フリーランス新法は、フリーランスや個人事業主が安心して働けるよう、就業環境の改善を目的とした法律です。労働基準法の適用外であるフリーランスにとっては、労働環境が整備される大きな転換点といえます。この記事では、フリーランス新法の概要や対象者を整理したうえで、施行前後の変化を解説します。あわせて、フリーランスが実務上注意すべきポイントも紹介するため、制度理解の基礎固めに役立ててください。フリーランス新法とは?フリーランス新法は、フリーランスや個人事業主の就業環境を守るため、発注事業者に6つの義務と7つの禁止事項を定めた法律です。2023年4月28日に成立し、2024年11月1日から施行されています。正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」で、一般的には「フリーランス新法」や「フリーランス保護新法」と呼ばれています。フリーランス新法の施行の背景▼出典:2024年公正取引委員会フリーランス法特設サイト|公正取引委員会フリーランス新法が施行された背景には、フリーランス人口の増加に伴い、発注事業者とのトラブルが顕在化してきたことがあります。フリーランスは労働基準法の適用対象外であり、有給休暇や最低賃金、労働時間、労災といった法的な保護がありません。そのため、取引上は発注事業者よりも立場が弱く、不利な条件を受け入れざるを得ないケースが多く見られます。実際、フリーランス協会のアンケートや、内閣府が2020年に公表した「フリーランス実態調査」では、約4割が取引先とのトラブルを経験しています。なかでも多いのが、以下のような報酬に関する問題です。発注時に報酬や業務内容が明示されない報酬の支払い遅延や未払いさらに、2023年10月にインボイス制度が始まったことで、免税事業者であるフリーランスに対し、報酬の不当な減額や契約終了が行われるのではないかという懸念も高まりました。こうした状況を受け、フリーランスが不当な扱いを受けず、安心して働ける環境を整えるための法整備が急務となり、フリーランス新法が制定されたのです。フリーランス新法の対象者・範囲フリーランス新法は、全てのフリーランスに一律で適用される法律ではありません。また、条文ごとに発注事業者に課される義務の対象範囲も異なります。そのため、どのような取引や立場が法律の対象になるのかを整理し、自分のケースに当てはまるかを確認することが重要です。ここからは、フリーランス新法がどの範囲に適用されるのかを具体的に見ていきましょう。【発注事業者】個人~企業まで幅広く対象フリーランス新法における発注事業者は「特定業務委託事業者」とされ、個人事業主から大企業まで幅広く該当します。ただし、発注事業者の状況によって、義務化される内容は異なります。判断基準となるのは、次の2点です。従業員を雇用しているかフリーランスに継続して業務を委託しているかフリーランス新法では、発注事業者に課される義務・禁止事項は合計13項目あります。このうち、従業員を雇用していない場合:1項目のみ義務従業員を雇用し、フリーランスへの業務委託期間が1か月未満の場合:4項目が義務従業員を雇用し、フリーランスへの業務委託期間が1か月以上6か月未満の場合:5項目が義務従業員を雇用し、フリーランスへの業務委託期間が6か月以上の場合:13項目全てが義務このように、発注事業者の体制や取引期間によって、求められる対応レベルが段階的に変わる点が特徴です。▼関連記事:世界一分かりやすく!採用企業が知っておくべきフリーランス新法【受注者】事業者から委託されているフリーランスが対象▼出典:2024年公正取引委員会フリーランス法特設サイト|公正取引委員会フリーランス新法では、フリーランスを「特定受託事業者」と定義しています。ただし、全てのフリーランスが対象になるわけではありません。対象となるのは、次の条件を満たす人です。従業員を雇用していないこと事業者から業務を委託されていることここでいう「従業員」とは、週20時間以上かつ31日以上の雇用が見込まれる人を指します。短時間・短期間の一時的な雇用者は含まれません。具体的には、次のようなケースがフリーランス新法の対象となります。フリーランスからポートフォリオサイトのデザインを委託されているWebデザイナー(業務を1人で完結している場合)企業からコラム作成を委託され、自身が企画を行い、執筆を別のフリーランスに依頼しているWeb編集ライター工事業者から建造物の解体を委託されている1人親方このように、「従業員を雇っていない立場で業務委託を受けているかどうか」が、対象判断のポイントになります。▼関連記事:世界一分かりやすく!フリーランス新法をフリーランス向けに解説フリーランス新法の対象外となるケース▼出典:2024年公正取引委員会フリーランス法特設サイト|公正取引委員会フリーランス新法の対象となるのは、事業者と契約し、業務委託として仕事を請け負っているフリーランスに限られます。そのため、一般の消費者を相手に取引している場合や、業務委託契約に基づかない取引は対象外です。具体的には、次のようなケースはフリーランス新法の適用外となります。一般消費者から、家族の似顔絵作成を依頼された場合ハンドメイドのアクセサリーをインターネット上で販売している場合作成したイラストを、業務委託契約を結ばずにインターネット上で企業へ販売した場合このように、「事業者との業務委託契約に基づく取引かどうか」が、フリーランス新法の適用可否を判断する重要なポイントになります。フリーランス新法の具体的な内容フリーランス新法では、発注事業者に6つの義務と7つの禁止事項が定められています。具体的な内容は以下の通りです。【6つの義務】取引条件は契約書などで明示する報酬は納品から60日以内に支払う正確で最新の募集情報を表示する育児や介護などと業務を両立できるよう配慮するハラスメント対策の体制を整備する中途解除する場合は最低30日前までに伝え、要望があれば理由も開示する【7つの禁止事項】成果物を不当に受領拒否してはいけない成果物を不当に返品してはいけない報酬は相場より著しく低く設定してはいけない報酬を不当に減額してはいけない商品の購入やサービスの利用を強制してはいけない発注業務に関係ない金銭や労務を不当に求めてはいけない追加費用なしで受領後にやり直しをさせてはいけないまた、先ほど触れたように、発注事業者が従業員を雇用しているかどうかや、フリーランスとの契約期間に応じて、以下のように義務化される項目の数が異なります。・従業員を雇用していない場合→取引条件は契約書などで明示する・従業員を雇用し、フリーランスへの業務委託期間が1か月未満の場合→取引条件は契約書などで明示する、報酬は納品から60日以内に支払う、正確で最新の募集情報を表示する、ハラスメント対策の体制を整備する・従業員を雇用し、フリーランスへの業務委託期間が1か月以上6か月未満の場合→取引条件は契約書などで明示する、報酬は納品から60日以内に支払う、正確で最新の募集情報を表示する、ハラスメント対策の体制を整備する+7つの禁止事項全て・従業員を雇用し、フリーランスへの業務委託期間が6か月以上の場合→6つの義務と7つの禁止事項全てフリーランス新法の施行により、フリーランスは支払いや納品をめぐるトラブル、不利益を受けやすい場面を事前に防ぎやすくなり、働く環境の改善が期待できます。以下では、フリーランス新法によって何が変わるのかを取引フロー別に解説します。実務に当てはめながら、どの場面が影響を受けるのかを意識して読み進めてみてください。【募集〜契約】フリーランス新法で発注事業者に義務化されることフリーランス新法では、募集から契約までの段階において、発注事業者に5つの義務が課されています。フリーランスの中には、口約束や関係性を理由に契約内容を曖昧にしたまま仕事を進めたり、無理な条件でも断れずに受け入れてしまったりした経験がある人も少なくありません。こうした不利益を避けるためにも、募集・契約段階で定められているフリーランス新法のルールを正しく理解しておくことが重要です。正確で最新の募集情報を表示する発注事業者がフリーランスを募集する際は、虚偽や誤解を招く表現を用いず、内容を正確に記載する義務があります。あわせて、募集情報を常に最新かつ正確な状態に保つことも求められます。【フリーランス新法で違反となる例】・応募を集める目的で、実際よりも高い報酬額を表示する・実際には担当できない上流工程の業務内容を記載する・募集終了後も求人情報を掲載し続ける募集段階から誤解を与えないことが、適正な取引の前提となります。取引条件は契約書などで明示する発注事業者がフリーランスと契約を結ぶ際は、書面やメールなどで、次の8項目を明示する義務があります。発注事業者とフリーランス双方の名称業務委託の合意日委託する業務内容納品日納品先検査を行う場合の完了日報酬額および支払期日報酬の支払方法(現金以外の場合)これまで口頭のみで仕事内容や条件を合意していた取引であっても、継続して発注する場合は、契約書や発注書などの書面を交わす必要があります。フリーランスにとっては、契約条件を明確に残すことが、後々のトラブル防止につながります。▼関連記事:契約書なしの業務委託は違反?フリーランスが知っておきたいリスクやトラブル時の対応策を紹介中途解除する場合は最低30日前までに伝え、要望があれば理由も開示する発注事業者は、フリーランスとの業務委託契約を解除、または更新しない場合、契約終了日の30日前までに、書面・FAX・メールなどで通知する義務があります。このルールは、6か月以上継続して業務を委託しているフリーランスが対象です。さらに、解除の通知後から契約満了日までの間に、フリーランスから解除理由の説明を求められた場合は、発注事業者はその理由を伝えなければなりません。【フリーランス新法で違反となる例】1年間継続して発注していたフリーランスに対し、12月1日から発注を停止するにもかかわらず、11月2日に通知するこのように、事前通知の期限と説明義務を守ることが、適正な取引の前提となります。▼関連記事:フリーランスが不当に契約解除されたらどうするべき?交渉のポイント・メールテンプレ・防止策を徹底解説報酬は相場より著しく低く設定してはいけないフリーランス新法では、1か月以上業務を委託する場合、発注事業者が相場より著しく低い報酬を一方的に定める行為(買いたたき)を禁止しています。【フリーランス新法で違反となる例】自社の外注予算だけを基準に、フリーランスと十分な協議を行わず、相場を大きく下回る報酬を一方的に決める報酬は、市場相場や業務内容を踏まえ、双方の合意のもとで決定することが求められます。▼関連記事:【事例】フリーランスは買いたたきに要注意!対処法や予防策を徹底解説発注業務に関係ない金銭や労務を不当に求めてはいけないフリーランス新法では、1か月以上業務を委託する場合、発注事業者が契約していない業務を無償で行わせることを禁止しています。【フリーランス新法で違反となる例】納品後に、契約書に記載されていない追加業務を無償で求める契約外の作業が発生する場合は、内容や報酬をあらためて合意することが前提となります。▼関連記事:【トラブル事例】フリーランスが契約外の仕事を受けるリスクとは?対応策や交渉術なども解説【納品】フリーランス新法で発注事業者に義務化されること続いて、納品時に起こりやすいトラブルを防ぐためのルールを解説します。発注事業者が修正を依頼し、成果物の品質を高めること自体は正当です。一方で、フリーランスの立場の弱さにつけ込み、不当なやり直しや過度な修正対応を求めるケースも見られます。ここで紹介する具体例を通じて、どこからが適正で、どこからが問題となるのかを理解し、トラブルを未然に防ぎましょう。追加費用なしで受領後にやり直しをさせてはいけないフリーランス新法では、1か月以上業務を委託する場合、発注事業者が追加費用を支払わずに発注内容を変更したり、受領後にやり直しを求めたりすることを禁止しています。【フリーランス新法で違反となる例】具体的な仕様を示さないまま作業を依頼し、納品後に「想像と違う」などの理由で、当初の発注内容と異なる修正を、追加料金なしで求める修正や変更が必要な場合は、事前に内容・範囲・追加報酬を合意することが不可欠です。▼関連記事:フリーランスに対して無償のやり直しが多発?不当な修正依頼を防ぐための方法と対処法を解説成果物を不当に受領拒否してはいけないフリーランス新法では、1か月以上業務を委託する場合、フリーランスに責任のない不当な理由で成果物の受領を拒む行為を禁止しています。【フリーランス新法で違反となる例】記事作成を依頼し、品質に問題のない成果物が納品されたにもかかわらず、「予算が急に減った」などの理由で、一部しか受け取らず納品を拒むまた、受領拒否には、発注の取り消しや納期を一方的に延期して受け取らないケースだけでなく、成果物の一部のみを受け取らない場合も含まれます。▼関連記事:フリーランスが納品物を受領拒否されたときの対応策!具体的な事例や体験談も成果物を不当に返品してはいけないフリーランス新法では、1か月以上業務を委託する場合、フリーランスに責任のない不当な理由で成果物を返品する行為を禁止しています。【フリーランス新法で違反となる例】動画広告用のイラスト制作を依頼した後、クライアント側の都合で広告制作が中止になったことを理由に、納品済みのイラストを返品する納品後の返品は、原則としてフリーランスの責任がある場合に限られます。▼関連記事:フリーランスが納品後に不当な返品を受けたら?違反となる事例や対処法を解説【支払い】フリーランス新法で発注事業者に義務化されること続いて、フリーランス新法で支払い時に発注事業者へ義務付けられる2項目を解説します。発注事業者とフリーランスの間では、報酬の支払いをめぐるトラブルが特に多いのが実情です。フリーランスは、フリーランス新法によって何が義務化されたのかを正しく理解し、不利益を避けることが重要です。報酬を不当に減額してはいけないフリーランス新法では、1か月以上業務を委託する場合、フリーランスに責任のない理由で、発注時に合意した報酬を減額することを禁止しています。この禁止には、銀行振込手数料を事前合意なく差し引く行為も含まれます。たとえフリーランスが減額に同意していたとしても、フリーランス側に責任がない場合は違反となります。【フリーランス新法で違反となる例】Web広告用動画制作を5万円で依頼したにもかかわらず、発注事業者側のクライアント都合によるキャンセルを理由に、2万円のみ支払う報酬額は、合意内容どおりに支払うことが原則です。▼関連記事:フリーランスが報酬減額に遭った場合の対応策!リスク回避のポイントや具体的な事例も紹介報酬は納品から60日以内に支払う発注事業者は、フリーランスから成果物を受領した日から60日以内のうち、できる限り短い期間で支払い期日を設定し、期日までに報酬を支払う義務があります。【フリーランス新法で違反となる例】LP制作を依頼し、納品期日通りに成果物を受け取ったにもかかわらず、社内確認が終わっていないことを理由に支払いを先延ばしし、納品から60日を超えて支払うただし、フリーランスに業務を再委託する場合は例外があります。再委託では、発注事業者は元の委託事業者(一次請け)からの支払い期日から30日以内であれば、報酬の支払い期日を定めることが可能です。そのため、成果物の納品日から60日を超えていても違反にならないケースがあります。【再委託の具体例】出版社(元委託事業者)が、フリーランス編集者に原稿作成を発注フリーランス編集者が、フリーランスWebライターに原稿作成を再委託Webライターが編集者へ1月1日に原稿を納品編集者が出版社へ1月20日に原稿を納品【報酬の支払い期日】出版社→フリーランスの編集者:2月28日フリーランスの編集者→フリーランスのWebライター:3月25日このケースでは、フリーランスのWebライターへの支払いは納品日から60日以上経過していますが、出版社からフリーランスの編集者への支払い期日(2月28日)から30日以内であるため、フリーランス新法違反には該当しません。このように、再委託がある場合は、「元委託事業者の支払い期日」を基準に判断する点が重要です。▼関連記事:業務委託で給料・報酬の未払い被害に遭ったら?フリーランスが今すぐすべき対処法や法的手段を解説▼関連記事:企業は再委託を許可するべきか?5つの判断基準と契約書の例文も紹介【就業環境】フリーランス新法で発注事業者に義務化されること続いて、フリーランスの就業環境の改善に関する義務項目を解説します。就業環境の整備は、フリーランス新法の大きな特徴の1つです。これまで見落とされがちだったポイントでもあるため、内容を整理しながらしっかり押さえていきましょう。育児や介護などと業務を両立できるよう配慮する発注事業者がフリーランスに6か月以上継続して業務を委託している場合、フリーランスが育児や介護と業務を両立できるよう配慮する義務があります。具体的には、以下のような対応が求められます。妊婦健診や家族の通院に対応できる打ち合わせ時間の調整リモートワークの許可就業時間の短縮や柔軟な稼働調整なお、業務委託期間が6か月未満の場合でも、発注事業者には、可能な範囲で配慮するよう努力義務が課されています。ハラスメント対策の体制を整備する発注事業者には、フリーランスがパワハラ・セクハラ・マタハラ(マタニティハラスメント)などを受けないよう、必要な措置を講じる義務があります。具体的には、以下のような取り組みが求められます。ハラスメント防止に関する研修の実施相談窓口の設置や外部機関への委託ハラスメント発生時の迅速かつ適切な事実確認と対応フリーランスであっても、安心して働ける環境を整えることが発注事業者の責任とされています。▼関連記事:フリーランス新法に基づくハラスメント対策とは?企業が取るべき措置を紹介商品の購入やサービスの利用を強制してはいけないフリーランス新法では、1か月以上業務を委託する場合、発注事業者がフリーランスに対して、特定の商品やサービスの購入・利用を強制することを禁止しています。発注事業者が「任意のつもり」で勧めた場合でも、フリーランスが断りづらい状況にあり、実質的に強制と判断されれば違反となる可能性があります。【フリーランス新法で違反となる例】自社コスメを扱うECサイト構築を委託しているフリーランスに対し、業務上不要であるにもかかわらず、案件遂行を理由に自社コスメを購入させる取引上の立場を利用した購入・利用の押し付けは認められていません。▼関連記事:【事例】フリーランスが注意すべき購入・利用強制とは?クライアントとの交渉術や予防策も紹介フリーランス新法に違反した場合のペナルティ発注事業者がフリーランス新法に違反した場合、指導・報告徴収・立入検査などの対象となります。さらに、命令に従わない場合や検査を拒否した場合には、最大50万円以下の罰金が科される可能性があります。また、違反行為を行ったのが発注事業者の従業員であっても、本人だけでなく発注事業者自体も罰則の対象となる点には注意が必要です。フリーランス新法は、公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省が管轄しており、違反内容に応じて各機関から措置や罰則を受けることになります。▼参考:2024年公正取引委員会フリーランス法特設サイト|公正取引委員会フリーランス新法における注意点フリーランス新法は、発注事業者に義務や禁止事項を課す法律です。ただし、フリーランス側は「自分には関係ない」「企業側が守るもの」と考えていると、違反に気づかないまま不利益を受けてしまう可能性があります。ここでは、フリーランス新法の施行を踏まえ、フリーランス自身が実務で意識しておきたいポイントを解説します。被害に合ったらフリーランス自身が申告する必要がある「報酬が支払われない」「クライアントからパワハラを受けた」など、フリーランス新法に違反している可能性があると感じた場合は、フリーランス自身が相談窓口を利用するなど、声を上げることが重要です。取引停止を恐れて相談をためらう人も少なくありませんが、通報したことを理由に取引を打ち切る行為は、取適法(旧下請法)における「報復措置の禁止」に該当し、下請法違反となります。不利益を受けたと感じたときは、将来の自分を守るためにも、躊躇せず相談することが大切です。▼参考:委託事業者の禁止行為|公正取引委員会仕事は口約束で請け負わないこれまで口頭のみで条件に合意して進めていた仕事があっても、今後は契約条件を必ず書面やメールで明記することが重要です。口頭だけで仕事を受け、不利益を被った場合、フリーランス新法の保護対象外となる可能性があります。実際、フリーランス協会の調査資料「フリーランス新法への期待と課題」では、フリーランスライターへの発注を口頭のみで行った経験がある発注事業者は約4割に上ります。書類作成の手間はかかりますが、トラブル時に自分を守れるのは記録だけです。条件が曖昧なまま仕事を請け負わず、契約内容を必ず形に残しましょう。契約書の確認や情報収集をしっかり行うフリーランス新法で違反が疑われる状況が生じた場合、行動を起こすのはフリーランス自身です。そのため、契約内容を正確に把握し、証拠を残す意識が欠かせません。そのため、まずは契約書や発注書を確認し、契約終了日・更新期限・業務範囲を明確にしておきましょう。追加業務が発生する場合は、追加料金について事前に合意し、メールやチャットなどで記録を残すことが重要です。あわせて、フリーランス新法の注意点だけでなく、業務の相場感も日頃から把握しておくと、条件交渉や不当な要求への対応に役立ちます。万が一、納品の拒否や返品を求められた場合は、理由を具体的に確認し、自分に責任があるかどうかを冷静に判断することが大切です。契約内容と事実を照らし合わせ、安易に受け入れない姿勢が自分を守ります。フリーランス新法に関する相談窓口フリーランス新法に関する相談窓口として、「フリーランス・トラブル110番」が設置されています。また、公正取引委員会では「申出窓口」も設置されています。相談・申出窓口の利用方法は、電話・メール・対面・オンラインと幅広く、匿名での利用も可能です。不安や疑問を感じた段階で、早めに相談するとよいでしょう。▼関連記事:フリーランスが利用できる相談窓口!無料のサービスも紹介フリーランス新法に関するQ&A最後に、フリーランス新法に関するよくある質問を紹介します。契約を結んだ時期や取引の状況によっては、フリーランス新法の適用有無が変わる場合もあります。自分のケースに当てはまるかを確認しながら、しっかりチェックしておきましょう。フリーランス新法が施行される前の既存契約にも影響する?フリーランス新法は、2024年11月1日以降に締結された契約が対象です。そのため、フリーランス新法の施行前に結ばれた既存契約にさかのぼって適用されることはありません。ただし、2024年11月以前に締結した契約であっても、施行日以降に内容を見直し、フリーランス新法に沿った形で再契約・更新した場合は、その時点からフリーランス新法が適用されます。契約の締結時期だけでなく、更新や条件変更の有無も判断ポイントになります。フリーランス同士の契約(再委託)もフリーランス新法の対象になる?フリーランス同士の契約(再委託)も、フリーランス新法の対象になります。そのため、従業員を雇用していないフリーランスが、別のフリーランスに業務を委託する場合も、法律の適用範囲に含まれます。ただし、義務化される項目の数は一律ではありません。発注側となるフリーランスが従業員を雇用しているかどうか、また契約期間の長さによって、課される義務の範囲は変わります。再委託であっても、「発注する立場」になる点を意識して対応することが重要です。海外在住の場合でもフリーランス新法の対象になる?海外在住のフリーランスであっても、条件次第でフリーランス新法の対象となります。公正取引委員会の資料によると、クライアント(発注事業者)が日本に所在している場合は、海外で働いていても適用対象です。特に、契約書に「本契約の準拠法は日本法とする」といった記載がある場合、フリーランス新法が適用されます。海外在住のフリーランスは、契約書の準拠法や発注事業者の所在地を必ず確認することが重要です。▼関連記事:【経験者が解説】海外でフリーランスとして働くには?シルバー人材センターもフリーランスに該当する?シルバー人材センター経由で働く場合も、フリーランス新法の「フリーランス」に該当します。シルバー人材センターは、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」に基づき、市区町村単位で運営される公益法人です。地域から請負・委任契約で仕事を受注し、主に60歳以上の会員に業務を提供しています。そのため、シルバー人材センターを通じて業務を行っている会員も、フリーランス新法上のフリーランスに該当します。これまでは、以下のような2段階の請負・委任契約が一般的でした。発注事業者↔シルバー人材センターシルバー人材センター↔会員しかし、フリーランス新法の施行により、以下のような形へ契約関係の見直しが進められています。発注事業者↔会員が直接、請負・委任契約を結ぶシルバー人材センターは仲介・調整・マッチング役を担うシルバー人材センター経由で働いている場合でも、誰と契約を結んでいるのかを意識して確認することが重要です。まとめフリーランス新法は、フリーランスが安心して働き続けられるよう、発注事業者に対して契約内容の明確化、適正な支払い、就業環境への配慮を求める法律です。労働基準法の適用外であるフリーランスにとって、フリーランス新法は大きな保護強化といえます。一方で、違反を是正するためには、フリーランス自身の通報や行動が欠かせません。「分かりにくい」「企業側の問題」と任せきりにせず、制度を理解し、不利益を見逃さない姿勢が重要です。フリーランスは、フリーランス新法を正しく理解し、自分の身は自分で守る意識を持ちましょう。