起こし、構成案作成、執筆、修正対応まで全て担当しました。案件の発生は年に3~4本程度でしたが、1件あたりの作業時間は20時間以上でした。そのほかに依頼された業務は、単発のものも多くありましたが、メルマガ制作の補助や簡単なニュース記事の作成はほぼ毎週発生していました。その後、扶養から外れて働くことになりましたが、追加料金は支払われないまま進行。クライアントの厳しい財政状況を知っていたため、筆者も料金交渉を躊躇してしまったのです。契約外の仕事を受けたその後の対応取材案件は、やりがいが大きく好きな仕事ではありましたが、工数が大きくかかるため、適正に報酬が支払われないことに不満を感じるようになりました。最終的には業務委託の解消を依頼しましたが、その後、取材案件を行っていた取引先の企業から直接契約の提案を受け、現在もこの企業とは有償で契約を続けています。自分を守れるのは自分だけ!数年契約外の案件を受けて感じたことこの経験から、契約内容を適切に管理し、自分の価値を正当に評価することの重要性を実感しました。フリーランスは会社員と異なり、自分の権利を守るのは自分自身です。料金交渉がしづらい場合でも、契約更新時の面談を活用するなど工夫するとよいでしょう。契約外の業務とは少し異なる事例ではありますが、筆者も面談を活用して料金交渉に成功した経験があります。とある企業との初回契約で、2ヶ月間のトライアル期間を設けてもらいました。仕事内容はライターが納品した初稿の編集でしたが、原稿によってはほとんど全て自分で調べて書き直さなければならないものもあり、時間も労力も倍かかりました。更新前の面談で上記を相談したところ、「そのような原稿は、契約内の編集ではなく執筆に値する」とクライアント側から指摘してもらい、以降は同様の原稿にあたった際は相談のうえ、料金を上乗せしてもらえることになりました。そのため、今では負荷の高い原稿にあたっても報酬面でのストレスなく対応できています。ただ、フリーランスに対して面談をこまめに実施してくれる企業や、トライアル期間を設けている企業は多くないでしょう。業務負担が大きいと感じた場合は、日頃からクライアントに提供している価値をアピールしつつ、今後も力になりたいことを前向きに伝えて、適切に交渉することが大切です。まとめ契約外の仕事は、一見するとクライアントとの信頼を深めるチャンスに思えるかもしれません。しかし、適切な対策や準備がないまま引き受けると、無償での作業が常態化したり、自分の負担が増えたりするリスクがあります。「最初は軽い頼みごとから始まったが、次第に業務範囲が広がり、報酬が見合わなくなった」というケースは決して珍しくないのです。そのような事態を避けるためには、契約時点で追加業務に関するルールを明確にし、料金表や契約書で根拠を持たせることや、毅然とした態度でクライアントに交渉する姿勢が大切です。フリーランスとして活動している以上、自分のスキルや労力には正当な価値があります。「自分を守れるのは自分だけ」という意識を忘れず、適切な対応を心がけましょう。