データサイエンティストは、ビッグデータを活用する事業やシステムにおいて重要な役割を担っています。この記事では、具体的にデータサイエンティストは、どのような仕事をしているのか、どのようなスキルが必要なのか解説します。まずは、データサイエンティストという職種が生まれた背景や、データアナリスト・AIエンジニア・機械学習エンジニアとの違いから理解していきましょう。ITエンジニアのなかでも、高い年収を叶えることができるデータサイエンティストの将来性も気になるところでしょう。AIとの共存についても解説しているので、参考にしてみてください。▼関連記事:データサイエンティストの副業で稼ぐ!案件獲得のコツや収入、必要スキルを紹介データサイエンティストとは?データサイエンティストは、大量のデータから有用な情報を引き出すための方法を探求します。統計や数学的な手法を用いて、ビジネスや研究の成果につなげる洞察を提供します。データを分析するには、プログラミングの知識や特定のツールの使用経験が必要となります。データの持つさまざまなパターンや、関連性を解釈し、未来の予測や、異なる選択肢の比較などを行うために、データをもとにモデルを作成します。データサイエンティストの歴史・誕生の背景データサイエンティストという職種は、現代のビジネスや研究の前線に登場し、重要な役割を果たしています。その起源をさかのぼると20世紀後半、コンピュータ技術の発展とともに、データの収集や処理能力が飛躍的に向上したあたりです。企業や研究所は、データを活用し、より複雑な分析が可能になりました。2000年代に入ると、インターネットの普及が進み、オンラインでのデータ収集が容易になりました。SNS、ECサイト、ウェブサービスなどからのデータが爆発的に増加し、ビッグデータの時代が始まります。蓄積された大量のデータから価値を引き出す必要性が高まり、新たな分析手法やツールが求められるようになります。こうした背景の中で、データを深く理解し、それをビジネスや研究の価値に変える能力を持った専門家「データサイエンティスト」が誕生したのです。データサイエンティストは、テクノロジーの進化と社会のデータ化が進む中で、新しい時代のニーズに応えるために生まれた職種といえるでしょう。今日では、彼らの役割は多岐にわたり、多くの産業や領域でその価値が認識されています。データアナリストとデータサイエンティストの違いデータに関連する職種として「データアナリスト」と「データサイエンティスト」の二つがしばしば取り上げられます。データアナリストは、既存のデータをもとに、その中のトレンドやパターンを見つけ出し、ビジネス上の意思決定をサポートします。基本的な統計ツールやデータ可視化のツールを使用して、具体的な問題に答えを見つけるためのデータの解析を行います。一方、データサイエンティストは、データをもとに新しい手法やモデルを作成し、未知の問題に答えを見つける能力が求められます。データの背後にある深い洞察や原因を明らかにするための高度な技術や手法を駆使します。AI・機械学習エンジニアとデータサイエンティストの違い近年、AIやデータ関連の技術の進化に伴い「AIエンジニア」「機械学習エンジニア」という職種も確立されてきました。AIエンジニアは、人工知能(AI)の技術を実際の製品やサービスに組み込む役割を担います。具体的には、一般的なプログラミング言語(Python, Javaなど)やAI関連のフレームワーク(TensorFlow, PyTorchなど)を使用して、AIのモデルを開発・実装します。システムに実装し、最適化するまでの一連の流れが仕事内容です。機械学習エンジニアは、データを使って機械学習のモデルを開発し、それを最適化して実際の製品やサービスに取り入れる役割を担います。具体的には、Python、R、Julia、Javaなどのプログラミング言語や、機械学習のフレームワーク(TensorFlowやPyTorchなど)を利用してモデルの開発や実装を行います。機械学習エンジニアは「機械がデータから学べるようにする」スペシャリストです。AIやデータサイエンスの分野の職種は密接に関連しているものの、それぞれの専門領域と役割には明確な違いがあります。▼関連記事:機械学習エンジニアとは?注目のAI産業での仕事・年収・キャリアパスを解説データサイエンティストの具体的な仕事内容専門知識や高い技術力が求められるデータサイエンティストの、具体的な仕事内容を解説します。データの収集・前処理データサイエンティストは、企業や組織が持つ膨大な情報(データ)を活用して、価値を生み出す役割を持っています。例えば、オンラインショップでの購買履歴、SNSの利用履歴、センサーを通じて得られる情報など、必要なデータを特定し、それを適切な方法で収集することが求められます。収集されたデータは、不要な情報や欠けている情報、誤った情報が含まれていることが多いです。こうしたデータを「クリーン」にするための作業が「前処理」です。正確な情報をもとに正しい判断を下すために、データサイエンティストの業務の中でも、大きな時間を占める部分となります。データの解析データサイエンティストは、収集されたデータの特性を理解するための「探索的解析」を行います。これは、データの全体像をつかむための初めのステップとなります。データにどんな情報が含まれているのか、どんなパターンやトレンドが見られるのかを確認する作業です。データの解析によって得られた知見を基に、将来の出来事やトレンドを予測するモデルを構築します。これにより、企業や組織は未来の戦略を立てる上での参考として、このモデルを活用することができます。ビジュアライゼーションビジュアライゼーションとは、データを「可視化」することです。データサイエンティストは、解析したデータを最も適した形で表示する方法を考えます。例えば、年々の売上の変化を示す場合は折れ線グラフが適しているかもしれませんし、商品の売れ筋ランキングを示す場合は棒グラフや円グラフが適しています。ただデータをグラフにするだけでなく、色の使い方やラベルの配置、注釈の追加など、データをより分かりやすく、そして魅力的に伝えるための工夫を行います。ビジュアライゼーションにより、データの中に隠れた価値や意味を、瞬時に捉えることができるのです。ビジネスインサイトの提供ビジネスインサイトとは、データや情報の中から、ビジネスにおける新しい発見や意味を見つけ出すことを指します。データサイエンティストは、企業が持っている大量のデータの中から、新しい価値やビジネスチャンスを見つけ出す役割があります。見つけ出されたインサイトは、企業の経営層や部門のリーダーたちに提供され、新しい戦略の策定や、より効果的な意思決定を行うための材料として使用されます。例えば、特定の商品が売れている理由や、顧客が離れていく理由をデータから解析し、その結果を元に新しいプロモーションの方法や顧客対応の改善策を提案することもあります。アルゴリズムの開発・最適化アルゴリズムという言葉は、一般的に「手順や方法」といった意味合いを持ちます。データサイエンティストは、特定の問題を解決するための新しいアルゴリズムを考え、プログラムとして実装します。しかし、一度開発したアルゴリズムが完璧とは限りません。実際のデータに適用してみたとき、思ったよりも精度が出ないこともあります。データサイエンティストはアルゴリズムを調整・改善して、より良い結果を出せるように「最適化」します。データを元にした実験設計データサイエンティストの実験設計に関する仕事は、正確で信頼性の高い結果を得るための計画を立てるという重要な役割を持っています。不適切な実験設計では、誤った結果や解釈を導き出してしまう可能性があり、それがビジネス上の大きな失敗を招くことも考えられます。チームとの協力や他の専門家との連携データサイエンティストは、一人でデータを解析し結果を出すだけではありません。結果をビジネスの現場に適用するためには、マーケティング部門、開発部門、ビジネス戦略部門など、多岐にわたるチームと協力する必要があります。また、デザインの専門家や業界知見のある方、機械学習の研究者など、さまざまな専門家と連携します。それぞれの強みを活かして、事業やサービスを成功に導くのです。最新技術の追跡データサイエンティストは、専門的なセミナーや学会、オンラインの情報サイトを通じて、最新の研究や技術を常にチェックする必要があります。また、海外の動向や研究にも注目し、国内外の情報を比較・検討することも大切です。最新技術の情報を得ただけでは十分ではありません。実際に、その技術を仕事に取り入れ、その効果や問題点を検証する作業も欠かせません。チームや組織全体と共有することが大切です。これにより、組織全体での技術力の向上や効率的な業務遂行が期待できます。データサイエンティストに必要なスキル前述したデータサイエンティストの仕事内容を遂行するには、さまざまなスキルが必要です。最初から全てのスキルが必須ではないので、自分の業務に合わせてスキルを身につけていきましょう。プログラミング技術スキルデータを解析する前に、扱いやすい形に変換する作業が必要です。Python、R、SQL、Java、Scalaなどの言語を使って、データのクレンジングや整形を効率的に行います。Pythonは、その直感的な文法や豊富なデータ解析関連のライブラリ(pandas、numpy、scikit-learnなど)のために、データ解析や機械学習のタスクに非常に適しています。Rは、統計解析やグラフィックスの作成に特化した言語です。データサイエンティストは、しばしば大規模なデータベースから情報を取得する必要があります。その際に、SQL (Structured Query Language)を用いてデータベースからデータをビッグデータ技術(例: Apache Spark)を用いる場合、JavaやScalaが使用されることがあります。データ分析スキル(ビジュアライゼーションの活用)昨今、企業や組織が収集するデータの量は爆発的に増加しています。データサイエンティストは、このビックデータを効率的に取り扱い、解析する技術が求められます。データサイエンティストにとってのデータ分析スキルは、単にデータを解析するだけでなく、その結果を分かりやすく伝える能力も含まれます。数字や文字だけのデータでは、その中のパターンや関連性が一目で分かりにくいことがあります。データをグラフやチャートに変換すること「ビジュアライゼーション」で、データの特徴や傾向を視覚的に理解しやすくします。これにより、データから新しい知見やアイディアを引き出すことが可能となります。クラウドの知識「クラウド」とは、インターネットを通じてリモートのサーバーにアクセスし、データの保存や処理を行う技術のことを指します。物理的なコンピュータ上ではなく、オンライン上の仮想的な空間でデータを扱うことができます。データサイエンティストは、このクラウド環境でデータを効率的に扱うスキルが求められます。具体的には、クラウドサービスの利用方法や、クラウド上でのデータ処理の手法などが必要となります。ソフトスキルデータの分析結果を、技術的な背景を持たない人たちにも分かりやすく伝える能力は非常に重要です。チーム内や他部門、経営層との連携をスムーズに進めるためにも、明確かつ効果的なコミュニケーションが必要とされます。データ分析のプロジェクトは多くの場合、複数人での協力が必要となります。他のメンバーや部門と協力して作業を進めるためのチームワークのスキルは不可欠です。データ科学の分野は日々進化しています。新しい技術や手法を継続的に学び、自身のスキルを更新していく意欲が求められます。データを分析する際、その背後にある原因や背景を理解し、的確な判断を下すためのクリティカルシンキング能力も重要です。まとめると、データサイエンティストは、技術的なスキルだけでなく、人との関わりや日々の業務の中での挑戦に対応するためのソフトスキルも持っている必要があります。これらのソフトスキルがあると、データの価値を最大限に引き出し、組織全体の成功に寄与することができるでしょう。データサイエンティストの年収多様な仕事の給与情報を詳しく紹介している求人ボックスのデータによると、一般的なデータサイエンティストの年収は694万円でした。ITエンジニアの需要は右肩上がりで、その中でもデータサイエンティストは高い給与水準になっています。さらに、正社員で採用できないようなプロ人材は、フリーランスとして活躍している傾向にあります。フリーランスや副業のプロ人材のマッチングサービスを提供するSOKUDANの調査では、フリーランスのデータサイエンティストの平均年収は1,294万円です。フリーランスのITエンジニアの年収ランキングでも、データサイエンティストは1位です。平均時給は6,417円、平均月収は108万円です。市場価値の高いプロ人材のポジションをとることができれば、データサイエンティストとして高い報酬を得ることができるでしょう。▼関連記事:フリーランスエンジニア職種別の平均年収・時給レポートデータサイエンティストのキャリアパスデータサイエンティストのキャリアパスは、一通りではありません。知識や経験を順当に積んでいった場合の、データサイエンティストのキャリアパスを解説します。初級レベルのデータサイエンティスト初級レベルのデータサイエンティストは、関連する分野(例:統計学、数学、コンピュータサイエンスなど)の勉強から始まります。データのクリーニング、探索的データ分析など、シニアのサイエンティストの指導のもとでの基本的な機械学習モデルを適用していきます。中級レベルのデータサイエンティスト数年の経験を持つと、中級レベルのデータサイエンティストに昇格します。より複雑なデータモデリング、仮説検定、特徴エンジニアリングを行い、場合によってはジュニアチームメンバーの指導も行うでしょう。データサイエンスプロジェクトを主導し、非技術的なステークホルダーに結果を伝えることも増えます。データサイエンスの結果が、ビジネスの目標と目的に合致していることを意識的に行います。データサイエンティストマネージャー上級レベルのデータサイエンティストは、データサイエンティストマネジャーという役職に就くことになります。組織内の複数のデータサイエンスチーム、または大規模なチームを監督するでしょう。チームの戦略設定、採用、プロジェクトの高レベルな管理を担当します。会社がデータを効率的、かつ効果的に活用していることを確認するために、他の部署と連携も主導します。最高技術責任者(CTO)/最高データ責任者(CDO)/最高分析責任者(CAO)最高技術責任者(CTO)/最高データ責任者(CDO)/最高分析責任者(CAO)は、企業全体の全体的なデータ戦略を担当するエグゼクティブレベルの役職です。データを貴重なリソースとして扱い、データ管理、ガバナンス、分析機能を監督します。データサイエンティストからのキャリアチェンジデータサイエンティストとして一定のキャリアを歩んだのちに、キャリアチェンジすることも可能です。機械学習エンジニア:機械学習モデルを設計し、本番環境に導入することに特化している職種です。データエンジニア:データサイエンティストのニーズをサポートするための堅牢なデータパイプラインとアーキテクチャの作成に焦点を当てます。定量研究者:特に金融で、市場の予測のための統計モデルの開発を行います。BIアナリスト/デベロッパー:記述的な分析にもっと焦点を当て、ビジネスのステークホルダーのためのレポートやダッシュボードを生成します。データサイエンティストのキャリアパスは、一通りではありません。個人の強みやビジネスニーズとの組み合わせにより、多様でパーソナライズされたキャリアの軌跡が導かれる可能性があります。未経験からデータサイエンティストになる方法未経験からデータサイエンティストになることは、不可能ではありません。ITエンジニアとしてプログラミングのスキルがある方は、データを扱う分野にシフトチェンジすることで、データサイエンティストを目指しやすいです。大学や研究所などで統計やビックデータの解析を行っていた方も、IT領域の仕事でデータサイエンティストとして、活躍できる可能性があります。ITのバックグラウンドや統計や解析の経験のない方は、まずはプログラミングスキルやデータを扱う経験を積みましょう。データサイエンティストになるために、スクールや独学で勉強することも必要です。しかし、全くITとはかけ離れた業界での経験が長い方は、よほどの覚悟がない限り、データサイエンティストとして大成するには、時間がかかります。数年後、数十年後の自分の姿を明確に描き、適切な手段をとることで、キャリアを築いていきましょう。フリーランスのデータサイエンティストを目指す方法近年、フリーランスという働き方にシフトする人が増えており、データサイエンティストも例外ではありません。フリーランスのデータサイエンティストになるには、専門性や高いスキルが必要です。正社員で採用できないような人材が、業務委託の求人になっているためです。フリーランスの案件サイトやマッチングサービスに登録して、仕事内容や必須要件が満たせているか確認しましょう。▼関連記事:フリーランス向け案件マッチングサービスのおすすめ8選〜利用者の声もご紹介〜経験が不足していると感じた人は、会社員を続けながら、副業案件で経験を増やすことをおすすめします。副業をする際は、本業に影響がでないことを前提に、将来的にデータサイエンティストとしての評価に繋がる案件を獲得することを意識しましょう。▼関連記事:副業の始め方を4ステップで解説!会社にバレない方法や稼ぐコツも データサイエンティストの将来性〜AIとの共存〜AIの台頭により、人間の仕事が奪われるのでは?という懸念を耳にしますが、データサイエンティストの仕事がなくなることはないでしょう。データサイエンティストの仕事は、AIを活用する側なので、むしろ活躍の場は広がります。AIや機械学習モデルは、与えられたデータや指示に基づいて動作しますが、実際のビジネスの問題を理解し、どのようなアプローチを取るかを決定するのは人間の役割です。AIが自動的にデータを整理・前処理する技術も進化していますが、現実のデータは複雑で、データのクリーニングや特徴量のエンジニアリングには専門的な知識と洞察が必要です。また、モデルの出力を正確に評価し、ビジネスコンテキストにおいて、解釈する能力は、データサイエンティストの重要な役割の一つです。AIの進化に伴い、データの使用やAIモデルの出力に関する倫理的な問題が増えてきました。データサイエンティストは、これらの問題を適切に取り扱う役割も担っています。AI技術の進化が進んでも、データサイエンティストの役割は、今後も非常に重要であると考えられます。ただし、データサイエンティストとしてのスキルセットや役割が変化する可能性はあるため、継続的な学習と適応が求められるでしょう。まとめデータサイエンティストは、大量のデータから有用な情報を引き出すための方法を探求します。データの収集や解析、ビジュアライゼーションやビジネスへの活用など、データサイエンティストの仕事は多岐に渡り、求められるスキルは高いです。専門性の高い仕事なだけに、報酬も高く、フリーランスになると需要の高い案件に関わることができるでしょう。データサイエンティストは、AIが進化していくなかで重要な役割を果たし続けます。将来のキャリアを見据えて、データサイエンティストとして活躍できる人材を目指しましょう。