フリーランスは、仕事上の相談をできる人が周りにいない人も多く、悩みを1人で抱えがちです。そんな時は、フリーランスに対して相談窓口を設けている機関にアドバイスを求めると、よい対処法が見つかるかもしれません。この記事では、フリーランス新法の内容も交えながら、フリーランスがトラブルに遭遇した際の相談窓口や、トラブルを未然に防ぐ方法を紹介します。国や民間が提供しているフリーランス向けの無料窓口や、トラブルを防ぐために必要な行動を知り、トラブルに適切に対処していきましょう。取引先とのトラブル経験があるフリーランスは約4割▼出典:フリーランス実態調査結果内閣官房日本経済再生総合事務局が行った「フリーランス実態調査結果」によると、取引先とのトラブルを経験したことのあるフリーランスは、全体の約4割にのぼります。これを多いととるか少ないととるかは人によりますが、これまでトラブルを経験したことがないフリーランスも、今後トラブルに遭遇する可能性はあります。実際にトラブルに遭遇した時に慌てないよう、どんな理由からトラブルになり、どんな対処法があるのかをチェックしていきましょう。どんなことでトラブルになった?▼出典:フリーランス実態調査結果フリーランスが経験したトラブルで1番多かったのが、「発注の時点で、報酬や業務の内容が明示されなかった(37%)」です。次いで、「報酬の支払いが遅れた・期日に支払われなかった(28.8%)」「報酬の未払いや一方的な減額があった(26.3%)」が続きます。全体的に報酬にまつわるトラブルが多く、金銭面はフリーランスがクライアントと仕事をする際に、最も気をつけないとならない事項だと言えるでしょう。トラブルが起きた時の対処法は?▼出典:フリーランス実態調査結果トラブルが起きた際の対処法で1番多かったのは、「取引先(発注者)と直接交渉した(53.9%)」です。トラブルを経験したフリーランスの半数が、まずは交渉を通して問題を解決しようとしているのが分かります。しかし、「交渉せず、受け入れた(何もしなかった)」が次に多いのを見ると、泣き寝入りせざるを得なかったり、穏便に関係を続ける道を選んだりする人も多くいるのでしょう。そして、「交渉せず、自分から取引を中止した(10.0%)」とあるように、そもそもトラブルになるような相手とは取引をしない方が得策だと判断する人もいるようです。フリーランスが陥りやすいトラブルフリーランスが直面しやすいトラブルは、いくつかあります。これから紹介するトラブルは、大小あれど経験したことがあるフリーランスが多いのではないでしょうか。報酬の遅延や不払い支払い日に報酬が振り込まれないトラブルは、フリーランス歴が長い人なら一度は経験したことがあるのではないでしょうか。多くは先方の処理ミスが要因ですが、クライアントの財政状況により、支払いが困難で支払えないケースもあります。前者の場合は、報酬が支払われていないことを報告すればすぐに手続きをしてくれることが多いです。一方で後者の場合は、うやむやにされたり、連絡が取れなくなってしまったりすることもあります。取引先が支払ってくれないそぶりを見せたり、支払いはあっても遅延が続いたりする場合は、後述する相談窓口に相談するなど対策を講じましょう。契約書の内容不備フリーランスは、業務を開始する前に、クライアントや取引先と契約書を交わします。その契約書の内容を読んでみると、不備がある場合もあります。報酬金額や支払い期限が、両者の合意と異なる場合や、明記されていない場合は、認識の違いからトラブルにつながります。他にも、イラストや写真、動画などを納品する場合は、著作権が作成者(フリーランス)とクライアント、どちらに渡るのかも明確にしておかないと、後々揉めることになります。トラブルになった時に突然態度を変えるようなクライアントもいるので、懸念事項はきちんと契約書に盛り込むようにしましょう。▼関連記事:フリーランスが結ぶ業務委託契約とは?契約時のチェックポイントを解説取引先からのハラスメント過大な要求や精神的なダメージを与える発言をして、要求を呑まないと契約を打ち切るなど、立場を利用した嫌がらせはハラスメントです。特に、取引先と対等な関係が築けていない場合は、パワハラやセクハラなどのハラスメントを受けてしまう場合もあります。フリーランスの場合は、同僚などすぐに相談できる人が周りにいないケースが多く、1人で悩んでしまう人も少なくありません。業務内容の齟齬実際に稼働し始めてから、契約時に想定していた業務内容とは異なる業務を依頼されるケースもあります。業務内容を含めて契約をしているので、まったく畑違いの仕事や、想定していたより大幅に工数がかかる仕事を急に振られても戸惑ってしまうでしょう。特にフリーランスとの仕事に慣れていないクライアントは、社員と同じ要領で仕事を振ってくることもあります。損害賠償請求フリーランスが請け負った業務に関して、情報が漏洩した時や、著作権の侵害により会社が訴えられた場合は、クライアント側から損害賠償請求され、トラブルに発展する恐れがあります。この場合、本当にフリーランスの過失によるものなのか、仮にフリーランス側の過失だとして損害賠償請求額は正当な額なのかなど、自分1人ではなかなか判断しづらいのが難しいところです。トラブルに遭った時に知っておきたい!フリーランス新法をおさらい2024年11月1日より、フリーランスの労働環境の保護を目的とする「フリーランス新法」が施行されました。正式名称は、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」です。労働基準法が適用されないフリーランスは、トラブルが起きた際に弱い立場に置かれることが多かったため、フリーランスが発注事業者から不当な扱いを受けないように新たな法律が誕生しました。フリーランス新法では、発注事業者に対して、以下のように6つの義務と7つの禁止事項が定められています。【6つの義務】取引条件は契約書などで明示する報酬は納品から60日以内に支払う正確で最新の募集情報を表示する育児や介護などと業務を両立できるよう配慮するハラスメント対策の体制を整備する中途解除する場合は最低30日前までに伝え、要望があれば理由も開示する【7つの禁止事項】成果物を不当に受領拒否してはいけない成果物を不当に返品してはいけない報酬は相場より著しく低く設定してはいけない報酬を不当に減額してはいけない商品の購入やサービスの利用を強制してはいけない発注業務に関係ない金銭や労務を不当に求めてはいけない追加費用なしで受領後にやり直しをさせてはいけないこれらの義務と禁止事項を設定することで、フリーランスが支払い時・納品時に陥りやすいトラブルや不利益を未然に防ぐことができ、労働環境の改善も期待できるようになります。先述した報酬の遅延や不払い、契約書の内容不備、取引先からのハラスメント、業務内容の齟齬なども、フリーランス新法によって保護されます。トラブルに陥った際には、発注事業者がこれらの義務を怠っていないか、禁止事項を破っていないか確認することが大切です。当てはまるようなら、クライアントや取引先に伝えて話し合いの場を設ける、もしくは後述する相談窓口に相談してみましょう。▼関連記事:【2024年11月施行】フリーランス新法とは?変更内容や注意点を解説フリーランスが利用したい無料相談窓口フリーランスがトラブル発生に遭ったり、仕事が伸び悩んだりして誰かに相談したい場合に、無料で相談できる相談窓口があります。自分だけでは適切な対処ができないと思ったら、これから紹介する窓口に対応を相談してみてください。フリーランス・トラブル110番フリーランス・トラブル110番は、第二東京弁護士会が厚生労働省より受託して運営している無料の相談窓口です。弁護士がワンストップでサポートしてくれて、匿名でも相談可能です。電話やメール、対面、ビデオ通話など、さまざまな方法で相談できます。取引先との間でトラブルが発生し、どうしたらいいかわからない場合は、まずフリーランス・トラブル110番に相談してみてはいかがでしょうか。法テラス法テラスは、国によって設立された、法的なトラブルを解決するための総合案内所です。フリーランス・トラブル110番のように、フリーランスに特化したサービスではありませんが、取引先とのトラブルに関して、法的な角度からアドバイスがほしい時に相談してみるとよいでしょう。下請かけこみ寺下請かけこみ寺は、経済産業省によって全国48か所に設置されている相談窓口です。下請取引の適正化を推進することを目的としています。フリーランスをはじめ、中小企業などの相談者に対して、専門の相談員や弁護士がアドバイスしてくれます。無料相談を行っており、匿名の相談も可能です。相談内容によっては、お住まいの地域の弁護士を紹介してくれたり、裁判外紛争解決手続や、中小企業庁への通報などを行ったりしてくれます。公益財団法人日本税務研究センター税に関する相談をしたいなら、公益財団法人日本税務研究センターもチェックしてみましょう。税に関する民間シンクタンクで、税理士に相談ができます。フリーランスは確定申告をするので、税に関する疑問点が出てくる人も多いでしょう。税に関するセミナーも開催しているので、税の知識を深めたい人は参加してみるとよいでしょう。よろず支援拠点よろず支援拠点は、国が設置した無料の経営相談所です。経営上のあらゆる悩みを無料で相談でき、特に売上拡大や経営改善などの相談を取り扱うケースが多いです。フリーランスとして仕事をしていく上で、よりよいアドバイスをもらいたい人は相談してみてはいかがでしょうか。弁護士法的な対応が必要とされる相談内容なら、弁護士事務所に直接問い合わせてみるのもよいでしょう。初回は無料で相談に乗ってくれる弁護士も少なくありません。専門家の意見を聞いて、すぐに対処法を判断したい人にはよい選択です。前述した相談窓口は利用者が多いです。場合によってはコンタクトを取ってもすぐに弁護士や専門家に相談できず、数日後にお互いの都合のいいタイミングで初めて相談という流れになります。一刻を争うトラブルが発生している場合は、対応が早い弁護士を探して相談した方が、早く解決するかもしれません。フリーランスのトラブル回避方法フリーランスがトラブルに遭遇した際は、前章で解説したような相談できる場所を見つけるのが大切です。しかし、トラブルを未然に防げるに越したことはありません。これから解説するトラブル回避方法は、すでに日常的に行っているフリーランスも多いかもしれませんが、今一度チェックして起こり得るかもしれないトラブルを防ぎましょう。信頼できないクライアントと取引しないフリーランスは、仕事相手が選べるのがメリットです。もし取引相手に不信感を覚えるような出来事があれば、トラブルが起こる前に取引を見直してもよいかもしれません。取引前のやり取りで引っ掛かる点があれば、契約する前に辞退したほうが賢いケースもあります。長期案件でなければ、納品が済んだタイミングで次の仕事からは受けないという手もあります。いくら仕事がほしいからといって、不信感が募る相手と仕事を続けていくのはストレスですし、トラブルに発展する可能性があります。仕事を断るのもストレスと感じる人もいるかもしれませんが、トラブルが発生すると、さらに労力を費やさなくてはなりません。それならば、信頼できないと思った時点で契約を停止するのが1番傷が浅くて済むのではないでしょうか。業務内容・報酬・契約内容をよく確認する実際に仕事が始まると、契約前に話していた業務内容とは異なる業務をお願いされたり、報酬とは見合わない業務量を渡されたりする場合もあります。このような事態を避けるために、あらかじめ業務内容と報酬は、契約前によく確認しておきましょう。想定していた内容と違ったり、不明点があったりしたら、その時点で取引相手と話し合っておくと、トラブルに発展する可能性も低くなります。契約書は文字が多く、すべて読むのは面倒に感じますが、業務内容と報酬の項目は、他の項目よりも優先して読み込んでおきましょう。▼関連記事:フリーランスには労働基準法は適用されるの?自分を守るための契約や取引上の注意点を解説契約書を交わして保存しておく契約書は必ず交わし、実際に業務が始まって相違があった時に、契約書をもとに話し合えるようにしておきます。契約書は、いつでも取り出せるように保存しておきましょう。最近はオンライン上で契約締結まで行う会社が多いので、PCやオンラインストレージなどに契約書専用のフォルダを作って保存するなど、後で必要になった時に見つけやすいようにしておきましょう。紙の契約書の場合は、スマホなどで画像を撮影してから保存しておくと、紙の契約書が紛失しても安心です。▼関連記事:フリーランスが結ぶ業務委託契約とは?契約時のチェックポイントを解説フリーランスを対象にした保険に加入する気をつけていてもやっぱり不安な人は、フリーランス向けの保険に加入するのも1つの手です。フリーランス向けの保険は、会社員向けのものと比べると少ないですが、いくつかあります。例えば、フリーランス協会では、一般会員になると賠償責任保険が自動でついてきます。賠償責任保険は、業務遂行中の対物・対人事故はもちろん、情報漏洩や著作権侵害、納期遅延など、幅広くカバーしています。フリーランス協会の一般会員は、福利厚生サービスなども利用できるのでお得感があり、なにより保険に加入することで不安が解消されます。もしもの時のためにきちんと備えたい人は、フリーランス向けの保険をチェックしてみるとよいでしょう。▼関連記事:フリーランスも利用できる福利厚生サービス13選!選ぶポイントや注意点を解説まとめフリーランスが悩みやトラブルを抱えた際は、フリーランス・トラブル110番をはじめとする相談窓口に遠慮なく相談しましょう。取引先とのトラブルを経験したフリーランスは約4割と決して少なくありませんが、心がけと対策次第でトラブルを未然に防ぐこともできます。フリーランス新法の知識も身につけ、自分の身は自分で守れるようにしておきましょう。