フリーランスとして活動していると、クライアントから見積書の提出を依頼される場合があります。フリーランスにとって見積書は、クライアントと契約できるかを左右する大事な書類です。ポイントを押さえて丁寧に見積書を作成し、お互いが納得のいく条件で契約できるように心がけましょう。この記事では、フリーランスが知っておくべき見積書の役割と書き方のポイントを解説します。見積書を簡単に作成できるおすすめツールも紹介するので、ぜひ参考にしてください。フリーランスが知っておきたい見積書の役割はじめに、フリーランスが理解しておくべき見積書の3つの役割を解説します。役割を理解した上で、見積書を作成し、自分とクライアント双方が納得のいく形で契約するためのベースを整えましょう。業務範囲を明確にする見積書には、業務の内容や範囲を明確にする役割があります。業務内容・範囲を明確にしておくことで、業務開始時に自分が対応すべき内容が明確になります。例えば、契約時に想定していなかった作業が発生した際に、正当な報酬を得るための交渉ができるようになります。また、途中で追加業務を依頼された際にも、再度見積もりを提案するなど、状況に応じた対応をしやすくなるでしょう。クライアントとの交渉を進めるための材料になる見積書は、クライアントとの交渉をスムーズに進めるための材料といえる書類です。業務内容・範囲に対する費用を提示することで、クライアントが予算内で依頼したい業務をフリーランスにお願いできるかを検討しやすくなります。見積書を作成する際は、業務内容・範囲に対する金額を分かりやすく記載することがポイントです。詳しくは、後述の「フリーランスが見積書を作成するときに入れる項目」で、書き方のポイントを解説します。契約後のトラブルを防げる見積書に記載された業務内容や金額をベースに、契約や手続きを進められるため、誤解や認識のずれによるトラブルを未然に防げます。例えば、フリーランスエンジニアが「機能を追加する場合は別途見積」と見積書に記載していれば、後日クライアントから追加作業を無料で依頼されるトラブルを回避できます。このように、契約後に追加で依頼されそうな業務を想定した上で、見積書に業務内容を詳細に記載することがトラブル回避につながることを覚えておきましょう。フリーランスが見積書の提出を求められるタイミング見積書の提出を求められる2つのタイミングを確認していきましょう。フリーランスは、見積書の提出が必要になるタイミングを事前に把握しておくと、余裕を持ってスムーズに対応できます。新規クライアントに提案するとき新規クライアントに提案をする際に、見積書の提出が必要になります。見積書は、プロジェクトにかかる費用をクライアントに示すため、契約をスムーズに進めるために不可欠です。場合によっては、口頭で金額を伝えたり、メール・メッセージで金額を提示したりすることもあります。しかし、後々のトラブルを避けるためにも、業務内容・金額を提示した見積書があると安心です。契約条件を変更するとき既存のクライアントと、契約条件を変更する際にも見積書の提出が必要です。契約内容の変更や、追加の業務が発生した際には、変更後の内容を見積もりに反映させて、双方で再確認する必要があります。例えば、Webライターが記事の執筆だけでなく、構成の作成から対応するようになった場合は、構成作成の費用や業務範囲を見積書に記載します。契約条件を変更する際も、業務内容・範囲に対する費用を明記して、お互いが納得した上で契約を継続できるように心がけましょう。フリーランスが見積書を作成するときに入れる項目ここからは、フリーランスが見積書を作成するときに入れるべき9項目を解説します!各項目に記載すべきポイントを把握しておくことで、見やすくて分かりやすい見積書を作成できるようになるので、ぜひ参考にしてください。見積書のタイトルはじめに、見積書の上部に「見積書」「お見積書」「御見積書」といったタイトルを記載しましょう。タイトルをつけることで、クライアントが現在確認している書類が見積書であることをすぐに理解できます。宛先・クライアント名次に、宛先・クライアント名を記載します。宛先を正確に記載することで、見積書が正式な書類として受理されます。【記入例】〇〇株式会社 御中株式会社〇〇 ◆◆部 佐藤様 会社名や担当者名を記入するときは、必ず誤字脱字がないように注意しましょう。特に、前株・後株などの社名表記や、担当者の漢字はうっかり書き間違えてしまう恐れがあるので、入念に確認してください。提出者・作成者の情報見積書の提出者として、自分自身の情報を記載します。主に記載すべき内容は、下記の通りです。名前住所連絡先(電話番号・メールアドレス)屋号屋号がない場合は、記載しなくて問題ありません。最低限、名前・住所・連絡先は記載しておくとよいでしょう。見積書の発行日・有効期限見積書の発行日と有効期限を明記することで、クライアントに対して期限内に契約するかの判断を促せます。【記入例】発行日:2024年10月1日 有効期限:2024年10月31日発行日:2024年10月1日 有効期限は発行日より1ヶ月間有効期限の書き方はどちらでも構いません。ただし、有効期限を明確にするために発行日は必ず明確に記載するようにしましょう。業務内容の詳細業務内容を具体的に記載することで、クライアントとの認識の齟齬を防ぐことができます。【記入例(Webデザイナーの場合)】ディレクションWebサイトデザイン(修正2回を含む)ワイヤーフレーム作成(修正2回を含む)業務内容が曖昧だと、後々トラブルの原因になるので、どのような業務を行うのかしっかり書きましょう。見積もり金額見積書には、内訳と総額を明示しましょう。業務に対する具体的な費用を項目ごとに示した上で、総額を提示することでクライアントが金額に対して納得を得られやすくなります。【記入例(Webデザイナーの場合)】適用数量単価金額ディレクション費用1100,000円100,000円Webサイトデザイン(10ページ)1010,000円100,000円ワイヤーフレーム作成(修正2回を含む)108,000円80,000円小計280,000円消費税(10%)28,000円合計308,000円支払い条件支払い期日や、入金方法を記載し、金銭的なトラブルを回避できるようにしましょう。【記入例】納品後30日以内に銀行振込支払い期限:2024年11月30日まで報酬の支払いは銀行振込が一般的です。もしも、小切手や手形での支払いを希望する場合は、クライアントに事前に確認しましょう。通し番号・管理番号見積書の通し番号や管理番号をつけることで、見積書の管理がスムーズになります。また、クライアントも複数の見積書を管理しているため、番号がついていることでどの見積書を確認すべきか把握しやすくなります。【記入例】見積書番号:No.011番号の振り方は、基本的に自分が管理しやすい振り方で問題ありません。また、クライアントにとっても確認しやすい番号の振り方を意識しましょう。特記事項や注意点納期や追加作業の費用、報酬の振り込みなど、特記事項や注意点を事前に記載することで、クライアントとの間での認識のズレを防げます。【記入例】修正回数は2回まで無料、3回目以降は追加料金をいただきます納品後の修正対応は、別途御見積となります振込手数料につきましては、貴社にて負担をお願いしますフリーランスが見積書を提出する際に注意すべきポイントフリーランスが見積書を提出する際に注意すべきポイントは3つあります。ポイントを覚えて対応することで、クライアントと契約を結べる可能性が上がるので、1つずつ確認していきましょう。業務内容を詳しく記載する契約後にトラブルが起きないように、見積書の段階で業務内容は詳しく記入するようにしましょう。業務内容と範囲を具体的に記入しておかないと、後から認識のズレが生じてトラブルにつながる可能性が高いです。本記事を書いているWebライターの筆者は、原稿作成の見積書に金額しか記載しなかったことで、クライアントから何度も修正依頼をされてしまうという、トラブルが起きた経験があります。筆者の中では、修正は1〜2回までという認識でしたが、クライアントが納得のいくまで修正を依頼したため、結局修正対応が10回以上発生してしまいました。業務内容を詳しく書かないと、このように業務内容と報酬が見合わなくなってしまう恐れがあるので、十分に気をつけてください。納期設定は慎重に行う見積書に納期を記載するときは、自分に負担がなく、クライアントの要望に応えられる期日を慎重に設定しましょう。無理な納期を設定してしまうと、品質が落ちたり、納品遅れにつながったりして、信頼を失うリスクが高まります。例えば、「通常ご依頼から2週間程度で納品」と記載しておくことで、状況に応じて柔軟に対応できるようになります。見積書の提出は早めに行うクライアントから見積書の提出を依頼されたら、なるべく早めに提出しましょう。多くのクライアントは、自社の予算や求めるクオリティに対して、最適なフリーランスを選ぶために、相見積もりをしているケースが多いです。見積書の提出が遅いと他のフリーランスに仕事が決まったり、そもそもやる気がないのではないかと疑われたりする原因になるので、注意しましょう。フリーランスが契約を獲得するためのコツ見積書を提出しても、必ず契約につながるとは限りません。ここで紹介する、フリーランスが契約を獲得するための3つのコツを押さえて、契約交渉をスムーズに進めてくださいね。クライアントの反応を確認する見積書の提出後に、必ずクライアントから返信が来るとは限りません。他のフリーランスと比較検討している、業務に追われて返信できていないなど、さまざまな理由が考えられるので、自分から進捗や反応を確認するようにしましょう。例えば、見積書を送ってから、3日以内に確認の連絡を入れるなど、クライアントの反応を見逃さないようにしておくと安心です。連絡を入れることで、話が進んだり、あらためて見積書の詳細を打ち合わせをしたりする可能性が生まれます。修正依頼にスピーディーに対応する見積書の提出後に、クライアントから金額や業務範囲の変更依頼をされる場合があります。見積書の内容変更を依頼された場合は、スピーディーに対応することで、契約につながりやすくなることを覚えておきましょう。ただし、修正依頼の内容を慎重に確認することも大切です。修正依頼の内容によって、業務内容と報酬が見合わなくならないように気をつけてください。簡単に値下げをしない場合によっては、見積書の金額を確認の上、クライアントから値下げを依頼されることもあります。しかし、クライアントの要求に対して簡単に値下げをしないようにしましょう。安易に値下げることは、自分自身のフリーランスとしての価値を下げることに直結します。クライアントから値下げを依頼された場合は、まず業務内容の見直しをしましょう。対応範囲を減らしてクライアントの希望価格に近づける、単価に納得感を持ってもらうために業務内容を再度説明するなど、自分とクライアント双方が納得のいく着地点を見つけることが大切です。フリーランスにおすすめの見積書作成ツール見積書を作成する際には、フリーランス向けの見積書作成ツールを導入すると便利です。会計ソフトと連動させたり、商談状況を管理できたりするツールを紹介するので、自分に合ったツールを導入しましょう。Misoca(ミソカ)【Misocaのポイント】毎月10通まで無料で見積書を作成できる弥生・freee・マネーフォワードなどの会計ソフトと連携可能Misocaは、毎月10通まで無料で見積書を作成できるツールです。登録初年度は、11通目以降も無料で見積書を作成できます。また、フリーランス向けの会計ソフトとも連携ができるので、見積書送付後の管理もスムーズに進めやすいです。Misocaは、「まずは無料で利用できるツールを使いたい」という方におすすめです。freee請求書【freee請求書のポイント】見積書をはじめ、請求書・納品書を無料で作成可能40種類以上のテンプレートがあるfreee請求書は、見積書をはじめ、請求書や納品書を作成できるツールです。書類のテンプレートは40種類以上あるため、自分の職種にあった書類を作成可能です。書き方や使い方が分からないときは、24時間365日対応のメールサポート担当者に相談できるため、見積書の作成に慣れていない方も安心して利用できます。PASELLY(パセリ)【PASELLYのポイント】簡単なCMR機能搭載すべての機能を無料で利用可能(2024年10月時点)PASELLYは、見込み客や取引先情報などの情報管理をできるCMR機能が搭載されている見積書作成ツールです。見積書の作成をはじめ、顧客情報の管理をできるので、営業活動をスムーズに進めやすいです。2024年10月時点では、すべての機能を無料で利用可能です。積極的に営業活動を行いたい方におすすめです。【Q&A】フリーランスの見積書に関するよくある質問最後に、フリーランスの見積書に関するよくある3つの質問にお答えします。自信を持って見積書を提出できるように、あらかじめ疑問を解消しておきましょう。見積書の提出=契約決定ですか?見積書の提出は、契約決定ではありません。見積書は、あくまで業務内容や金額の提案を示す書類です。クライアントが見積書の内容を承諾し、正式に契約書を交わすことで初めて契約が成立します。見積書に印鑑は必要ですか?フリーランスの見積書には、印鑑は必須ではありません。多くの場合、署名や印鑑がなくても、見積書として法的な効力が認められています。ただし、次の場合は見積書に印鑑を捺印しましょう。クライアントから印鑑の捺印を指示された場合フリーランスとしての信頼性をアピールしたい場合インボイス制度によって見積書の書き方は変わる?2023年10月から施行されたインボイス制度による、見積書の書き方への影響はありません。インボイス制度は、売上に対して発生する消費税の納税の制度です。そのため、交渉段階である見積書の作成には影響しません。これまでと同じ書式・書き方で対応できるので、ご安心ください。▼関連記事:インボイス制度がフリーランスに与える脅威!やるべき対策や今後の予想まとめ見積書は、クライアントと契約交渉をする際に使用する大切な書類です。クライアントは、見積書の内容を確認した上で、フリーランスに仕事を依頼するか検討します。そのため、業務内容や価格をしっかりと提示して、双方が納得のいく形で契約できる土台を作りましょう。また、見積書を提出したら、クライアントの反応を確認するようにしましょう。クライアントが、他のフリーランスとどちらを契約するか悩んでいる、依頼したいけれど予算に合わずに悩んでいる場合もあります。クライアントの反応を確認して、疑問点や懸念点を解消した上で、契約できるように話し合うようにしましょう。