フリーランスの経費事情は、実際にフリーランスをやったことがある人にしか分からず、曖昧な部分も多いです。この記事では、経費として計上できる項目を細かく解説していくので、経費についてよくわからない人は参考にしてみてください。現役のフリーランスの実体験をもとに、確定申告の際に役立つ情報も紹介しています。これからフリーランスを目指す人は、こちらの記事も参考にしてみてください!▼関連記事:フリーランスになるには?必要な手続きや仕事獲得の方法まで解説 フリーランスにとって経費の重要性とは会社員は、経理部などが経費精算を担当してくれていますが、フリーランスや個人事業主は自分で経費を管理しなければいけません。そのためにまずは、フリーランスの経費の考え方について理解する必要があります。フリーランスの経費計上とはフリーランスにとっての経費とは「仕事で使ったお金のこと」を指します。事業に関わる費用は経費として計上できるので、レシートや領収書を取っておいて、確定申告の際に計算する必要があります。フリーランスが経費として計上できる項目については、後ほど説明します。経費を計上して節税ができるフリーランスが経費を計上する主なメリットは「節税」です。経費として計上することで、所得を減らすことができます。税金は所得金額に応じて課税されるので、所得を減らすことができれば、翌年の税金を減らすことができます。つまり、下記のようなイメージです所得=収入−経費課税所得=所得−所得控除※所得控除とは、所得税額を算出する際に、所得から一定の金額を差し引くことを指します。納税者の状況に合わせて「税額計算上の所得」を減らし、所得税を少なくすることで納税者の負担を軽減することができます。【重要】フリーランスが経費にできるものの基準使った費用が経費になるのかどうか、フリーランスになりたての人が自分で全て判断するのは、難しいかも知れません。経費にできるものには基準がいくつかあるので、重要な項目を確認していきましょう。購入したものや利用したサービスが事業に貢献しているか購入品や購入したサービスが「事業に関係あるかどうか」が、経費として認められるかの重要な分かれ道です。例えば、フリーランスのエンジニアの場合、仕事用に購入したパソコンや机は経費計上できるのでしょうか?答えは「できます」。エンジニアにとってパソコンがないと仕事になりませんし、机も仕事をする上で重要なアイテムです。机や椅子などの家具は「消耗品費」として計上可能です。ただし10万円未満の物品、もしくは使用可能期間が1年未満の物品購入にかかる費用とされています。 10万円以上の家具であれば、「固定資産」となるため、消耗品費としては計上できません。事業を行う上で必要な出費か経費にしたい費用が、事業を行う上で「必要な出費かどうか」も重要な判断基準です。例えば、遠方へ遠出した場合の旅費・交通費は経費になるでしょうか?答えは「ケースバイケース」です。取材など実際に事業に関わる場合には「取材費」の名目で計上できる場合もありますが、直接的に事業に関係ない場合には、経費として認められません。例えば、休暇を兼ねて旅行先で仕事をする「ワーケーション」の移動費用は経費にできません。旅行先でなくても仕事はできるからです。事業に関係がある支出であったことを証明できるように、収益に関わる資料や請求書なども整理して管理しておくのがよいでしょう。 フリーランスが経費として計上できるものでは、具体的にどのようなものが経費にできるのでしょうか。フリーランスが経費にできる代表的な項目をいくつか紹介します。開業準備費「開業準備費」とは、その名の通り開業までにかかる費用のことです。家具や設備などの固定資産は、後に出てくる「減価償却費」として、減価償却しなければならないため、開業準備費には含まれません。開業準備費の例)Webサイトの制作費用、広告費用、協力企業との打ち合わせ費用など地代家賃「地代家賃」とは、オフィスや事務所の家賃などのことです。自宅で仕事を行うフリーランスの場合、家事按分による経費計上が可能になります。※家事按分とは、家賃などのプライベートによる生活費と事業費が混在している費用を決められたルールに沿って計算し、事業に使用した分を算出することを指します。地代家賃の例)家賃、駐車場代など水道光熱費「水道光熱費」とは、電気やガス、水道代などを指します。水道光熱費も家事按分の対象となる経費です。消耗品費「消耗品費」とは、短期間で消耗する物品の費用を指します。ただし、10万円未満で購入できるものや1年以内に使い切れるようなアイテムに限られます。 消耗品費の例)業務で使用する机や椅子、ロッカー、ホワイトボードなど。時計やカメラ、加湿器などの電化製品も含まれます。減価償却費「減価償却費」とは、固定資産の価値の低下を鑑みて、その額を会計期ごとに見積もる費用のことを指します。取得時の金額が10万円未満、または使用可能期間1年未満のものは、全額をその年の必要経費に計上できます。 減価償却費の例)土地や骨董品などを除く、あらゆる物が対象となります。新聞図書費「新聞図書費」とは、紙媒体に限らず、電子書籍やメールマガジンの購読料に関しても、事業に必要なものであれば新聞図書費として計上できます。新聞図書費の例)業界誌や専門書の書籍代金、創作活動の題材として使う小説や漫画の購入費用など接待交際費「接待交際費」とは、事業に関係のある人に対して使う費用に用いる勘定科目のことです。接待交際費には、金額に上限があり、企業の規模によって「800万円」「接待飲食費の50%」と定められています。接待交際費の例)新しく取引をする企業の担当者との食事会費用など広告宣伝費「広告宣伝費」とは、自社の商品やサービスなどを不特定多数の人にアピールするために用いられる勘定科目です。取得価額10万円未満のものが対象です。経費計上のタイミングは「お金を払ったとき」ではなく「実際に広告宣伝に使ったタイミング」になるので注意が必要です。広告宣伝費の例)CMの制作費、看板の制作費など 損害保険料「損害保険料」とは、火災保険や自動車保険(自賠責保険・任意保険)、地震保険などが代表的な勘定科目です。生命保険や国民健康保険は対象外となります。損害保険料の例)オフィスとして使っている物件に火災保険をかけた場合の保険料採用教育費「採用教育費」とは、従業員の採用や教育に関わる費用に用いることができる勘定科目です。採用教育費の例)採用広告を掲載したときの費用、面接会場を借りる費用など支払手数料「支払手数料」とは、取引に関する手数料や費用や、報酬などの支払いのことです。支払手数料の例)銀行の振込手数料、代引き手数料、各種証明書の発行手数料など租税公課「租税公課」とは、国や自治体に支払う税金や手数料のことを指します。フリーランスの場合は、私生活で使用する車や家が事業でも使われている場合、ここでも家事按分が可能となります。租税公課の例)事業税・事業所税・固定資産税・自動車税など車両費「車両費」とは、事業用の車を維持管理する際にかかるガソリン代や自動車保険料、自動車税、車検代、修理代、ETC料金などを経費計上するための勘定科目です。プライベートでも使用している場合は、家事按分が必要となります。外注費「外注費」とは、外部の法人や個人と契約を結び、業務を委託する際に使用する勘定科目のことです。外注費の例)Wrbサイト構築などを外部のデザイナーに依頼した際に発生する費用など修繕費「修繕費」とは、建物や機械などの資産を同じ状態に戻す、もしくは買ったときの状態を維持するためにかかった経費です。修繕費の例)エレベーターや水回りの修理費、屋根の修理や外壁塗装、床や壁紙の張替えなど給与賃金「給与賃金」とは、従業員に支給する給料や残業代などを経費処理するときに使う勘定科目のことを指します。正社員・パート・アルバイトなど、雇用形態に関係なく、従業員に対して支払う給与は「給与賃金」として経費計上できます。福利厚生費「福利厚生費」とは、企業が従業員に提供する福利厚生のサービスにかかった費用のことを指します。従業員の生活の安定・向上を目的に、住宅や飲食など様々な意味での支給にかかる費用です。福利厚生費の例)従業員の歓送迎会などの飲食代、社員旅行の費用、スポーツジムなどの施設の利用料など交通費や宿泊費「交通費や宿泊費」も経費に含むことができます。遠方の得意先や支店などへの出張に伴って宿泊した場合の交通費や宿泊費が対象です。交通費は領収書がなくても計上できる経費ですが、業務に必要な交通費だとわかるようにしておくのがよいでしょう。▼関連記事:業務委託の交通費はどうなる?フリーランスがトラブルを防ぐ契約の進め方を解説通信費「通信費」とは、事業で使用する電話やインターネットなど通信で発生した費用を指します。プライベートでも使用している場合は家事按分が必要となります。通信費の例)電報代、郵便代、宅配便、ハガキ・切手代、年賀状、Wi-Fiやプロバイダーなどのインターネット利用料など【フリーランス直伝】見落としがちな経費になるもの!実際にフリーランスとして働く人から見落としがちな経費について聞きました!意外なものが経費にできるので、チェックしていきましょう。サブスクリプションツールの月額料金「Chatwork」や「Slack」などのコミュニケーションツールや、「Microsoft office」の使用料、「Canva」、「ChatGPT」などのサブスクリプション費用が経費になります。フリーランスの場合、使うツールを指定するクライアント側が費用を負担してくれる場合がありますが、個人で契約している場合には自身で経費として計上するのがよいでしょう。カフェで作業をした時の飲食費クライアントとの打ち合わせや、仕事関連の外出ついでに出先のカフェで作業した時は、経費として認められるでしょう。ただし注意点として、経費と認められるのは基本的には飲料代のみで、食事代は含まないことが多いです。また、事務所やオフィスを別途仕事場として契約している場合、「事務所やオフィスではなく、カフェで作業をする必要があったか」という点を問われる場合があります。セミナーやコミュニティの交流会の参加費用有料のセミナーやフリーランスコミュニティでの交流会の費用は、経費として計上できる場合があります。具体的には、フリーランス同士やクライアントとの情報交換会や名刺交換会などです。コワーキングスペースで開催されるイベントなどへの参加費もこれに含まれるでしょう。スマートフォンの使用料金・通信費スマートフォンの使用料金・通信費は、経費として落とせます。特にフリーランスになりたての場合、プライベートで使用するスマホと仕事用のスマホを分けていないことも多いので、仕事で使用した分の電話代や通信費は経費として計上してOKです。フリーランスが経費計上する時の注意点フリーランスになって初めて確定申告をする際、何に気をつけるべきでしょうか?経費計上において、いくつか注意する点があるのでみていきましょう。本当に経費になるか確認を!経費として計上する費用が本当に事業に関わるものかどうか、適切に判断しましょう。税務調査が入った時に経費として判断してもらえなかった場合には、ペナルティを受ける可能性があります。毎年、確定申告までに経費を計算しておくフリーランスは、「毎年」確定申告が必要です。期限内に確定申告を行わなかった場合には、ペナルティとして、「無申告加算税」が課せられる場合があります。 毎年、期限までに経費や売り上げの計算が間に合うように、月末に精算するなどして計画的に管理することをおすすめします。領収書やレシートは7年間保存しておく確定申告で計上した経費の領収書やレシートは、法律により「7年間の保管」が義務付けられています。保管期間は、領収書やレシートの発行日ではなく、確定申告の期限日が起算日となる点も注意が必要です。また、2022年1月1日施行の改正電子帳簿保存法によって、電子データで受け取った領収書は、電子データのまま保存することが義務付けられました。本当に必要な経費か購入する前に再考を!経費になるからといって、何でもかんでも買わないようにしましょう。後になって、「そんなに必要ないのに、経費になるからという理由で買ってしまった......」と後悔しないように、本当に事業に必要なものを見定めてから購入するのがよいでしょう。経費といえど、自身の支出の一部であることを忘れないようにしましょう。自宅が事務所なら家賃を按分する自宅の一室を仕事に利用していたり、いちスペースをオフィスにしていたりする場合は、使用面積で家事按分を行うのがおすすめです。例えば、家全体の面積が約100平方メートルで、仕事場として使用しているスペースが25平方メートルの場合、家賃のうち25%を事業費として計上することができます。おすすめ!フリーランスの確定申告ですべきことフリーランスになったら、所得控除額以上の収入がある人は確定申告が必要です。正しく確定申告を行うことで還付を受けられる可能性もあるので、忘れずに確定申告を行うようにしましょう。青色申告で確定申告をする確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。青色申告は白色申告と比べると必要な帳簿が多く、手間がかかる印象ですが、その分メリットもあります。「最大10万円」もしくは「最大65万円」の特別控除が受けられたり、赤字分を翌年度から3年間繰り越しができたりします。青色申告であれば、経費と認められる項目も多くなるので、フリーランスになって翌年の所得税を節税したい場合には、青色申告で確定申告をするとよいでしょう。●青色申告のやり方まずは、所轄の税務署に「青色申告承認申請書」を提出しましょう。次に、前年に得た所得を計算します。毎年2月16日から3月15日の期間中に確定申告を行い、税金を納付することで節税に繋がったり、還付金を受け取れるようになります。ツールを利用して利益や経費を記録するスプレッドシートなどで管理するのもよいですが、経費精算ソフトを利用するのもおすすめです。「freee」「マネーフォワード」「楽楽精算」など便利なツールがいくつもあるので、これらのツールを活用して、こまめに経費や売り上げの管理をするのがよいでしょう。使える控除は最大限活用する節税に繋がるかもしれないさまざまな控除が存在するので、うまく活用していきましょう。まず、控除には、所得控除と税額控除の2種類あります。所得控除1つ目の「所得控除」は、一定の金額を課税対象となる所得から差し引くものです。所得控除が受けられるのは、次のような場合です。基礎控除全納税者が対象となる控除です。年間所得2,400万円以下の人は一律48万円の控除となります。社会保険料控除健康保険、国民年金、国民年金基金、介護保険、労働保険など各種保険料の全額が控除されます。生命保険料控除民間の生命保険、介護医療保険、個人年金などの掛金も控除対象です。小規模企業共済等掛金控除小規模企業共済や個人型年金(iDeCo)に支払った掛金の全額が控除されます。医療費控除年間の医療費支払いが10万円以上の場合、もしくは対象の医薬品を1万2,000円以上購入した場合にその全額が控除されます。寄附金控除国や市町村、認定NPO法人などに寄付した場合に控除が受けられます。「ふるさと納税」も寄附金控除の一例です。▼関連記事:フリーランスのふるさと納税のやり方は?確定申告までの流れやメリットも解説税額控除2つ目の「税額控除」とは、課税される所得金額から計算された所得税額から、一定の金額を控除するものです。主な税額控除としては、次のようなものがあります。配当控除株式投資などによる配当金を受け取った人が対象となる控除です。(特定増改築等)住宅借入金等特別控除住宅を新築した人、取得した人、増改築を行った人などが対象となる控除です。政党等寄附金特別控除政党もしくは政治資金団体に寄付を行った人が対象となる控除です。〜気になるQ&A〜フリーランスの経費事情フリーランスになると経費への理解がより一層必要になってきますが、実際の経費事情はどのようなものなのでしょうか?よくある質問と一緒に学んでいきましょう。Q.税務調査が入ることってあるの?A.税務調査の対象は「事業の規模にかかわらず、すべての法人および個人事業主、フリーランス」です。一般的には、帳簿に不正確な記帳がある、経費として認められない計上がある、などの不正の疑いがある場合、もしくは急成長している会社などに税務調査に入る場合が多いようです。 Q.領収書とレシートはどっちがいい?A.より多くの情報を残せるという意味では、領収書よりもレシートの方が保管しておくのによいでしょう。支払い日時や支払いをした店舗など、より詳細な情報がレシートには記載されているからです。特別な事情がない場合は、レシートの形で保存しておくようにしましょう。Q.領収書は紙保存がいい?それとも電子保存?A.電子帳簿保存法の改正により、紙で受け取った領収書はデータスキャンののち、規定の期間内のタイムスタンプを付与した後は、原本は破棄してもよいことになりました。逆に、改正電子帳簿保存法によって電子取引においては、領収書の紙の保存が禁止となったため、電子保存が必須となります。改正電子帳簿保存法は、2022年1月1日から施行されていますが、2023年12月31日までは猶予期間となっています。Q.経費に上限ってあるの?A.フリーランスや個人事業主の経費に上限はありません。事業に関わる支出であれば、経費として計上できます。開業したばかりでは、経費が売上を上回って、赤字になることもあります。ただし、いくら本人が「事業に必要だった」と主張しても、経費として妥当とみなされなかった場合には、税務署から指摘を受ける可能性があります。まとめフリーランスになると、経費について考える機会が会社員よりも多くなります。法律に違反したり、税金面で損をしないように、最低限知っておくべきことを解説しました。経費になるかどうかの判断基準は「事業に関係あるか」「必要な出費かどうか」です。その出費がなかった場合に事業や売上に影響がなければ、経費として申請することはできません。各勘定科目などはこれから確定申告をやるにつれて、段々と知識も増えていくと思うので、まずはフリーランスの経費についての理解を深める第一歩として、活用してみてください。