副業の年間所得が20万円以下の場合は、原則所得税の確定申告は必要ありません。ただし、住民税や消費税などの対応が必要となるケースがあるため、副業の年間所得が20万円以下の場合でも、事前に納税に関する知識を身につけておくことは重要です。今回は、副業の年間所得が20万円以下の場合にするべきことを解説します。「自分は確定申告が必要なのか分からない」「そのほかに行わなければならない手続きを知りたい」という人は、ぜひ参考にしてみてください。▼関連記事:副業所得が20万円を超えたら確定申告が必要!初めてでもわかる経費計上の仕方や手続きの流れガイド副業する際に押さえたい基本事項まずは、副業を始める際にチェックしたい基本事項を確認しましょう。副業で収入が発生すれば、金額によって税金の申告が必要になるため、収入と所得の違いや経費については正しい知識を持つことが重要です。収入と所得の違い収入とは、手元に入る金額のことです。例えば、副業イラストレーターがイラストを描いて、制作費用として10,000円を受け取った場合、10,000円はそのまま収入として数えられます。一方、所得とは、収入から経費を差し引いた金額を指します。例として、副業イラストレーターが仕事を受注するために、クラウドソーシングサービスを利用し、受注1件に対して報酬から20%の手数料が発生したとしましょう。手数料は経費にあたるため、10,000円の原稿料×20%で、経費は2,000円です。そのため、10,000円-2,000円で、所得は8,000円となります。副業をする上では、この収入と所得の違いを理解することが非常に重要です。副業で計上できる経費副業の収入が少額でも、金額に関わらず経費計上が可能です。ただし、副業で経費計上できるのは事業所得や雑所得が対象で、給与所得の経費は計上できません。副業でアルバイトや日雇い派遣などで給与所得を得ている人は、かかった費用を必要経費として計上できないため注意しましょう。副業で計上できる経費の例としては主に以下が挙げられます。副業でかかる経費の例経費の勘定科目・インターネット回線の月額料金・通信機器の購入費・FAX料金・電話の通話料・切手やはがきの購入代金通信費・文房具、名刺、コピー用紙などの事務用品・ガソリン代・電球・蛍光灯などの日用品消耗品費(※購入金額が10万円未満で、かつ使用可能期間が1年未満であること)・電気代・ガス代・水道代水道光熱費水道光熱費は、家事按分が必要となります。家事按分とは、自宅で仕事をしている人、つまり自宅と事務所を兼ねている人が経費を計上する際に、プライベート用と事業用の経費を適切な割合で割ることです。家事按分の割合は法律で定められているものではなく、自分で決める必要があります。電気代の決め方の例としては、以下が挙げられます。使用時間または使用日数を目安に按分するコンセントの数で按分率を計算する面積按分する例えば、1の基準で算出するケースを見てみましょう。自宅の電気代:1ヶ月2万円副業している時間:1ヶ月(31日)で1日約2時間、毎日副業をしていたケース⇒1ヶ月の10%その月に経費計上できる電気代は、2万円×10%=2,000円となります。税務署から問い合わせがあっても、しっかり説明ができるよう基準を明確にしましょう。▼関連記事:フリーランスの気になる経費事情!経費計上する時の注意点やQ&Aも▼関連記事:フリーランスは家賃を経費計上できる!家事按分の計算方法や確定申告の注意点を解説副業の年間所得が20万円以下だと確定申告が不要になる?確定申告は、1月1日~12月31日までの1年間の所得を計算・申告し、必要な税金を納付したり還付を受けたりする手続きです。帳簿付けをして確定申告書を作成し、毎年2月16日~3月15日の期限内に提出する必要があります。年間の所得から所得税が決まるため、確定申告を行えば納付が必要な税額が分かります。また、源泉徴収などで納めすぎている税金があれば、確定申告を済ませることで還付金を受け取ることも可能です。フリーランスはもちろん、ある程度の副業所得を得ている人は確定申告が必要です。しかし、副業の年間所得が20万円以下の場合は、確定申告は原則不要となります。ただし、単純に「所得20万円以下だから税金関係の手続きは何も必要ない」と認識していると、還付金を受け取ることができずに損をする可能性があるほか、税金の申告でミスやトラブルが起きる場合があるため、注意が必要です。副業の年間所得20万円以下でも確定申告をした方がよいケース副業の年間所得が20万円以下でも、場合によっては確定申告をしたほうがお得になることもあります。そのため、副業をしている人は、確定申告をしたほうがよいケースに該当しないかをチェックしておきましょう。医療費控除や住宅ローン控除などを受ける場合医療費控除や住宅ローン控除は、会社の年末調整による精算では対象になりません。そのため、確定申告を行って医療費控除や住宅ローン控除の申請をすれば、所得税の還付が受けられる可能性があります。年間で多くの医療費を支払った人や住宅ローンを返済している人などは、条件を満たすことで所得税控除の対象となるため、確定申告を行うとよいでしょう。ふるさと納税をする場合副業の年間所得が20万円以下の人がふるさと納税をする場合は、確定申告なしで寄付金控除を受けられる「ワンストップ特例制度*」を活用できます。しかし、ワンストップ特例制度を利用するためには、ふるさと納税を行った年の翌年1月10日までに、寄付した自治体に申請書を郵送する必要があります。申請書を提出し忘れた場合は、副業の年間所得が20万円以下でも確定申告が必要となります。また、ワンストップ特例の上限を超えた6団体以上にふるさと納税を行っている人や、給与所得のみでも年収が2,000万円を超える人などは確定申告が必須となります。*ワンストップ特例制度は、ふるさと納税先の自治体数が1年間で5団体以内に収める必要がある▼関連記事:フリーランスのふるさと納税のやり方は?確定申告までの流れやメリットも解説アルバイトなどで給与所得がある場合副業でアルバイトなどをして給与所得がある場合は、本業の勤務先とあわせて2ヶ所以上から源泉徴収されることがあります。この場合、源泉徴収によって所得税を支払いすぎている可能性があるため、確定申告を行うことで還付金を受けることができます。副業の給与所得で源泉徴収された場合は、確定申告を行って正しい税額を確定しましょう。年末調整で会社への控除書類を提出し忘れていた場合年末調整で所得税の精算を受ける場合は、事前に会社に控除書類を提出する必要があるため、控除書類を提出していなければ年末調整は行われません。この場合、所得税の過不足は精算されないため、正しく所得税額を申告するために確定申告を行う必要があります。なお、年末調整の時期より前に会社を退職したときなども、同様に自分で確定申告を行う必要があります。▼関連記事:副業は年末調整の対象になる?手続きが必要なケース・やり方などを徹底解説副業所得が20万円以下でも住民税の申告は必要副業の年間所得が20万円以下の場合、確定申告は不要ですが、住民税の申告は必須です。ここでは、住民税の申告手続きの内容や、住民税の申告が不要となるケースなどを解説します。住民税の申告とは?所得税の確定申告との違い確定申告は、税務署に対して所得額を申告し、所得税の納付や還付を受けることを目的としています。一方で、住民税の申告は、その年の1月1日に住民登録している市区町村に対して、前年の所得を申告するものです。住民税は、前年の所得に対してかかる税金で、申告した所得に基づいて算出されます。住民税の支払いには、「普通徴収」と「特別徴収」の2種類があります。普通徴収の場合は毎年5~6月ごろに自宅に納付書が届き、特別徴収の場合は本業の給与所得から天引きされます。副業所得が20万円以下だと住民税はいくらかかる?住民税は、前年の所得金額をベースに以下の計算式で求められます。所得金額ー所得控除額=課税所得金額(課税所得金額×税率10%)ー税額控除額*=所得割額所得割額+均等割(3,000~5,000円**)=住民税額*税額控除額:寄付金税額控除や住宅ローン控除、配当控除、外国税額控除などが該当する**自治体によって異なる住民税は、本業の給与所得と副業の所得を加味して決定されます。例えば、本業の年収が300万円で、副業の年間所得が20万円となる場合は、年間約30,000円(所得税が約10,000円、住民税が20,000円)の税金が上乗せされます。住民税の申告が不要となるケース以下の条件に当てはまる場合は、住民税の申告が不要となります。所得税の確定申告を済ませている会社で年末調整をしてもらっており、ほかに所得がない(副業をしていない)前年度の所得が住民税の非課税基準額以下である確定申告を済ませている場合は、住民税の申告を行う必要はありません。すでに前年度の所得を申告しているため、所得額をもとに住民税も決定されます。また、勤務先で年末調整を受けており、ほかに所得がない人も、会社を通じて給与所得額が自治体に伝わっているため不要となります。副業所得が20万円以下の場合の住民税の申告方法副業の年間所得が20万円以下の場合は、以下の方法で忘れずに住民税の申告手続きを済ませましょう。①市区町村のホームページなどから必要書類を用意する住民税の申告を行う際は、市区町村の公式ホームページなどを通じて、必要書類を漏れなく用意しましょう。必要書類としては、主に以下が挙げられます。住民税申告書収入証明書(源泉徴収票、帳簿、領収書など)控除証明書(社会保険料などの領収書、生命保険などの証明書、医療費控除の明細書など)本人確認書類住民税申告書は、各市区町村のホームページからダウンロード可能です。書き方などを確認しながら、間違いのないように記入しましょう。②原則3月15日までに書類を提出する住民税の申告書類などは、原則として3月15日までにお住まいの市区町村に提出しましょう。提出方法は、窓口へ直接提出、または郵送があります。③住民税決定通知書と納付書を確認して納税する住民税申告書を提出し、申告を済ませたあとは、6月ごろに住民税決定通知書が届きます。申告書類の記入時に、納付方法で普通徴収を選んだ人は、あわせて納付書も届くため、納付書を使用して期限内に納付してください。本業の給与所得がある人は、副業の所得も加味したうえで、給与から天引きされる特別徴収になる場合もあります。副業所得があるのに確定申告・住民税の申告をしないとどうなる?副業の所得があるにもかかわらず、確定申告や住民税の申告を忘れた場合、ペナルティが科される可能性があります。無申告加算税が15%加算される確定申告をしなかった場合は、所得税に無申告加算税が加算されます。税務調査を受ける前の期限後申告の場合は5%、税務調査を受けた後に申告する場合は15%*が加算されます。*50万円を超えている場合は、加算される税率が20%となる完納日までの延滞税が科される所得税と住民税を納めていない場合は、完納日まで延滞税が科されます。所得税の延滞税は、期限翌日から2ヶ月以内は年率7.3%、2ヶ月目以降は年率14.6%となります。住民税の延滞税は市区町村により異なるため、詳細は各自治体に確認する必要があります。概ね所得税の延滞税率と類似する税率で加算されます。副業所得20万円以下でもインボイス制度の影響はある?副業の所得が20万円以下の場合は、インボイス制度においてどのような影響があるのか気になる人も多いでしょう。副業の所得が少額だとしても、人によってはインボイス制度の影響があるため注意が必要です。インボイス制度とは?インボイス制度は、複数税率(消費税8%・10%)に対応した消費税の仕入税額控除額の方式です。正しくは「適格請求書等保存方式」といいます。売り手側であるインボイス発行事業者が、買い手側であるクライアントに対してインボイスを発行して保存することで、買い手側は仕入れ税額控除を受けられます。インボイス制度に登録できる事業者は、消費税納付が必須となる課税事業者のみです。▼関連記事:インボイス制度がフリーランスに与える脅威!やるべき対策や今後の予想課税事業者になると20万円以下でも消費税の納付が必要インボイス制度に登録できる課税事業者は、年間の売上が1,000万円を超える事業者などです。副業の年間所得が20万円以下の場合は、条件に該当しないためインボイス制度も関係ないように見えるでしょう。しかし、インボイス制度の開始によって、年間売上が1,000万円以下でも課税事業者となってインボイス登録する人は多く見られます。課税事業者となると、副業の年間所得が20万円以下でも消費税の納付が必要です。売上が1,000万円以下でもインボイスに登録する人が増えた背景には、発注側が消費税の納税負担を抑えるために、インボイスに登録できない免税事業者との取り引きを控えるケースが懸念されたことなどが挙げられます。年間所得が20万円以下の場合は、所得税の確定申告は不要ですが、課税事業者となった場合は消費税の申告が必要になることを覚えておきましょう。まとめ副業の収入がある人は、経費をもとに年間所得を計算し、所得税の確定申告が必要か判断する必要があります。副業の年間所得が20万円以下の場合は、原則として確定申告は不要です。ただし、副業の年間所得が20万円以下の場合でも、住民税の申告は必要なため注意しましょう。住民税申告は、市区町村の役所窓口などで手続きできるため、期限内に済ませることが大切です。このほか、インボイス制度の影響にも目を向けたうえで、税務に関わる申告手続きの要否を事前にチェックしておきましょう。