近年、AI(人工知能)技術の進化により、プログラミングの世界に革命が訪れています。AIがプログラミングを行う時代が到来し、これに伴いエンジニアの役割や仕事内容が変化しています。この変化は、AIが人間の仕事を効率化し、生活を助けてくれるとともに一部のエンジニアの仕事を奪いつつあります。AIの進化に伴い、本当にエンジニアの仕事はAIに代替されてしまうのでしょうか?この記事では、AIがプログラミングを担う時代におけるエンジニアの仕事や必要なスキルについて紹介していきます。AIがプログラミングをやる時代がきたAIがエンジニアの代わりに、プログラミングを自動化できるようになる時代がやってきました。2045年にはAIが人間の知能を超えるとも予測されていて、起きる生活の変化はいわゆる「シンギュラリティ(技術的特異点)」とも呼ばれています。AIがどのように台頭してきたのか、AIの特徴、AIが得意とする領域などについて紹介していきます。AI技術の発達とツールの台頭AI技術は、深層学習や機械学習の発展により、大量のデータを用いてパターンや規則を学習する能力が向上してきました。これにより、画像認識、音声認識、自然言語処理などの分野で精度の高いAIシステムが次々と開発されています。AI技術の普及に伴い、技術者や企業は簡単にAIモデルを構築し、運用、販売することが可能になりました。AIの特徴・AIが得意なことAIには大きく分けて「2つ」の特徴があります。1つ目は、「自律性」です。自律性とは、人間が誘導しなくても作業を実行できる能力で、AI自身で決断を下したり、問題の解決が可能です。つまり、人間がAIに作りたいものを指示すると、自律したAIがプログラミングを行い、開発を進めてくれるのです。2つ目は、「適応性」です。適応性とは、経験から学びパフォーマンスを向上させる能力のことです。人間からの修正指示などを学習して、その情報をもとにモデルやアルゴリズムを更新して適応していきます。AIが作ったプログラミングに対して修正指示を重ねていくと、その情報を学習して、より人間が理想とするものに近づけていくことができます。AIはすでにプログラミングを行なっている現代においてはまだ、AIがプログラミングを「完全に」行っているというわけではありません。しかしAIは、人間が指示出しをした内容を学習し、予測や意思決定を行う能力を備えています。現在は「プログラミング」という人間が行う作業を「補完・支援する」ために、AIの力を借りて行われています。プログラミングを行うAIツールプログラミングを行うAIツールを紹介します。これらのAIツールは、コードの作成、コードの修正、エラーの検知、全体最適化、コードの推奨、ドキュメントの作成など、プログラミング作業を効率化する目的で開発されています。AI Programmerhttps://aiprogrammer.hashlab.jp/AI Programmerは、有限会社アズリアルと株式会社HashLab(ハッシュラボ)が提供するサービスで、日本語で指示を入力するとAIが自動でソースコードを生成するAIツールです。SQL、Python、HTML&CSS、JavaScriptなどの言語に対応しています。プログラマーの育成や開発スピードの圧縮などに活用されることが期待されています。ChatGPT(Code Interpreter)https://openai.com/blog/chatgpt-pluginsOpenAI社が2022年11月に公開した人工知能チャットボット「ChatGPT」に、新機能となる「Code Interpreter」が追加されました。現在は有料プラン利用者のみが利用可能となっています。Code Interpreterの大きな特徴として、必要に応じたコードの生成と実行が自動で行われ、その結果が回答として出力される点があります。データの分析や変換など、Pythonで可能なことは大体可能、という優れものです。Code Interpreterを使わずChatGPT単体でも利用価値があります。実現したいことを指示するとコードを生成してくれたり、設計で悩んだときの壁打ち相手になってくれたりと、様々な場面で有効活用できます。AppSheethttps://about.appsheet.com/home/AppSheetは、Google社が提供する、業務アプリを簡単に作れるサービスです。AppSheetは、データを与えると、AIが自動で最適なアプリの大枠を作ってくれる、という機能を備えています。人間がプログラミングをすることなく、スマホアプリやWebアプリを作ることができるので、エンジニア以外の人にとっても、アプリ制作などのクリエイティブな作業が身近になります。さまざまな業務にまつわるサンプルアプリが提供されています。Power Appshttps://powerapps.microsoft.comPower Appsは、Microsoftが提供する、業務用Webアプリを開発できるサービスです。Power Appsでは、プログラミングの知識がなくても、ワークフローやフォームの作成、予約管理などに役立つ、便利なアプリの開発が可能ないわゆる「ローコード」の開発環境です。プログラミングの知識のない人でも使いやすいところが特徴です。AIによってなくなる可能性のあるエンジニアの仕事AIが今後より一層の進化を遂げることにより、将来、エンジニアの仕事の一部が変化する可能性があります。以下は、AIによってなくなる可能性のあるエンジニアの仕事の一部です。仕様書通りのプログラミング業務AIはマニュアルなどのルールに則って行う作業が得意です。例えば、返答が決まっている顧客対応用のチャットボットや、仕様が決まっているコーディング業務などです。つまり「仕様書に沿ったコーディングをしているプログラマー」は、今後AIの普及により淘汰されていく可能性が高いです。デザイン要素やクリエイティビティのあるプログラミングや、人間の挙動を考慮したプログラミングであれば、人間ならではの強みを生かすことができます。簡易的なアプリの開発AIは簡単なアプリやWebサイトであれば、人間が少し指示を与えるだけで見栄えのいいものを作ることができます。ノーコードのアプリツールも増えてきていて、エンジニアでなくてもアプリ制作が身近になってきているのが現状です。アプリ制作のエンジニアは、AIにできない強みがないと、AIに仕事を奪われてしまう可能性が高いでしょう。小規模なWebサイト制作簡単なLP(ランディングページ)や小規模なWebサイトを制作するエンジニアの仕事も、将来的にAIが代替してしまう可能性が高いでしょう。実際に「STUDIO」などのノーコードのWebサイト制作ツールを活用して、Webサイトを制作する人も増えています。エンジニアに依頼することなく、プログラミングなしで自分でWebサイトを制作できたり、AIに頼むことで完結するのであれば、エンジニアの仕事は必要なくなってしまうでしょう。エンジニアの仕事がなくならない理由とはいえ、AIがいくら発達したとしても、エンジニアの仕事が完全になくなることはないでしょう。その理由をいくつか解説していきます。AI技術を発達させるのは人間の仕事だからこれまで発達してきたAI技術は人間のおかげであり、今後のAI技術の進化も人間の仕事です。AIツールも勝手に生成されたのではなく、人間が作り出したものです。AIが生成したコードは、そのままでは動かないケースがあり、それを修正するには人間側にプログラミングの知識が必要になります。「Pythonを学んでおけば、AI時代は乗り切れる」という話もありますが、実際にはAIの中核処理にはPython以外の言語も使用されています。AIエンジニアは、そういったAIの動作の発展のためにますます必要とされる存在となるでしょう。AI技術・AIツールを使うのは人間の仕事だからAIでコードを生成したり、Webサイトを作成したり、アプリを作成したりと、さまざまな活用方法がありますが、それらのものを作り出すまでには人間側の指示出しが必要です。「プロンプト」と呼ばれるAIへの指示だしの技術は発展の余地があり、「プロンプトエンジニア」と呼ばれる、AIを活用したエンジニアの職種が誕生しているくらいです。人間が思考を凝らしてAIを利用することで、新たな価値が生み出されます。▼関連記事:プロンプトエンジニアとは?AI領域で人気職種の仕事内容や年収を解説AIが満たせないニーズを満たすのは人間の仕事だからAIの不得意とすることの1つに「感情を読み取る」ことがあります。人間同士のコミュニケーションでは、気分や機嫌といった感情的な部分や、言語化されない要素が多くあります。エンジニアの仕事においても、感情の機微を読み取ったり、クライアントの細かい要望を言語化したり、イレギュラーな仕様変更に対応したりするには、人間の方が精度や柔軟性に富んでいます。AIが苦手とするそういった対応を人間が行っている間は、AIに仕事を奪われることはないでしょう。エンジニアがAI時代を生き抜くために必要なことAI時代を生き抜くためにエンジニアが取るべきことや、必要な要素は多岐にわたります。重要なポイントをいくつかまとめたので、必要と思う項目をバランスよく取り入れてみるのがよいでしょう。常に最先端の情報をキャッチするAI技術の発展はめざましく、次々と新しい技術やツールが生み出されています。そういった最新情報に追いつくためには、常に最先端の情報をキャッチするためのアンテナを張っておく必要があります。AI時代を生き抜くためには、情報に乗り遅れないようにSNSを活用したり、セミナーに参加するなどもよい手かもしれません。AIを活用できるスキルを身につけておくデータサイエンスや機械学習などといった、AIと親和性の高い分野の知識を身につけたり、AIツールを積極的に活用して業務効率化を図ったりすることで、AIを使いこなせるエンジニアとして市場価値を高めていくことが可能になります。AIはあくまでも人間の業務を手助けする補助ツールであり、使いこなすことができればエンジニアとして重宝される人材になり得るでしょう。自分の市場価値を客観的に捉える自分のエンジニアとしての市場価値を客観的に捉えることは、今後のキャリアアップに役立つでしょう。自分にできることはAIにもできることなのか、他のエンジニアのスキルと比較して埋もれていないか、などを改めて振り返ってみましょう。例えば、副業の仕事探しサービスにエンジニアとして登録してみると、応募できる案件や単価を確認することができます。募集要項と自分が今持ち合わせているスキルを照らし合わせてみるのも良いでしょう。エンジニアコミュニティで他のエンジニアやプロダクトマネージャーなどと交流してみるのも1つの手です。専門スキルをひたすら磨くエンジニアは技術力が命です。エンジニアにおける専門スキルや、エンジニア業界の知見などを増やしたり、他のエンジニアやAIが持ち合わせていないスキルを身につけるのがよいでしょう。エンジニアの専門スキルは継続的に進化するため、常に学習し続ける必要があります。その時々で、時代が求めるスキルや社会のニーズに適応することも重要です。ソフトスキルを磨く創造性やリーダーシップ、柔軟性など人間だからこそ持ち合わせているソフトスキルも磨くことで、より一層AIに仕事を奪われないエンジニアとして活躍することができるでしょう。人間性や組織内でのコミュニケーション能力などのソフトスキルは、職場での成功やキャリアの発展において非常に重要です。エンジニアスキルを磨くのと同時に、ソフトスキルを磨くことも忘れずに心がけましょう。まとめAI時代においても、エンジニアが仕事を奪われずに活躍するためのアプローチや、必要なスキルがあります。AIの発展がより一層進み、人間の仕事を補助するだけでなく、人間の仕事を一部奪う未来が来ています。人間にしか生み出せない価値を提供することで、エンジニアは今後も活躍できるはずです。そのためには必要なスキルを身につけて、時代の変化についていけるように情報のアップデートを常に心がけていきましょう。