フリーランスは、毎月の業務量に応じて案件ごとに請求書を作成し、クライアントへ提出する必要があります。最近は、Slack・Chatworkといったビジネスチャットや、オンラインで請求書をアップロードするだけで完了するサービスも普及しています。その一方で、「メールで請求書を送る場合、どんな文面なら失礼にならないか」と悩む人も少なくありません。この記事では、請求書をメールで送るための例文・テンプレートをはじめ、送付時の注意点や電子帳簿保存法に沿った保存方法を紹介します。実務でそのまま使える内容なので、ぜひ参考にしてください。▼関連記事:フリーランス・個人事業主の請求書の書き方ガイド!注意点も徹底解説【例文】フリーランスの請求書メールのテンプレートまずは、フリーランスが請求書をメールで送る際に使えるテンプレートを、代表的な3つのケースに分けて紹介します。①メールで請求書を送付し、原本は郵送しない場合メールのみで請求書を送付し、原本を郵送しないケースでは、原本を送らない旨をわざわざ説明する必要はありません。メール本文に請求金額や支払い期日も添えておくと、丁寧で分かりやすい印象になります。件名:〇月分請求書送付のご連絡(〇〇:氏名)株式会社◯◯〇〇様平素より〇〇の案件でお世話になっております〇〇(氏名)です。〇月分の請求書をお送りいたします。お手数をおかけいたしますが、ご査収のほどよろしくお願い申し上げます。【添付】・請求書(No.〇〇)1通・請求金額:〇〇円・お支払い期日:〇〇年〇月〇日ご不明な点がございましたら遠慮なくお問い合わせくださいませ。今後とも、何卒よろしくお願い申し上げます。---------------------------------〇〇 〇〇(氏名)Tel:〇〇〇〇Mail:〇〇〇〇---------------------------------②メールで請求書を送付し、原本も郵送する場合請求書をメールと郵送の両方で送付するケースでは、郵送前に不備を防ぐためにも、まずメールで請求書を送り、内容の確認を依頼する旨を一言添えておくと安心です。件名:〇月分請求書送付・郵送のご連絡(〇〇:氏名)株式会社◯◯〇〇様平素より〇〇の案件でお世話になっております〇〇(氏名)です。早速ではございますが、〇月分の請求書をお送りいたします。こちらで問題ないようでしたら、追って原本も郵送させていただきます。お手数をおかけいたしますが、ご査収のほどよろしくお願い申し上げます。【添付】・請求書(No.〇〇)1通・請求金額:〇〇円・お支払い期日:〇〇年〇月〇日ご不明な点がございましたら遠慮なくお問い合わせくださいませ。今後とも、何卒よろしくお願い申し上げます。---------------------------------〇〇 〇〇(氏名)Tel:〇〇〇〇Mail:〇〇〇〇---------------------------------③原本を郵送またはFAXで送信し、メールでは送付しない場合請求書の原本のみを郵送し、メールではデータを送らないケースでは、クライアントが到着時期を把握できるよう、いつ郵送したのかをメールに明記しておくと親切です。件名:〇月分請求書郵送のご連絡(〇〇:氏名)株式会社◯◯〇〇様平素より〇〇の案件でお世話になっております〇〇(氏名)です。早速ではございますが、本日、〇月分の請求書を郵送させていただきました。数日中にはお手元に届くかと存じます。お手数をおかけいたしますが、お手元に届きましたらご査収のほどよろしくお願い申し上げます。【内容】・請求書(No.〇〇)1通・請求金額:〇〇円・お支払い期日:〇〇年〇月〇日ご不明な点がございましたら遠慮なくお問い合わせくださいませ。今後とも、何卒よろしくお願い申し上げます。---------------------------------〇〇 〇〇(氏名)Tel:〇〇〇〇Mail:〇〇〇〇---------------------------------フリーランスの請求書メールの基本構成とマナーフリーランスが請求書をメールで送る際は、ビジネスマナーに沿った文面と、必要情報を正確に記載することが欠かせません。相手が迷わず内容を把握でき、支払いに必要な情報が揃っていることがポイントです。ここでは、請求書メールに共通する基本構成や必須項目、件名・添付ファイルの扱い方など、最低限押さえておきたいポイントを解説します。件名:ひと目で請求書の送付と分かるようにする請求書メールの件名は、ひと目で「請求書の送付」と分かることが基本です。受信メールが多い相手ほど、件名が曖昧だと見落としや確認遅れにつながります。「○月分」や「案件名」を入れると識別しやすくなり、支払い処理もスムーズです。また、氏名を入れておくと、誰からの請求書かがすぐ分かります。【件名の例】【請求書】○月分の業務委託費につきまして(田中太郎)【田中太郎】○月分請求書送付のご連絡【請求書送付】Webサイト制作業務(○月分)- 田中太郎本文:必要事項を簡潔にまとめるメール本文は、「挨拶→請求書送付の連絡→請求内容の要点→締めの言葉→署名」という流れが基本です。長文になると読みにくいため、必要な情報だけを分かりやすくまとめることが大切です。請求内容には、請求金額・業務期間・支払い期限・振込先・添付ファイル名など、支払いに必要な情報を本文に記載しておきましょう。添付を開かなくても概要が把握でき、処理がスムーズになります。要点を短く整理することで、読みやすく誤解のないメールになります。専門用語は避け、誰が読んでも理解できる表現を心がけてください。添付ファイル:名前と形式を分かりやすくする添付ファイル名には、請求書・氏名・年月などを入れ、誰の何の請求書かがひと目で分かるようにしましょう。「請求書.pdf」のような一般的な名前だと、相手側で複数ファイルを管理する際に混乱を招く可能性があります。ファイル形式はPDFが基本です。どの環境でも開け、レイアウトが崩れないため、請求書として扱いやすい形式です。WordやExcelは編集可能なため、請求書用途では避けたほうが無難です。【ファイル名の例】202411_請求書_田中太郎.pdf請求書_田中太郎_2024年11月分.pdfinvoice_tanaka_202411.pdfフリーランスの請求書メールの注意事項フリーランスにとって請求書メールは、支払いに直結する重要な業務です。小さなミスでも、支払い遅延や信用低下につながる恐れがあるため、丁寧で確実な対応が求められます。ここでは、フリーランスが請求書メールを送る際に特に注意したいポイントを紹介します。メールで送付しても問題ないかを確認する初めて取引するクライアントには、請求書の提出方法やメール送付の可否を事前に確認しておきましょう。企業によっては原本の郵送を必須としている場合もあります。原本が必要な企業には、まずメールでデータを送り、内容に誤りがないか確認してから原本を郵送すると安心です。万が一記載ミスがあっても、二重送付の手間を減らせます。押印が必要かを確認する請求書への押印は法律上の義務ではありません。しかし、不正防止や改ざん対策の理由から、押印のない請求書を受け付けない企業もあります。押印が求められる場合は、単なる印影データでよいのか、タイムスタンプ付きの電子印鑑が必要なのかなど、クライアントのルールを事前に確認しておきましょう。添付ファイルの付け忘れ・誤添付に注意する請求書の添付忘れや誤添付は起こりやすく、信用問題にも直結します。複数クライアントの案件を並行しているほど、ファイルの取り違えが発生しやすくなるため注意が必要です。そのため、送信前に「添付の有無」「ファイル名」「内容」を必ずチェックしましょう。可能であれば添付ファイルを開き、宛先と内容が一致しているかを目視で確認するのが安心です。メール送信前のチェックリストを用意し、毎回同じ手順で確認するとミス防止に役立ちます。金額・支払い期限・業務期間の誤記を防ぐ金額の桁違い、税額の誤り、支払期限の記載漏れなどは、支払いトラブルにつながる代表的なミスです。特に消費税の計算や複数業務の合算がある場合は、誤りが発生しやすくなります。そのため、請求書とメール本文を照らし合わせ、金額・税額・期日が一致しているか必ず確認しましょう。電卓での再計算や契約書とのチェックも有効です。また、支払い期限は土日祝日を考慮し、営業日として問題ないかも忘れずに確認してください。相手の担当者名や部署を正確に記載する担当者変更や組織改編があると、宛名を誤ってしまう可能性があります。誤送信は確認に時間がかかるだけでなく、相手に失礼となる場合もあります。特に大企業では人事異動が多く、以前の担当者宛に送ってしまうケースが起こりがちです。名刺や過去のメールを確認し、最新の担当者に確実に送ることが重要です。不明な場合は、代表アドレスへの問い合わせや、前回対応してくれた担当者に現在の窓口を確認すると安心です。請求書を送るタイミングに注意するクライアントごとに「月末締め・翌月払い」など支払いルールは異なります。例えば、月末締めの企業に月初で請求書を送ると、業務がまだ完了していないと判断される可能性があります。指定日より早すぎても遅すぎても事務処理の妨げになるため、事前に支払いサイクルを把握し、それに合わせて送付することが重要です。契約書や初回打ち合わせで確認したルールは必ず記録し、カレンダーやリマインダーを使って適切なタイミングで送信できるよう管理しましょう。請求内容に不明点がある場合は事前に確認する不確かな内容のまま請求書を送ると、金額修正や差し戻しが発生し、支払い遅延の原因になります。例えば、仕様変更による追加費用や、想定以上の工数が発生した場合など、曖昧な点を残したまま請求すると後々トラブルになりかねません。そのため、追加費用・工数・単価など不明点がある場合は、請求書送付前に必ずクライアントへ確認しましょう。メールや電話で事前にすり合わせを行うことで認識のズレを防ぎ、スムーズな支払いにつながります。請求書の作成・送付後は電子帳簿保存法に則って管理するフリーランスは、作成した請求書を電子帳簿保存法のルールに沿ってデータで保存する必要があります。保存要件を守っていない場合、青色申告の承認取消などのペナルティを受ける可能性もあるため、要件を正しく理解し、確実に対応しておきましょう。電子帳簿保存法とは?電子帳簿保存法は、帳簿・決算書・請求書などを紙ではなく電子データで保存できるようにした法律です。「電子取引」「電子帳簿・電子書類」「スキャナ保存」の3区分があり、このうち保存が義務化されているのは「電子取引」です。【電子帳簿保存法の3区分】区分内容電子保存の義務電子取引領収書や請求書など電子で受け取った取引情報をデータで保存すること義務電子帳簿・電子書類会計ソフトなど電子で作成した帳簿や書類をデータで保存すること任意スキャナ保存紙で作成された書類を画像データとして保存すること任意メールで送付・受領した請求書は、「電子取引」に該当します。2024年1月から電子データ保存が義務となったため、メールでやり取りした請求書は、適切な形式で電子保存する必要があります。▼参考:電子帳簿等保存制度特設サイト|国税庁ファイル名に取引年月日・金額・取引先名を記載して保存する電子帳簿保存法では、単にPCにデータを残すだけでは不十分で、「真実性の確保」と「可視性の確保」という2つの原則を満たす必要があります。真実性の確保:保存データが改ざんされていないこと可視性の確保:必要なときにすぐ確認できる状態で保存されていることさらに、真実性に関する要件が1つ、可視性に関する要件が3つあり、計4つの要件を全て満たして保存することが求められます。真実性の確保①以下のいずれかを満たす・タイムスタンプが付与された後に取引情報を授受する・取引情報の授受後、速やかにタイムスタンプを付与する・データの訂正削除を行った場合に記録が残るシステム、または訂正削除ができないシステムを利用する・訂正削除の防止に関する事務処理規程を定めて運用する可視性の確保②関連書類の備え付け保存場所に操作説明書などを記載した関連書類を備え付ける(自社開発のプログラムを使用する場合に限る)③見読性の確保・電子データ保存をする場所に、パソコンとともに使われる電子計算機などの操作説明書を備え付ける・電子データを画面および書面に整理し、わかりやすい状態で速やかに出力できるようにする④検索機能の確保以下の3つを満たす1. 取引年月日・取引先・取引金額を検索できる2. 取引年月日、または取引金額の範囲指定で検索できる3. 複数の記録項目を組み合わせた条件で検索できる▼参考:Ⅱ 適用要件【基本的事項】|国税庁請求書は5年・インボイス(適格請求書定)は7年保存するフリーランスは、インボイス登録の有無によって請求書の保存期間が変わります。インボイス未登録者は、白色・青色申告を問わず、確定申告の提出期限の翌日から5年間保存する必要があります。なお、保存期間の起点は「請求書の発行日」ではない点に注意しましょう。一方、インボイス登録者や、年間の課税売上が1,000万円を超えて消費税の課税事業者となる場合は、法人と同様に7年間の保存が必要です。まとめフリーランスが請求書をメールで送る際は、原本を郵送するかどうかなどの状況によって、メールに書くべき内容が変わります。「請求書を送るだけだから、できるだけ簡潔に済ませたい」と思う人もいるかもしれませんが、件名に請求書添付の旨を明記するなど、相手が確認しやすい文面を心がけることが重要です。不慣れで迷う場合は、今回紹介したテンプレートを参考にしながら、自分の案件に合った形に調整してみてください。