フリーランスや個人事業主も条件を満たせば定額減税の対象になります。しかし、会社員のように自動で適用されないため、自分で手続きを行う必要があります。この記事では、フリーランスとして定額減税を受けるためのポイントや、確定申告・住民税への対応方法を解説します。手続きをスムーズに進めるための申請方法なども紹介するので、ぜひチェックしてみてください。定額減税とは?2024年6月から実施された定額減税は、物価高騰による生活負担を軽減することを目的とした、国の特別な税制措置です。具体的には、納税者本人と、その配偶者や扶養親族1人につき、所得税から3万円、住民税から1万円、合計4万円が減税されます。例えば、フリーランス本人と配偶者、子ども1人を扶養している場合は、3人分として最大12万円(3人×4万円)が減税されます。フリーランスや個人事業主が定額減税を受けるためには確定申告が必要です。確定申告以外の特別な手続きは不要ですが、自分が対象か、どれだけ控除が適用されているかを確認しておくことが大切です。2025年は定額減税が実施される?2025年に新たな定額減税が実施される予定はないとされています。2024年の定額減税は、物価高による一時的な負担増を軽減するための緊急措置であり、国税庁や政府の公式情報でも「単年度限りの措置」と明言されています。そのため、2025年に向けて新たに同じような減税があると期待していた人にとっては、少し残念な内容かもしれません。ただし、2024年度分の定額減税を何らかの事情で受け取れなかった人や、控除しきれなかった分がある人は、2025年度分の住民税から控除される、あるいは補足給付金として支給されるケースがあります。2025年に定額減税が適用されるケース以下の条件に該当する人は、2025年度中に定額減税が適用される可能性があります。2025年に定額減税が適用されるケースポイント2024年の途中で退職・転職した人2024年6月以前に退職した場合は、職場で定額減税の処理が間に合わず、年末調整や確定申告で調整される。2024年6月2日以降に新たに就職した人定額減税の基準日(6月1日)以降に入社したため、会社で月次減税(給与天引き)が適用されない。年末調整や確定申告で調整、または2025年度の住民税で減税分が控除される。減税処理が遅れた・未処理だった人事務手続きの遅れや書類不備などで減税が適用されなかった場合、翌年度の住民税で調整されることがある。減税額が所得税・住民税の税額を上回り、控除しきれなかった人所得が低い、または扶養人数が多くて一度に減税しきれなかった場合は、2025年度の住民税で残額が控除、または「補足給付金」として一括支給される。2025年には新たな定額減税はないものの、「受け損ねた分」や「控除しきれなかった分」が適用される可能性は十分にあります。前年の確定申告書や住民税通知書を確認し、疑問があれば早めに税務署や自治体に相談しておくと安心です。定額減税の対象者定額減税は、以下の条件を全て満たす人が対象となります。日本に居住している令和6年分(2024年分)の所得税を納税している令和6年分(2024年分)の合計所得金額が1,805万円以下(※)※給与収入のみの場合は2,000万円以下、子どもや特別障害者等を扶養して所得金額調整控除の適用を受ける場合は2,015万円以下▼参考:定額減税について|国税庁つまり、フリーランスも要件を満たせば定額減税の対象になります。なお、合計所得金額には、事業所得のほかに雑所得や不動産所得も含まれるため、自分の年間収入が所得制限の上限に該当するかどうかを事前に確認しておくことが大切です。扶養内で働くフリーランスも定額減税の対象になる?扶養内で働いているフリーランスも、条件を満たせば定額減税の対象となります。ただし、扶養されている本人が直接減税を受けるのではなく、配偶者や親など、扶養している人の減税額が増える仕組みです。具体的には、2024年12月31日時点で合計所得金額が48万円以下で、生計を一にしている配偶者や親族がいる人は、「扶養親族」としてカウントされ、扶養している人に減税が適用されます。定額減税が対象外となるフリーランス定額減税は全てのフリーランスに適用されるわけではなく、一定の条件を満たさない場合は対象外となります。以下に当てはまるフリーランスは、定額減税の対象外となります。令和6年分(2024年分)の合計所得金額が1,805万円を超える住民税が非課税の世帯均等割(定額の課税)のみが課されている日本に住所がない1年以上日本国内に居所がないまた、フリーランスとして業務委託の副業をしている会社員は、「主たる給与(本業の会社からの給与)」に対してのみ減税が適用されます。副業分の報酬や、アルバイトなどの従たる給与からは、定額減税は直接差し引かれません。そのため、フリーランスとしての副業収入がある会社員は、本業の給与で減税される分を確認しておく必要があります。フリーランスが定額減税を受ける方法フリーランスは会社員とは異なり、自動的に減税が適用されるわけではありません。ここでは、フリーランスが定額減税を受けるために必要な手続きを紹介します。確定申告を通じて正しく対応することが大切です。確定申告を行って控除を受けるフリーランスが定額減税を受けるには、確定申告で必要事項を正しく記入することが基本です。具体的には、本人の情報に加えて、同一生計の配偶者や扶養親族がいる場合は、氏名や生年月日、マイナンバーなども申告書第二表に記載します。さらに、申告書第一表の定額減税欄に対象人数と控除額(本人および扶養親族1人につき3万円)を記入する必要があります。これらの情報を省略してしまうと、正しく減税が適用されない恐れがあります。特にマイナンバーの記入漏れや、扶養の登録ミスがよくあるため、記入内容をよく確認して提出しましょう。予定納税した人は手続き不要すでに2025年分の所得に対して予定納税を行っているフリーランスは、原則として定額減税のための追加手続きは不要です。予定納税分の税額から、自動的に本人分の減税額(3万円)が差し引かれます。ただし、扶養している家族分の減税も受けたい場合には、「予定納税額の減額申請書」という書類を税務署へ提出する必要があります。締め切り期間は以下の通りです。第1・2期分の減額申請をする場合:2025年7月15日まで(※すでに終了)第2期分のみの減税申請する場合:2025年11月1日~11月15日まで申請書を提出しなかった場合は、扶養家族分の減税が適用されないままとなってしまいます。家族を扶養している場合は、提出の有無で控除額に大きく差が出るため、忘れずに対応しましょう。▼参考:所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続|国税庁確定申告をしていないフリーランスが定額減税を受けるには?確定申告をしていないフリーランスは、定額減税を受けるために後からでも対処できる方法があります。適切な手続きやタイミングを逃すと、税額控除を受けられなくなる恐れもあるため、確定申告をしていないフリーランスがとるべき対応を詳しく見ていきましょう。期限後申告をする確定申告をしていなかったフリーランスが定額減税を受けるには、期限後申告で後日、申告手続きを行う必要があります。定額減税は自動で適用されるわけではなく、確定申告を通じて申告内容に反映させなければなりません。ただし、申告が遅れると還付の時期も先延ばしになるほか、申告がなかった期間によっては延滞税や無申告加算税といったペナルティが発生することもあります。そのため、期限を過ぎたとしても早めに対応することが重要です。住民税の定額減税の手続きは不要住民税の定額減税は、特別な手続きは原則として不要です。確定申告をしていないフリーランスでも、前年の所得に基づいて住民税が課税されていれば、自治体側で自動的に減税額(本人および扶養親族1人につき1万円)が反映されます。ただし、前年の所得情報が自治体に届いていない場合や、課税額が少なく控除が反映されにくい場合は、住民税の申告が必要になることがあります。念のため、住民税の決定通知書や納付書の明細を確認し、控除が適用されているかをチェックしましょう。フリーランスの定額減税に関するよくある質問最後に、定額減税についてよく寄せられる質問と、その具体的な対応方法を取り上げます。2024年中にフリーランスになった場合の必要な手続きなど、駆け出しフリーランスでも理解しやすいように解説します。定額減税はいつからいつまで受けられる?定額減税は、2024年分の所得税と、2024年度分の住民税(所得割)に対して期間限定で実施されています。所得税は、2024年6月1日以降に支払われる給与や報酬から、2024年12月分の給与や報酬までが控除されます。住民税は、2024年6月分の徴収が行われず、残りの減税額(1万円分)は2024年7月から2025年5月までの11ヶ月間で分割して控除されます。控除期間が終わると自動的に減税も終了します。一方で、先述した通り、2025年に定額減税が適用される例外のケースもあります。2024年の途中で退職や転職をした場合や、減税額が所得税や住民税の税額を上回り控除しきれなかった場合などのケースは、2025年度住民税の課税までが控除の対象です。つまり、2025年5月分までの住民税特別徴収や、2025年度の住民税における特別税額控除・補足給付金の支給で調整され、それ以降は新たな定額減税は行われません。2024年中にフリーランスになった場合に必要な手続きは?2024年に退職してフリーランスになった人は、勤務先で年末調整や月次減税が行われていないため、2025年2月から3月の確定申告で定額減税を申告する必要があります。この期間に確定申告をするのを忘れていた場合は、期限後申告が必要です。申告書第一表の定額減税欄に、自分自身や扶養している配偶者・子どもなどの人数と控除額(1人あたり所得税3万円)を記入し、第二表には氏名や生年月日、マイナンバーなどの情報を記載します。なお、住民税の定額減税は、居住する自治体で自動的に控除されるため、確定申告での手続きは不要ですが、念のため、住民税の決定通知書で減税が反映されているか確認しましょう。給与所得のあるフリーランスに必要な手続きは?フリーランスとして事業所得があり、さらにアルバイトやパートなどで給与所得も得ている場合は、給与所得と事業所得を合算し、自分で確定申告を行うことが必要です。アルバイト先で年末調整がされていても、ほかにフリーランスとしてどれだけ収入があるのか、扶養親族が何人いるのかなどを完全には把握できないため、減税額の過不足が発生する可能性があります。確定申告では、配偶者や扶養家族の人数や情報も申告書に記入することで、対象人数分の定額減税が適用されます。所得が複数にまたがる場合は、申告漏れや記載ミスがあると控除を受け損ねるため、必ず全ての所得と扶養情報を正確に申告しましょう。副業をしている会社員に必要な手続きは?副業で報酬を得ている会社員は、基本的に追加の手続きは不要です。定額減税は、主たる給与を支払っている勤務先が源泉徴収で自動的に適用します。そのため、本業の会社が給与から所得税を差し引いている場合は、会社側が控除の処理をしてくれる仕組みです。ただし、本業の給与から差し引かれる所得税が定額減税の金額よりも少ない場合は、確定申告を行って精算する必要があります。具体的には、扶養家族が多い人や、産休・育休などで給与が大きく減った人などが挙げられます。扶養家族に給与を支払っている場合は定額減税の対象となる?家族に給与を支払っている場合は、家族が「専従者」かどうかで定額減税の対象になるかが決まります。専従者とは、事業だけを手伝い、専従者給与を受け取っている家族のことを指します。専従者給与を受けている家族は税制上の扶養親族にならないため、フリーランスはその家族分の定額減税は受けられません。一方で、家族がほかにも仕事をしていて専従者でない場合は、年間の合計所得金額が48万円以下であれば扶養親族として認められ、事業主が定額減税を受けられます。また、専従者本人に税金が発生していれば、本人が自分の分として定額減税を受けることも可能です。まとめ2024年に導入された定額減税は、物価高騰による生活負担を軽減するための一時的な措置で、所得税と住民税あわせて1人あたり最大4万円の控除が受けられる制度です。会社員だけでなく、フリーランスも対象になりますが、フリーランスの場合は自分で確定申告を行わないと減税を受けられない点に注意が必要です。なお、確定申告をしていない人でも、期限後申告をすれば対応できますが、還付が遅れたり、延滞税のリスクが生じたりする可能性があります。2025年には新たな減税の予定はありませんが、昨年の控除が反映されていない人は、住民税で調整されるケースもあるため、通知書の確認も忘れずに行いましょう。