フリーランスとしての仕事や副業を通して得た収益は、「事業所得」もしくは「雑所得」に分類されます。事業所得と雑所得では、経費として認められる範囲や確定申告の際の節税効果が異なります。正しく確定申告を行うためには、自分の収益がどちらに該当するかを判断することが大切です。この記事では、事業所得と雑所得の違いや判断基準を解説します!確定申告での注意点も解説するので、ぜひ参考にしてください。【基礎知識】事業所得と雑所得とは?はじめに、事業所得と雑所得について解説します。それぞれの特徴を理解して、確定申告をスムーズに進めるための基礎知識を身につけましょう。事業所得:フリーランス・副業の事業で得た収益事業所得とは、「農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得」を指します。事業所得は、事業の売上から必要経費を差し引いて計算します。【事業所得の計算例】売上100万円ー必要経費30万円=事業所得70万円事業所得として認められるためには、営利目的で継続的に収入を得る必要があります。例えば、WebデザインやWebマーケティングなど、フリーランスや副業で継続的な契約や案件を受けた収益が、事業所得として認められます。▼参考:事業所得の課税のしくみ(事業所得)|国税庁雑所得:事業所得に当てはまらない収益雑所得とは、「利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得および一時所得のいずれにも当たらない所得」を指します。つまり、雑所得は事業所得に該当しない収益といえます。雑所得には次のようなものが該当します。フリマアプリやオークションで得た収益アフィリエイトブログの広告料単発案件の原稿料や印税例えば、家にある不用品をフリマアプリで売って得た収益や、単発で請け負ったライティングの仕事の原稿料は、一時的な収益として雑所得に該当します。▼参考:雑所得|国税庁事業所得と雑所得の違い次に、事業所得と雑所得の3つの違いを解説します。それぞれの違いを理解して、確定申告の際に間違いがないようにしましょう。経費として認められる範囲の違い事業所得は必要経費として認められる範囲が広いのに対し、雑所得は範囲が限られています。それぞれの経費として認められる例は、次の通りです。事業所得として認められる経費業務に関連する経費全般例:家賃・通信費・消耗品費・通信費など雑所得として認められる経費収入を得るために直接かかった経費のみ例:アフィリエイトブログを運営するためのサーバー代事業所得は、事業において発生した費用全般が経費として認められます。例えば、在宅で働くフリーランスであれば、家賃やインターネット代を経費として処理することが可能です。一方で、雑所得は収入を得るために直接かかった費用しか経費として認められないので注意しましょう。適用される控除の違い事業所得は青色申告が適用されるのに対し、雑所得は青色申告が適用されません。そのため、控除額が大きく異なります。事業所得は、青色申告を利用して、特定の条件を満たすことで最大65万円の特別控除が適用されます。対して、雑所得は白色申告しか利用できないため、最大10万円の控除のみとなる点を覚えておきましょう。確定申告の違い事業所得と雑所得では、確定申告の手続きや必要書類などが異なります。事業所得雑所得確定申告の種類青色申告と白色申告から選択可能白色申告のみ帳簿の種類複式簿記※青色申告の場合簡易簿記提出書類・確定申告書・青色申告決算書・所得控除の適用を証明する書類※青色申告の場合・確定申告書・収支内訳書事業所得は、事業としての管理が求められるため、帳簿作成や申告手続きが多く、雑所得よりも複雑です。一方、雑所得を申告する白色申告は、用意する書類が少ないため、手続きの負担は少なめです。事業所得と雑所得のメリット・デメリットここでは、事業所得と雑所得のメリット・デメリットを解説します。確定申告を青色申告・白色申告どちらで進めるかを考えるためのヒントにしてください。事業所得のメリット・デメリット事業所得のメリット・青色申告が利用できる・経費として認められる範囲が広い・損失の繰越が可能事業所得のデメリット・確定申告の手続きが複雑・社会保険料が増える可能性がある事業所得の最大のメリットは、青色申告を利用して最大65万円控除を適用できる点です。経費として認められる範囲も広いため、高い節税効果を得られます。万が一、収益が赤字になった場合も、損失の繰越が可能です。一方、確定申告を青色申告で申請する場合は、複式簿記での帳簿付けが必要になるため、申告手続きが複雑になりやすいです。また、事業所得の額に応じて、国民健康保険や国民年金の保険料が増える可能性がある点も覚えておきましょう。雑所得のメリット・デメリット雑所得のメリット・一時的な収入でも申告しやすい・白色申告での申請になるため確定申告の負担が少ない雑所得のデメリット・青色申告が利用できない・経費として計上できる範囲が限定的・損失の繰越ができない雑所得のメリットは、一時的な収入を所得として手軽に申告できることです。白色申告での申請のため、確定申告の際に準備する書類も少なく、申請の負担が少ないです。一方で、雑所得は青色申告が利用できず、経費として認められるものの範囲が狭いため、節税効果は低いです。損失の繰越もできないため、赤字にならないように注意が必要でしょう。事業所得・雑所得の確定申告の申請方法・注意点次に、事業所得・雑所得を申告する確定申告の流れと、注意点を解説します。適切に確定申告を行い、損をしないためのポイントを押さえていきましょう。確定申告の基本的な流れ確定申告の申請期間は、例年2月16日から3月15日です。申請期間内に手続きを進めるために、日頃から帳簿付けなどの経理作業を行っておく必要があります。確定申告の基本的な流れは、次の通りです。日々の収入と支出を帳簿付けする経費を計上する各種控除を適用させる期限内に提出する以下の記事で、確定申告の詳しい流れや必要書類を解説しています。確定申告をスムーズに進めるために、参考にしてください。▼関連記事:確定申告はフリーランスに必須!やり方や必要書類と経費管理のコツ事業所得を申告するときの注意点事業所得を申告する際は、次の2つに注意しましょう。なるべく青色申告で確定申告を行う必要経費を漏れなく計上する事業所得の計上は、白色申告でもできますが、節税効果の観点から青色申告での申告をおすすめします。ただし、青色申告で申請するためには、事前に開業届や青色申告承認申請手続きが必要になります。また、経費を漏れなく計上して申告することで、節税効果が高まります。何が経費として認められるかを確認し、日頃から帳簿付けを忘れずに行いましょう。▼関連記事:フリーランスは青色申告で確定申告しよう!控除の活用や節税のコツを解説▼関連記事:フリーランスの気になる経費事情!経費計上する時の注意点やQ&Aも雑所得を申告するときの注意点雑所得を申告するときは、次の2つに気をつけましょう。収入や経費に関する書類を保存しておく損失の繰越ができない雑所得を申告する白色申告は、青色申告と比較して申請の手続きは簡単です。ただし、青色申告同様に、収入や経費を証明するための領収書などは必要になるので、必ず保存しておきましょう。また、白色申告は青色申告と異なり、損失の繰越はできません。赤字が出ても翌年の税額を減らせられないので注意しましょう。【Q&A】事業所得・雑所得に関するよくある質問最後に、事業所得・雑所得に関するよくある3つの質問に回答します。事業所得と雑所得の判断基準複数の仕事がある場合の所得分類雑所得から事業所得への切り替えいずれも事業の継続性が判断基準になります。この点を踏まえて、それぞれの回答を見ていきましょう。事業所得と雑所得の判断基準は?事業所得と雑所得どちらに該当するかの判断基準は、事業として継続的な収入であるか、一時的な収入であるかです。事業所得:継続的な取引があり、営利目的とした事業の収入雑所得:事業所得に該当しない一時的な収入事業所得と雑所得どちらか悩んだら、今後も継続した収入が見込めるかで判断しましょう。複数の仕事がある場合の所得分類は?複数の仕事がある場合は、所得が事業所得と雑所得どちらになるか悩む方もいるでしょう。所得の分類がどちらに該当するか悩んだときは、それぞれの収入源ごとに、継続性の有無で判断しましょう。【判断基準例】A社の案件:長期的な契約を前提とした契約のため「事業所得」B社の案件:副業として単発で請け負った仕事のため「雑所得」雑所得を事業所得に切り替えることは可能?これまで雑所得として計上していた所得を、事業所得に切り替えることは可能です。例えば、これまで副業として単発で受けていた案件が、事業として成立し、長期的な収入が見込めるようになった場合は、事業所得に切り替えられます。まとめ事業所得と雑所得には、継続的な収益が見込まれる事業収益か、一時的な収益かの違いがあります。事業所得は、事業を通して今後も継続的な収益が見込まれるものが認定されます。青色申告で計上すれば、最大65万円の特別控除を適用して、高い節税効果を得ることも可能です。雑所得は、一時的な収益のため白色申告での申請となります。赤字の繰越はできませんが、比較的簡易的な手続きで確定申告を進められます。事業所得雑所得経費として認められる範囲業務に関連する経費全般収入を得るために直接かかった経費のみ適用される控除最大65万円最大10万円確定申告の申告方法青色申告と白色申告から選択可能白色申告のみフリーランスは、事業所得と雑所得の違いを理解した上で、適切に確定申告を進めていきましょう。