フリーランスになる際は、国民年金への切り替えが必要です。フリーランスの国民年金の保険料負担に驚いたり、保険料を抑える方法を模索したりしている方も多いのではないでしょうか。この記事では、フリーランスが知っておきたい厚生年金の仕組みや、国民年金との違いを解説します。また、厚生年金の代わりとなるフリーランス向けの対応策も紹介します。金銭的な負担や将来の不安を少しでも抑えて、フリーランスとして長く活躍できるよう、年金の仕組みや、老後に備えるための対応策をしっかり押さえましょう。フリーランスは厚生年金に加入できない?日本の年金制度は、「国民年金(基礎年金)」と「厚生年金」の2階建てとなっており、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人は、どちらかに加入します。まずは、厚生年金と国民年金それぞれの仕組みや、加入対象者などを解説します。厚生年金は主に会社員が加入!継続加入は不可結論からお伝えすると、フリーランスは厚生年金に加入できません。厚生年金は、企業などに雇用されている会社員や公務員が加入する年金制度です。厚生年金の保険料は勤務先の企業(事業主)と被保険者で折半し、被保険者が払う保険料は給料やボーナスから天引きされる仕組みとなっています。納付する厚生年金の保険料には、国民年金の保険料も含まれています。そのため、厚生年金に加入している人が年金を受給する年齢になった際は、基礎年金に加えて厚生年金を受け取ることができます。厚生年金は、会社員や公務員でなくなった時点で加入資格を失います。そのため、企業に雇用されていないフリーランスは厚生年金に入ることはできないのです。なお、会社員が加入する健康保険(いわゆる社会保険)は、勤めていた企業を退職した後も最大2年間は継続加入できる制度がありますが、厚生年金に同様のシステムはありません。▼関連記事:フリーランスが加入できる健康保険は?保険料を抑えるコツやおすすめの制度も紹介フリーランスになったら国民年金に加入フリーランスは厚生年金に加入できないため、独立後は国民年金に加入することになります。退職日の翌日から14日以内に国民年金の加入手続きを済ませましょう。加入手続きは、居住する市区町村の担当窓口か、オンラインで行えます。なお、手続きには基礎年金番号通知書、または年金手帳などの基礎年金番号がわかる書類が必要です。▼参考:フリーランスが加入する国民年金とは?将来の年金受給額を増やす方法も解説!厚生年金と国民年金でいくら保険料に差が生じる?厚生年金と国民年金の保険料は大きく異なります。厚生年金の保険料厚生年金は、4~6月の給与(標準報酬月額)やボーナス(標準賞与額)にもとづいて決まるため、収入の金額によって納付額が異なります。厚生年金の保険料はそれぞれ以下の計算式で求められます。毎月の保険料:標準報酬月額 × 保険料率(18.3%)ボーナスの保険料:標準賞与額 × 保険料率(18.3%)ただし、保険料は会社と折半になるため、被保険者の保険料負担は9.15%となります。具体的な厚生年金の保険料額は、日本年金機構より確認できます。【厚生年金保険料一例】標準報酬月額報酬月額全額(18.3%)折半額(9.15%)20万円19万5,000円~21万円3万6,600円1万8,300円30万円29万円~31万円5万4,900円2万7,450円41万円39万5,000円~42万5,000円7万5,030円3万7,515円50万円48万5,000円~51万5,000円9万1,500円4万5,750円国民年金の保険料国民年金の保険料は、収入に関係なく一律です。2024年度は、1ヶ月あたり1万6,980円です。保険料は、一定期間分をまとめて前払い(前納)すると以下のように割引される仕組みになっています。前納の種類2年前納1年前納6ヶ月前納当月末振替毎月納付1回あたりの納付額納付書またはクレジットカード払い39万8,590円20万140円10万1,050円-1万6,980円口座振替39万7,290円19万9,490円10万720円1万6,920円1万6,980円割引額納付書またはクレジットカード払い1万5,290円3,620円830円--口座振替1万6,590円4,270円1,160円60円-▼参考:令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和6年度版)▼参考:国民年金保険料の前納厚生年金と国民年金で将来受け取れる年金額はどれくらい違う?厚生年金と国民年金にそれぞれ加入した人が、将来年金を受給する年齢(原則65歳)になった場合、毎月もらえる年金額は以下の通りです。2024年度(月額)国民年金(老齢基礎年金※満額)6万8,000円厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)23万483円▼参考:令和6年4月分からの年金額等について|日本年金機構国民年金の受給額国民年金の受給額は、月額6万8,000円で、2人暮らしの場合は13万6,000円です。ただし、上記の受給額は一貫して国民年金に加入し続けた場合の金額です。厚生年金から国民年金に切り替え手続きを行ったことのある人は金額が異なります。厚生年金の受給額厚生年金の受給額は、会社勤めをしていた際の給料と、厚生年金への加入期間によって異なります。上記で挙げた標準的な年金額は、平均標準報酬(ボーナスを含んだ月額換算)が43.9万円で、40年間就業した場合に受け取ったケースとなります。老後に必要な生活費次に、老後にはどれくらいの生活費が必要になるのか見てみましょう。総務省が2022年に発表した家計調査年報によると、65歳以上の夫婦2人暮らしの平均総支出額は、26万8,508円(消費支出と非消費支出を足した金額)です。1人暮らしでは15万5,495円です。(いずれも無職世帯の場合)▼出典:家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)結果の概要年金受給額と支出額を踏まえると、国民年金だけでは生活に必要な金額に足りないことがわかります。【フリーランス向け】厚生年金の代わりとなる対応策国民年金の受給額は厚生年金の約3分の1ほどと少ないため、フリーランスは早いうちから将来に向けた対策を取ることが重要です。ここでは、フリーランスにおすすめの厚生年金の代わりとなる対応策を4つ紹介します。国民年金に国民年金基金を上乗せする国民年金基金とは、フリーランスをはじめとする国民年金の加入者を対象に、掛け金を上乗せすることで将来受け取れる年金額を増やせる公的な個人年金です。国民年金基金を上乗せすることで、フリーランスも会社員と同じく年金が2階建て構造となります。(会社員は「企業年金」に加入すると3階建てとなる)▼出典:国民年金基金制度とは?国民年金基金は、終身年金と確定年金の2つに分かれ、両者を合わせると計7種類の型があります。月々の掛け金は、選択した給付の型や掛け金の口数、加入時の年齢、性別によって決まり、最大で月68,000円まで積み立てることができます。なお、掛け金の金額は増減でき、口数を口数を変更しない限り、支払額が変わることはありません。将来受け取る年金額も掛け金の額によって異なります。年金額のシミュレーションは、国民年金基金のホームページで確認できます。掛け金の全額は社会保険料控除の対象となるため、確定申告することで経済的負担を軽減できます。▼関連記事:フリーランスは国民年金基金で老後に備える!iDeCo・付加年金との違いを解説iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入するiDecoとは、老後の資産形成を目的とし、自分で設定した掛け金を自分で運用する私的年金制度です。加入している年金に関係なく、20歳から65歳未満の人なら誰でも加入できます。60歳以降に老齢給付金を受け取れるのが特徴で、60歳以前では原則引き出すことはできません。掛け金は、月額5,000円から拠出限度額まで、1,000円単位で自由に決めることができます。掛け金は1年に1回のみ変更可能です。iDeCoの掛け金は全額所得控除されます。そのほか、運用益は非課税で再び投資に回すことでき、受け取り時には「公的年金等控除」などの対象となるなど、さまざまな税制上の優遇があります。▼関連記事:フリーランスがiDeCoに加入するメリット・デメリットは?年代別シミュレーションも紹介付加年金に加入する付加年金とは、国民年金の定額保険料に月額400円を上乗せすることで、将来の老齢基礎年金の額を増やすことができる制度です。将来追加される年金額(年額)は、「付加保険料を納めた月数×月200円」です。例えば、20歳から60歳までの40年間にわたって付加年金に加入した場合の試算は以下の通りです。支払いが必要な保険料:400円×40年(480ヶ月)=19万2,000円支給額(年額):200円×480ヶ月=9万6,000月加入して2年を過ぎると支払った保険料の元が取れる計算になります。付加年金に加入できるのは、国民年金の第1号被保険者、または65歳未満の任意加入被保険者です。国民年金基金に加入している人は付加年金に加入できないため、注意しましょう。▼関連記事:フリーランスは付加年金に加入するべき?国民年金基金との比較や注意点を解説小規模企業共済に加入する小規模企業共済とは、中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営する公的な制度です。フリーランスを含む小規模企業の経営者が閉業する場合に備えて、毎月一定額を積み立てる共済制度です。「経営者の退職金制度」とも呼ばれています。掛け金は1,000~70,000円まで500円単位で設定でき、加入後も増額・減額が可能です。全額所得控除できるため、節税効果も期待できます。▼関連記事:小規模企業共済とは?フリーランスの将来の備えと節税効果を解説まとめ厚生年金は、企業などに雇用されている会社員が加入対象のため、フリーランスは加入できません。厚生年金の代わりに、フリーランスは国民年金に加入する必要があります。しかし、国民年金は保険料全額を自分で負担する必要があるほか、将来受け取れる年金額が会社員より大幅に少ないというデメリットがあります。老後に必要な生活費をカバーするためには、自分で適切な制度を選んで加入する必要があります。将来の不安を少しでも解消できるよう、できるだけ早いうちからどれが自分に合うかじっくり検討してくださいね。