フリーランスと会社員では、将来の年金受給額が約8万円の差が出るといわれています。将来の年金受給額が少ないため、不安を感じているフリーランスも多いでしょう。フリーランスは、早い段階から将来に向けた準備を進めることが大切です。この記事では、フリーランスが将来に向けた備えができる年金制度「iDeCo」に加入するメリット・デメリットを解説します!年齢別の受給額シミュレーションや、国民年金基金や小規模企業共済との比較も紹介するので、ぜひ参考にしてください。【基礎知識】iDeCo(イデコ)とは?iDeCo(イデコ)とは、掛金を運用し、資産形成をする年金制度です。「個人型確定拠出年金」とも呼ばれています。月々5,000円から始められ、掛金額を1,000円単位で自由に設定できます。iDeCoの特徴iDeCoの主な特徴は、次の通りです。自分のライフスタイルに合わせて商品を選択して運用する65歳まで掛金を拠出でき、最短60歳から運用して増やした年金を受給できるiDeCoは、定期預金や投資信託など、自分で運用商品を選んで、掛金を運用します。リターンが大きい商品や、確実に資金を増やすために元本を確保できる商品など、自分のライフスタイルに合わせた商品を選択できます。また、iDeCoは20〜65歳まで運用でき、60歳以降に積立金を年金として受給できます。受け取り方法は、一括・年金受給・一括と年金受給の併用の3パターンから選べます。iDeCoの加入条件iDeCoは、特定の条件に当てはまる人が加入できます。加入条件は次の通りです。加入区分加入対象国民年金の第1号被保険者20歳以上60歳以上の自営業者とその家族、フリーランス、学生など国民年金の第2号被保険者厚生年金の被保険者(会社員、公務員など)国民年金の第3号被保険者厚生年金の被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者国民年金の任意加入被保険者国民年金の任意加入者▼引用:iDeCo(イデコ)の加入資格・掛金・受取方法等フリーランスは、基本的に「国民年金の第1号被保険者」に該当します。フリーランス自身はもちろん、その家族も加入できます。ただし、農業者年金の被保険者と、国民年金の保険料を免除されている人は加入できません。また、iDeCoは会社員・公務員も加入できます。厚生年金とあわせて積み立てることで、将来の資金をさらに増やすことが可能です。iDeCoの掛金の上限額iDeCoの掛金の上限額は、加入資格ごとに異なります。詳しい拠出限度額を見ていきましょう。加入資格拠出限度額国民年金の第1号被保険者・任意加入被保険者月額6.8万円(年額81.6万円)※国民年金基金、または国民年金付加保険料との合算額国民年金の第2号被保険者会社に企業年金がない会社員月額2.3万円(年額27.6万円)国民年金の第2号被保険者企業型DCにのみ加入している会社員月額2万円国民年金の第2号被保険者DB・企業型DCに加入している会社員月額1.2万円DBにのみ加入している会社員月額1.2万円(年額14.4万円)公務員月額1.2万円(年額14.4万円)第3号被保険者 専業主婦(夫)月額2.3万円▼引用:iDeCo(イデコ)の加入資格・掛金・受取方法等※企業型DC:企業型確定拠出年金※DB:確定給付企業年金、厚生年金基金、石炭鉱業年金基金、私立学校教職員共済iDeCoの掛金の上限額は、国民年金の加入資格によって大きく異なります。加入前に必ず自分がどの加入資格に該当するかを確認した上で、積立のシミュレーションを行うと、将来設計を立てやすくなります。iDeCoの掛金平均額加入区分ごとのiDeCoの掛金の平均額は、次の通りです。国民年金の第1号被保険者(フリーランス・自営業者など)28,019円国民年金の第2号被保険者(会社員・公務員など)14,500円国民年金の第3号被保険者(専業主婦/主夫)14,671円国民年金の第4号加入者(国民年金の任意加入者)47,187円平均掛金額16,046円▼引用:iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入等の概況フリーランス(国民年金の第1号被保険者)のiDeCoの拠出限度額は月6.8万円ですが、実際の平均掛金は28,019円です。会社員や公務員が該当する第2号加入者の平均額は14,500円のため、フリーランスの方が少し多めに掛けている傾向が見られます。フリーランスは、会社員と比較して年金の平均受給額が少なく、自分で老後資金を積み立てる必要があるため、掛金を多めに設定していることが影響しているでしょう。ただし、収入や生活費は人それぞれなので、掛金の平均額を参考にしつつ、自分に合った無理のない資金運用を行いましょう。フリーランスがiDeCoに加入するメリットフリーランスがiDeCoに加入すると、節税対策につながり、運用益が非課税になるなど、さまざまなメリットがあります。また、他の年金制度と併用することで、より柔軟に資産を増やせられるので、1つずつ確認していきましょう。節税対策につながるiDeCoは、掛金全額が所得控除の対象となるため、節税に直結します。例えば、毎月3万円掛けると、年間36万円が所得控除の対象となります。特にフリーランスは、ルールを守った上で節税対策に取り組めば、税負担を大幅に減らせます。運用益が非課税になる一般的に、投資で得た利益には約20%の税金がかかります。一方、iDeCoでは運用益に対して税金がかかりません。例えば、通常の投資で100万円の利益を得た場合は、約20万円が税金として差し引かれます。iDeCoであれば、全額非課税なので100万円の利益が全て手元に残ります。老後資金の準備ができるフリーランスには退職金がないため、iDeCoを利用することで、老後資金を効率的に準備できます。例えば、毎月2万円を平均年利3%で、30年間積み立てた場合を考えてみましょう。【積立例】元本=毎月2万円×360ヶ月(30年間)=720万円年間利益=年間24万円×年利3%=7,200円総合資産=元本720万円+年利7,200円×30年間=741万6,000円年利3%の場合は、約21万円の利益をプラスにした上で、老後資金を貯められます。また、掛金を増やしたり、リターンが大きい商品に投資したりすれば、より資産を増やせる可能性があります。iDeCoに加入すれば、節税対策をしつつ、老後の準備もできます。そのため、フリーランスにとっては一石二鳥の制度といえるでしょう。他の年金制度と併用できるiDeCoは、以下のような年金制度と併用可能です。国民年金基金小規模企業共済付加年金企業型DC(企業型確定拠出年金)複数の年金制度と併用することで、元本割れのリスクを最小限に抑えた上で、着実に老後資金を増やすことができます。各制度のメリットを最大限に活かして、着実に老後資金を増やしたい方は、年金制度の併用を検討しましょう。フリーランスがiDeCoに加入するデメリットフリーランスがiDeCoに加入する際には、資金が60歳まで引き出せないことや、元本割れのリスクがあるなどのデメリットも考慮する必要があります。また、毎月の手数料がかかる点も負担になるかもしれません。これらのデメリットを理解した上で、iDeCoに加入するか検討するようにしましょう。原則60歳まで引き出せないiDeCoは、老後資金の積み立てを目的とした制度のため、原則60歳まで引き出せません。そのため、60歳を迎える前に、病気や事故などのトラブルでまとまったお金が必要になった場合に備えて、別の資金を用意しておく必要があるでしょう。元本割れのリスクがあるiDeCoは、自分で運用する商品を決めるため、場合によっては積み立てた掛金が元本割れしてしまうリスクがあります。例えば、リターンが大きい株式の運用が中心の商品を選んだ場合は、市場の変動によって元本割れしてしまう可能性が高いです。一方で、投資した掛金を確保しながら運用できる「元本確保型」の商品を選べば、元本割れを回避できます。60歳までにいくら積み立てたいかを試算しながら、自分に合った商品を定期的に見直すようにしましょう。毎月手数料がかかるiDeCoを運用する際には、以下のような手数料が発生します。加入時手数料iDeCoに加入した際に発生する手数料口座管理手数料iDeCoの専用口座を維持するための手数料給付事務手数料積み立てた掛金を受け取る際に発生する手数料還付事務手数料掛金を還付する際に発生する手数料移管手数料他の金融機関に移管する際に発生する手数料場合によっては、手数料が運用益より高くなってしまうリスクがあるので、随時運用状況を確認するのも大切でしょう。【年齢・掛金別】iDeCoの受給額シミュレーション20〜40代までの各年代で、iDeCoに加入して積み立てた場合の受給額をシミュレーションしました。年齢や掛金によって、将来の資産がどのように増えるかを確認し、老後に向けた準備をイメージしてみましょう。【シミュレーション条件】平均年収:年代別全体の平均年収で試算シミュレーションサイト:楽天証券の節税シミュレーション被保険者の種別:国民年金の第1号被保険者(フリーランス・自営業者)掛金:28,000円/月(国民年金の第1号被保険者の平均掛金額)運用益:3%20代・年収352万円の場合【シミュレーション条件】20歳・年収352万円でiDeCoに加入20歳から60歳まで40年間運用20歳から毎月28,000円拠出した場合、元本と運用益の合計は約2,592万円になることが分かりました。40年に渡って着実に積み立てることで、近年話題の「老後2,000万円問題」を解消できる可能性が非常に高いです。国民年金だけでは受給額が少ないとしても、約2,592万円を用意しておけると将来への安心を得やすいでしょう。30代・年収447万円の場合【シミュレーション条件】30歳・年収447万円でiDeCoに加入30歳から60歳まで30年間運用30歳から30年に渡って運用した場合は、合計で約1,631万円の資産を貯められることが分かりました。20代からスタートした場合と比較すると、合計金額の差額は約1,000万円になります。積立期間が短くなるため、より多くの金額を貯めたい場合は、掛金を増やす、もしくはリターンの大きい商品を運用するとよいでしょう。40代・年収511万円の場合【シミュレーション条件】40歳・年収511万円でiDeCoに加入40歳から60歳まで20年間運用40歳で加入した場合、合計金額は約919万円になりました。年間で約45万円の積立をしているという試算になります。40代の場合は、現時点で老後の資金をどの程度準備できているかを踏まえて、掛金や運用商品を決めるとよいでしょう。積立期間が短くなるため、よりライフプランや現状を踏まえて、戦略的な積立が必要となります。フリーランスがiDeCoと比較検討したい年金制度フリーランスが加入できる年金制度には、iDeCo以外にも、国民年金基金や小規模企業共済、付加年金などがあります。適切に比較検討することで、自分に合った資産形成方法を見つけられるでしょう。国民年金基金国民年金基金は、フリーランスや自営業者を対象とした、将来の年金受給額を増やすことを目的とした年金制度です。【国民年金基金の特徴】終身年金制度なので生涯受給できる掛金が変動しない掛金がマイナスにならないiDeCoとの1番の違いは、終身年金制度である点です。60歳もしくは65歳以降から、生涯に渡って年金を受け取れるので、老後の生活を安定させやすいでしょう。加入時に、給付タイプや年齢、口数によって決まる掛金は変動しません。商品を運用しないため、元本割れするリスクがない点も安心できるポイントです。また、国民年金基金は、掛金の合計が月6.8万円の範囲内でiDeCoとの併用が可能です。▼関連記事:フリーランスは国民年金基金で老後に備える!iDeCo・付加年金との違いを解説小規模企業共済小規模企業共済は、フリーランスや、従業員数20名以下の小規模企業の経営者などが加入できる、退職金の積立を目的とした制度です。【小規模企業共済の特徴】月1,000〜7万円まで自由に掛金を設定できる掛金は全額所得控除の対象低金利で貸付を受けることができるiDeCoと小規模企業共済は、それぞれ別の制度として枠が設定されています。そのため、iDeCoで毎月最大6.8万円を積み立てながら、小規模企業共済でさらに月7万円まで積み立てることが可能です。また、小規模企業共済に加入すると、利率0.9%の低金利で貸付を受けることができます。将来に備えた準備をしつつ、今後事業拡大を目指したい方は、小規模企業共済への加入検討をするとよいでしょう。▼関連記事:小規模企業共済とは?フリーランスの将来の備えと節税効果を解説付加年金付加年金は、国民年金に毎月400円の付加保険料を上乗せすると、将来の年金受給額を増やせる制度です。【付加年金の特徴】将来の年金受給額が200円/月上乗せされる費用負担が少ない国民年金の納付額を免除中の場合は利用できない1年間で支払う付加保険料が4,800円と少額なので、手軽に将来に向けた備えを進めたい場合に適した制度です。例えば、30年間付加保険料を納付した場合は、年金受給額が年間で72,000円上乗せされます。【計算例】上乗せされる年金受給額200円×12ヶ月=72,000円/年国民年金の保険料を免除している場合には、対象外になるので注意しましょう。また、付加年金とiDeCoは併用でき、フリーランスは付加保険料とiDeCoの掛金を合わせて月68,000円まで拠出できます。ただし、iDeCoの掛金は1,000円単位で設定するため、付加年金とiDeCoを併用して毎月定額で納付する場合には、iDeCoの掛金上限額は月額67,000円になります。【Q&A】フリーランスのiDeCoに関するよくある質問最後に、フリーランスのiDeCoに関するよくある4つの質問にお答えします。iDeCoに加入する前に、不安を解消して、納得した上で手続きを進められるようにしましょう。iDeCoの加入方法は?iDeCoの加入は、以下の流れに沿って進めましょう。加入資格があるか確認する金融機関を決める選んだ金融機関で加入手続きを行うはじめに、iDeCo公式サイトで、加入資格があるか確認しましょう。複数の簡単な質問に答えると、加入資格があるかが審査できます。加入資格があると分かったら、次にiDeCoの運用を行う金融機関を決めます。楽天証券やSBI証券など、各金融機関で運用できる商品を比較検討しましょう。金融機関を決めたら、口座開設と掛金の設定を行うと、iDeCoの運用が開始されます。iDeCoとつみたてNISA(積立NISA)ならどちらがおすすめ?老後資金の積み立てを優先したい場合はiDeCo、短期的な投資や緊急時に備えた運用を行いたい場合はつみたてNISAがおすすめです。iDeCoは老後資金の積立に特化しているため、原則60歳まで積立金の引き出しができません。そのため、60歳を迎える前に大金が必要になっても、iDeCoで積み立てたお金を利用できないので、注意が必要です。一方で、つみたてNISAは積立途中での出金ができるため、子どもの教育資金や緊急時の費用としての利用もできます。何を目的に投資したいのかを考え、iDeCoとつみたてNISAどちらにするかを選びましょう。iDeCoを利用している人はふるさと納税を利用できる?iDeCoを利用しつつ、ふるさと納税を利用することは可能です。iDeCoの掛金が所得控除されても、ふるさと納税は税額控除対象として計算されるため、2つの制度は併用できます。ただし、ふるさと納税の控除上限額は、所得控除後の課税所得をベースに決まります。場合によっては、ふるさと納税の上限額が低くなってしまう場合があるので注意が必要です。2つの制度を併用する場合は、事前にふるさと納税のサイトで、上限額のシミュレーションを行うようにしましょう。▼関連記事:フリーランスのふるさと納税のやり方は?確定申告までの流れやメリットも解説iDeCoをやめたほうがいい人はどんな人?iDeCoへの加入をやめたほうがいい人の特徴は、次の2つです。投資リスクに抵抗がある人直近で大金が必要な人iDeCoは、商品を運用して掛金を増やしていく制度です。運用状況によっては、元本割れするリスクがあるので、投資リスクに抵抗がある人には向かないでしょう。また、iDeCoは60歳まで積立金の引き出しができないため、直近で家を購入したり、子どもの教育資金が必要になったりする場合は不向きです。まとめiDeCoは、老後の資金準備をしながら、節税対策もできる年金制度です。フリーランスは、毎月6.8万円まで掛金を拠出できます。掛金は全額所得控除の対象となります。最大で年間81.6万円が控除の対象となるため、節税効果が非常に高いです。また、iDeCoは、自分で運用する商品を選べるので、ライフプランや目標金額に向けて、着実に年金受給額を増やせます。節税対策と将来への備えを両立させたいフリーランスは、iDeCoへの加入を検討してみてください。