「自分の得意なことや好きなことに特化して仕事をしたい」「働く場所や時間に縛られたくない」などの理由で、フリーランスを目指す方は近年増加しています。しかし、会社員からフリーランスになる場合は、働き方や社会保険などさまざまな場面で大きな変化が生じます。さらに、独立に伴う必要な手続きもあるため、あらかじめ把握して備えることが重要です。今回は、会社員からフリーランスになると変わることや、必要な準備・手続きを詳しく解説します。「会社員からフリーランスを目指す場合は、何から準備するべき?」と悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。会社員からフリーランスになると変わること会社員からフリーランスになると、働き方や収入、税金など、以下のようにさまざまな場面で変化が生じます。大きく変わるポイントを把握することで、独立の際に必要な準備や手続きが多岐にわたることが分かるでしょう。 会社員フリーランス働き方会社に雇用され、雇用契約書に基づき業務を行う1つひとつの仕事ごとに企業と業務委託契約を結び、仕事内容や業務時間などは自分の采配で決められる収入の受け取り方年俸制または月給制で、ある程度収入は固定されている業務を遂行するごとに報酬を受け取る収入の安定性給料制により、安定継続的な収入が見込める自分で仕事を獲得する必要があるため、安定性は不安要素がある税金所得税と住民税は会社が毎月代行して納税するため、給料から源泉徴収される確定申告を行い、自分で税金を納める保険会社と折半で健康保険と厚生年金に加入するため、保険料は給料から天引きされる国民健康保険と国民年金に加入し、保険料は全額自分で支払う社会的信用安定継続的な収入が見込めるため、ある程度の信用があるとみなされる収入の安定性が低いため、会社員と比べて信用度が低い傾向にあるスケジュールの自由度会社の営業時間に合わせて働く必要があるため、自由度はあまり高くない自分の好きなタイミングで仕事をしたり休みを取ったりできるため、自由度は高い働く場所基本的にはオフィスに出社する必要がある自分で決められる▼関連記事:フリーランスと会社員の違いに驚愕!独立前に知っておくべき違いを解説▼関連記事:【比較早見表あり】フリーランスと会社員の年収・手取りの違いを解説!会社を退職する前に準備したいこと8選会社員からフリーランスになる際は、準備するべきポイントを前もって整理することでトラブルや失敗などのリスクを軽減できます。備えておきたいポイントは8つあり、順番に詳しく解説します。①スキルアップを図る会社員からフリーランスになる際は、少しでもスキルアップを図ることが重要です。フリーランスは、会社員のように会社に育ててもらえるわけではなく、基本的にどのような案件でもすぐに案件をこなしてくれる即戦力が求められます。勉強する意欲はあっても、成長過程にある状態では案件の獲得はスムーズにいきません。フリーランスを目指すのであれば、以下のような手段でスキルアップを図り、即戦力として頼られる力を身につける必要があります。スキルアップのスクール・講座を受講する勉強会・セミナーに参加する現職のプロジェクトに参加する勉強中でも採用してもらえる案件を獲得し、経験を積む▼関連記事:フリーランスのスキルアップの方法!稼げるフリーランスになるコツとは②人脈を築くフリーランスとして継続的に仕事を受注するためには、人脈が非常に重要です。「この仕事ができる人を探しているのですが…」などと声を掛けてもらえることや、励まし合える環境も手に入れられる可能性が高まります。仕事の幅が広がり、スキルアップのきっかけにもつながるでしょう。しかし、フリーランスは会社というコミュニティに所属しないため、気軽に人脈を築きにくい性質があります。そのため、以下の方法を意識し、会社員のころから人脈づくりを図ることが大切です。現在所属している会社と業務委託契約ができないか模索する現職の取引先に挨拶しておくセミナーや交流会に足を運ぶSNSで同業とつながるただし、現職の取引先と独立後を見据えたやり取りをすると、トラブルに発展する可能性もあります。現職の就業契約書などを確認し、細心の注意を払いましょう。▼関連記事:フリーランスこそ人脈が大切!人脈作りのコツ・案件獲得方法を解説▼関連記事:フリーランスのコミュニティのおすすめ!人脈作りや案件獲得ができる!③半年分の生活費を貯蓄する会社員からフリーランスになる際は、半年分を目安に生活費を貯蓄しましょう。フリーランスは会社員と比べて収入の波に差が生じやすく、収入が少なくなったときに貯蓄があると安心できます。案件の獲得にはタイミングや縁も大きく関係し、なかなか受注につながらないケースがあります。また、働く意欲やスキルがあっても、取引先の事業状況や予算によって契約が終了となるケースも少なくありません。フリーランスで経済的に余裕がない状態に陥ると、競争率が低い、低単価の仕事を受けざるを得なくなります。そうなるとキャリアアップを図りにくく、低料金の負のループから抜け出せないという状態になりかねません。独立する際は経済的に余裕を持つようにしましょう。▼関連記事:フリーランスは貯金が重要!独立前のお金準備や将来の資産形成について④クレジットカードや不動産など審査が必要なものは対応しておくフリーランスは会社員と比べて収入が不安定なため、社会的信用が低くなりやすく、審査が通りにくいといわれています。具体的には、クレジットカードの新規作成や、車・不動産の購入、賃貸契約などが挙げられます。会社員は安定した収入があるとみなされるため、審査に通りやすいといわれています。社会的信用が審査基準になるものは、フリーランスになる前に申し込んでおくとよいでしょう。▼関連記事:フリーランスがクレジットカードを作るならビジネスカードがおすすめ!選び方や審査を通すポイントを紹介⑤案件マッチングサービスやエージェントに登録する会社員からフリーランスになる際は、前もって案件マッチングサービスやエージェントに登録しましょう。案件マッチングサービスやエージェントを利用することで、案件獲得のチャンスが増え、収入が安定する可能性があります。案件マッチングサービスは、フリーランスを採用したいクライアントとスムーズに結び付けてもらえるため、早めに仕事を獲得できる点がメリットです。一方で、エージェントに登録するとキャリアアップの相談に乗ってもらえることもあり、収入アップの可能性を高められるでしょう。上記のサービスは、登録だけ済ませられればすぐに案件を得られるというわけではありません。案件獲得のためには、ポートフォリオを丁寧に作成したり、履歴書や職務経歴書をブラッシュアップしたりして、「この人に仕事を依頼したい」と思われるように準備をすることが重要です。受注案件が少ない場合は、単発や少額の案件を積み重ね、ポートフォリオを増やすことを意識しましょう。▼関連記事:フリーランス向け案件マッチングサービスのおすすめ8選〜利用者の声もご紹介〜▼関連記事:フリーランスにおすすめのエージェント21選!案件を獲得するための強い味方⑥案件に応募して副業を開始する会社が副業を認めている場合は、案件に応募して副業を始めるとよいでしょう。副業は、独立後に行う仕事内容に近い業務を行うのがベストです。例えば、フリーランスのライターとして独立予定の方は、文字起こしやデータ入力といった副業ではなく、実際に記事を書く仕事を探しましょう。そうすることで、以下のようなメリットが生まれます。独立後のイメージがつかみやすい退職後も副業の案件を継続することで、収入がある程度安定する実績が増え、のちの案件獲得に活かせる実際に、副業が軌道に乗ったタイミングでフリーランスに転向する人は少なくありません。ただし、副業がある状態で退職すると、失業保険の受給対象外になる場合もある点には注意が必要です。受給できる場合でも、副業の収入分は失業保険の支給額から減額措置となるため、その点はあらかじめ確認しましょう。▼関連記事:【厳選】副業マッチングサービス・サイトのおすすめ30選を紹介▼関連記事:副業でスキルアップ!自分に合った副業の選び方や磨けるスキルを解説⑦税金や経理について勉強をする会社員からフリーランスになる際は、税金や経理についても勉強を進めておきましょう。フリーランスは本業の業務のみをこなせばよいわけではなく、本業に伴って必要な事務処理や税務処理も必要になります。万が一、必要な税務を無視して納税を怠った場合は、悪気はなかったとしても脱税行為に該当する恐れがあります。「知らなかった」では済まされないため、あらかじめ本を読んだりセミナーに参加したりして、税金や経理に関する知識は身につけておきましょう。▼関連記事:フリーランス・個人事業主の税金の種類!確定申告や納税方法を徹底解説▼関連記事:フリーランスにおすすめの本15選!開業届から税金・集客まで⑧仕事用のアドレスや名刺を準備する会社員からフリーランスになる際は、仕事用のメールアドレスと名刺を準備しましょう。メールアドレスは、プライベートのものでも使用できますが、仕事用と分けたほうが仕事効率や事務処理がスムーズになります。名刺は、特に人と対面で会う機会が多い方は必須です。名刺作成サービスを利用する方法もありますが、出費を抑えたい方は無料で利用できるデザインテンプレートなどを活用し、自宅やコンビニで印刷するなどの方法を取るとよいでしょう。▼関連記事:フリーランスのメールアドレスってどうしてる?独自ドメインは本当に必要なのか?▼関連記事:フリーランスに名刺は必要!活用場面や記載事項、おすすめのデザイン例を紹介会社員からフリーランスになる際に失業保険や再就職手当はもらえる?フリーランスになるために退職した場合でも、条件を満たせば失業保険や再就職手当を受け取れます。失業保険は、退職して次の仕事に就くまでに国から手当が支給される制度です。再就職手当は、失業保険を受給中、早期に就職先が決まった方に給付される手当です。「再就職」という名称ですが、事業を開始した場合も再就職と同義に扱われるため、条件を満たせばフリーランスになる場合も受給できます。受け取るためには、それぞれ以下の条件を満たす必要があります。【失業保険の主な受給条件】開業届を提出していないすぐ働く意思があるハローワークで失業保険の申請を行う求職活動を行う(求人に応募する、ハローワーク主催のセミナーに参加するなど)▼参考:ハローワークインターネットサービス - 基本手当について【再就職手当の主な受給条件】待機期間の満了後に就職した、または事業を開始した就職または事業を開始する日の前日までで、基本手当が受け取れる日数が所定給付日数の3分の1以上残っている就職先に1年以上勤務することが見込まれる退職前の事業主に再び雇用されていない受給資格が決定される前から就職が決まっていない▼参考:再就職手当のご案内▼関連記事:フリーランスになるとき失業保険はもらえる?申請の流れや開業届の注意点などを解説会社員からフリーランスになるために必要な手続きスムーズに独立できるよう、会社員からフリーランスになるために必要となる手続きを整理しましょう。フリーランスになるうえで必要な手続きは以下の3点です。順に詳しく見ていきましょう。社会保険の手続きを行う開業届を提出する確定申告の青色申告承認申請書の提出する社会保険の手続きを行う【退職後14日以内】まずは、退職してから14日以内に社会保険の手続きを行いましょう。具体的には、以下の2点です。国民健康保険に加入する国民年金に切り替える▼関連記事:フリーランス必見!社会保険の基礎と年収別の社会保険料一覧国民健康保険に加入する会社員は所属する会社の健康保険に加入しますが、フリーランスは国民健康保険への加入が必要です。手続きは、お住まいの自治体の窓口で行いましょう。手続きには以下の書類が必要です。国民健康保険資格取得届(窓口または自治体のホームページなどから入手)健康保険資格喪失証明書(退職する際に会社から発行)本人確認書類マイナンバーを確認できる書類なお、退職から最大2年間は、これまで加入してきた会社の健康保険に入り続けることもできます。しかし、退職前のように会社と保険料が折半にならない点は注意が必要です。収入が上がる見込みがない場合は、保険料の負担が増えるのみでメリットは大きくないため、あまりおすすめはできません。▼関連記事:フリーランスが加入できる健康保険は?国民健康保険料を抑えるコツやおすすめの制度も紹介国民年金に切り替える厚生年金に加入していない20歳以上59歳以下の人は、国民年金の第1号被保険者となるため、フリーランスへの転向後は国民年金保険料の納付が必要です。手続きは、国民健康保険と同様に、自治体の市役所窓口で行いましょう。手続きには、基礎年金番号のわかるものとして基礎年金番号通知書や、年金手帳などが必要です。国民健康保険や国民年金の手続きは退職後14日を過ぎても可能ですが、特に健康保険はできるだけ早く加入手続きを行いましょう。退職した時点で会社の健康保険は無効となるため、国民健康保険に加入していない間にケガをしたり病気になったりすると、医療費は全額自己負担となります。持病がある人や体調に不安のある方は、特に早めに手続きを済ませましょう。▼関連記事:フリーランスが加入する国民年金とは?将来の年金受給額を増やす方法も解説!開業届を提出する【事業の開始から1ヶ月以内】会社員からフリーランスになる際は、事業を始めてから原則1ヶ月以内に開業届を提出しましょう。開業届の書式は税務署窓口や国税庁ホームページで入手可能です。1ヶ月を過ぎて提出した場合も特に罰則はありませんが、提出することで以下のような多様なメリットがあるため、早めに提出することをおすすめします。確定申告で青色申告が可能になり、最大65万円の特別控除が適用される(別途、青色申告承認申請書の提出が必要です)屋号で銀行口座が開設できるため、経費管理がスムーズになる個人事業主として事業を行っている証明になる小規模企業共済に加入できる例えば、保育園に子どもを入園させる際にも、開業届は就労証明書として活用できます。開業届は、お住まいの地域を管轄する税務署の窓口に提出(または郵送)するか、国税電子申告・納税システムからe-Taxで提出する方法があります。ただし、開業届を提出したあとは失業保険の受給はできないため、失業保険を受け取る予定の人は注意が必要です。▼関連記事:フリーランスが開業届を出すメリット!不要な場合やインボイス対応も解説確定申告の青色申告承認申請書の提出する【3月15日まで/事業開始から2ヶ月以内】会社員からフリーランスになる際は、青色申告承認申請書も提出しましょう。確定申告は、事前の申請手続きが不要な「白色申告」でもできますが、青色申告をすれば以下のようなメリットがあります。白色申告より税金の控除額が増えて節税対策になる(最大65万円の特別控除)赤字を3年間繰り越して申告できる家族などに給料を支払っている場合は、給料を経費にできる家賃や光熱費などを経費として計上できるPCなどの30万円未満の資産は減価償却できる特に、最大65万円の特別控除が受けられる点は青色申告の大きなメリットです。控除を受ければ、所得税や住民税、保険料などを白色申告より抑えられます。フリーランスとして生活を安定させる重要なポイントになるでしょう。提出期限は開業の時期などによって異なるため、以下いずれかに当てはまる期限内に提出を済ませましょう。青色申告をする年度の3月15日まで3月16日以降に事業を始めた場合は、事業開始から2か月以内例えば、2024年分の確定申告で青色申告をする場合、2024年3月15日までに開業した人は3月15日までに、2024年3月16日以降に開業した人は開業から2か月以内に提出する必要があります。青色申告承認申請書も開業届と同じく、税務署に直接提出(または郵送)するか、e-Taxでの提出が可能です。▼関連記事:フリーランスは青色申告で確定申告しよう!控除の活用や節税のコツを解説まとめ会社員からフリーランスになる際は、働き方や社会保険など身の回りのことが一変するうえに、すべて自分で対応する必要があります。特に、フリーランスへの転向後の手続きは多くの人が困りやすい点です。会社員のときから変わる点と、どのような準備が必要なのかをあらかじめ知っておくことで、独立の手続きがスムーズに進み、本業に集中しやすいでしょう。必要な準備を済ませたうえで、不安要素を抑えてフリーランスへの転向を目指しましょう。