動画編集の工程には、カット編集や字幕作成、音声処理など、多岐にわたる作業が伴うため、特に初心者や忙しい人にとってはハードルが高く感じられることも多いでしょう。しかし、AI技術の進化に伴い、これまで手作業で時間をかけて行っていた編集作業が大幅に短縮できます。動画編集初心者でも簡単にプロのような仕上がりを実現できるでしょう。この記事では、AIで手軽に動画が編集できるアプリやソフトを有料・無料別に紹介します。初心者でもスマホで気軽に編集できるアプリから、動画制作のプロも使用している専門性の高いソフトまで、幅広くピックアップするので、動画編集をより身近で手軽にしたい人はぜひ参考にしてください。AI(生成AI)による動画編集とは?AI(生成AI)を活用した動画編集とは、AI技術でナレーションやBGM、素材などを自動で生成し、オリジナルの動画を制作することです。詳細の仕様や得意とする作業はアプリやソフトで異なりますが、AIが搭載された動画編集アプリ・ソフトでは、以下のような作業を短時間で行うことができます。テキストやテーマにもとづいた動画コンテンツの作成動画素材の分析・自動編集シーンに合った効果的なエフェクト・音楽の選定動画内の音声のテキスト変換字幕の自動生成・翻訳なお、あくまで目安ではありますが、一般的な動画編集の各工程でかかる時間は以下の通りです。人の手で動画編集を行う場合は、各工程で数時間かかることが分かります。工程作業内容かかる時間(目安)撮影データ(動画)の取り込み、素材の整理・映像、音声、音楽などを編集ソフトにインポート・フォルダを作成して、映像や音声など素材を整理・タイムラインを作成短い動画:30分~1時間長い動画:1~3時間ラフカット・映像をタイムラインに並べる・不要なシーンをカット短い動画:1~2時間長い動画:4~8時間音声編集・音声のボリューム調整・ノイズ除去・音質調整・BGMの追加短い動画:1~2時間長い動画:2~6時間映像の仕上げ・カラーグレーディング(色補正)・エフェクトやトランジション(カットをつなぎ合わせるためのエフェクト)の追加・テロップやキャプションなどの挿入・映像の細かいカットや調整短い動画:2~4時間長い動画:4~10時間動画の書き出し・エクスポート設定(解像度、フレームレート、フォーマット)・完成した動画の書き出し・ファイルの確認短い動画:30分~1時間長い動画:1~3時間AIを活用した動画編集では、テキストやテーマなどの必要な情報をAIに伝えるだけで、動画編集の時間を大幅に短縮できるうえに、低コストで制作できます。【無料】AIで動画編集できるおすすめアプリ・ソフト8選まずは、動画編集初心者でも気軽に導入しやすい、無料のAI搭載の動画編集アプリ・ソフトを8点紹介します。①PowerDirector【PC/スマホ・初心者向け】PowerDirectorは、台湾のCyberLink社が提供する動画編集アプリ・ソフトです。最先端のAIツールが充実しているほか、シンプルな操作性と多機能なエフェクトが魅力で、動画編集初心者でも簡単にプロのように仕上げられる点が特徴です。ボタン1つで、背景や顔を自動で検出してぼかしたり合成できたりする機能や、動画の画質向上、映像のブレ補正などを搭載しています。また、以下のような機能もあるため、初心者でも楽しみながら幅広い動画編集に活用できるでしょう。機能概要AI動画アニメイラストやマンガなどのスタイルを選ぶだけで、動画素材を自動でアニメ風に変換できるAIテキスト読み上げ性別や言語、スタイルを選択して音声を生成するAIボイスチェンジャーテンプレートを選ぶだけで別人の声に変換できるただし、AI機能を使える無料期間は30日間のみです。30日経過後は、買い切り型か定期契約型のどちらかを選択して、購入(または契約)する必要があります。②VivaVideo【スマホ・初心者向け】VivaVideoは、中国のQuVideo社が手掛ける、スマホ向けの動画編集アプリです。無料で使用できるフィルターやエフェクト、テキストフォントなどが豊富に揃い、初心者向けの使いやすさと豊富な機能が魅力です。動画の自動カットやシーンの最適化、顔認識による自動エフェクト追加などのAI機能も充実しているため、初心者でも簡単にプロのような仕上がりが期待できます。AI機能やテンプレートを活用して、短時間で高品質な動画が作成できるため、SNS用の動画や日常の思い出をプロ仕様で仕上げたい人にぴったりでしょう。基本的な動画編集機能は無料で使用可能です。有料版を購入すれば、ウォーターマークを削除したり音楽を抽出したりできます。③InVideo【PC/スマホ・初心者向け】InVideoは、アメリカのInVideo社が提供する動画編集アプリ・ソフトです。SNSやプレゼンテーションなど、多様な用途に合わせたテンプレートが豊富に用意されています。テンプレートを選ぶだけで手軽に動画編集を行うことができるほか、ドラッグ&ドロップで編集できるシンプルなUIが採用されているので、初心者でも気軽に使用できるでしょう。AI機能が多彩で、テキストから動画を自動生成したり、AIが音声ナレーションを生成したりする機能もあります。文章を入力するだけで、シーンに最適な映像やBGMが自動的に挿入され、テキストベースで編集できるため、編集作業がスムーズに進むでしょう。④vrew【PC/スマホ・初心者向け】vrewは、韓国のVoyagerX社が提供する動画編集アプリ・ソフトです。動画編集のなかでも、大きな工数がかかるテキスト編集や音声編集にフォーカスした点が大きな特徴です。AIが動画を分析して字幕を生成するほか、AIによる音声分析を活用することで、カット編集の工数を大幅に削減できます。そのほか、テーマをテキストで入力するだけでAIが自動で動画を生成する機能や、PDFの内容を認識して字幕やナレーション付きの動画を作成する機能も搭載されています。テキストエディタのようなシンプルなUIとなっているので、動画編集初心者でも手軽に操作でき、動画を効率的に作成できるでしょう。無料版では各工程の時間制限はありますが、ほとんどの機能が利用可能です。⑤Filmora【PC/スマホ・初心者向け】Filmoraは、中国のWondershare社が開発した動画編集アプリ・ソフトです。エフェクトやトランジションが豊富で、直感的に操作しやすく、動画編集初心者でも気軽に操作できる作りが特徴です。AIの機能が充実しており、シーンを分析して不要な部分をカットしたり、最適な編集を提案してくれたりする機能をはじめ、音声を認識して自動で字幕を生成する機能や、画質の自動補正機能などが搭載されています。複雑な編集作業をシンプルにし、初心者でも手軽に高品質な動画を作成できるでしょう。作成した動画は、YouTubeやInstagram、TikTokなどのSNSにもワンクリックで投稿可能です。Filmoraには無料版と有料版があり、無料版は一部のAI機能や素材の使用に制限などがありますが、有料版とほぼ同じ機能を時間制限なく利用できます。⑥Runway【PC/スマホ・初心者向け】Runwayは、アメリカのRunway社が開発した動画編集アプリ・ソフトです。AIによる自動化機能が充実しているため、初心者でも簡単にプロのような動画に仕上げられることが特徴です。具体的には、AIによる背景除去や不要な部分をカットする機能が搭載されていたり、テキストプロンプトによる編集ができたりします。例えば、「動画を明るくする」「青い色調を加える」などの指示を入力するだけでAIが自動で処理を行います。編集スキルが不要で、エフェクトがすぐに適用されるため、短時間で理想的な動画に仕上げられるでしょう。そのほかにも、テキストから動画、画像から高速で動画を作成できるため、手軽に動画を作成したい人にもおすすめです。⑦Magisto【PC/スマホ・初心者向け】Magistoは、アメリカのVimeo社が運営(開発はイスラエルのスタートアップ)する動画編集アプリです。アプリはスマホ向けですが、PCはクラウドベースで動画編集ができます。動画や写真などの素材をアップロードするだけで、AIが自動的に素材を分析し、最適なシーンを選んで編集します。動画の構成やトランジション、エフェクト、BGMなども自動で配置されるため、初心者でも手軽に利用でき、短時間でクオリティの高い動画を作成できるでしょう。FacebookやInstagram、YouTubeなどのSNS向けに最適化されたサイズやフォーマットに対応しているので、作成した動画を気軽にSNSに投稿できる点も大きな特徴です。⑧DaVinci Resolve【PC・プロ向け】DaVinci Resolveは、オーストラリアのBlackmagic Design社が開発した動画編集ソフトです。カラーグレーディングやビジュアルエフェクト、オーディオ編集が1つにまとめられた高い機能を誇ります。初心者にも配慮された設計で、基本的な編集操作は直感的に行え、ハリウッドでも使われるプロ向けのツールとしても人気です。AI機能「DaVinci Neural Engine」では、音声を自動で文字起こしするのはもちろんのこと、発言者の分析や、タイムライン編集、ノイズ除去など多様な機能が搭載されており、スムーズな編集をサポートしてくれます。無料版と有料版(DaVinci Resolve Studio)があり、無料版でも高度な編集やカラー補正ができるため、多くのユーザーにとって十分な機能が備わっているでしょう。【有料】AIで動画編集できるおすすめアプリ・ソフト5選無料の動画編集アプリ・ソフトでも十分レベルの高い動画を作成することは可能ですが、どうしても使用できる機能や回数に制限がかかってしまいます。動画を多く編集する人や、多くのツールを使用したい人、よりプロのようなクオリティの動画を作成したい人には、有料のアプリやソフトがおすすめです。ここでは、有料のAI動画編集アプリ・ソフトを5点紹介するので、ぜひ参考にしてください。①Adobe Premiere Pro【PC・プロ向け】Adobe Premiere Proは、アメリカのAdobe社が開発した映像編集に特化したソフトです。特に動画制作におけるAI機能や豊富なツールが特徴で、放送局や制作会社など多くのプロから支持されています。チュートリアルも充実しているため、もちろん初心者でも利用可能です。独自のAdobe SenseiというAI技術を搭載し、さまざまな編集作業を効率化しています。映像の内容に合わせて自動でアスペクト比を調整するほか、音声のトーンやノイズの自動調整、音声テキスト化機能も備えているため、編集時間を大幅に短縮できるでしょう。また、クロマキー合成やカラー補正、エフェクトの追加などの機能も充実しており、映像の表現力を高められる点も特徴です。【Adobe Premiere ProのAI編集機能を使用できる主な料金プラン】Premiere Pro単体プラン:月額3,280円Creative Cloudコンプリートプラン:月額7,780円②CapCut【PC/スマホ・初心者向け】CapCutは、中国のByteDance社が提供している動画編集アプリ・ソフトです。短い動画編集や、SNS向けのコンテンツ制作に特化しており、初心者から動画クリエイターまで幅広い層から人気を集めています。無料版もありますが、Pro版(有料プラン)にアップグレードすることで、プロのような仕上がりとなるAIエフェクトなどを使用できるようになります。そのほかにも、動画の背景削除や、字幕生成、テキスト読み上げなどのAIを活用した機能が搭載されているため、作業効率や動画のクオリティが上がるでしょう。【CapCut Proの料金プラン】月額プラン(サブスクリプション):1,080円1ヶ月プラン(買い切り):1,350円年間プラン(サブスクリプション):9,900円1年プラン(買い切り):1万800円③Final Cut Pro【PC・プロ向け】Final Cut Proは、アメリカのApple社が提供している動画編集ソフトで、MacまたはiPadで利用できます。初心者でも使いやすいよう設計されていますが、4Kや8K映像の編集、マルチカム編集、カラーグレーディング、オーディオ編集など、高度な機能が充実しており、映画製作やテレビ業界で活躍するプロからも広く支持されています。AI機能は、シーンの分析に基づいてカラーバランスやコントラスト、明るさなどを自動で行う機能や、音声波形を解析して無音部分を自動でカットする機能などが搭載されています。【Final Cut Proの料金プラン】買い切り価格:4万5,000円④Video Brain【PC・初心者向け】Video BRAINは、日本のオープンエイト社が開発したオンライン動画編集ツールです。3,500種類以上の豊富な動画テンプレートが揃うため、テキストや素材を入れるだけで、動画をスムーズに制作できます。AIが映像やテキストを解析し、動画の構成やテロップなどのアイデアを提案してくれるサポート機能を搭載しています。さらに、テキストを入力するだけでナレーションを生成する機能も備えられているため、編集の手間を抑えることが可能です。動画制作に関する疑問は、専属のコンサルタントに相談できるため、動画編集初心者でも安心して取り組めるでしょう。【Video BRAINの料金プラン】エントリープラン:年間195万円~スタンダードプラン:年間460万円~⑤AVCLabs Video Enhancer AI【PC・プロ向け】AVCLabs Video Enhancer AIは、中国のAnvsoft社が提供する動画編集ソフトです。動画の画質向上に特化しており、2023年上半期の「第40回Vectorプロレジ大賞」の動画部門賞を受賞しています。動画の高画質化やノイズの除去、顔補正、フレーム補正、インターレースの解除などを、AIが自動で最適な処理を行うため、映像の編集に慣れていない人でも手軽に利用できるでしょう。無料版でも全ての機能を使え、初心者でも対応できる分かりやすい設計ですが、出力は3本までの制限があります。AIが自動で映像の解像度を向上したり、ノイズ除去やシャープネス調整を行ったりする機能があるため、映像の質にこだわるプロフェッショナルにも適しています。【AVCLabs Video Enhancer AIの料金プラン】月間ライセンス:月額5,280円年間ライセンス:年額1万6,980円永久ライセンス(買い切り):3万9,980円AIを使って動画編集するメリット動画編集にAIを活用することで、編集にかかる工数を減らすことができることはこれまでにもお伝えしましたが、ほかにもさまざまなメリットがあります。ここでは3点のメリットについて解説します。動画編集にかかる時間とコストを削減できるAIを活用して動画編集することで、高品質の動画を簡単に作成できます。従来の編集作業では、映像のカットやトランジション、エフェクトの適用、カラーバランスの調整など、細かい作業まで手動で行う必要があり、膨大な時間がかかっていました。AIを活用することで、こうした作業が短時間で自動で完了するため、細かい編集作業にかかる時間が大幅に減り、よりクリエイティブな作業に集中できます。また、多くのAI動画編集ソフトはシンプルなUIで操作・習得しやすいため、初心者や小規模のチームでも効率的に高品質な動画制作が可能です。作成する動画の品質にも一貫性が生じる点も大きなメリットでしょう。データに基づいた編集提案を受けられるソフトもあるAIが搭載された動画編集ソフトのなかには、視聴者の好みや視聴傾向などのデータを分析し、編集の提案を受けられるソフトもあります。例えば、AIが過去の視聴データやトレンドを分析し、効果的な映像の長さや要素などを判断・提案することで、ターゲットに響く動画を効果的に作ることができます。AIから新しいアイデアを得られる可能性があるAIは膨大なデータをもとに、動画のターゲット層の興味を引く映像構成を提案したり、流行のエフェクトやレイアウトをアレンジしたりできます。自分の編集スタイルにAIの提案を組み合わせることで、新しいアイデア発想が生まれやすくなり、作品の幅が広がるでしょう。AIを使って動画編集するデメリット・注意点続いては、AIを活用して動画編集を行うデメリットを紹介します。AI動画編集は非常に便利なツールではありますが、ツールに任せきりにしてしまうと、思わぬ不利益が生じる可能性があるため、しっかりデメリットも確認しましょう。仕上がりが単調となりやすいAIを使った動画編集は、自動化によって編集にかかる時間と手間が大幅に省ける一方で、仕上がりが単調になりやすいというデメリットがあります。AIは大量のデータをもとに特定のパターンを学習するため、視聴者が見やすいように個性を弱めた編集をしがちです。また、AIは状況に応じた感情表現や繊細なニュアンスを読み取るのが難しいため、感性や感情を反映させにくく、似たり寄ったりの動画になる可能性が高まります。AIを取り入れて効率を重視しつつ、差別化を図るには、人の手でカスタマイズを加えることが重要です。作成した動画は人の目でしっかり確認が必要AIは技術的に正しく編集は行えても、コンテンツの文脈や状況に応じた細かな判断が難しいため、意図しないミスや誤解を招く編集が発生することもあります。誤植やストーリー性はもちろんのこと、作られた動画が倫理や著作権の側面から問題はないかなどもしっかり確認しましょう。AI編集後の確認作業は手間がかかる場合もありますが、視聴者にとって満足度の高い動画を提供するためには欠かせないプロセスです。まとめAIを搭載した動画編集アプリ・ソフトをうまく活用することで、編集時間を大幅に削減することが可能です。AIを搭載した動画編集アプリ・ソフトには、無料のものから幅広い作業に対応するもの、特定の作業に特化したものまで、幅広い選択肢が豊富に揃っており、初心者でも簡単に使い始めることができます。一方で、AIに頼りすぎるとオリジナリティに欠けやすく、他の動画との差別化や視聴者の感情に訴えるのが難しくなります。AIの限界や注意点を理解したうえで自分に合ったツールを選んで、より効率的にクリエイティブな動画制作を実現しましょう。