働き方改革や副業ブーム、IT人材の不足などを背景に、近年フリーランスとして働く人が増加しています。一方で、正社員には安定性や福利厚生の面でフリーランスにはない魅力も多く、「正社員とフリーランス、どちらで働くのがいいのだろう」と悩む人は多いのではないでしょうか。この記事では、正社員とフリーランスの手取りや税金負担、働き方などのメリット・デメリットを詳しく解説します。また、それぞれに向いている人も紹介するので、ぜひ参考にしてください。正社員とフリーランスの定義正社員とフリーランスにはそれぞれ明確な定義があります。契約形態や契約期間、指揮命令権・監督権の観点で大きく異なるため、詳しく解説します。▼関連記事:フリーランスと会社員の違いに驚愕!独立前に知っておくべき違いを解説正社員とは?正社員とは、企業に直接雇用される人材のことです。雇用契約の期間が定められていない「無期雇用契約」を結びます。業務を遂行するために、企業から仕事の進め方に関する指示や命令が出るほか、労働時間や労働場所が指定されます。また、正社員には労働基準法や労働契約法などが適用されるため、雇用の安定性が担保されています。具体的には、以下のようなルールが定められています。【労働基準法】労働時間1日8時間以内、1週間40時間以内とする休憩時間1日6時間を超えて働く場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも60分の休憩を、勤務時間の途中で与えなければならない休日毎週少なくとも1回、または4週間を通じて4日以上与えなければならない有給休暇半年間継続して雇用される労働者は、全労働日数の8割以上出勤していれば、10日間の年次有給休暇を取得できる労災保険労働者が仕事や通勤が原因で病気やけがをした場合は、労災保険給付の対象になる▼参考:労働条件・職場環境に関するルール|厚生労働省【労働契約法】企業が労働者を採用する際は、賃金や労働時間などの労働条件を書面で明示しなければならない正当な理由がない限り、雇用主は正社員を解雇することができない解雇する際には30日以上前に通知するか、30日分の賃金を支払う必要がある▼参考:労働契約の終了に関するルール|厚生労働省▼関連記事:フリーランスには労働基準法は適用されるの?自分を守るための契約や取引上の注意点を解説フリーランスとは?フリーランスとは、特定の企業や組織に所属せず、個人として仕事を請け負う働き方のことです。雇用契約を結ぶ正社員やパートタイム労働者などとは異なり、企業に雇用されているわけではありません。数ヶ月から数年間の有期で業務委託契約や請負契約を結び、企業やクライアントから業務を受注して、成果物に応じて報酬を得ます。特に、WebデザイナーやWebライター、エンジニアなどの職業ではフリーランスとして活躍する人が多くみられます。また、フリーランスは基本的に労働基準法の適用外です。企業はフリーランスに対して、労働時間や労働場所の指定、具体的な仕事の進め方を指示できません。そのため、フリーランスは、どの仕事を受けるか、いつどこで仕事をするかといった働き方を自分で決めることができます。▼関連記事:フリーランスとは?意味や適した職種、独立に必要な手続きなどをわかりやすく解説正社員のメリット・デメリット正社員として働く際には、以下のようなメリットとデメリットがあります。正社員のメリット裁量や責任の大きな仕事を任される可能性がある正社員のデメリット転勤や配属が変わる可能性がある働き方を選ぶ際にはメリットだけでなく、デメリットもしっかり把握することが大切です。それでは、具体的に見ていきましょう。正社員のメリット正社員は、担当する業務の幅が広く、裁量や責任のある仕事を任されることで、大きなやりがいを感じられるでしょう。また、企業側が正社員のスキルアップやキャリアアップのために研修やトレーニングの機会を設けることも多く、自己成長を図りやすい点もメリットの1つです。金銭面をみると、毎月の給料は安定しているほか、企業によってはボーナスや期末手当、決算手当などが支給されるため、経済的な安心感が得られます。また、社会保険(健康保険)や厚生年金制度、有給休暇、育児休業などの福利厚生が手厚く、プライベートと仕事のバランスを保ちながら、長期的に働くことが可能です。そのほか、正社員は社会的信用が高いため、住宅ローンやクレジットカードの審査などで有利に働くことが多いといわれています。正社員のデメリット正社員として働くデメリットとして、企業が定める就業時間や勤務地で働く必要があることが挙げられます。コロナ禍でリモートワークが普及したものの、アフターコロナで出社回帰する企業が増加しており、ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方が難しい場合があります。加えて、正社員は企業のニーズや人員配置の都合で希望しない土地への転勤や、慣れない業務への配属が命じられることがあります。必ずしも自分の希望や適性に合った仕事が割り当てられるわけではなく、場合によっては不本意な業務にあたる必要があります。モチベーションの低下やストレス増加につながる可能性があるでしょう。そのほか、仕事で関わる人が多いため、人間関係に悩みやすい点もデメリットの1つです。同僚や上司とのコミュニケーションや関係がうまくいかない場合でも、連携しながら仕事を進めていく必要があるため、精神的な負担が大きくなります。フリーランスのメリット・デメリットフリーランスとして働く際には、以下のようなメリットとデメリットがあります。フリーランスのメリット自分のスキルを活かして得意分野に特化した仕事ができるフリーランスのデメリット収入が不安定で将来が保証されていないフリーランスのメリットフリーランスは、自分のスキルを活かし、得意分野に特化した仕事ができます。また、自分の頑張りが直接収入に反映される点も大きな魅力です。こなした仕事の量に応じて収入がすぐ上がるためやりがいを感じやすく、モチベーションの維持にもつながります。働く場所や時間に縛られず、自由に働ける点も大きなメリットです。例えば、自宅やカフェ、時には海外でも仕事ができます。「午後は家族と出かけたいから、午前中のうちに仕事を片づけよう」といった柔軟な働き方も可能なため、仕事とプライベートのバランスが取りやすくなります。そのほか、フリーランスでは正社員よりも人間関係のわずらわしさが少ないのもメリットでしょう。組織やチームに縛られることなく、自分のペースで仕事を進められるため、人間関係のストレスが軽減されるでしょう。フリーランスには定年制度がないため、いつまでも自分のペースで働くことも可能です。フリーランスのデメリットフリーランスとして働く大きなデメリットは、収入が不安定であることでしょう。フリーランスは、プロジェクトやクライアントの状況によって仕事量が変動します。収入の波が生じやすくなることで、将来の生活設計が難しくなる可能性があります。正社員よりも社会保障の負担が重くなる点も無視できません。例えば、正社員であれば年金などの保険料は会社が半分負担してくれますが、フリーランスは全額自己負担です。また、多くのフリーランスが加入する国民年金は、厚生年金より将来受け取れる年金額が大幅に低くなります。そのほか、フリーランスは本業だけでなく確定申告や事務手続きも自分で行う必要があります。こういった作業は時間や労力がかかるだけでなく、税務や会計に関する知識が不足していると、ミスが生じ罰則のリスクも伴います。▼関連記事:フリーランスのデメリット11選!会社員との違いやメリットも理解しよう正社員とフリーランスの年収・収入の比較正社員とフリーランスでは、どちらの方が年収や収入が多いのか気になる方は多いのではないでしょうか。特にフリーランスの場合は、保険料や税金などの負担を把握し、実際に手元に残る金額(手取り額)をシミュレーションしておく必要があります。なお、手取り額とは、額面年収(総支給額)から税金や社会保険料を差し引いた後に実際に受け取る金額を指します。それでは、正社員とフリーランスの年収・手取りを具体的にシミュレーションしてみましょう。【計算ルール】・年齢20~39歳、配偶者なし、扶養家族0人の場合・フリーランスの場合は青色申告65万円控除を適用※計算ツール:個人事業主シミュレーション正社員の年収・手取りシミュレーション一般的に、正社員の手取り額は額面の75〜85%程度といわれています。例えば、年収500万円の場合、以下の税金や社会保険料が引かれます。厚生年金:45万180円健康保険:24万5,508円雇用保険:3万円所得税:13万7,900円住民税:24万5,400万円以上を合計すると、約111万円が差し引かれるため、手取り年収額は約389万円です。年収が上がると手取り額も増えますが、同時に税金なども上がるため控除額も増加します。実際に手元に残る金額が思ったより少なくなることがあるため、自分の手取り額を正確に把握しておくことが重要です。正確なシミュレーションを行い、生活設計や将来の計画に役立てるとよいでしょう。フリーランスの年収・手取りシミュレーションフリーランスとして働く際、手取り額は売上から経費や税金、社会保険料を差し引いた金額で決まります。例えば、年収500万円のフリーランスの場合、以下の税金や保険料を支払う必要があります。国民健康保険料:51万5,900円国民年金保険料:20万3,760円所得税:21万7,500円住民税:32万5,000円個人事業税:10万5,000円※課税される方のみ個人事業税も含めると、約137万円の支払いが必要となるため、手取り年収額は約363万円です。フリーランスは、正社員のように保険料を会社と折半する制度がないため、一般的に手取り額は正社員よりも少なくなります。正社員と同等の手取りを得るためには、1.5倍近くの収入を稼ぐ必要があるといわれています。▼関連記事:【比較早見表あり】フリーランスと会社員の年収・手取りの違いを解説!正社員とフリーランスの税金・保険料の違い正社員とフリーランスの税金と保険料には大きな違いがあり、特に保険料に関しては正社員の方が優遇されています。正社員の税金・保険料正社員として働く際に支払う税金と保険料には、以下のような種類があります。税金・社会保険の種類税率とポイント所得税所得が高くなるほど税率が上がる(累進課税)住民税前年の所得に対して一律で約10%の税率が適用される健康保険料会社と社員が折半して負担介護保険料会社と社員が折半して負担厚生年金保険料会社と社員が折半して負担雇用保険料業種によって異なるが、一般的には約0.3%が収入から差し引かれる所得税と住民税の支払いがある点はフリーランスと同じです。しかし、健康保険や介護保険、厚生年金の保険料は企業と折半となるため、支払いの負担が大幅に軽減されます。さらに、会社員の厚生年金は、将来受け取れる額が国民年金よりも多くなる点も大きなメリットです。フリーランスの税金フリーランスとして働く場合は、正社員とは異なる税金や保険料の負担が発生します。また、保険料は全額自己負担となる点を押さえておきましょう。税金・社会保険の種類支払う金額・税率とポイント所得税収入から経費や控除を引いた「所得」に対して課税される住民税前年の所得(確定申告)に基づいて算出される消費税次に該当する場合、売上にかかった消費税分を納付する必要がある個人事業税法定業種に該当する場合、3~5%の個人事業税が課される国民年金保険料2024年度の保険料は月額1万6,980円国民健康保険料保険料は居住する自治体や総所得金額によって異なる▼関連記事:フリーランス・個人事業主の税金の種類!確定申告や納税方法を徹底解説正社員とフリーランスはどっちがお得?最後に、正社員とフリーランスはどちらがお得なのか、「収入」「業務範囲・働き方」「福利厚生」の3つの観点から比較してみましょう。収入正社員は、収入が安定しており、企業の業績に応じて賞与などが支給されることもあります。また、有給休暇が付与されるため、体調不良などで突然休んでも有給の範囲内であればその分収入が減ることはありません。しかし、昇給のチャンスは限られていることが多く、大幅な収入アップは期待しにくいでしょう。安定性を重視する人は正社員としての働き方が向いているといえます。フリーランスは、自分のスキルや頑張り次第で高収入を得られます。仕事に精を出した分は翌月にすぐ報酬として反映されるため、モチベーションアップにつながるでしょう。一方で、企業側の都合で案件が急遽終了となったり、体調不良で仕事を休んだ場合は収入が減ったりするため、金銭的に不安定になります。そのため、フリーランスは自分の頑張りが収入に直結することにやりがいを感じる人に向いているでしょう。安定性を求める人には正社員が、自己の努力による成果を重視する人にはフリーランスが適しており、一概にどちらの働き方がよいかは断言できません。どちらが「お得」かは、個々の価値観やライフスタイルによって決まるので、注意が必要です。業務範囲・働き方正社員は、会社から幅広い業務を任されることが多く、業務の幅が広がりやすいのが特徴です。また、責任のある仕事を任される機会もあるため、仕事に対する意欲の向上や、やりがいにつながるでしょう。ただし、会社から指示された仕事は、興味の範疇に関わらず受けなければならないこと、また勤務時間や場所は制限されるため、働き方の柔軟性は低いといえます。こうしたことから、正社員はより責任のある仕事に携わりたい人に向いているでしょう対してフリーランスは、自分の得意とする特定のジャンルや業務範囲に絞って仕事を選べます。業務タスクがある程度限定されるため、効率よく仕事をこなせるでしょう。また、働く時間や場所を自由に設定できるためプライベートとも両立しやすくなります。しかし、案件獲得のための営業活動や確定申告なども自分で行わなければならない点は注意が必要です。フリーランスは、自分の得意分野を極めたい人や、自分のペースで自由に仕事をしたい人に向いているといえるでしょう。福利厚生正社員とフリーランスの福利厚生には大きな違いがあります。正社員の場合、社会保険料の支払いは会社と折半となるため、支払いの負担が大きく軽減されます。さらに、住宅手当などの各種手当や、レジャー施設の割引といった福利厚生を活用できる場合も多くあります。充実した福利厚生を重視する人に向いているでしょう。対してフリーランスは、社会保障が手薄なため、自分で適切な保険やサービスを選んで加入することが必要です。近年は、フリーランス向けの福利厚生サービスが拡充されています。情報収集が得意で、自分で管理することを楽しめる人に向いているでしょう。▼関連記事:フリーランスも利用できる福利厚生サービス13選!選ぶポイントや注意点を解説正社員からフリーランスになるには?正社員からフリーランスになるには、ステップを踏むことが重要です。まず、副業を許可している企業に勤めている場合は、フリーランスの仕事の流れをつかむためにも無理のない範囲で副業を始めるとよいでしょう。副業することで、手厚い社会保険が適用される環境にいながら、フリーランスの案件にも挑戦できる点は大きなメリットです。案件は、案件マッチングサイトやクラウドソーシングサイト、求人検索サイトを活用してこまめに探すとよいでしょう。独立に必要な手続きとしては、税務署への開業届の提出や青色申告の申請、さらに保険の切り替え手続きなどが必要です。フリーランスとして働く際は、これらの手続きを正確に行い、スムーズに活動を開始できるように準備しましょう。▼関連記事:フリーランスになるには?必要な手続きや仕事獲得の方法まで解説▼関連記事:会社員からフリーランスになる際にやるべきことは?必要な手続きや退職前の準備を解説フリーランスから正社員に転職できる?フリーランスから正社員への転職は可能です。人手不足の昨今、企業は専門知識や高いスキルを持つ即戦力を求めており、フリーランスで培った経験は強みとなるでしょう。ただし、フリーランスから正社員に転職する際は、年収が下がる可能性があります。また、働き方の自由度が減る点や、業務内容は多岐にわたる点もしっかり考慮しましょう。正社員への転職が決まったら、まずフリーランスとしての事業を終了する手続きが必要です。具体的には、税務署に「廃業届」を提出するほか、青色申告をしていた場合は、青色申告を取りやめる年の翌年3月15日までに「青色申告の取りやめ届出書」も提出します。また、お住まいの市区町村の担当窓口で国民健康保険や国民年金の脱退手続きも必要です。職場の社会保険や厚生年金に加入後、14日以内に切り替え手続きを行いましょう。▼参考:A1-10 所得税の青色申告の取りやめ手続|国税庁▼参考:国民健康保険の加入・脱退について▼関連記事:フリーランスから会社員に戻っても大丈夫!年収やキャリアの不安を解消正社員とフリーランスを兼業・掛け持ちする手もある正社員とフリーランスの掛け持ちは、収入やスキルアップを図れる有効な方法です。正社員としての安定した収入と福利厚生を確保しつつ、フリーランスの自由度や副収入を得られる点は大きなメリットといえるでしょう。ただし、時間管理や労働契約の確認が必要です。空いた時間を副業に充てすぎると、疲労やストレスが蓄積してパフォーマンスの低下につながります。また、副業を禁止している企業もあるため、事前に就業規則を確認しましょう。▼関連記事:副業フリーランスのメリットや注意点を解説!案件も紹介▼関連記事:会社員とフリーランスは掛け持ちできる!成功させるコツや確定申告の注意点などを解説フリーランス・副業案件を探すときはSOKUDANがおすすめ!フリーランスや副業の案件を探すときにおすすめのマッチングサイトが「SOKUDAN」です。SOKUDANは、フリーランス・副業案件を豊富に取り扱うマッチングサイトで、次の3つの特徴があります。週1日~稼働OKの案件多数リモート案件率92%平均時給4,500円正社員の仕事をしながら、掛け持ちしやすい週1日から稼働OKの案件が豊富です。さらに、リモート案件率92%のため、すき間時間を活用できる案件を見つけやすい点がメリットです。また、取り扱い案件の平均時給が4,500円と高単価のため、短時間でもしっかりと稼ぐことができます。フリーランス・副業案件を探している人は、ぜひチェックしてみてください。▼フリーランス・副業の案件・求人を探すならSOKUDAN▼SOKUDANのフリーランス・副業案件一覧▼SOKUDANの週1日稼働OKの求人まとめフリーランスは働き方の自由度の高さや、スキルを活かした働き方ができる点が大きな魅力です。それに対し、正社員は安定した収入や充実した福利厚生が魅力です。しかし、それぞれ福利厚生の手薄さや、働き方の自由度が低い点などのデメリットも持ち合わせています。「正社員とフリーランスのどちらが自分に合っているか?」という問いに対する答えは、人によって変わるのはもちろんのこと、タイミングによっても変わるものです。少しでも自分の希望に近い働き方ができるよう、正社員とフリーランスそれぞれのよさや不安要素をしっかり押さえつつ、定期的に自分のライフスタイルやキャリア目標を見つめなおしましょう。