フリーランスの魅力は自由な働き方にありますが、その一方で収入の不安定さから、将来に対する不安を感じることも少なくありません。特に、退職後の安定した収入源となる年金については、会社員との違いをしっかりと理解し準備をしておく必要があります。国民年金基金は、そんなフリーランスの方々が老後も安心して生活できるよう支えるための大切な制度です。この記事では、国民年金基金の基本から、フリーランスにとってのメリットを解説します。フリーランスとして活躍しながら、将来への備えもしっかり行っていきたい方はぜひ参考にしてみてください。▼関連記事:フリーランスが加入する国民年金とは?将来の年金受給額を増やす方法も解説!【基礎知識】国民年金基金とは国民年金基金は、フリーランスや自営業者が国民年金の受給額を増やすことを目的とした公的制度です。この制度では、最大で月68,000円の掛金を積み立てることが可能です。積み立てた期間に応じて、将来の年金受給額を増加させることができます。フリーランスは、20歳以上の国民すべてが加入する「国民年金」には加入しますが、会社員や公務員が加入する「厚生年金」には加入できません。そのため、一般的に会社員や公務員と比較して年金の受給額が少なくなる傾向があります。しかし、国民年金基金に加入することで、フリーランスも会社員や公務員と同様に、将来の年金受給額を増やすことが可能となります。国民年金基金の加入対象者国民年金基金に加入できる方は、以下の条件に当てはまる方です。国民年金第1号被保険者60歳以上65歳未満の方、海外居住者で国民年金に任意加入している方フリーランスとして国民年金に加入にしている方をはじめ、国民年金に加入しているフリーランスのご家族の方も対象となります。ただし70歳以上の国民年金加入者である国民年金第2号被保険者、第2号被保険者に扶養されている国民年金第3号被保険者の方は対象外となるので注意してください。国民年金基金の種類国民年金基金には、「全国国民年金基金」と「職能型国民年金基金」の2種類あります。それぞれの加入対象者は、次の通りです。全国国民年金基金:すべての国民年金第1号被保険者職能型国民年金基金:特定の職業に特化した基金現在は歯科医師・司法書士・弁護士の3つの職業が対象このように国民年金基金は2種類にありますが、それぞれのシステムは同じです。ただし、どちらか1つの国民年金基金にしか加入できないため、2つの国民年金基金に加入条件が該当する方は、どちらか1つを選ぶ必要があります。国民年金基金の給付の種類・受け取り期間国民年金基金の給付は、「老齢年金」と「遺族一時金」の2種類です。老齢年金:老後の生活保障を目的とした公的年金積み立てた金額に応じた金額を受給可能遺族一時金:年金受給前に亡くなられた場合、掛金納付期間に応じた額を支給する制度老齢年金は口数制が導入されており、加入した口数によって将来の受給金額が変わります。老齢年金には、「終身年金」と「確定年金」の2種類があり、それぞれ支給期間や保証期間、遺族一時金の対象有無が異なります。また、老齢年金は、1口目に加入できるのは終身年金、2口目以降は、終身年金もしくは確定年金のいずれかを選択して、掛金を運用していく仕組みです。終身年金と確定年金の支給期間や保証期間についてみていきましょう。終身年金タイプ支給期間保証期間A型65歳~一生涯15年間B型65歳~一生涯一生涯終身年金のA型・B型の大きな違いは、保証期間です。A型の保証期間は15年間に対し、B型は一生涯です。また、保障期間があるA型は、受給前もしくは保証期間中に亡くなられた場合、遺族の方に一時金が支給されるようになっていますそのため、万が一の備えや遺族へのお金を残したい方はA型、将来への備えを用意したい方にはB型への加入がおすすめです。確定年金タイプ支給期間保証期間Ⅰ型65~80歳15年間Ⅱ型65~75歳10年間Ⅲ型60~75歳15年間Ⅳ型60~70歳10年間Ⅴ型60~65歳5年間※50歳1ヶ月以上の方は、Ⅳ型・Ⅴ型への選択不可※60歳0ヶ月以上の方は、Ⅱ型・Ⅲ型・Ⅳ型・Ⅴ型の選択不可Ⅰ型~Ⅴ型によって、支給期間と保証期間が異なります。そのため、老後のライフプランに応じて年金受給額を増やすことができます。フリーランスと会社員の年金受給額の違い国民年金基金の調査によると、フリーランスと会社員の間で年金受給額には、平均約10万円の差があります。この差は、公的年金制度の構造的な違いから生じています。日本の公的年金制度は「2階建て」構造とされ、以下の2つの層から成り立っています。全ての国民が加入する国民年金(第一階層)企業と雇用契約を結んでいる雇用者のみが加入する厚生年金や共済組合(第二階層)国民年金は老後の基本的な保障を提供し、厚生年金はそれをさらに強化します。フリーランスは厚生年金への加入資格がないため、基本的な国民年金のみに頼ることになり、結果として受給額が会社員や公務員に比べて少なくなりがちです。フリーランスも年金構造を2階建てにできるフリーランスは、国民年金のみに加入することが一般的ですが、国民年金基金を活用することで、実質的に「2階建て」の年金構造を形成することが可能です。国民年金基金を通じて追加の年金を確保することで、将来の受給額を増やせます。特に、国民年金だけでは不十分と感じているフリーランスの方にとって、国民年金基金は老後の収入源を強化する有効な手段となります。フリーランスとして独立して働きながら、国民年金基金への加入を考慮することで、会社員や公務員に匹敵する保障を老後に向けて準備できます。また、後述の「国民年金基金と比較検討したい年金制度」にて、国民年金基金と比較検討すべきiDeCoや付加年金についても解説するので、ぜひあわせて確認してみてください。フリーランスが国民年金基金に加入するメリットフリーランスとして活動する場合、自分自身で将来の安定した収入源を確保することが非常に重要です。国民年金基金に加入することによるメリットは多岐にわたります。ここでは特に重要な5つのメリットを解説します。終身年金制度なので生涯受給できる国民年金基金に加入する最大の魅力は、終身年金制度を通じて生涯にわたって年金が受給できる点です。この制度により、加入者は60歳または65歳から一生涯にわたって安定した年金を受け取ることができます。国民年金の養老基礎年金の給付だけでは不安なフリーランスは、老後の年金収入の足しになります。掛金が変動しない国民年金基金に加入した場合、掛金額は加入後変わることがなく一定です。そのため、フリーランスとして収入が不安定な時期でも、将来のための資金計画を立てやすくなります。月収が変動しても年金の掛金負担が増えることはないため、業務に専念できる安心した環境を維持できます。掛金がマイナスにならない国民年金基金は、掛け金がマイナスになるリスクがないため、経済的な安定性が非常に高いというメリットがあります。市場の変動に影響されず、予定された掛金額が保証されることで、将来にわたって確実な資金計画を立てられます。掛金を運用して受給額を増やすことはできませんが、確実に将来の年金受給額を増やせます。節税対策になる国民年金基金への加入は節税対策としても非常に有効です。掛金が所得控除の対象となるため、年間の課税所得を減らすことができます。所得税や住民税の負担を軽減し、フリーランスとしての手取りが増える効果もあります。収入の変動が大きいフリーランスにとって、税負担の軽減は大きなメリットと言えるでしょう。▼関連記事:フリーランス・個人事業主なら節税は必須!税金の基礎知識も解説万が一の際に遺族一時金を支給できる国民年金基金に加入していると、万が一加入者が亡くなった場合に遺族に支払われる遺族一時金の制度が利用できます。この遺族一時金は、加入期間や掛金の額に応じて計算され、加入者の家族を経済的にサポートします。フリーランスが亡くなった後も、残された家族の生活を支えることができることや、掛金が掛け捨てにならないことも、安心して国民年金基金加入できる大きな理由の1つです。フリーランスが国民年金基金に加入するデメリット国民年金基金は、フリーランスにとってメリットがありますが、その一方で、いくつかのデメリットも存在します。ここではフリーランスが国民年金基金に加入する際に考慮すべき4つのデメリットを解説します。脱退・中途解約ができない国民年金基金の1番のデメリットは、加入後に脱退や中途解約が認められない点です。国民年金基金は、将来の安定した収入を確保する目的で設計されており、加入後の解約や退会はできません。特にフリーランスは、事業の状況が変化しやすいため、加入を決める前には、将来にわたる事業の安定性や予測を慎重に考える必要があります。付加年金と併用できない付加年金は、国民年金に加えて毎月400円の付加保険料を支払うことで、将来の年金受給額を増加させることができる制度です。付加年金は任意の国民年金の制度ですが、国民年金基金とは併用できません。そのため、国民年金基金に加入を検討する際には、付加年金とどちらが個人の将来設計に適しているかを事前にしっかりと比較検討することが重要です。掛金を運用することはできない国民年金基金においては、掛金を自己運用することはできません。国民年金基金では、一定額の掛金が保証され、市場の変動に影響されることなく運用される制度だからです。そのため、投資によって損するリスクはありませんが、市場が好調なときに追加のリターンを得ることはできない点を考慮する必要があります。ただし、国民年金基金と掛金を運用できるiDeCo(イデコ)は併用可能です。詳しくは後述の「国民年金基金とiDeCoは併用可能」にてお伝えします。一括受け取りができない国民年金基金では、年金の一括で受け取りができません。積み立てた年金は、定期的な支払いでのみ受け取り可能であり、大きな金額を一時的に必要とする場合には対応できません。そのため、特に大きな出費が予想される場合や、資金の柔軟な管理を望むフリーランスにとっては不便な制約となる場合があります。国民年金基金と比較検討したい年金制度フリーランスの方々が将来に向けた年金計画を立てるときに、国民年金基金以外にも検討すべき制度が、iDeCo(イデコ)と付加年金です。ここでは、2つの制度の特徴と国民年金基金との比較ポイントを解説します。iDeCo(イデコ)iDeCo(イデコ)は、自ら積み立てることで将来の年金を増やすことができる私的年金制度です。掛金は全額所得控除の対象となるため、所得税や住民税の節税効果が期待できます。また、iDeCoは投資の選択肢が豊富で、自分でファンドを選んで運用することができるため、積極的に資産形成を図ることが可能です。ただし、運用リスクも自己負担となるため、市場動向を理解し、適切な運用戦略を立てる必要があります。国民年金基金との1番の違いは、掛金を運用できる点です。そのため、着実な積み立てよりも将来の資金の増額を目指したい方にはiDeCoをおすすめします。▼関連記事:フリーランスがiDeCoに加入するメリット・デメリットは?年代別シミュレーションも紹介付加年金付加年金は、国民年金の月額保険料に追加で支払うことで将来の年金受給額に上乗せされる制度です。月々400円を支払うと、200円が月額付加保険料として積み立てられ、納めた月数に応じて将来支払われる年金が増額されます。例:付加年金を40年間納めた場合、年間で96,000円が年金受給額に加算される計算式:200円×12ヶ月×40年=96,000円/年国民年金基金とは異なり、付加年金は掛金の額が小さく、国民年金基金との併用が不可能な点が特徴です。掛金が少額のため、手軽に始められるのが魅力であり、少額でコツコツと将来に備えたいフリーランスに適しています。国民年金基金とiDeCoは併用可能将来に向けて徹底的に備えたい方には、国民年金基金とiDeCoの併用がおすすめです。国民年金基金で基本的な年金の保障を担い、iDeCoを利用することで受給額をさらに増やすことが可能です。まとめ国民年金基金に加入することで、将来の年金受給額を増やし、老後の不安を軽減させることが可能です。国民年金基金は、終身で受け取れる確実な年金制度であり、掛金が変動しない安定感が魅力といえます。また、掛金は所得控除の対象となるため、節税対策としても有効です。一方で、脱退・中途解約ができないことや、付加年金とは併用できないこと、掛金を運用して受給額を大幅に増やせないことなどのデメリットもあります。iDeCoや付加年金との違いを比較したり、国民年金基金とiDeCoの併用を検討したりするなど、自分にあった形式で将来に向けて備えていきましょう。