急激な物価高から国民の生活を守るために、2024年6月から「定額減税」が導入されました。「定額減税の仕組みがわからない」「フリーランスも定額減税の対象なの?」「減税措置を受けるために、何か対応するべきことはある?」などと疑問や不安を抱いているフリーランスの方は多いのではないでしょうか。この記事では、定額減税の仕組みや、フリーランスが定額減税の措置を受けるために必要な手続きを分かりやすく解説します。さらに、扶養家族がいる場合や副業フリーランス場合など、さまざまなケースに分けて知っておきたい知識や対応を解説するので、あわせて確認してくださいね。フリーランスも対象!定額減税の内容とは?結論からお伝えすると、定額減税は会社員だけでなくフリーランスも対象となります。この段落では、定額減税がどのような制度なのかをはじめ、どれくらい減税されるのか具体的なシミュレーションを詳しくお伝えします。定額減税とは?導入された背景や減税の対象者定額減税とは、所得額に関わらず、2024年分(一部は2025年分も対応)の所得税と個人住民税を一定額控除する制度です。所得税から3万円、住民税から1万円の合計4万円が減額され、扶養配偶者や扶養親族がいる場合は、1人につき4万円ずつ減税されます。定額減税は、急激な物価高に賃金の上昇が追いついていないことから、国民の金銭的負担を減らすために導入されました。総務省の統計データによると、2023年度の平均消費者物価指数は前年よりも4.0%上昇しています。2024年度の春闘では、33年ぶりの高い賃上げ率が話題となりました。しかし、賃上げが反映されるまで期間がかかるため、一時的でも減税によって手取りを増やして消費を促すのが目的です。なお、定額減税は以下の条件をすべて満たす人が対象となります。日本に居住している方2024年分所得税の納税者2024年の合計所得金額が1,805万円以下の方(※)※給与収入のみの方は、給与収入が2,000万円以下の方が対象となります。また、「子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除」が適用される方は、給与所得が2,015万円以下の方が対象です。▼参考:定額減税について|国税庁つまり、フリーランスも定額減税の対象になります。会社員などの給与所得者は、会社が手続きを進めて給与に反映されるため、自分で手続きを行う必要はありません。しかし、フリーランスの場合は、自分で対応しなければ定額減税を受けられないため、しっかり手続きの内容などを把握する必要があります。いつの所得税・住民税からいくら控除される?フリーランスと給与所得者では、定額減税の所得税と住民税が控除される時期が異なります。所得税住民税フリーランス2025年の2月または3月ごろ給与所得者2024年6月以降の源泉徴収分から3万円控除1万円控除後の税額を11分割し、2024年7月から翌25年5月の給与から天引きフリーランスは、2024年分の所得税と住民税を確定させる確定申告を、2025年の2月17日~3月17日に行います。(通常、確定申告の期間は2月16日~3月15日だが、2025年2月16日は日曜日、3月15日は土曜日にあたるため期間が変更になる)そのため、定額減税を受けられるタイミングが、確定申告後の2025年2月または3月ごろとなります。なお、控除額はフリーランスと給与所得者いずれも同じで、納税者本人が4万円(所得税から3万円、住民税から1万円)です。同一生計の配偶者や扶養親族がいる場合は、1人あたり4万円(所得税3万円、住民税1万円)ずつ減税されます。4人家族のケース別控除例例えば、4人家族の場合、控除額は4万円分×4人分=16万円となります。①夫婦共働きで、子ども(小学生と中学生)2人が夫の扶養に入っている家庭の場合夫の控除額:本人分の4万円+子ども2人の8万円(4万円×2人分)=12万円妻の控除額:本人分の4万円②夫が会社員で、妻が扶養内パート、子ども2人が夫の扶養に入っている家庭の場合夫の控除額:本人分の4万円+妻と子ども2人の12万円(4万円×3人分)=16万円フリーランスが所得税の定額減税を受けるための方法フリーランスが所得税の定額減税を受けるために必要な手続きを説明します。確定申告を行う、予定納税から差し引かれるの2つの方法があり、どちらの方法を選択するかによって定額減税を受けられる時期が異なります。それでは詳しくみてみましょう。①確定申告を行った後に控除を受ける2025年2月17日~3月17日に行う確定申告で、2024年分の所得税額が確定します。所得税額によって、納税するべき所得税が減るか、納税しすぎた分の還付金額が増えます。②予定納税から差し引かれる予定納税とは、その年の5月15日現在で確定している前年分の所得金額や、税額を元に算出された金額(予定納税基準額)が15万円以上の場合、その年の所得税を7月と11月に分割して前払いする制度です。前年の確定申告書を確認し、申告納税額が15万円以上であれば予定納税の対象となります。予定納税がある場合は、所得税が控除された後の納付書が届くため、届いた納付書を使って納付することで減税分が還付されます。そのため、予定納税の対象となるフリーランスは、早く定額減税を受けることができます。▼参考:所得税及び復興特別所得税の予定納税(第1期分)の納税をお忘れなく|国税庁住民税の定額減税に関する手続きは不要住民税の定額減税は、フリーランスも会社員と同様、必要な手続きはありません。お住まいの自治体から、住民税が控除された納付書が郵送されるため、納付書通りの金額を納めることで定額減税を受けられます。扶養家族がいる場合に定額減税の手続きでやるべきことは?扶養家族分の定額減税を受けるためには、上記に加えて別の手続きが必要となります。なかには、対応期日が設けられているものがあるので、事前にしっかりと確認して対応しましょう。定額減税の対象となる扶養家族は?まずは、「定額減税上の扶養」の定義を確認しましょう。定額減税の対象となる扶養家族は、「同一生計配偶者」または「扶養親族」です。同一生計配偶者納税者(被扶養者)と生計が同じ配偶者で、合計所得金額が48万円以下の方扶養親族被扶養者と生計が同じ親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)のうち、合計所得金額が48万円以下の方※いずれも、青色事業専従者として給与支払いを受ける人・白色事業専従者(青色事業専従者等)ではない必要がある▼参考:専門用語集|国税庁なお、2024年に生まれた子どもも所得税の定額減税の対象となります。しかし、住民税の扶養親族の判定は、前年1月1日から12月31日までの所得の状況によって決まります。そのため、2024年に生まれた子どもは住民税の定額減税の対象外となる点には注意が必要です。扶養家族分の控除は確定申告か予定納税額の減額申請が必要扶養家族分の控除を受けるためには、確定申告を行うか、予定納税額の減額申請を行う必要があります。確定申告を行う場合は、確定申告書に扶養家族を記載するだけで問題ありません。一方で、予定納税で扶養家族分の控除を受ける場合は、「予定納税額の減額申請」を行う必要があります。国税庁のホームページから、「予定納税額の減額申請書」をダウンロードのうえ、記入して提出すれば、予定納税額から扶養家族分が控除されます。第1期分と第2期分を合わせた申請期限はすでに過ぎていますが、第2期分のみの申請は2024年11月15日までなので、まだ申請していない方は早めに対応しましょう。▼参考:令和6年分所得税の定額減税Q&A(予定納税・確定申告関係)こんな場合はどうなる?フリーランスの定額減税に関するQ&A最後に、フリーランスが陥りやすい定額減税の疑問をまとめます。ケース別に解説しているので、1つずつ詳しく見てみましょう。2024年の途中でフリーランスになった場合に必要な手続きは?2024年中に会社を退職してフリーランスになった場合は、確定申告することで定額減税を受けることができます。また、退職金は源泉徴収では定額減税の対象外となっています。そのため、退職金を受け取った場合は確定申告を行い、定額減税を適用させましょう。フリーランスで給与所得がある場合に必要な手続きは?フリーランスのなかには、派遣やアルバイトなどと兼業して給与所得がある方もいるでしょう。給与所得がある場合は、扶養控除等申告書を提出しているケースと、提出していないケースで必要な手続きが異なります。扶養控除等申告書とは、給与所得者が年末調整を受ける際に、扶養状況などを申告するために必要な書類です。扶養控除等申告書を提出している場合は、給与所得の定額減税が受けられますが、申告書を提出していない場合は確定申告が必要となります。フリーランスとして扶養内で働いている場合に必要な手続きは?扶養内で働くフリーランスが行うべき手続きはありません。扶養内で働く人も定額減税の対象となります。手続きは被扶養者がまとめて行い、被扶養者が控除を受けられます。副業フリーランスの場合に必要な手続きは?本業が会社員で、副業でフリーランスとして働いている場合に、本人が行うべき手続きはありません。定額減税は、主たる給与の支払い者、つまり本業で所属する企業が行うこととなっているためです。なお、副業でも給与所得を得ている場合でも、定額減税は本業の企業の元でしか控除されません。扶養家族に給与を支払っている場合は定額減税の対象となる?給与を支払っている扶養家族がいる場合は、定額減税の対象にはなりません。国税庁によると、定額減税の対象となる扶養家族は、「青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと」と定義されています。▼参考:専門用語集|国税庁まとめ2024年6月に導入された定額減税は、所得税が3万円、住民税が1万円、一律で減額される制度で、フリーランスも対象となります。さまざまな情報が飛び交うため、「定額減税の対応は難しい」と思う方は多いかもしれません。しかし、フリーランスの場合はこれまで通り確定申告をしっかり行うことで、確定申告を終える2025年2〜3月ごろに定額減税を受けられます。フリーランスは、定額減税の対応方法や減税を受けられる時期が会社員と異なります。また、扶養人数によって減税額が異なるため、定額減税の対応を漏れなく行いましょう。