フリーランスは自分自身で確定申告を行い、所得税を納税する義務があります。しかし、「所得税」や「確定申告」という言葉は聞いたことがあっても、具体的な手続きや計算方法が分からない方も多いのではないでしょうか。この記事では、フリーランスが理解すべき所得税の基本的な知識から計算手順、節税対策まで分かりやすく解説します。初めて確定申告を行う方や、税金の知識を身につけたい方は、ぜひ参考にしてください。フリーランスが理解すべき所得税の基礎知識はじめに、フリーランスが理解すべき所得税の基礎知識を解説します。所得税とは何か、どのようなものが所得税として加算されるのかを確認していきましょう。所得税とは?所得税は、個人の所得に対してかかる税金です。フリーランスの場合は、売上から必要経費を引いた金額である「所得」に対して税金がかかります。所得税は、所得額が多いほど税率が高くなる「累進課税」が適用されています。所得に応じて、5〜45%の税率が課されます。所得税の対象となる所得の種類フリーランスの所得税は、次の10種類の所得が対象となります。利子所得配当所得不動産所得事業所得給与所得退職所得山林所得譲渡所得一時所得雑所得▼参考:所得税の仕組み|国税庁この中で、フリーランスが必ず対象となる所得が「事業所得」です。副業でフリーランスとして働いている人は、会社員やアルバイトなどの本業の収入である「給与所得」も合わせて申告する必要があります。どの所得が自分に該当するかを確認し、適切な申告を行えるようにしましょう。所得税の申告・納税スケジュールフリーランスは、1月1日から12月31日までの1年間の収入をもとに、確定申告を行います。確定申告期間は、毎年2月16日から3月15日までとなっており、期間内に適切に所得を申告し、納税する義務があります。この期間を過ぎてしまうと、延滞税や無申告加算税などの罰金が発生する恐れがあるので注意が必要です。所得税の納税方法は、次の7つから選択できます。振替納税e-Taxによる口座振替インターネットバンキングクレジットカード納付スマホアプリ納付コンビニ納付(QRコード)税務署で現金納付▼参考:【税金の納付】|国税庁納付期日や引き落とし日を事前に確認して、余裕を持って納税準備を進めるようにしましょう。▼関連記事:確定申告はフリーランスに必須!やり方や必要書類と経費管理のコツフリーランスの所得税の計算方法・納付までの流れここでは、所得税の計算方法と納付までの流れを解説します。計算方法と納付手順を理解して、期日までに対応できるようにしましょう!①収入から必要経費を差し引いて所得を計算するはじめに、年間の売上から必要経費を差し引いて所得を計算します。必要経費には、仕事に使った家賃や交通費、通信費、道具の購入費などが含まれます。例えば、年間売上が500万円、経費が150万円かかった場合、所得は次のように計算されます。【計算例】売上500万円-経費150万円=所得350万円ここで算出した所得350万円が、所得税を計算するためのベースとなります。②所得控除を適用して課税所得を計算する次に、所得控除を適用して、課税所得を算出します。所得控除は、所得税を減らす制度です。控除には、所得2,400万円以下の人が一律で適用される基礎控除や、生命保険料控除など計15種類の所得控除があります。所得控除の種類は、国税庁のホームページで確認してください。所得控除の合計額を100万円と仮定した場合、課税所得は次のように計算されます。【計算例】所得350万円ー所得控除100万円=課税所得250万円③所得税率を適用して所得税額を計算する次に、課税所得に対して所得税率をかけて、所得税額を求めます。所得税率は、課税所得額ごとに比率が変わる累進課税が適用されます。累進課税では、所得が多いほど税率が高くなります。課税所得が250万円の場合は、税率が10%、控除額が97,500円です。【計算例】課税所得250万円×所得税率10%-控除額97,500円=所得税額152,500円▼参考:No.2260 所得税の税率|国税庁④復興特別所得税を加算する所得税額を計算したら、復興特別所得税を加算します。復興特別所得税は、東日本大震災の復興に使用される税金です。令和19年12月31日まで適用され、税率は一律2.1%となっています。復興特別所得税は、所得税額に復興所得税率をかけた金額です。【計算例】所得税額152,500円×復興特別所得税率2.1%=復興特別所得税3,202円所得税額152,500円+復興特別所得税3,202円=所得税合計155,702円⑤税額控除を適用して最終的な納税額を確定させる次に、所得税から住宅ローン控除や寄附金控除などの税額控除を差し引きます。税額控除とは、所得税の課税対象金額を減額できる制度です。控除額が大きければ大きいほど、納税額も少なくなります。例えば、税額控除が20,000円ある場合は、以下のように計算されます。【計算例】所得税合計155,702円-税額控除20,000円=最終納税額135,702円⑥最終的な納税額を確認して納付する最後に、算出した納税額を納付しましょう。納付方法は、口座振替やクレジットカード払いなど7種類あります。納付期限を守らないと延滞税が発生する恐れがあるので、余裕を持って準備を進めましょう。フリーランスが利用できる所得控除・節税対策ここからは、フリーランスが利用できる所得控除や節税対策を6つ紹介します。複数の控除や節税対策につながる制度を利用することで、所得税の負担額を軽減できます。自分が利用できる所得控除や節税対策を確認していきましょう。青色申告特別控除青色申告特別控除は、最大65万円の控除を受けられる制度です。確定申告の際に、次の条件を満たすと65万円の控除が適用されます。確定申告を「青色申告」で申請すること複式簿記で、仕訳帳および総勘定元帳を作成・記帳することe-Tax(電子申告)で申請する、もしくは仕訳帳および総勘定元帳の電子帳簿保存を行うこと▼参考:No.2072 青色申告特別控除|国税庁青色申告特別控除は、まず確定申告を青色申告で申請することが条件です。加えて、複式簿記で記帳し、e-Tax(電子申告)で申請すると65万円の控除が適用されます。青色申告でも、郵送での申告や税務署での直接申告では、控除額が55万円に減額されるので注意してください。▼関連記事:フリーランスは青色申告で確定申告しよう!控除の活用や節税のコツを解説基礎控除基礎控除は、すべての納税者に適用される控除で、所得額から一律48万円が差し引かれます。特別な手続きは不要で、自動的に適用されます。医療費控除医療費控除は、1年間に支払った医療費が一定金額を超えた場合に、超過分を所得から差し引くことができる控除です。自分の医療費だけでなく、配偶者や親族の医療費も対象になります。医療費控除は下記のいずれかが適用されます。総所得金額が200万円未満の場合:総所得金額等の5%が控除対象額総所得金額が200万円以上の場合:10万円を超えた部分が控除対象額例えば、年間15万円の医療費を支払った場合は、5万円が医療費控除として差し引かれることになります。医療費控除を利用する場合は、治療費や薬代などの領収書を大切に保管しておきましょう。小規模企業共済・iDeCo小規模企業共済やiDeCo(個人型確定拠出年金)は、フリーランス・中小企業向けの将来の年金受給額を増やす制度です。掛け金は全額所得控除の対象となるため、年間の掛金がそのまま所得から差し引かれます。所得税の負担と、将来に向けた備えをまとめてできるので、ぜひ活用してみてください。▼関連記事:小規模企業共済とは?フリーランスの将来の備えと節税効果を解説▼関連記事:フリーランスがiDeCoに加入するメリット・デメリットは?年代別シミュレーションも紹介ふるさと納税ふるさと納税は、応援したい自治体に寄付をすると、寄付額が所得税から控除される制度です。寄付をすると、特産品などの返礼品を受け取れるため、普段の自分へのちょっとしたご褒美をあげながら、節税対策ができます。例えば、3万円を寄付すると、自己負担額の2,000円を差し引いた2万8,000円が控除額として適用されます。ただし、控除額には年収や世帯構成に応じた限度があるため、寄付を行う前に公式サイトなどで自分の限度額を忘れずに確認しましょう。▼関連記事:フリーランスのふるさと納税のやり方は?確定申告までの流れやメリットも解説セルフメディケーション税制セルフメディケーション税制は、健康の促進と疾病予防を目的とした所得控除です。対象の医薬品購入額が、年間12,000円を超えた場合に、超過分が控除額として適用されます。例えば、対象医薬品の購入額が年間20,000円の場合は、8,000円が控除されます。ただし、セルフメディケーション税制は、健康診断や人間ドック検査費用は対象外となるので注意しましょう。フリーランスが正しく確定申告するためのコツ正しい所得税を算出して、納税をするためには、適切に確定申告を進めることが必要です。ここでは、フリーランスが正しく確定申告をするためのコツを3つ紹介します。フリーランス向けの会計ソフトを導入する確定申告をスムーズに進めるために、フリーランス向けの会計ソフトの導入をおすすめします。会計ソフトは、銀行口座やクレジットカードと連携させることができます。取引データを自動で取り込めるため、記帳の手間を大幅に省けます。また、会計ソフトによっては、請求書の作成や確定申告の手続きもできるので、日々の経理業務の負担を軽減できます。少しでも経理業務の負担を軽減し、本業に集中できる時間を確保するためにも、フリーランス向けの会計ソフトを導入しましょう。関連記事にて、おすすめのフリーランス向け会計ソフトを紹介しているので、ぜひあわせてご覧ください。▼関連記事:フリーランスにおすすめの会計ソフト8選!選び方・比較ポイントを解説経費を正しく計上する経費を正しく計上することは、課税所得を減らして、納税額を減らすことにつながります。経費として認められる支出は、事業に関連する支出です。例えば、在宅で仕事をしているフリーランスは、家賃や光熱費の一部を経費として計上できます。その他にも、取引先へ訪問した際の交通費や、業務中に使用しているWi-Fi代も経費として計上可能です。経費を漏れなく申告することで、税金の負担を軽減できます。フリーランスの経費事情を解説している以下の記事を参考に、何が経費として認められるか確認しておきましょう。▼関連記事:フリーランスの気になる経費事情!経費計上する時の注意点やQ&Aも▼関連記事:フリーランスは家賃を経費計上できる!家事按分の計算方法や確定申告の注意点を解説税理士に委託する確定申告に不安がある場合は、税理士に経理業務を委託することもおすすめです。税理士に委託することで、確定申告のミスを防げ、節税対策のアドバイスもしてもらえます。特に、売上が増えてきたり、仕事が忙しくて経理業務が負担になってきたりしたら、早めに税理士に相談すると安心です。委託費用はかかりますが、時間と労力を節約し、フリーランスとしての仕事に集中できる時間を増やせます。▼関連記事:確定申告を税理士に依頼・丸投げする費用は?メリットや注意点も解説【Q&A】フリーランスの所得税に関するよくある質問最後に、フリーランスの所得税に関するよくある質問に3つお答えします!疑問を解消して、安心して所得税の納付や、確定申告ができる状態を目指しましょう。確定申告を忘れた場合や所得税を支払わなかった場合のペナルティは?確定申告を忘れたり、所得税を期限内に支払わなかったりした場合は、延滞税や無申告加算税が課される恐れがあります。延滞税は、納付期限を過ぎてから支払うまでの期間に応じて計算されます。無申告加算税は、未申告の場合に課されます。これらの罰金は、納付期限が過ぎれば過ぎるほど、金額が大きくなるので、必ず期限内に申告・納付するよう心がけましょう。万が一、所得税の納付を忘れてしまった場合は、早急に支払うようにしてください。会社員・アルバイトの収入もある場合の確定申告の方法は?会社員やアルバイトとしての収入がある場合は、フリーランスとしての事業所得と合わせて確定申告が必要です。確定申告をする際は、会社員・アルバイトとしての給与所得と、フリーランスとしての所得である事業所得を合わせた総所得を申告します。給与所得は源泉徴収票をもとに記載する必要があるので、必ず源泉徴収票を受け取るようにしましょう。▼関連記事:会社員とフリーランスは掛け持ちできる!成功させるコツや確定申告の注意点などを解説▼関連記事:【体験談】フリーランスとアルバイトは兼業できる!メリット・デメリットを解説フリーランスも定額減税は適用されますか?フリーランスも定額減税は適用されます。ただし、会社員やアルバイトなどの給与所得者と異なり、定額減税が適用されるタイミングは、次のいずれかになります。予定納税者の場合:令和6年・第1期予定納税のタイミングで減税予定納税者ではない場合:令和6年度の確定申告後予定納税者とは、前年の所得や税額をもとに計算した「予定納税基準額」が15万円以上の方です。該当する場合は、所得税を前もって納める義務があり、7月と11月の年2回納税します。定額減税の適用タイミングは、予定納税者であるか、予定納税者ではないかによって異なることを覚えておきましょう。▼関連記事:フリーランスも定額減税の対象!減税の仕組みや必要な手続きなどを分かりやすく解説まとめフリーランスは、所得税の計算方法や節税対策を理解し、正しく確定申告を行うことで、所得税の負担を軽減できます。税負担を最大限に減らすためには、経費を適切に計上し、所得控除を活用することが大切です。不安があるときは、税理士に相談すると安心感を得られるでしょう。所得税の仕組みを理解して、税負担を減らせるようにしていきましょう。