契約通りに仕事を進めていたにもかかわらず、一方的な都合でクライアントから納品を拒まれた経験はありませんか?自分の責任ではないのに、成果物が受理されず報酬が支払われないという状況は、フリーランスにとって経済的な損失や精神的なストレスにつながります。2024年11月から施行されたフリーランス新法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)では、不当な扱いからフリーランスを守るため、発注事業者に対してさまざまな義務化や禁止事項を定めています。その中でも「受領拒否の禁止」は、フリーランスが納品した成果物の対価として報酬をしっかり受け取るために重要な規定です。この記事では、フリーランスが受領拒否の被害に遭った場合に、どのように対応すればよいかを解説します。加えて、実際に筆者が経験した受領拒否の体験談や、フリーランスが遭遇しやすい受領拒否トラブルの事例も紹介するので、どのようなケースが受領拒否に該当するのか把握しましょう。フリーランスとして安心して取引を行うために、ぜひ最後まで読んで参考にしてくださいね。フリーランス新法で新しく定められた「受領拒否の禁止」とは?フリーランス新法では、以下7つの項目が発注事業者に義務化され、フリーランスが自分の権利を守るための基盤が整えられます。契約内容の明示化報酬支払期日の設定と期日内の支払い7つの禁止事項募集情報の的確表示育児・介護などと業務の両立に対する配慮ハラスメント対策に関する体制整備途中解除などの事前予告と理由の開示上記の7つの禁止事項の中の1つに「受領拒否の禁止」が定められています。受領拒否の禁止とは、フリーランス側に責任がないことを理由に、発注事業者が成果物の受領の拒否を禁じたものです。もし発注事業者が不当に受領拒否した場合は、行政から指導や勧告を受けるほか、企業名の公表や罰金などのペナルティが科される可能性があります。契約通りに納品された成果物が発注事業者に不当に拒否されることを防ぎ、フリーランスが経済的に不利益を被らないように配慮されています。なお、受領拒否からの保護対象となるのは、以下の条件を満たすフリーランスです。従業員を雇用していない企業などの発注事業者から業務を委託されている(BtoB)発注事業者から1ヶ月以上、業務を委託されている▼関連記事:【2024年11月施行】フリーランス新法とは?変更内容や注意点を解説▼関連記事:世界一分かりやすく!フリーランス新法をフリーランス向けに解説下請法で定める受領拒否との違いフリーランスを不当な取引から保護する法律には、フリーランス新法のほかに、「下請法(正式名称:下請代金支払遅延等防止法)」も挙げられます。下請法は、発注事業者とフリーランスなどの下請事業者との間で取引を行う場合に適用される法律です。特に中小企業やフリーランスのように弱い立場の事業者を保護する目的があります。下請法でもフリーランス新法と同様に、成果物や役務を不当に受領拒否してはいけないことなどが定められています。受領拒否が発覚した場合は、公正取引委員会から勧告や指導が入る可能性があるなど、規制内容自体は同じようです。フリーランス新法との違いとしては、発注事業者の規模と契約期間の2点が挙げられます。まず、下請法は資本金1,000万円を超える発注事業者からの委託が対象で、さらに受注側は発注事業者よりも資本金規模が小さい事業主である必要があります。対して、フリーランス新法は発注事業者に資本金の制限はなく、フリーランス間の取引も対象です。また、下請法は単発の業務委託も対象となりますが、フリーランス新法は1ヶ月以上の業務委託契約が対象となります。独占禁止法で定める受領拒否との違い独占禁止法(正式名称:私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)は、優越的な地位を濫用して、取引先に不当な条件を押し付けることを規制する法律です。独占禁止法における受領拒否は、発注事業者が取引相手よりも優越的な地位にあることが前提です。なお、優越的地位とは、取引を依存しているために不利な条件を拒否しづらい状況を指します。違反した場合は、公正取引委員会による調査や、違反行為を速やかに排除するよう命令が下されます。受領拒否という行為自体はフリーランス新法も独占禁止法も同じですが、独占禁止法は健全に市場競争ができることを目的にしているのに対し、フリーランス新法はフリーランスが安心して働ける環境を整備することを目的としています。ちなみに、下請法は独占禁止法を補完する法律であり、下請事業者に対する発注事業者の不当な取り扱いを規制しています。下請法が適用されない場合に、独占禁止法が適用される可能性があります。フリーランス新法の受領拒否に該当する事例続いては、フリーランス新法で禁止される受領拒否に該当する事例を4つのケースから紹介します。一口に受領拒否といってもさまざまなパターンがあるので、自分の取引と置き換えてパターンを把握し、いち早くクライアントの違反を察知できるようにしましょう。一方的な品質基準や仕様変更による受領拒否クライアントの一方的な品質基準や仕様変更によって受領拒否に遭った、フリーランスWebデザイナーのAさんの事例です。事例詳細Aさんは、B社からWebサイトのデザイン制作を依頼されました。B社から「シンプルで信頼感のあるデザイン」を求められ、Aさんは事前に共有されたデザインのガイドラインに基づき、デザイン案を作成しました。しかし、B社から「もっとポップでカラフルな雰囲気に変更してほしい」との要求が届きました。Aさんは、事前に共有されたガイドラインを守り、契約通りの内容で納品したことを説明しましたが、B社は「このデザインでは受け取れない」と一方的に受領を拒んだのです。B社の要求は、当初の契約内容やガイドラインから逸脱しており、成果物をやり直すには膨大な時間と追加のコストが必要です。しかし、受け取ってもらえなければ報酬が支払われない可能性もあり、Aさんはやむなく修正に対応しました。解説フリーランス新法では、発注事業者が契約内容に基づいて納品された成果物を正当な理由なく受け取らない行為を禁止しています。上記のケースのように、一方的な品質基準の変更や仕様変更による受領拒否は、違反になる可能性があります。一方的な発注キャンセルによる受領拒否クライアントの一方的な発注キャンセルによって受領拒否に遭った、フリーランス翻訳者のCさんの事例です。事例詳細Cさんは、制作会社であるD社から海外向け資料の翻訳を依頼されました。D社は、クライアントの新製品を海外市場に展開するためのプロジェクトを進めており、その資料の英語翻訳をCさんに任せることを決定。作業内容や報酬についての契約を結び、具体的な翻訳作業がスタートしました。Cさんは依頼された内容に応じて丁寧に翻訳を進めていました。しかし、依頼通りに作業を終えて提出の準備を整えたタイミングで、突然D社から「クライアントの都合でプロジェクトが中止になったため、発注をキャンセルしたい」「翻訳した物も受け取れない」との一方的な通知が届きました。これにより、Cさんは翻訳した成果物を納品できず、報酬の支払いも拒否されてしまいました。解説フリーランス新法では、一方的な発注のキャンセルも受領拒否に該当します。Cさんのケースのように、フリーランス側に責任がないにもかかわらず納品を拒否される場合は、クライアント側にペナルティが科される可能性があります。納期の延期による受領拒否クライアント都合による納期の延期によって受領拒否に遭った、フリーランスライターのEさんの事例です。事例詳細EさんはF社から、新製品のプロモーションを目的としたPR記事の執筆を依頼されました。契約内容には納期や報酬が明記されており、Eさんは新製品の特徴やターゲット市場について詳細なリサーチを行い、記事を執筆し始めました。記事が完成し、納品連絡をしたところ、F社から「社内のマーケティング戦略が変更になったため、PR記事の内容を見直さなければならなくなった」「納期を来月に先延ばししてもらいたい」という連絡が届きました。Eさんは、クライアントと合意した納期に間に合うよう、スケジュール調整をして対応したにもかかわらず、クライアントから納品を拒まれ、その月の収入が大幅に下がる結果となりました。解説フリーランス新法で禁止される受領拒否は、単純な成果物の拒否だけではありません。発注事業者とフリーランス双方が合意した納期に制作物を受け取らないことも該当するため、しっかりと理解しておきましょう。成果物の一部の受領拒否クライアント側の都合によって成果物の一部の受領拒否に遭った、フリーランス動画クリエイターのGさんの事例です。事例詳細Gさんは、H社から新製品の宣伝を目的としたショート動画の制作を依頼されました。依頼内容は、製品の特徴を簡潔に紹介する15~30秒程度のショート動画を5本作成することでした。Gさんは、H社から提供された素材や情報をもとに、納期内に複数のショート動画を制作して納品連絡をしました。しかし、H社からは「動画の内容はよいが、社内から提供した一部の素材が使えなくなってしまったため、納品された動画のうち3本だけ受け取りさせてもらいたい」「残りの2本は不要なので、3本分の動画のみの料金を支払わせてもらう」と一方的に通知されました。解説フリーランスが契約に基づいて作成した成果物は、すべて受領拒否するのはもちろん、一部を受け取らないこともフリーランス新法で禁止されています。そのため、上記のようなケースでもクライアントに受け取りを拒まれた動画2本分の報酬の支払いを求めることが可能です。実際に受領拒否の被害に遭った筆者の事例続いては、以前受領拒否の被害に遭った筆者のトラブル事例を紹介します。トラブルが発生した背景から、クライアントへの指摘、トラブル後に対応したことまでお伝えするので、一例として参考にしてもらえると幸いです。受領拒否のトラブルが発生した背景筆者は、あるメディアで、取材記事とコラム記事の構成案作成とライターディレクションに携わっていました。作成した取材記事の企画をクライアントに確認してもらい、何度か修正対応を行って企画案が確定。その後、ライターに取材・執筆依頼をして、取材日が決定しました。しかし、取材日前日の夜に、クライアントが直接ライターに「急ぎで別件のテーマの取材をしてほしい」と直接連絡し、急遽企画案が差し替えとなりました。差し替えとなったのは、本来であれば翌週以降に取材する予定だったテーマです。結局、作成した企画案はしばらく保留となり、どんどん別の企画案が進行しました。その後、しばらくして業務委託契約の解除を依頼して承諾されたため、請求書を作成して精算することになりました。企画のみが完了している記事の料金は、50%で合意。コラム記事の方も企画だけ完成しているものが数本あったため、取材記事で保留となっていた企画案もあわせて請求書に入れました。しかし、「取材記事の企画案は使わないから請求書から除いてほしい」とクライアントに言われたのです。コラム記事の企画案はすべて受領。取材記事も以前何度も修正対応をして、FIXしたものだったので、受領を拒まれたことに全く納得がいきませんでした。クライアントにフリーランス新法の違反可能性を指摘上記の連絡が届いた後、クライアントにはすぐさま、「御社の対応は受領拒否ではないでしょうか?」「11月から施行されるフリーランス新法の違反となる可能性があります」という旨の連絡をしました。正直、この案件の請求金額は少額だったため、以前の私であればその金額を回収する労力を惜しんで何もしなかったと思います。しかし、この案件では、クライアントが意見を何度も翻して修正依頼を出し、それに何度も細かく対応しました。フリーランスの立場を弱く、安く見られていることに憤りを感じていたので、泣き寝入りは絶対したくありませんでした。不意な「法律違反」という言葉に驚いたのか、クライアントが異を唱えることはなく、月末には私が作成した請求書の金額通りに振り込まれていました。受領拒否に遭った後に対応したこと上記の案件は、フリーランス新法の施行前に契約を締結したものだったので、フリーランス新法の保護の範囲外でした。自分の身と権利を守るため、受領拒否の被害に遭った後は、一部のクライアントに契約書のまき直しを依頼して、現在抱えている案件をフリーランス新法の対象にしました。しかし、上記の案件は保留のまま放置してしまった自分も悪く、もっと早く対応するべきだったと反省しています。たとえクライアント都合で保留になったとしても、進捗管理はクライアントに一任せず、もっと自分で把握して対応することが重要だと感じ、今後の案件対応に活かそうと考えています。フリーランス新法の受領拒否に該当しないケースフリーランス新法では、フリーランスからの成果物を発注事業者が不当に受け取り拒否することを禁じています。しかし、成果物のクオリティに著しい問題がある場合や、提案した企画が通らなかった場合、納期に間に合わなかった場合などは、フリーランス新法における受領拒否には該当しません。重要なのは、受領拒否の理由が契約に基づいているか、またクライアントが事前に設定した基準に従っているかという点です。上記のような場合は、フリーランス新法においても受領を断る行為は許容されるため、しっかり覚えておきましょう。フリーランスが受領拒否に遭った場合の解決方法と交渉術もし、受領拒否の被害に遭った場合は、まずはフリーランス自らが対応する必要があります。交渉の際は、冷静に、記録を残しながら対応することを心掛けましょう。もし解決に向かわない場合は、無理をせず専門家にサポートを求めて、精神的な負担を軽減させることも大切です。交渉準備に向けて証拠を集めて状況を整理するクライアントと冷静に交渉するために、まずは契約内容や問題点などの状況を整理しましょう。この準備が不十分だと、交渉で論理的に違反であることを主張できない上に、後々法的措置に出る場合にも証拠が不足して不利になる可能性があります。具体的には、以下のポイントを確認することが重要です。クライアントが受領拒否をする理由事前にクライアントと交わした契約内容や指示成果物が契約内容に合致しているか納品日時や納品形式の記録(成果物が確実に納品されたことを示す証拠)クライアントに冷静に事実を主張する状況を整理できた後は、クライアントに対して冷静に交渉しましょう。連絡した証拠を残すために、口頭ではなくメールやチャットで行うのがおすすめです。交渉の際は、事実に基づいて論理的に説明するよう心がけましょう。なお、受領拒否はフリーランス新法で禁止されていることを伝えることで、有効に働く場合があります。クライアントからの返答次第で、適宜盛り込むのもおすすめです。【メール例文①】受領確認の連絡がまだの場合件名:成果物の受領確認のお願い〇〇株式会社〇〇様お世話になっております。〇〇です。先日、〇〇(成果物名)の納品連絡をさせていただきましたが、現在まで受領のご確認をいただいておりません。つきましては、成果物の受領確認をお願い申し上げます。納品内容は以下の通りです・成果物の詳細・納品日もし、成果物に関してご不明点や修正のご要望がありましたら、遠慮なくお知らせください。できる限り迅速に対応させていただきます。お手数ですが、受領の確認をお願い申し上げます。【メール例文②】不当な受領拒否が告げられた場合件名:成果物に関する確認のお願い〇〇株式会社〇〇様お世話になっております。〇〇です。〇月〇日に納品のご連絡をさせていただいた〇〇(成果物名)について、〇〇様からいただいた内容を踏まえ、以下の点について確認させていただきたくご連絡いたしました。現在、「〇〇(フリーランス側に責任のない理由)」との理由で受領いただけていない状況でございます。しかし、大変恐れ入りますが、事前に交わした契約内容やご指示に照らし合わせますと、成果物はいただいたご指示に即しており、納品には問題がないと考えております。ほかに具体的なご要望がございましたら、速やかに対応させていただきますのでお知らせいただけますでしょうか。なお、フリーランス新法の施行により、不当な受領拒否は違反となる可能性があります。もし何か問題があった場合は、円滑に解決できるよう対応させていただきたいと考えております。お手数をおかけいたしますが、ご確認のほどよろしくお願いいたします。解決しない場合は法的措置を取る意思を見せるクライアントに交渉しても受領してもらえない場合は、民事訴訟などの法的措置を取る意思があることを伝えるのも1つの手です。法的措置を取る意思を見せることで、クライアントに問題の重大さを認識させられ、早期に問題解決できる可能性が高まります。法的措置を取る意思はメールで伝えても問題ありませんが、クライアントにより事の重大さを感じてもらうためには、内容証明郵便を使うこともおすすめです。内容証明郵便は、クライアントに送付した内容を郵便局が証拠として保管してくれるサービスです。受領拒否されている事実や交渉の履歴が正式に証拠として残ります。フリーランスが受領拒否に遭った場合の対応策・法的措置上記の交渉で解決に向かわない場合は、法的措置を取ることで納品を認めてもらえる可能性が高まります。ここでは、受領拒否を解決するために取ることができる法的措置を4点紹介します。法的措置と聞くと難しく感じるかもしれませんが、フリーランスとして安心して働き続けるための重要な手段なので、しっかり把握しておきましょう。公的機関に報告する不当な受領拒否の被害は、管轄である公正取引委員会または中小企業庁に報告しましょう。下請法では、公正取引委員会が取引の実態を調査するため、被害者側が申告せずとも違反が検知される可能性があります。しかし、フリーランス新法では、フリーランスが報告しなければ違反行為は認知されないため、臆せず報告することが大切です。報告方法は、オンラインまたは郵送の2種類あります。オンラインは厚生労働省のページとなっていますが、送信後は管轄である公正取引委員会や中小企業庁に届きます。郵送で報告する場合は、申出書に記入し、最寄りの公正取引委員会事務総局に郵送してください。違反の可能性を報告することで、公正取引委員会からクライアントに行政指導が入る可能性があるため、クライアントの対応が変わる可能性が高まります。少額訴訟を起こす少額訴訟とは、請求金額が60万円以下の場合に適用できる訴訟手続きです。管轄は簡易裁判所となります。一般的な訴訟よりも手続きが簡略化されるため、原則1回の審理で判決が出ます。また、弁護士を立てる必要がなく、訴訟費用が少額で済む点が大きな特徴です。まずは、裁判所に助言をもらいながら受領拒否に関する訴状を作成し、業務委託契約書や納品記録、受領拒否の経緯などの証拠とあわせて提出します。訴状が裁判所に受理されたら、裁判所が審理の日程を決めて、クライアントにも裁判所から通知が届きます。審理では原告(フリーランス)と被告(クライアント)双方の言い分が聞かれ、原則その日のうちに判決が言い渡されます。もし判決後にクライアントが支払いを拒否したら強制執行に移行します。少額訴訟は迅速に判決が得られるため、クライアントに対して法的責任を明示する手段として有効です。民事訴訟を起こす請求金額が60万円よりも大きい場合や、クライアントが通常の訴訟手続きを希望するなどして少額訴訟では解決できなかった場合は、民事訴訟を起こす必要があります。民事訴訟は、少額訴訟と比べて審理が長期化する可能性がありますが、請求金額の上限がなく、少額訴訟で対応できない複雑な事情がある場合にも対応できます。なお、民事訴訟で勝訴したにも関わらずクライアントが支払わない場合も、少額訴訟と同様に強制執行に移行します。強制執行を起こす裁判で勝訴した後もクライアントが報酬の支払いを拒否する場合は、強制執行を行うことができます。強制執行とは、裁判所の命令に基づいて相手の財産(銀行口座や不動産、売掛金など)を差し押さえ、支払いを強制する手続きです。まずは、原告であるフリーランスがクライアントの財産を調査し、差し押さえの対象を決める必要があります。その後、強制執行の申立書などを作成して、クライアントの住所地を管轄する裁判所に提出します。書類が受理されたら、裁判所から差押え命令が出て差し押さえが実行される流れです。強制執行は、最終的に未払い報酬を回収するための確実な手段ですが、相手の反応や財産によっては、時間がかかることもあります。フリーランスが受領拒否に遭った場合に利用できる相談窓口フリーランスが受領拒否のトラブルに遭ったときは、専門の相談窓口を活用することで問題解決の糸口を見つけやすくなります。以下の3つは、フリーランスに役立つ代表的な相談先なので、有事に備えて覚えておくとよいでしょう。フリーランス・トラブル110番フリーランス・トラブル110番は、厚生労働省から委託を受け、第二東京弁護士会が運営するフリーランス向けの無料相談窓口です。報酬の未払いや受領拒否、ハラスメントなど、フリーランスが遭遇しやすいトラブルを弁護士に相談できます。匿名での相談も可能で、電話やメール、対面、Web相談に対応しています。また、和解あっせん手続きも無料で提供されているため、取引でトラブルが発生した場合に気軽に頼れるでしょう。下請かけこみ寺下請かけこみ寺は、中小企業庁の委託事業として、全国中小企業振興機関協会が運営する相談窓口です。代金の未払いや減額、受領拒否、買いたたきなどのように、中小企業や小規模事業者、フリーランスが抱える取引上のトラブルに対し、専門の相談員や弁護士が無料で対応しています。相談は電話やオンラインのほか、全国48ヶ所に設置された窓口で対面で相談することも可能です。法テラス法テラス(正式名称:日本司法支援センター)は、法的トラブルを抱えた人が適切な解決策を見つけられるよう支援する公的機関です。契約トラブルや報酬の未払いなど、フリーランスが陥りやすいトラブルにも対応していますが、収入や資産が一定基準以下で経済的に困窮している方が利用対象となります。訴訟や調停を行う際の弁護士費用を法テラスが一時的に立て替える制度もあります。フリーランスが受領拒否などのトラブルを未然に防ぐ方法フリーランスが受領拒否のトラブルを防ぐためには、業務委託案件を探す段階からポイントを押さえて、適切に対応することが重要です。時系列順に以下の6つの方法を実践することで、トラブルリスクを下げることができます。信頼できるサービス・プラットフォームを利用するフリーランスが業務委託案件を探す際は、信頼できるクラウドソーシングサイトや案件マッチングサイト、エージェントサービスなどを利用しましょう。信頼をはかる観点として、以下のチェックポイントを押さえておきましょう。オンライン上で取引が完結する(やり取りが証拠として残る)クライアントの評価が可視化されている登録に一定の審査が必要取引先が実名登録しているトラブルの際は運営会社のサポートが入る▼関連記事:フリーランス向け案件マッチングサービスのおすすめ14選〜利用者の声もご紹介〜クライアントをリサーチする信頼できないクライアントとの取引を避けるため、契約を締結する前にクライアントの評判などを調べることが大切です。過去のトラブルがないか、インターネットでクライアントの口コミや評価を確認しましょう。クラウドソーシングサイトなどにも評価欄が設けられているため、必ず評価を確認しましょう。そのほかには、同業者やフリーランス仲間から情報を収集したり、資本金や売上規模などの企業規模、過去の経営状況を調べたりする方法もあります。契約書を交わして成果物の受領ルールを明確にする契約書は、フリーランスとクライアント双方の合意内容を明文化して法的効力を持たせる重要な書類です。フリーランスが業務委託の案件を受ける際は、たとえ短期間の案件だとしても必ず契約書を交わし、納品のルールを定めましょう。契約書に記載するべき項目のうち、受領拒否を防ぐために必要な内容は以下の通りです。納期検収期間や受領のルール報酬の支払い条件と期日修正対応の範囲や期限契約不履行時の対応条件▼関連記事:フリーランスが結ぶ業務委託契約とは?契約時のチェックポイントを解説▼関連記事:契約書なしの業務委託は違反?フリーランスが知っておきたいリスクやトラブル時の対応策を紹介作業開始前に着手金を受け取る一般的に、フリーランスは成果物の納品完了をもって報酬を受け取ります。しかし、例えば企業のコーポレート制作や書籍の編集などのように、納品まで長期間を要し、労力が多い仕事には、作業の開始前に着手金をもらうのもおすすめです。着手金が発生することで、クライアントが成果物を受け取らずに放置するリスクが少なくなるため、受領拒否の抑止力となる可能性も高まります。着手金は、一般的に報酬総額の20~50%程度に設定されます。契約書や見積書で、着手金の金額や支払い期限を明記しましょう。納品時の記録を残す納品時のトラブルリスクを抑えるため、納品する際は記録をしっかり残すことが重要です。万が一、クライアント側から「納品されていない」などと言われても、納品時の記録を残しておくことで、納品した証拠となります。メールやチャットで成果物を送信する際は、納品内容を改めて記載し、送信履歴は消さずに保管しましょう。Google DriveやDropboxなどのクラウドストレージを利用して納品した場合は、納品後の画面をスクリーンショットを撮るほか、納品した後にメールやチャットでも納品連絡をするのがおすすめです。なお、メールで納品する場合は、件名に「【要ご確認】納品内容の確認をお願いいたします」などと明記し、クライアントが見落とさないよう強調しましょう。納品や検収プロセスを分割するWebサイト制作や書籍編集のように、案件が長期にわたり、なおかつ成果物を一括納品する場合は、受領拒否に遭うことでより金額の被害が大きくなります。そのようなリスクを回避するために、プロジェクトを複数のステップに分割し、それぞれで検収を行います。例えば、Webサイト制作の場合は、以下のように分割する方法があります。作業段階・作業内容成果物報酬【第一納品】プロジェクト計画とデザイン案作成サイトマップとトップページのデザイン案総額の30%【中間納品】ページのコーディングと動作確認トップページのHTMLファイルと動作確認用のテストリンク総額の40%【最終納品】全ページ納品とサイト公開全ページのHTMLファイルやCMSの導入総額の30%なお、納品や検収のプロセスを分割するには、クライアントへの事前合意が必須です。分割納品や段階的な支払い条件について明確な同意を得たら、必ず契約書に明記しましょう。また、案件の進捗中はスケジュール管理を徹底し、納品や検収が遅れないよう進行状況をしっかり管理する事も重要です。まとめクライアントの指示や、契約内容などに則って仕事を進めたにもかかわらず、クライアントが成果物を受け取ってもらえないケースは、フリーランス新法の「受領拒否」に該当する違反行為です。フリーランスの収入に直結するため、どのような事例が受領拒否に該当するのかをしっかり把握することが大切です。また、万が一受領拒否の被害に遭った場合は、毅然とした態度でクライアントに交渉し、必要に応じて法的措置を取りましょう。取引先に指摘や催促をするのはハードルが高いものですが、フリーランスにとって自分の身を守れるのは自分だけです。長くフリーランスとして活躍するためにも、対処法やトラブル回避方法を把握して、適切な行動をとれるよう備えましょう。