機械学習エンジニアは、AI分野で注目を集めるとともに、専門性の高いスキルが、さまざまな業界で求められています。実際、機械学習エンジニアって何をしてるの?スキルが高い機械学習エンジニアは、何ができるの?機械学習エンジニアのキャリアパスや年収は?この記事では、機械学習エンジニアの仕事内容や必要なスキル、キャリアパスや年収も解説します。フリーランスの機械学習エンジニアを目指している方は、フリーランスに関する情報も参考にしてみてください。▼関連記事:フリーランスエンジニアになるには?必要なスキルやメリット・デメリット機械学習エンジニアとは?機械学習エンジニアは、コンピューターが特定のタスクを人の介入なしに学ぶ方法を、開発・実装するエンジニアです。機械学習は、コンピューターに「学び方」を教えるための技術の一つです。これは、人が直接プログラムするのではなく、大量のデータから自動的に学び取ることを指します。一般的には、機械学習エンジニアは、データから学習して特定のタスク(予測、分類など)を実行するための数学的な構造やアルゴリズムであるモデルを「訓練」します。そのモデルが新しいデータに基づいて正確な予測や判断を行えるようにします。機械学習エンジニアが活躍する業界の幅は広く、医療や金融、天気の予測など、さまざまな場面で数学や統計学の知識が求められます。AIエンジニアとの違い機械学習エンジニアは、主に「機械学習」の技術を中心に活動します。AIエンジニアは、機械学習だけでなく、より広範な「人工知能」技術全体を取り扱います。人工知能は、機械学習を含む多くの技術や手法から構成されており、人間の知的な活動を模倣するコンピューターのシステムを構築することを目指しています。そのため、AIエンジニアは、言語処理や画像認識など、さまざまな領域の知識とスキルが求められることが多いです。データサイエンティストとの違いデータサイエンティストは、大量のデータを解析し、その中から有意義な情報やインサイトを引き出す専門家です。データサイエンティストは、統計学やデータ解析の技術を使用して、ビジネス上の問題を解決するための情報を提供します。機械学習の技術も使うことがありますが、データサイエンスの主な目的は、データから価値ある情報を見つけ出すことに重点を置いています。すなわち、機械学習エンジニアは「どのようにして機械を学習させるか」に焦点を当て、データサイエンティストは「データからどのような知見を得るか」に焦点を当てています。▼関連記事:データサイエンティストの仕事とは?年収やAIと共存していくキャリア展望機械学習エンジニアの仕事内容機械学習エンジニアの具体的な仕事内容には、さまざまなものがあり、各フェーズで求められるスキルも異なります。機械学習モデルの設計機械学習エンジニアの主要な役割は、機械が学習を行うための「モデル」を設計することです。機械学習のモデル設計は、データ取得、前処理、モデルによる推論、後処理、エンドユーザへの見せ方やUI/UX、学習パイプライン、リリース判定基準、監視通報などのスキルが必要です。どのように機械が学習できるようにするのかを設計し、システムの中でうまく作動するように、開発も行います。機械学習モデルのトレーニング機械学習モデルのトレーニングとは、大量のデータを使用してコンピューターに特定のタスクを学習させるプロセスを指します。設計した機械学習モデルに基づいて、効果的な学習ができるようにする役割を担っています。機械学習エンジニアは、適切なデータの選択や、学習の速度や質を調整するためのパラメータの調整など、様々な専門的な知識や技術が求められます。機械学習モデルの評価機械学習モデルの評価とは、機械が学習した結果が実際に期待通りに機能するかを確かめる作業です。この評価のプロセスで、エンジニアはモデルの「精度」や「適合率」、「再現率」などの指標を確認します。これらの指標は、モデルがどれだけの確率で正確に予測や判断をするかを示しています。もし、モデルの評価結果が期待値に達していない場合、機械学習エンジニアはモデルを改善するための調整を行います。機械学習モデルを組み込んだシステムのデプロイデプロイとは、一言で言うと、開発したシステムを実際の環境に移し、実用化する作業のことを指します。機械学習モデルも、学習や評価を終えた後、実際のサービスやアプリケーションに組み込む必要があります。この組み込む作業を、デプロイと呼びます。機械学習エンジニアは、このデプロイの過程で、モデルが実際のサービス環境でスムーズに動作するかを確認し、必要に応じて調整を行います。これには、モデルの動作速度の最適化や、実際のデータに対する予測の正確性の保証など、多くの作業が含まれます。機械学習エンジニアに必要なスキル機械学習エンジニアは、一般的なシステムエンジニアとは異なり、専門性の高いスキルが求められます。最初から全てのスキルが必須ではないので、自分の業務に合わせてスキルを身につけていきましょう。プログラミング言語スキル機械学習エンジニアに必要な基本的なプログラミングスキルとして、Pythonが挙げられます。Pythonは、機械学習分野で最もポピュラーなプログラミング言語で、多くのライブラリやフレームワークが利用できます。プログラミングの基本を理解していることに加え、変数の使い方、ループの作成、関数の定義など、一般的なプログラムの構造を理解することが含まれます。その他に、R、Julia、Java、JavaScript、C++などの言語スキルがあるとデータの解析やシステム開発の場面で役に立つでしょう。機械学習ライブラリ/フレームワークの知識機械学習エンジニアは、多くのツールやライブラリを使って作業を効率的に進めます。以下は、機械学習エンジニアが仕事で頻繁に使う、主要な機械学習のライブラリやフレームワークです。Scikit-learn:Pythonで書かれた、初学者から上級者まで幅広く利用される機械学習ライブラリです。Scikit-learnは、基本的なアルゴリズムから高度な手法まで、多岐にわたる機能が備わっています。TensorFlow: Googleが開発したオープンソースの機械学習フレームワークが、TensorFlowです。深層学習のモデルを構築することができます。Keras:TensorFlowをさらに簡単に扱えるようにデザインされたのが、Kerasです。高水準のニューラルネットワークライブラリですが、初心者にも取り組みやすいのが特徴です。PyTorch:Facebookが開発した深層学習フレームワークであるPyTorchは、研究者からの支持が高く、柔軟性と速度の点で高い評価を受けています。XGBoost/LightGBM:勾配ブースティングを用いたツリーを基にした、モデルのためのライブラリです。XGBoost/LightGBMは、高い予測精度と速度を持つため、多くの機械学習コンペティションなどで利用されています。データ操作スキルと前処理技術機械学習エンジニアは、コンピューターにデータを学習させて、特定のタスクを自動で行わせる技術を扱います。データの探索 (EDA)において、データを最初に観察することで、その特性や傾向を把握します。その中で、通常範囲から大きく外れたデータは、学習の障害となることがあります。機械学習エンジニアは、データを適切に検出し、取り扱いを決定することが求められます。例えば、データの分布や外れ値、欠損値の確認がこれに該当します。データセットには、情報が入力されていない「欠損」があることが多いです。これをどのように取り扱うか(平均値で埋める、欠損部分を取り除くなど)は、重要な判断ポイントとなります。文字やラベルで表現されるデータを、コンピューターが理解しやすい数値形式「カテゴリカルデータ」に変換する技術も必要です。この「前処理技術」において、データの尺度や範囲を統一することで、機械学習モデルが学習をスムーズに行えるようにします。ディープラーニングのスキルディープラーニングとは、機械学習の一部門で、人の脳の神経回路網を模倣した「ニューラルネットワーク」の深い層を使って学習する技術のことを指します。機械学習エンジニアも、基本的なニューラルネットワークの理解が必要です。ニューロンの動作原理や活性化関数、損失関数といった基本的な要素は知見を蓄えましょう。その他、画像や映像の処理に特化したニューラルネットワークの技術(CNN)や、時系列データやテキストデータの処理に適した技術(RNN)もあるとよいでしょう。ディープラーニングのフレームワークとして、TensorFlowやPyTorchなどを使いこなせると、モデルの設計や学習が迅速に行えます。データベースとSQLのスキル機械学習エンジニアのタスクは、数学やアルゴリズムの知識だけでなく、実際に大量のデータを効果的に取り扱う能力も求められます。この際、データベースとSQLのスキルが重要になってきます。なぜなら、データベースは情報の大きな保管庫のようなもので、SQLはその保管庫から必要な情報を引き出すための鍵のような役割を果たすからです。データベースの基礎知識に加え、SQLの基本操作として、SELECT文やWHERE句を使用して、特定の情報をデータベースから取得する方法は、データ解析の際に非常に役立ちます。JOINやGROUP BYといったSQLの高度な操作を駆使して、複数のテーブルから情報を組み合わせたり、データを集約したりする技術もあるとよいでしょう。ビッグデータ技術ビッグデータはその名の通り「大きい」ため、通常のデータベースでは扱えません。分散ストレージシステムや特定のデータベースを使って、データを効果的に収集・保存する方法を知っていることが重要です。ビッグデータを効果的に処理するためのツールやフレームワーク(例: HadoopやSpark)の使い方を理解し、大量のデータを迅速に分析する技術が必要です。将来のデータ増加を見越して、システムをスケーラブルに設計・運用するスキルも求められます。特殊データのクリーニングやリアルタイム分析ができると、 一部のビジネスで活躍できることもあります。ソフトスキル機械学習エンジニアは、専門的な知識や技術力が求められますが、技術以外のスキル、いわゆる「ソフトスキル」がとても大切です。コミュニケーション能力:機械学習のプロジェクトは、多くの場合、チームで行われます。エンジニア自身の考えや進捗を、チームメンバーや他の部門の人々と効果的に共有できることは、プロジェクトを円滑に進める上で不可欠です。問題解決力:機械学習の実際の作業は、多くの課題や問題に直面することがよくあります。これに対し、柔軟に考えて最適な解決策を見つけ出す能力は高く評価されます。持続的学習の姿勢:ITや機械学習の分野は日々進化しています。新しい技術や方法論が出てきたときに、自ら学ぶ姿勢を持つことで、常に最前線で活躍することができます。理解力・共感力:ユーザーやクライアントのニーズを深く理解し、それを機械学習のソリューションに反映させるための感受性や共感力も大切です。機械学習エンジニアの年収求人検索サイトindeedの調査では、一般的な機械学習エンジニアの年収は約650万円でした。国税庁の民間給与実態統計調査結果では、日本のサラリーマン(正社員)の平均年収が508万円となっており、機械学習エンジニアは高い給与水準だといえるでしょう。さらに、正社員で採用できないようなプロ人材は、フリーランスとして活躍している傾向にあります。フリーランスや副業のプロ人材のマッチングサービスを提供するSOKUDANの調査では、フリーランスの機械学習エンジニアの平均年収は1,251万円です。転職市場での機械学習エンジニアの採用は激化しており、スキルを磨きながら、転職によって年収を上げることが可能です。フリーランスの機械学習エンジニアの案件は、高単価なものが多く、複数の案件を掛け持ったり、長期で安定した報酬を得ているフリーランスも多いです。▼関連記事:バックエンドエンジニアのフリーランス平均年収900万!92%が年収600万円超!98%がリモート可機械学習エンジニアのキャリアパス機械学習エンジニアのキャリアパスは、一通りではありません。知識や経験を順当に積んでいった場合の、機械学習エンジニアのキャリアパスを解説します。初級レベルの機械学習エンジニア関連する学位を持つ者(例:ML(Machine Learning)/AIを専門とするコンピューターーサイエンス)や厳格なMLのブートキャンプを完了した者がここからスタートします。より経験豊富なMLエンジニアの監督の下で、データクリーニング、基本的なモデルの訓練、デプロイメントなどの経験を積みます。中級レベルの機械学習エンジニア/チームリーダー数年の経験を積んで中級レベルの機械学習エンジニアになると、業務の幅が広がります。MLアルゴリズムの設計と実装、本番環境でのモデルのチューニング、データ収集からモデルのデプロイメントまでのMLライフサイクルに貢献します。MLプロジェクトを主導し、後輩エンジニアを指導することもあります。上級レベルの機械学習エンジニア/機械学習アーキテクト上級の学位(Ph.D.など)を持つような機械学習エンジニアになると、MLの最先端を進めることに焦点を当て、新しいアルゴリズムの開発や可能性の境界を押し広げることに取り組みます。その結果を学術雑誌や業界のカンファレンスで公開することが多いです。データエンジニアリングチームやソフトウェアエンジニアリングチームと緊密に連携して、MLをより広範なシステムに統合します。機械学習プロダクトマネージャー/AIディレクター機械学習のプロダクトマネージャーへ昇進すれば、技術的なMLの知識とプロダクトマネージメントのスキルを組み合わせて、ML駆動型の製品の開発を監督します。顧客との対話を行い、製品要件を定義し、MLソリューションがビジネスの目標と一致していることを確認します。AIディレクターは、AIというより広域な分野で、複数のMLチームや全体のML/AI部門を監督します。戦略的な計画、予算編成、会社全体の戦略との整合性の確保も行うでしょう。AI最高責任者/CTOAIの最高責任者やCTOのポジションが、AI中心の企業での最高ポジションでしょう。この役職は、エグゼクティブレベルで、会社の全体的なAI戦略を設定します。最新のMLとAIの進歩を利用して、ビジネスが競争力を保つことがミッションです。機械学習エンジニアからのキャリアチェンジ機械学習エンジニアとして一定のキャリアを歩んだのちに、キャリアチェンジすることも可能です。データサイエンティスト:データの探索、仮説の生成、特徴量エンジニアリングの初期段階に関与することがある職種です。ディープラーニングスペシャリスト:ニューラルネットワークやCNN、RNNなどのアーキテクチャに焦点を当てています。NLPエンジニア:人の言語を処理・理解するのに特化する職種です。コンピュータービジョンエンジニア:ビジュアルデータに基づいて、意思決定を下す能力を機械に持たせる技術を担当します。ロボティクスエンジニア:さまざまなタスクのためにロボットにMLを組み込むエンジニアです。最後に、機械学習の分野は非常に広く、絶えず進化しています。上記のキャリアパスは、一般的な軌道を示しています。実際のキャリアパスは個人の興味、機会、取り組んでいるMLの具体的な分野によって異なる場合があります。未経験から機械学習エンジニアになる方法IT未経験から機械学習エンジニアになることは、不可能ではありません。しかし、まずITのバックグラウンドを身につけることが先なので、長い道のりになるでしょう。プログラミングスクールに通ったり、未経験のエンジニア求人で転職をして、知識と経験を身につけます。SES企業や派遣形態の求人になる可能性が高いですが、その際に、機械学習エンジニアに必要なプログラミング言語が身につくかポイントです。統計やデータに関わらない仕事に就くと、遠回りの道で迷走してしまうことになります。何年後はどのレベルまで成長していて、どんな会社でどんな業務をしているか、までキャリアを想定しておきましょう。機械学習の勉強会に参加したり、実際に機械学習エンジニアとして活躍している人の話も参考になります。機械学習エンジニアは、エンジニアの中でも専門性が高く、非常に難しい分野です。エンジニアとして大成するには、数年〜十数年以上かかる覚悟が必要です。フリーランスの機械学習エンジニアになる方法フリーランスの機械学習エンジニアになる方法は、機械学習エンジニアとしての経験次第でパターンが分かれます。機械学習エンジニアとして実務経験が豊富で、プロジェクトにおいても技術力を発揮できるのであれば、すぐにフリーランスとして活躍できるでしょう。フリーランスの案件マッチングサイトやエージェントを利用して、さまざまな案件に応募してみましょう。機械学習エンジニアとして実務経験が浅い方は、会社員と並行して副業を始めてみましょう。小規模のプロジェクトや、平日の夜や土日で参画できる案件を探すとよいでしょう。機械学習エンジニアとしての経験がない方は、機械学習の分野でも知識や経験を身につける必要があります。まずは、機械学習エンジニアのフリーランス案件をみてみて、イメージをつけてみるとよいでしょう。▼SOKUDANの機械学習エンジニアの案件一覧まとめ機械学習エンジニアは、コンピューターが特定のタスクを人の介入なしに学ぶ方法を、開発・実装するエンジニアのことを指します。機械学習のモデルの設計からトレーニング、テスト、デプロイなど、機械学習を組み込んだシステムの一連の仕事を担当します。そのために、プログラミングスキルやデータペース、SQLなどの技術スキルが必要です。ディープラーニングビッグデータ、ソフトスキルまで備わっていると、現場で活躍できる機械学習エンジニアになることができます。機械学習エンジニアは高い給与水準ですが、フリーランスとなるとさらに市場価値の高い経験を積むことができます。今後も需要が高まるAIや機械学習の分野で、機械学習エンジニアとしてのキャリアを築き上げていきましょう。