フリーランスは、自分の好きなことやスキルを追求して働ける点が大きなメリットです。しかし、自由に働ける分、保険料や事務処理などの負担が大きく、仕事が保証されていないなどの不安もあります。そのため、「できれば扶養に入って無理なく働きたい」「でも扶養に入ってフリーランスとして働くために、何を準備しておくべきか分からない」と思っている方は多いのではないでしょうか。この記事では、フリーランスは配偶者の扶養に入れるのかどうかを説明します。また、年間どれくらい稼ぐといわゆる「働き損」にならないかをはじめ、必要な手続きなどをわかりやすく解説します。▼関連記事:フリーランスが扶養内で働く際の注意点!年収の壁や目安の年間所得を解説フリーランスは配偶者の扶養に入れる!結論からお伝えすると、配偶者の扶養に入ってフリーランスとして働くことは可能です。扶養の加入要件に、扶養に入りたい人の雇用形態は関係なく、1年間(1〜12月)の収入を一定額以下に抑えることが要件となります。扶養に入るためには、年間の収入を把握・管理し続けることが大切です。フリーランスが扶養に入るための基準とは?年間いくらまで稼げる?フリーランスが扶養に入るためには、一定の「年間所得」を下回る必要があります。扶養に入るための年間所得の基準は複数あります。フリーランスの場合は、年間所得が95万円・113万円・130万円の3つを意識するとよいでしょう。扶養に入るフリーランスが意識したい「年間所得」とは?年間所得とは、収入から必要経費を差し引いた金額です。パートやアルバイトであれば、年間給与だけ把握していれば問題ありません。しかし、フリーランスの場合は、取材費や交通費、水道光熱費、消耗品費など、業務を行うためにかかった経費を差し引いた年間所得が基準となります。【配偶者特別控除を受けたい場合】年間所得を95万円以下に抑える年間所得が95万円以下であれば、配偶者特別控除を受けられます。配偶者特別控除とは所得控除の1つで、以下の2つの条件を満たす場合に、所得から特定の金額が差し引かれるものです。【配偶者特別控除の条件】配偶者の年間所得が48万を超える~133万円配偶者本人の所得が1,000万円以下なお、配偶者特別控除と似たものに「配偶者控除」が挙げられます。配偶者控除は、配偶者の所得が48万円以下の人に適用されます。配偶者特別控除の金額は、納税する本人と配偶者それぞれの合計所得金額によって以下のように異なります。控除を受ける配偶者本人の合計所得金額900万円以下900万円超950万円超配偶者控除48万円以下38万円26万円13万円配偶者の合計所得金額48万円超 95万円以下38万円26万円13万円95万円超 100万円以下36万円24万円12万円100万円超 105万円以下31万円21万円11万円105万円超 110万円以下26万円18万円9万円110万円超 115万円以下21万円14万円7万円115万円超 120万円以下16万円11万円6万円120万円超 125万円以下11万円8万円4万円125万円超 130万円以下6万円4万円2万円130万円超 133万円以下3万円2万円1万円▼参考:No.1195 配偶者特別控除|国税庁【所得税をかけたくない場合】年間所得を113万円以下に抑える年間所得を113万円以下に抑えると、所得税が発生しません。所得税は、最大65万円が控除される「青色申告特別控除」と、最大48万円が控除される配偶者の「基本控除」の合計金額である113万円までかかりません。青色申告で確定申告するためには、税務署に届け出る必要があります。(詳しい手続きは後述)また、住民税は108万円を超えなければ課税されません。なお、以下のように配偶者の合計所得金額によって控除額は異なります。配偶者の合計所得金額控除額2,400万円以下48万円2,400万円超 2,450万円以下32万円2,450万円超 2,500万円以下16万円2,500万円超0円▼参考:No.1199 基礎控除|国税庁【社会保険の扶養に入りたい場合】年間所得を130万円未満に抑える年間所得を130万円未満(60歳以上の方や障がいのある方は180万円未満)に抑えると、健康保険や年金といった社会保険の扶養に入れます。130万円以上の年間所得を得ると、自分で国民健康保険と国民年金の保険料を支払う必要があります。フリーランスは、会社と保険料を折半する会社員と比べると、保険料の負担が大きいのが特徴です。国民健康保険の保険料国民健康保険は市区町村が運営しており、各市区町村の国民健康保険の加入者や財政状況、医療費などによって保険料が決まります。また、総所得金額などによって納める保険料は異なります。東京都新宿区の保険料は以下の通りです。総所得金額等年間保険料1か月あたりの保険料介護なし介護あり介護なし介護あり75万円10万2,368円12万5,780円8,531円1万482円100万円13万1,093円15万9,905円1万924円1万3,325円125万円15万9,818円19万4,030円1万3,318円1万6,169円150万円18万8,543円22万8,155円1万5,712円1万9,013円200万円24万5,993円29万6,405円2万499円2万4,700円300万円36万893円43万2,905円3万74円3万6,075円400万円47万5,793円56万9,405円3万9,649円4万7,450円500万円59万693円70万5,905円4万9,224円5万8,825円▼参考:令和6年度 国民健康保険料 概算早見表(総所得金額等)▼関連記事:フリーランスが加入できる健康保険は?国民健康保険料を抑えるコツやおすすめの制度も紹介国民年金の保険料2024年度の国民年金の保険料は、収入に関わらず1ヶ月1万6,980円です。付加保険料を納付する場合は、上記に加えて月額400円かかります。なお、国民年金は2年分・1年分・6ヶ月分と一定の期間の保険料を前払いすることで割引が適用されます。▼参考:国民年金保険料|日本年金機構▼関連記事:フリーランスが加入する国民年金とは?将来の年金受給額を増やす方法も解説!フリーランスは年間でいくら以上稼ぐと働き損にならない?扶養から外れると、所得税や住民税に加え、年間多額の保険料を支払わなければなりません。そのため、社会保険の扶養から外れる年間所得130万円を少し上回る程度の収入だと、社会保険料の負担が非常に大きく、手取りが扶養内よりも減ってしまういわゆる“働き損”となる可能性があります。以下の場合を例に、具体的な保険料の支払い額を見てみましょう。扶養から外れて稼いでも、実際に手元に残る金額は扶養内で働いていた時より減少していることがわかります。扶養から外れている場合扶養内の場合・東京都新宿区に住む35歳・東京都新宿区に住む35歳国民健康保険料18万8,543円(年間)-国民年金保険料20万3,760円(年間)-保険料合計(年間)39万2,303円0円手取り110万7,697円125万円働き損となるケースは、年間所得130~160万円が該当するといわれています。フリーランスとして扶養を外れて働きたいと考えるようになった場合は、収入をしっかり予測し、働き損となるゾーンを上回るのを確認してからがよいでしょう。損をしないために!フリーランスが扶養に入るときに知っておきたいこと扶養に入ってフリーランスとして働く場合は、手続きや準備を一切しないと場合によっては損をする可能性があります。そうならないために、フリーランスが扶養に入るときに知っておきたいことを解説します。開業届・青色申告承認申請書を出しても扶養への影響はなしまずは、税務署に開業届と青色申告承認申請書を提出しましょう。開業届と青色申告承認申請書を提出しても扶養から外れることはありません。開業届は、個人で新しい事業を始めることを税務署に知らせるための書類です。開業届を提出することで、主に以下のようなメリットがあります。確定申告で青色申告ができる(開業届とあわせて青色申告承認申請書の提出が必要)経費計上できる金額が大きくなる屋号で事業用の銀行口座を作れる赤字を最大3年間繰り越せる開業届は、事業開始から1ヶ月以内に提出する必要がありますが、1ヶ月を超えてから提出しても罰則はありません。一方、青色申告承認申請書は、青色申告で確定申告するために必要な書類です。最大65万円の控除が受けられるなど、さまざまなメリットがあります。▼関連記事:フリーランスが開業届を出すメリット!不要な場合やインボイス対応も解説▼関連記事:フリーランスは青色申告で確定申告しよう!控除の活用や節税のコツを解説扶養に入って働く場合も確定申告を行うフリーランスは、扶養に入って働く場合も確定申告を行う必要があります。確定申告とは、1〜12月までの1年間の所得に対する所得税を計算して確定させる手続きで、毎年2月16日~3月15日の間に行います。確定申告には青色申告と白色申告の2種類があります。青色申告は、複式帳簿で帳簿をつけなければならないため白色申告より手間が生じますが、最大65万円の特別控除を受けられるという税制上で大きなメリットがあります。一方、白色申告は簡易(単式)帳簿で、記帳は青色申告と比べて手間は少ないものの、控除額は10万円と青色申告よりも大幅に少なくなります。▼関連記事:確定申告はフリーランスに必須!やり方や必要書類と経費管理のコツ経費をしっかり管理するフリーランスが扶養に入って働く際は、経費を差し引いた年間所得額が基準となります。そのため、収入だけでなく事業にかかった経費もしっかり管理しましょう。フリーランスが使用する主な経費の例としては、以下が挙げられます。経費具体例消耗品費コピー用紙、切手、ボールペンなどの文房具など(※税込み10万円未満の物品)接待交際費クライアントとのランチミーティング、クライアントとの会食帰りに使用したタクシー代など新聞図書費書籍購入費、新聞購読料、有料サイト購読費など通信費インターネットやスマートフォンの利用にかかった通信費支払手数料銀行の振込手数料、登録手数料、証明書の発行手数料、仲介料など▼関連記事:フリーランスの気になる経費事情!経費計上する時の注意点やQ&Aもフリーランスが扶養に入る・外れる際の必要な手続きフリーランスが扶養に入る際は、速やかに健康保険と年金の手続きを行う必要があります。扶養に入る際の手続きに加え、扶養を抜ける際の手続きも解説します。扶養に入る際の手続き扶養に入る事実が発生した日から5日以内に、健康保険と年金の加入手続きを行いましょう。必要なものは以下の3点です。被扶養者(異動)届収入を証明する書類被扶養者の戸籍謄本(もしくは戸籍抄本)または住民票の写し一般的には、事業主や担当者を通じて書類を提出するため、扶養に入ることを決めたらすぐに配偶者に伝えましょう。扶養から外れる際の手続き仕事量が増えて扶養から外れる際も手続きが必要です。配偶者を通じて担当者に連絡して、健康保険被扶養者(異動)届と国民年金第3号被保険者関係届(20歳以上60歳未満の人が対象)を入手しましょう。原則14日以内に手続きを行う必要があるため、速やかに記入して提出します。扶養から外れた後に厚生年金に入らない場合は、国民年金の加入手続きを行いましょう。国民年金の加入手続きは、お住いの市区町村や町村役場で行います。年金手帳など基礎年金番号がわかる書類を持参する必要があります。▼参考:国民年金に加入するための手続きフリーランスとして働く配偶者の扶養には入れる?そもそも、国民年金と国民健康保険には扶養の概念がありません。つまり、配偶者がフリーランスで、国民年金と国民健康保険へ加入している場合は、家族も同じように保険料の支払いが発生します。そのため、自身もある程度仕事を得るか、パート・アルバイトや派遣で働き、社会保険に加入して保険料の負担感を減らすのがよいでしょう。【体験談】扶養に入りながらフリーランスとして働くとどうなる?現在フリーランス7年目の筆者も、以前は扶養に入ってフリーランスとして働いた経験があります。そこで、扶養に入っててよかった点や、反対に扶養で働くうえで感じた難しさ、「あの時こうしていれば…」と後悔したことを紹介します。【当時の筆者の状況】前職は法人営業職で、独立後はライターとして活動社会保険の扶養に入るため、2年近く月収を10万円ほどにセーブ開業届は出さず、白色申告で確定申告まず、実のところ前職はほぼ無計画に退職しました。そのため、当時は安定した案件はまったく持っておらず、クラウドソーシングサイトを使って低単価な記事ライティングを地道にこなす日々。独立直後は月3万円ほどの収入を得るのに精一杯でした。扶養に入ってよかったと思うこと保険料に追われる心配がなくなり、仕事量が不安定でも不安が減りました。また、仕事量を抑えられたため、家族や友人たちとの時間を充実させることができたのは大きなメリットだと思います。扶養に入っているからこそ大変だと思ったことなんといっても収入の調節です。興味のある短期の案件を見つけても、扶養から外れないよう、クライアントに相談して仕事量や支払いを分割にしてもらうなど調整するのが本当に大変でした。何度も扶養から外れることも検討しましたが、コンスタントに「働き損ゾーン」から脱却できるほど稼げる自信が当時はなかったのです。こうしておけばよかったと思うこと仕事に関するインプットを怠っていたので、扶養に入っていて余裕のあるうちに積極的にインプットをしておけばよかったと思います。また、「書類の手続きは難しい」という理由から開業届は出さず、確定申告は白色申告で、経費計上は全くしていませんでした。仕事をするうえでほとんど経費がかからないライターではありましたが、開業届を出してしっかり経費計算していれば、もう少し働けたのでは…と思います。扶養から出るためにやったことと現在2年ほど扶養に入りながらフリーランスとして働きましたが、「キャリアの幅を広げたい」と強く思うようになり、扶養から外れました。扶養から外れるために、以前からの案件にプラスして、高時給で週2~3勤務OKの派遣を掛け持ちしたり、記事作成代行サービスを取り扱う企業に登録するなどして単発の案件を受けたりしました。今は常時4社と取引しており、なかにはSOKUDANで決まった案件もあり、収入は比較的安定しています。フリーランス案件を探すならSOKUDANがおすすめ扶養に入りながらフリーランスとして働きたい場合は、案件マッチングサイト「SOKUDAN」の活用がおすすめです。SOKUDANには、次の3つの特徴があります。週1日~稼働OKの案件多数リモート案件率92%平均時給4,500円SOKUDANは、ほかの案件と掛け持ちしやすく、扶養に入りながら働きやすい週1日から稼働がOKの案件が豊富です。リモート案件率92%のため、時間を活用できる案件を見つけやすい点もメリットです。また、取扱案件の平均時給4,500円と高単価のため、短時間でもしっかりと稼ぐことができます。扶養から外れる際の検討材料にもなるので、フリーランス案件を探している人はぜひチェックしてみてください。▼フリーランス・副業の案件・求人を探すならSOKUDAN▼SOKUDANのフリーランス案件一覧▼SOKUDANの週1~稼働OK案件一覧▼SOKUDANのリモート案件一覧まとめフリーランスも配偶者の扶養に入って社会保険の負担をなくすことができます。しかし、パート・アルバイトのように純粋に年間給与を把握するだけではなく、経費もしっかり踏まえて年間所得を計算する必要があります。また、扶養に入っていても確定申告を行い、開業届の提出や経費計算も入念に行うことで、損をしない働き方が可能となります。フリーランスとしての仕事の幅が広がって扶養を外れる際は、働き損にならない年間所得を把握したうえで、案件を安定して獲得できるよう営業活動やスキルアップを心がけましょう。