業務委託契約をしている人の中には、「絶対に確定申告をしないとダメ?」と悩んでいる人も多いでしょう。確定申告は面倒な作業に感じるかもしれませんが、適切に行うことで節税などのメリットを受けられます。また、収入や状況によっては必ずしも確定申告が必要ではない場合もあります。この記事では、業務委託契約をしている人が、確定申告をする必要があるのかどうか、そして必要がない場合の条件を解説します。さらに、確定申告をしないリスクや、効率よく会計業務を行う方法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。業務委託契約とは?業務委託契約とは、クライアントが外部の人に特定の仕事を委ねる契約を指します。業務委託契約では、委託者は従業員ではなく、フリーランス(個人事業主)として活動します。業務委託は、特にフリーランスにとって一般的な働き方であり、成果に基づいて報酬が支払われることが多いです。▼関連記事:業務委託契約とは?契約の種類やフリーランスが案件を受けるときの注意点▼関連記事:フリーランスが結ぶ業務委託契約とは?契約時のチェックポイントを解説業務委託契約で確定申告が必要なケース業務委託契約をしている人で確定申告をする必要があるケースを2つ紹介します。フリーランス・副業、それぞれの基準を解説するので、自分が当てはまるか確認してみてください。フリーランスで所得48万円以上の場合フリーランスとして活動している方で、年間所得が48万円を超えたら、確定申告が必要です。所得とは、売上から経費を引いた額を指します。【所得の計算例】売上200万円 ‐ 経費50万円=所得150万円年間所得が48万円金額を超えると、税務署に収入の詳細を報告し、適切な税金を納める必要があります。所得計算時には、業務にかかった経費も考慮することができるので、しっかりと管理しましょう。経費には交通費や材料費、オフィス用品の購入費などが含まれます。経費を正確に記録し、申告時に適切に申請することで税負担を軽減できます。▼関連記事:確定申告はフリーランスに必須!やり方や必要書類と経費管理のコツ副業の所得が20万円以上の場合会社員・サラリーマンとして働きつつ、副業での所得が年間20万円を超える場合は、確定申告をする必要があります。副業の所得は、副業で得た売上から経費を引いた額を指します。【副業所得の計算方法】副業の売上50万円 ‐ 経費30万円=所得20万円確定申告を通して副業で得た所得は、住民税として申告されます。そのため、会社に副業がバレたくない場合は、住民税を自分で納付する「普通徴収」で行う必要があります。▼関連記事:副業所得が20万円を超えたら確定申告が必要!初めてでも分かる経費計上の仕方や手続きの流れガイド▼関連記事:副業がバレない方法4選!確定申告のポイントも解説業務委託契約で確定申告が不要なケース業務委託契約者が確定申告を行う必要がないケースは、大きく分けて3つです。ここでは、フリーランスや副業がどのような状況で確定申告が不要になるかを解説します。フリーランスで所得が48万円以下の場合フリーランスとして活動して、年間の総所得が48万円以下の場合、確定申告の必要はありません。この所得限度は、事業に関連する経費を差し引いた後の純利益に適用されます。つまり、経費を引いた後の所得が48万円以下であれば、税務署への申告は不要です。所得48万円以下となるケースは、小規模なフリーランス活動をしている方が中心でしょう。しかし、事業規模に関わらず、事業に関わるすべての収支をきちんと管理することが大切です。副業の所得が20万円以下の場合副業から得た年間所得が20万円以下の場合、確定申告を行う必要はありません。この場合の所得は、副業で発生した経費をすべて差し引いた後の金額です。副業の経費が正しく計算されていれば、税金の申告が不要となり、副業にかける時間や労力を節約できます。副業で使用する機材や交通費など、直接的な仕事に関連する出費をしっかりと把握しておく必要があります。▼関連記事:副業所得20万円以下の場合にするべきこと!住民税の申告方法や無申告のリスクを解説年末調整済みの場合年末調整とは、勤務先で所得税や住民税が調整される手続きのことです。本業で年末調整が完了している場合、追加の収入がなければ、それ以上の確定申告を行う必要はありません。ただし、確定申告が不要なのは、追加の収入が発生しない場合に限られます。例えば、不動産収入や株式投資など、他の収入源がある場合は、その収入に対して別途確定申告を行う必要があります。また、医療費控除や住宅ローン控除など、年末調整では考慮されない特定の控除がある場合は、自分で確定申告を行うことで税金の返金を受けることが可能です。▼関連記事:副業は年末調整の対象になる?手続きが必要なケース・やり方などを徹底解説確定申告をしないリスクとデメリット確定申告の対象者でありながら申告をしないと生じるリスク・デメリットが3つあります。確定申告は手間かもしれませんが、罰則や信用問題に関わるので、未然にリスクを避けるようにしましょう。ペナルティが発生する可能性がある期間中に確定申告を行わない場合は、罰金や追加徴収などのペナルティが発生することがあります。特に所得があるにも関わらず申告を怠った場合、所得に対して適切な税金が課されず、無申告加算税の支払いを指示される恐れがあります。罰金の額は未納税額に応じて異なり、場合によっては申告が漏れた額の数倍に達することもあるので注意しましょう。罰金の支払いは、事業の運営資金にも影響を及ぼすため、正確な申告を行い、このようなリスクを回避することが賢明です。還付金が受け取れなくなる確定申告を行わないことで、本来受け取れる還付金を受け取れなくなる場合があります。特に、払い過ぎた税金がある場合や、医療費控除や寄付金控除などの特定の控除を適用できる場合には、確定申告の際に申請をすることで、税金が還付される可能性が高いです。確定申告を怠ると、控除を受ける機会を自ら放棄することになり、結果として余計な出費をしていることになります。控除の申請は、確定申告時のときにしかできないため、必ず漏れがないように注意しましょう。税務調査が入る恐れがある確定申告をしない場合、税務署から税務調査が入る可能性が高まります。特に業務委託契約者は、自営業者やフリーランスとしての収入が多岐にわたるため、申告漏れや不正申告のリスクがあるとみなされやすいです。税務調査が行われると、過去数年間にわたる収入や経費の詳細な記録を提出する必要があります。また、税務調査の対応は時間と労力、精神的な負担も大きいです。調査の結果、万が一申告漏れや不正が発覚した場合には、追徴税や罰金が課されることがあります。予期せぬ出費が発生し、事業運営に大きな影響を与える恐れがあるので注意してください。▼関連記事:フリーランスも税務調査の対象になる!税務調査の確率や対象になりやすい人の特徴を解説業務委託契約の確定申告は青色申告がおすすめフリーランスや副業として、業務委託契約をしている場合は、確定申告を青色申告で行うことをおすすめします!青色申告は申請の準備にやや時間がかかるものの、最大65万円の控除があるので、節税効果が非常に高いです。一方で、少しでも経理の手間を軽減したい人や、売上・所得が少ないから白色申告を検討している人もいるでしょう。ここでは青色申告と白色申告のそれぞれのメリットとデメリットを詳しくみていきましょう。青色申告のメリット・デメリットメリット・最大65万円の特別控除が受けられる・赤字を繰り越せる・細かな経費の計上ができるデメリット・複式簿記で記帳する必要がある・確定申告の申請に手間がかかりやすい青色申告を選ぶと、最大65万円の特別控除が受けられるため、税金の負担を大幅に軽減できます。また、事業で赤字が出た場合に、損失を最大10年間繰り越すことが可能です。将来の利益から損失を差し引くことができるので、長期的に見て税負担を抑えられます。さらに、経費の詳細な記録を基に細かな経費を計上できるため、正確な経費処理が可能です。ただし、青色申告は複式簿記での正確な帳簿記録が義務付けられているため、簿記の知識が求められます。また、手続きが白色申告に比べて複雑であり、初めて確定申告を行う方はハードルが高いと感じるかもしれません。スムーズに帳簿処理を行う方法は、後述の「確定申告をスムーズに進めるためのポイント」で解説します。▼関連記事:フリーランスは青色申告で確定申告しよう!控除の活用や節税のコツを解説白色申告のメリット・デメリットメリット・日々の経理作業が比較的簡単・必要書類が少ないデメリット・控除額が少ない・赤字の繰越ができない白色申告は、手続きが非常にシンプルで、簿記の知識がなくても申告がしやすいです。必要書類も少なく、経費の記録も比較的簡単に行えます。特に、事業規模が小さく、売上が高くない場合におすすめです。一方、白色申告のデメリットは、青色申告に比べて控除額が少ない点です。控除額が最大10万円のため、節税効果は高くありません。また、損失が出た場合に赤字の繰越ができないため、収益が不安定なフリーランス・副業の方にとっては不利になる場合もあります。確定申告をスムーズに進めるためのポイント最後に、確定申告をスムーズに進めるためのポイントを3つ紹介します。確定申告に割く時間を最小限に留めて、業務委託契約している仕事に集中できる環境を整えましょう。収入・経費を把握する確定申告をスムーズに行うためには、収入と経費をしっかり把握することが大切です。毎月の収入を記録し、どの案件でどれだけの売上があったかを明確にしましょう。例えば、会議で使ったカフェ代や、資料を印刷するための費用は消耗品費として計上するなど、細かい支出も忘れずに記録しましょう。支出を詳細に記録することで、申告時に正確な費用対効果を把握し、不必要な税金の支払いを避けることができます。また、収入・経費の管理はフリーランス・副業向けの会計ソフトを利用するのがおすすめです。ソフト内で毎月の売上を管理したり、確定申告の提出資料を作成したりできます。会計ソフトの利用料や購入費も経費として計上できるので、ぜひ活用してみてください。▼関連記事:フリーランスにおすすめの会計ソフト8選!選び方・比較ポイントを解説節税対策をする複数の節税対策を取り入れることで、税金の負担を軽減できます。節税対策の例は、次の通りです。事業に必要な設備投資を計画的に行って経費計上する国民年金基金やiDeCoに加入するふるさと納税を活用する業務委託契約の仕事で発生した経費を適切に計上することで、納税負担額を軽減できます。また、国民年金基金やiDeCoを利用すれば、将来のための貯蓄をしながら、節税を実現可能です。事業の成長や将来の生活も踏まえながら、効果的な節税対策を行っていきましょう。▼関連記事:フリーランス・個人事業主なら節税は必須!税金の基礎知識も解説▼関連記事:フリーランスは国民年金基金で老後に備える!iDeCo・付加年金との違いを解説▼関連記事:フリーランスのふるさと納税のやり方は?確定申告までの流れやメリットも解説税理士に相談する「確定申告に割く時間を最小限にしたい」「自分で経理作業をしている余裕がない」という場合は、税理士に相談することをおすすめします。依頼費用はかかりますが、税務のプロとして事業に最適なアドバイスを提供してくれます。特に、初めて確定申告を行う場合は、税理士のサポートがあることで安心感を得られる点もメリットです。また、税理士に依頼することで、時間の節約にもなり、事業に専念できる時間が増えるでしょう。確定申告漏れや罰金のリスクの軽減にもつながるので、必要に応じて税理士に頼ることを検討してみてください。▼関連記事:確定申告を税理士に依頼・丸投げする費用は?メリットや注意点も解説まとめ業務委託契約をしている人が、確定申告をしないといけないか、しなくても問題ないかは、所得額や働き方によって異なります。売上や会社での年末調整の状況を確認し、確定申告が必要か自分で確認するようにしましょう。確定申告が必要な場合は、青色申告を利用すると最大65万円の特別控除が受けられるのでおすすめです。また、確定申告をスムーズに進めるために、会計ソフトを利用して収入・経費を把握したり、税理士に相談したりしましょう。