業務委託契約を結ぶフリーランスや副業を行う会社員にとって、税金の金額や納税の手続きは重要なポイントの1つです。適切に税金を納めるためには、所得税や住民税、個人事業税、消費税などの税金の種類とその計算方法を理解する必要があります。また、確定申告の手順や節税対策も把握しておくことが大切です。この記事では、業務委託契約で発生する税金の種類と計算方法を解説します。節税対策やインボイス制度も解説するので、初めて確定申告を行う方や、あらためて税金の知識を深めたい方はぜひ参考にしてください。【基礎知識】業務委託契約とは業務委託契約とは、企業がフリーランスや副業で活動する個人に対して、特定の業務の遂行を依頼する契約形態です。業務委託契約では、具体的な業務の範囲や期間、報酬の条件が明確に定められた上で、企業とフリーランス・副業で活動する個人の間で合意されます。業務委託契約の大きな特徴は、企業にただ労働力を提供するのではなく、指定された業務の遂行や完成した成果物の納品をもって報酬の支払いが発生する点です。会社員の雇用契約とは異なり、業務の成果に対して報酬が支払われるため、業務の進行管理や成果物のクオリティが重視されます。▼関連記事:業務委託契約とは?契約の種類やフリーランスが案件を受けるときの注意点フリーランス・個人事業主としての業務委託フリーランス・個人事業主として業務委託契約を結ぶ場合は、専業フリーランスとして業務委託の仕事で生計を立てる働き方が一般的です。仕事の内容やスケジュールを自分で管理し、クライアントとの契約に基づいて業務を遂行します。毎年必ず期間内に確定申告を行います。年間の総収入から必要経費を差し引き、課税所得を算出し、所得税をはじめとした納税額を確定させて、納税します。また、事業に関連する全ての支出を経費として計上できるため、事務用品費や通信費、交通費などを正確に管理し、適切に申告することが大切です。▼関連記事:フリーランスが結ぶ業務委託契約とは?契約時のチェックポイントを解説会社員の副業としての業務委託会社員が副業として業務委託契約を結ぶ場合は、本業の会社の業務と並行して副業を行います。副業で業務委託契約の仕事を行う場合、副業の所得が20万円を超えた場合に確定申告が必要です。ただし、医療費控除などの控除申請をしたい場合は、副業所得が20万円以下でも住民税の申告が必要な場合があります。また、副業に関連する経費のみを計上可能です。そのため、給与所得とは別に管理する必要があります。例えば、副業で使用するパソコンやソフトウェアの購入費、交通費、通信費などが経費に該当します。給与所得に対する経費は計上できないため、副業にかかる経費を正確に記録しておくことが大切です。▼関連記事:副業所得が20万円を超えたら確定申告が必要!初めてでも分かる経費計上の仕方や手続きの流れガイド▼関連記事:副業所得20万円以下の場合にするべきこと!住民税の申告方法や無申告のリスクを解説業務委託契約で発生する税金の種類・計算式業務委託契約で発生する税金の種類と計算式を紹介します。税金の種類や計算式を覚えることで、適切な確定申告や節税対策ができるようになるので、1つずつ確認していきましょう。▼関連記事:フリーランス・個人事業主の税金の種類!確定申告や納税方法を徹底解説所得税業務委託契約で得た収入は、所得税の対象となります。フリーランスや個人事業主の場合、全ての収入(業務委託収入)に対して確定申告が必要です。所得税の計算は、年間の総収入から必要経費を差し引いて課税所得を算出し、その課税所得に対して所得税率を適用して税額を計算します。例えば、年間収入が300万円で必要経費が100万円の場合、課税所得は以下のように計算されます。課税所得 = 年間収入 - 必要経費課税所得 = 300万円 - 100万円 = 200万円この200万円に対して所得税率を適用します。課税率が10%の場合、所得税額は以下の通りです。所得税額 = 課税所得 × 税率所得税額 = 200万円 × 10% = 20万円所得税の税率は累進課税方式を採用しており、所得が多いほど高い税率が適用されます。税率は5〜45%の間で設定されているので、詳しくは国税庁のホームページで確認してください。▼関連記事:フリーランスが理解すべき所得税の基礎知識を解説【初めての確定申告でも安心】住民税住民税は、地方自治体に納める税金で、前年の所得に基づいて課税されます。フリーランスや個人事業主、会社員の副業収入も対象です。住民税の計算は、総所得から各種控除を引いた後に、住民税率を適用して行われます。総所得が300万円で各種控除が50万円の場合の計算例は、次の通りです。課税所得 = 総所得 - 各種控除課税所得 = 300万円 - 50万円 = 250万円仮に住民税率が一律10%の場合、住民税額は以下の通りです。住民税額 = 課税所得 × 住民税率住民税額 = 250万円 × 10% = 25万円住民税は、前年の所得に基づいて翌年に課税されるため、前年に高収入を得た場合は翌年の税額が増えるので注意しましょう。▼関連記事:フリーランスが知っておきたい住民税の基礎知識!計算・納付方法を解説個人事業税個人事業税は、事業所得に対して課される地方税です。フリーランスや個人事業主が対象となり、業務委託契約で得た収入も含まれます。個人事業税は、事業所得から必要経費を差し引き、さらに一定の控除額を引いた金額に税率を適用して計算されます。例えば、年間の事業所得が400万円、必要経費が100万円、控除額が290万円の場合、課税所得は以下のように計算されます。課税所得 = 事業所得 - 必要経費 - 控除額課税所得 = 400万円 - 100万円 - 290万円 = 10万円税率5%が適用される業種の場合の個人事業税額は以下の通りです。個人事業税額 = 課税所得 × 税率個人事業税額 = 10万円 × 5% = 5,000円個人事業税の税率は、東京都主税局のホームページで確認できます。消費税(インボイス制度)消費税は、商品やサービスの提供に対して課される税金で、業務委託契約に基づく収入も対象となります。2023年10月より施行されたインボイス制度は、適格請求書を発行して仕入控除を受けることができる制度です。適格請求書を発行しないと、取引先が仕入控除を受けられなくなるため、事前に税務署へ申請する必要があります。消費税の計算方法には「簡易課税」と「原則課税」の2つの方法があります。▼関連記事:フリーランスは消費税を請求できる?免税事業者と課税事業者の対応の違いや計算方法を解説▼関連記事:インボイスに登録しない選択はあり?フリーランスの判断基準を解説簡易課税簡易課税は、年間売上が5,000万円以下の小規模事業者向けの計算方法です。実際の仕入額に関係なく、業種ごとに定められた一定割合の仕入控除が認められます。例えば、サービス業の場合は売上の50%を仕入控除額として計算します。簡易課税を選択することで、消費税の計算が簡略化され、事務負担を軽減可能です。原則課税原則課税制度は、実際の仕入額を基に消費税を計算する方法です。売上に対する消費税額から、実際の仕入に対する消費税額を差し引いて納税額を計算します。インボイス制度を利用する場合、適格請求書を発行し、仕入控除を受けることで、正確な消費税計算が可能です。原則課税は、実際の取引に基づいた正確な税計算が必要な大規模事業者や、仕入額が多い事業者に適しています。会社員の副業で税金を納めるときの注意点会社員が副業で得た所得が20万円を超える場合は、確定申告が必要となります。副業での所得が20万円以下でも住民税の申告が必要な場合があるため、注意しましょう。また、会社に副業がバレたくない場合は、住民税を普通徴収にして自分で納めるようにするのがおすすめです。普通徴収に変更することで、副業収入にかかる住民税を自分で納付できます。さらに、副業を禁止している会社で副業が発覚すると、解雇などのリスクがあるため、会社の就業規則を確認した上で取り組むことが大切です。詳しくは、以下の記事で会社員が副業に取り組む際の注意点などを解説しているので、ぜひ参考にしてください。▼関連記事:副業がバレない方法4選!確定申告のポイントも解説業務委託契約者が確定申告しないリスクここまでの業務委託契約で発生する税金の解説で、「確定申告するのが面倒だな…」とより一層感じている人も多いでしょう。しかし、業務委託契約者が確定申告を行わないと、次のようなリスクがあります。無申告加算税などの罰金が課せられる還付金が受け取れなくなる税務調査が入る恐れがある確定申告の対象者でありながら、確定申告をしないと罰金が課せられるなどのリスクがあるので注意が必要です。▼関連記事:業務委託は確定申告をしないとダメ?判断基準を解説業務委託契約の節税対策業務委託契約を結んでいるフリーランスや副業に取り組む会社員は、節税対策を行うことで税負担を軽減し、より多くの収入を手元に残すことができます。ここでは、業務委託契約を結んでいる方におすすめの節税対策を3つ紹介します。▼関連記事:フリーランス・個人事業主なら節税は必須!税金の基礎知識も解説確定申告を青色申告で行う青色申告は、白色申告に比べて節税効果が高い申告方法です。最大の特徴は、青色申告特別控除が受けられる点で、最大65万円の控除が適用されます。そのため、課税所得を大幅に削減して、納税額を軽減できます。また、万が一赤字が発生した場合も、赤字を3年間繰り越して翌年以降の所得から控除することが可能です。▼関連記事:フリーランスは青色申告で確定申告しよう!控除の活用や節税のコツを解説経費を適切に計上する経費を適切に計上することは、節税に直結します。基本的に業務委託契約での仕事に関連する支出であれば、経費として計上し、所得税額を軽減可能です。経費として認められるものの一例は、次の通りです。勘定項目対象となるもの消耗品費ペン、クリアファイル、マウス、キーボードなど交通費電車代、ガソリン代など通信費Wi-Fi代、サーバー代などこれらを経費計上するときには、領収書をしっかりと管理しておく必要があります。正確な経費管理を行い、税務署に認められる経費を申告して、節税効果を高めていきましょう。▼関連記事:フリーランスの気になる経費事情!経費計上する時の注意点やQ&Aも小規模企業共済やiDeCoに加入する小規模企業共済やiDeCo(個人型確定拠出年金)は、将来に向けた備えをしながら節税対策ができる制度です。小規模企業共済は、個人事業主が老後の資金を積み立てるための制度で、掛金は全額所得控除の対象となります。iDeCoは、個人事業主をはじめ、会社員も対象とした制度で、節税対策をしつつ、将来の年金を積み立てることが可能です。例えば、毎月1万円をiDeCoに拠出すれば、年間で12万円の所得控除を受けられます。毎月少額からの積み立てでも確実に節税効果を得られるので、制度をうまく活用していきましょう。▼関連記事:小規模企業共済とは?フリーランスの将来の備えと節税効果を解説▼関連記事:フリーランスがiDeCoに加入するメリット・デメリットは?年代別シミュレーションも紹介まとめ少しでも多く手元にお金を残し、ルールを守って納税するためには、業務委託契約で発生する税金を理解することが必要不可欠です。どのような計算で税率が決まるのかを把握することで、損するリスクを回避できます。複雑な内容ではありますが、少しずつ計算方法や税金の内容を理解していきましょう。また、適切に確定申告を行い、節税対策をしっかりと行うことも大切です。青色申告や経費の計上、小規模企業共済やiDeCoの活用など、自分に合った方法を選び、賢く税金を管理しましょう。