フリーランスとして働く際に、仕事上の住所をどこにするか迷った経験のある人は多いのではないでしょうか。特に、自宅で仕事をするフリーランスは、名刺やWebサイトに自宅の住所を記載することに抵抗がある人も多いでしょう。業種や職種によっては、取引先から信頼を得たり、良いイメージを与えたりするためにも都市部の一等地に住所があると便利ですが、実際にオフィスを借りるには多額の費用がかかります。そのようなときに役立つのが、事業用の住所を借りられる「バーチャルオフィス」です。この記事では、フリーランスがバーチャルオフィスを利用するメリットや注意点、選び方のポイントを分かりやすく解説します。自分に合ったバーチャルオフィス選びの参考にしてください。バーチャルオフィスとは?バーチャルオフィスとは、物理的なオフィススペースを持たず、事業用の住所や電話番号のレンタルなど、必要なオフィス機能のみを利用できるサービスです。「仮想オフィス」や「仮想事務所」などと呼ばれることもあります。バーチャルオフィスの主なサービス内容としては以下が挙げられます。事業用住所のレンタル実際のオフィスを持たずに、都市部の一等地などの事業用住所を利用できる名刺やWebサイトに記載できる郵便物の受け取り・転送届いた郵便物を代わりに受け取ってもらえる指定した住所への転送や、受け取りの通知も可能電話番号のレンタル・電話応対専用の電話番号をレンタルして、普段使用している携帯電話に転送できる顧客からの電話を代理で応対し、必要に応じてメッセージを伝えるサービスもあるFAXやコピーサービスFAXの受信やコピー機を利用できる会議室やコワーキングスペースのレンタル顧客とのミーティングなどを行う際に施設内の会議室を利用できるコワーキングスペースやレンタルオフィスを提供するサービスもある法人登記バーチャルオフィスが提供する住所を本店所在地として法人登記できるバーチャルオフィスで借りた住所は、名刺やWebサイトに掲載できます。例えば、都心の一等地の住所を事業用住所に登録することで、ブランディング戦略としても有効に働くことがあります。バーチャルオフィスは、オフィスを借りるコストを抑えつつ、ビジネスの信頼性や効率性を向上させる手段として、特にフリーランスや小規模事業者に多く利用されています。フリーランスがバーチャルオフィスを利用するメリット自宅で仕事が完結しているフリーランスの中には、事業用住所を借りる必要性を感じていない人もいるかもしれません。しかし、バーチャルオフィスを借りることで、日ごろの仕事がスムーズに進められる可能性があります。バーチャルオフィスを利用するメリットを詳しく見てみましょう。個人情報を保護できるバーチャルオフィスを契約することで、事業用の住所や電話番号を取得できます。名刺やWebページ、請求書や契約書などの書類に記載・公表できるため、個人情報を保護できます。特に、副業としても人気の高い「ネットショップ運営」を行っている人は、恩恵が大きいでしょう。ネットショップ運営は、特定商取引法に基づき、Webサイトで住所や氏名、電話番号を公開する必要があります。バーチャルオフィスを借りることで、自宅の住所や、プライベートで使用している携帯電話番号が公になるのを防げます。申し込み後速やかに利用できるバーチャルオフィスは、本人確認や支払いを行えば、一般的に申し込みから1~7日程度で利用できます。実際にオフィスを借りるよりも、導入の手間やコストを大きく抑えられるため、できるだけ早く住所を使いたい人や、開業手続きで忙しい人におすすめです。レンタルオフィスや事務所よりコストを大幅に抑えられる利用するサービスによって異なるものの、バーチャルオフィスの相場は月額5,000~1万円ほどです。対して、シェアオフィスやコワーキングスペースの相場は、月額1~3万円ほどです。レンタルオフィスの相場はさらに高く、月額5~10万円程度かかります。シェアオフィスやレンタルオフィスと比べると、コストを大幅にカットできます。収入が不安定になりやすいフリーランスにとっては大きなメリットでしょう。固定電話番号の利用や荷物受け取りサービスなどで業務を効率化できるバーチャルオフィスには、住所だけでなく、固定電話番号のレンタルや電話応対の代行、荷物の代理受け取りなどを提供しているサービスも多くあります。こうしたサービスを活用すれば、重要な仕事の連絡の取り逃がしを防げます。また、営業電話や荷物の受け取りなどで業務が中断されずに済むため、仕事に集中しやすくなるでしょう。フリーランスがバーチャルオフィスを利用する際のデメリットフリーランスがバーチャルオフィスを利用することには多くのメリットがある一方で、注意点もあります。事業そのものに悪影響を与えるケースもあるため、事前に注意点を把握しましょう。銀行の口座開設など審査通過が難しいケースもある全国には多様なバーチャルオフィスがあり、なかには信用度の低いバーチャルオフィスもあります。過去に詐欺や架空会社などに利用され、トラブルに巻き込まれたことがあるバーチャルオフィスは、ブラックリスト化されていることがあります。そのようなバーチャルオフィスを利用すると、銀行口座を開設する際に審査に通りづらくなります。また、クレジットカードの発行ができなかったり、法人登記などが拒否されたりと、ビジネス面でさまざまな悪影響が生じるリスクがあります。そのため、過去にトラブルが発生していないかを調べることが重要です。事業内容によっては会社の住所として登録できない事業内容や業種によっては、オフィスに設備や看板の設置などが求められるため、バーチャルオフィスでは法人登記や許認可申請が認められません。例えば、宅地建物取引業は、事務所を設置して専任の宅地建物取引士を配置する必要があります。建設業は建物に看板や表札、建設業許可証を掲げる必要があるため、バーチャルオフィスは利用できません。上記のほか、古物商や廃棄物処理業、不動産業、人材紹介・派遣業、士業なども、バーチャルオフィスで法人登記はできないため、実際にオフィスを構える必要があります。ほかの会社と住所が重複してしまうバーチャルオフィスは、複数の企業やフリーランスが同じ住所を借りるサービスのため、住所をインターネット上で検索すると複数の会社が該当します。住所が重複することに、必ずしもリスクが生じるわけではありません。しかし、中には取引先などから事業の実態を疑われたり、信頼性に影響したりする可能性があります。また、評判の悪い企業と住所を共有することもあるため、印象が不利に働く恐れもあります。ただし、住所の重複はバーチャルオフィスに限った問題ではなく、レンタルオフィスやコワーキングスペースにも共通する点であることは押さえておきましょう。「バーチャルオフィスは怪しい」といわれる理由とは?「バーチャルオフィスは怪しいのでは?」という意見を聞いたことがある人は多いかもしれません。しかし、バーチャルオフィス自体に問題や違法性はありません。ただし、バーチャルオフィスは特殊詐欺などの犯罪に使われるケースも多いことから、「バーチャルオフィス=怪しい」と認識されていると考えられます。バーチャルオフィスを利用する際は、しっかりと安全性を見極めることが重要です。次の段落でフリーランスがバーチャルオフィスを選ぶ際に知っておくべきことを説明するので、ポイントを押さえましょう。フリーランスがバーチャルオフィスを選ぶポイントバーチャルオフィスは手軽に導入できるサービスです。しかし、「安いからここにしよう」などと安易に決めると、自分の希望に合ったサービスが受けられない可能性があります。また、中には事業にマイナスに働いてしまう可能性もあるため、バーチャルオフィスの選び方をしっかり押さえる必要があります。サービスの充実性バーチャルオフィスが提供するサービスは、事業用住所や電話番号のレンタルをはじめ、郵便物の転送、会議室利用、法人登記など多岐にわたります。しかし、なかには住所はレンタルしているものの、法人登記には対応していないバーチャルオフィスや、非対応のプランも多くあります。自分のニーズに合ったサービスが提供されているかどうかをしっかり確認しましょう。住所の立地やビルの外観住所のあるエリアやビルの外観は、取引先に与えるイメージに大きく影響します。例えば、東京都丸の内エリアには、日本の経済をけん引する大手企業が多く集まります。そのため、丸の内エリアの住所を借りることができれば、「事業が安定している」といったポジティブなイメージを顧客や取引先に与えられるでしょう。そのほか、東京都内であれば、青山や表参道はデザイン系やアパレル系の企業、渋谷はIT系のスタートアップ企業が集まるイメージを抱かれているため、そのようなイメージに合いやすい住所を選ぶのも1つの手です。また、住所に合わせてバーチャルオフィスが入るビルの外観もチェックしましょう。ビルの外観は、エリアのイメージとあわせて会社の第一印象に大きな影響を与えます。ビルの外観がしっかり整備されていると、会社の信頼性も高く見られます。反対に手入れが行き届いていないビルの場合は、新規顧客が不安を抱く要因となりかねません。ビジネスの信頼性を高めるために、立地とビルの外観はしっかり確認しましょう。信頼度先述した通り、過去にトラブルや犯罪が起きたバーチャルオフィスの住所を利用すると、銀行口座の開設が難しくなるなど、多様なリスクが生じる可能性があります。そのため、バーチャルオフィスのWebサイトで、契約前に本人確認や審査をしっかり行っているかどうかを確認しましょう。犯罪に使用されやすいバーチャルオフィスは、本人確認や審査のハードルが低い可能性が高いです。また、法人登記の対応や実績を見るのも重要です。法人登記に利用できる住所を提供しているバーチャルオフィスは、税務署や行政の要件を満たしている必要があるため、信頼性が高いと考えられます。このほか、「公開されているバーチャルオフィスの住所+詐欺」などの犯罪に関係するキーワード検索をかけて確認するのも1つの手です。フリーランスにおすすめの格安・法人登記可能なバーチャルオフィス5選続いては、フリーランスに人気のバーチャルオフィスを5つ紹介します。いずれも、コストを抑えながらも法人登記や郵便管理ができるサービスのため、バーチャルオフィス選びの参考にしてください。GMOオフィスサポートGMOオフィスサポートは、コストパフォーマンスと利便性が特徴のバーチャルオフィスサービスです。プランは4種類あります。最安値の月額660円のプランでは、住所利用のみで、郵便物の転送は行なっていません。法人登記に対応しているプランは月額1,650円からで、郵便物の転送や法人銀行口座の開設サポートにも対応しています。グループの銀行と連携することで、スピーディーに銀行口座を開設できる点や、郵便物の転送や確認サービスが充実している点が特徴です。郵便物の転送では、転送スケジュールを柔軟に決められます。急いで受け取りたい場合は、オフィスで直接郵便物を受け取れたり、届いた郵便物の写真をマイページ上で確認できたりする便利なサービスもあります。このほか、会議室やコワーキングスペースの利用オプションもあります。2024年11月時点では博多のみが対象ですが、渋谷や三軒茶屋も2024年内にオープン予定です。利用料金・転送なしプラン:660円/月・月1転送プラン:1,650円/月・隔週転送プラン:2,220円/月・週1転送プラン:2,750円/月主なサービス内容・住所レンタル・郵便物の転送・法人登記・会議室レンタル・コワーキングスペース・銀行口座開設サポート・ビジネス用クレジットカード作成利用できる住所・渋谷・恵比寿・新宿・銀座・青山・三軒茶屋・目黒・秋葉原・横浜・名古屋・大阪梅田・大阪心斎橋・京都・神戸・福岡博多・福岡天神バーチャルオフィス1バーチャルオフィス1は、シンプルで低価格なバーチャルオフィスサービスとして人気があります。月額880円で、法人登記や住所レンタル、月4回までの郵便物転送(郵送費用は発生)に対応しています。郵便物が届くとLINEで通知されるため、重要な書類や荷物の確認が手軽にできるでしょう。受付があり、11〜16時の間はスタッフが常駐しています。また、直接来客とコミュニケーションが取れる「来客対応システム」が設けられているので、急な訪問者にも対応が可能です。渋谷駅より徒歩7分の立地に、完全個室の会議室も設置されているため、クライアントとの対面打ち合わせが必要な場合にも便利でしょう。利用料金・880円/月・郵送費用・入会金:5,500円主なサービス内容・住所レンタル・郵便物の転送・法人登記・会議室レンタル・来客応対システム利用できる住所・渋谷・広島DMMバーチャルオフィスDMMバーチャルオフィスは、低コストで利便性の高いバーチャルオフィスです。住所レンタルのみは660円から利用できます。法人登記を希望する場合は、月額1,650円からのプランで対応しています。ライトプランとビジネスプランでは、法人登記に加え、週1回の郵便転送サービスも利用可能です。郵便物の受け取り通知がアプリで確認できます。さらに、契約者には会計ソフト「弥生会計オンライン」の利用料金2年間無料や、クレジットカード特典などの特典が多く、経費管理や資金調達がスムーズに行えるサポートも魅力でしょう。住所は契約者のみに限定して公開されており、一般には非公開になっているため、バーチャルオフィスを利用していることが取引先にバレにくいというメリットもあります。利用料金・ミニマムプラン:660円/月・ライトプラン:1,650円/月・ベーシックスプラン:2,530円/月・入会金:5,500円・保証金:5,000円主なサービス内容・住所レンタル・郵便物の転送・法人登記・専用の固定電話発行・会議室レンタル利用できる住所・札幌・渋谷・銀座・横浜・名古屋・京都・大阪梅田・福岡天神レゾナンスレゾナンスは、月額990円から利用できる、業界屈指の低価格設定が特徴のバーチャルオフィスです。住所レンタルや郵便物の転送といった基本的なサービスはもちろん、法人登記にも追加料金がかからず、初めてバーチャルオフィスを利用する方も利用しやすいでしょう。郵便物は転送だけでなく、来店受取ができるのも特徴です。店舗にはスタッフが常駐しているため、平日はいつでも郵便物を受け取れます。到着した郵便物をすぐさま撮影して通知するサービスや、会員専用のアプリで郵便や電話応対の内容を確認できる点も便利です。さらに、4つの銀行を紹介できる銀行口座の開設サポートもあるため、法人化を検討している方にとっても心強いでしょう。利用料金・郵便物月1回転送プラン:990円/月・郵便物週1回転送プラン:1,650円/月・入会金:5,500円・デポジット:1,000円~主なサービス内容・住所レンタル・郵便物の転送・電話番号レンタル・法人登記・会議室レンタル利用できる住所・青山・新宿・渋谷(渋谷駅前)・渋谷(神宮前)・浜松町・銀座(2店舗)・日本橋・秋葉原・恵比寿・横浜THE HUBTHE HUBは、東京都内を中心に、全国に55ヶ所展開するバーチャルオフィスです。住所レンタルのみは、月額550円で利用可能です。法人登記を含んだプランは、拠点によって料金が異なり、月額2,310円から用意されています。オプションで郵便転送や電話秘書、会議室などのサービスが提供されているので、必要に応じて柔軟にカスタマイズできる点はフリーランスに最適でしょう。また、訪問対応や会議室の時間貸し、専用ラウンジの利用といった付加価値の高いオプションも提供されています。バーチャルオフィスのプランに契約すると、全国1,000ヶ所以上にあるワークスペースを従量制で利用できるため、出張などが多いフリーランスには嬉しいポイントです。利用料金・フリーランスプラン:550円/月+1万1,000円/年・登記プラン:2,310円~/月+2万2,000円/年主なサービス内容・住所レンタル・郵便物の転送・法人登記・会議室レンタル・コワーキングスペース・電話秘書利用できる住所・新宿・日本橋・新橋・赤坂・麹町・高田馬場・横浜・心斎橋・名古屋など【フリーランス向け】バーチャルオフィスに関するよくある質問最後に、バーチャルオフィスを初めて借りるフリーランス向けに、バーチャルオフィスに関する税金関連のQ&Aを集めました。バーチャルオフィスの利用を検討しているフリーランスは、税金周りの疑問も解消した上で利用しましょう。バーチャルオフィスを借りたら納税地はどこになる?納税地は、フリーランスが提出する開業届や、法人化の際に提出する法人設立届出書に記載する「納税地」によって決まります。フリーランスの開業届の納税地は、原則としてお住まいの市区町村です。しかし、「納税地以外の住所地・事業所」にバーチャルオフィスの住所を書くことで、バーチャルオフィスの住所が納税地になります。税務署からの郵送物もバーチャルオフィス宛てに郵送されるため、プライベートと仕事を区別しやすくなるでしょう。バーチャルオフィスを借りても自宅の光熱費は経費にできる?バーチャルオフィスを契約しても、実際の仕事場である自宅の光熱費や家賃なども経費に計上できます。ただし、実際に事業に使用している分だけを経費として計上(家事按分)する必要があります。例えば、仕事に使用している部屋の広さが自宅全体の30%であれば、光熱費全体の30%を経費に含めることが可能です。仕事に費やす時間が限られている場合は、その時間の割合も考慮する必要があります。経費として計上した分の領収書や記録も適切に保管しましょう。▼関連記事:フリーランスは家賃を経費計上できる!家事按分の計算方法や確定申告の注意点を解説まとめバーチャルオフィスは、事業用の住所をレンタルできるサービスです。特に、名刺やWebサイト、請求書などの書類に自宅の住所を記載することに抵抗があるフリーランスにとって便利でしょう。事業用住所を借りることで、個人情報の保護のほか、取引先からの信頼やイメージアップにつながりやすくなります。また、サービスによっては郵便物の転送や電話・来客対応、会議室レンタルなど、事業をサポートする多様なサービスを提供しているので、うまく活用できれば仕事もスムーズに進められるでしょう。ただし、バーチャルオフィスを利用する際は、料金だけでなくバーチャルオフィスの信用度も非常に重要です。今回解説した注意点や選び方のポイントを踏まえて、バーチャルオフィスを検討してみてください。