フリーランスは確定申告を行い、所得に応じて納税が必要です。売上が一定金額以上あるのに確定申告を怠ったり、意図的に所得を少なく申告したりすると、税務調査の対象になる可能性があります。法人と比べると税務調査の確率が少ないとされるフリーランスですが、どのくらいの確率で税務調査に当たるのでしょうか。また、フリーランスの職種によっては税務調査を受けやすい職種もあります。この記事では、税務調査の内容や、税務調査に引っかからない対策を解説します。フリーランスにも税務調査は来る!法人と比べると可能性が低いと思われていますが、フリーランスにも税務調査は来ます。また、所得金額や職種によっても税務調査を受ける確率は異なります。税務調査とは?税務調査とは、国税庁や管轄の税務署、税関などによって行われる一連の調査手続きのことを指します。税務調査には、「任意調査」と「強制調査」の2種類があります。任意調査納税者の同意を得て行われる税務調査強制調査脱税の疑いがある納税者に対して、裁判官による許可状を得て強制的に行われる税務調査税務調査によって追徴課税の対象になる場合も税務調査で、所得の申告漏れや無申告が判明すると、追徴課税の対象となることがあります。また、追徴課税だけでなく、悪質と判断された場合にはペナルティが発生することもあります。追徴課税本来支払うべき税額を納めていなかった場合に差額を納めることペナルティ・過少申告加算税(税額を少なく申告していた場合)・無申告加算税(期限内に申告しなかった場合)・不納付加算税(源泉徴収税を期限までに支払わなかった場合)・重加算税(悪質だと判断された場合)税務調査は個人も対象税務調査は、法人だけではなく、フリーランスや個人事業主などの個人も対象となります。2023年の1年間の税務調査では、7,615人の無申告者が、過去最高となる計198億円を追徴課税されています。インフルエンサーやYouTuberなど、職業や働き方の多様化が進む中で、収入を意図的に申告しなかったり、少なく申告したりする個人が、税務調査で追徴課税されるケースが増えています。▼参考:読売新聞オンライン 個人事業者7615人が消費税無申告、計198億円追徴課税フリーランスなどの個人に税務調査が来る確率は?国税庁が公表している令和4年度の資料によると、税務調査を受ける確率は「約0.7%」です。税務調査数46,306件確定申告書の提出人員数2,295万人確定申告書の提出人員のうちの納税人員数653万人納税人員のうち税務調査を受けた人の確率約0.7%フリーランスなどの個人が税務調査を受ける確率は、1,000人の内7人くらいと、決して高くはありません。しかし、万が一税務調査を受けたとしても問題がないように、売上や経費の管理は日頃からしっかり行いましょう。▼参考:国税庁 令和4事務年度 所得税及び消費税調査等の状況▼参考:国税庁 令和4年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等についてフリーランスで税務調査の対象になりやすい業種・職種国税庁は、「インターネット上のプラットフォームを介して行うシェアリングエコノミーなどの新分野」や「暗号資産(仮想通貨)」などの取引を行っている個人に対して、積極的に調査を実施していると公表しています。また、「事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な業種」も公開しています。完全に一致するとはいえませんが、税務調査の対象になりやすい職種ともいえます。経営コンサルタントブリーダーシステムエンジニア不動産代理仲介キャバクラ太陽光発電関連 など特に、経営コンサルタントやシステムエンジニアは、フリーランスにも多い職種なので、気をつける必要があるでしょう。▼参考:国税庁 令和4事務年度 所得税及び消費税調査等の状況税務調査の対象になりやすいフリーランスの特徴税務調査の対象になりやすいフリーランスには特徴があります。税務調査を受けなくて済むように、下記の項目をチェックしていきましょう。そもそも確定申告を行なっていない確定申告を行わず、納税を怠っていると、税務調査の対象になる可能性があります。そもそも確定申告をしていないことを「無申告」といいます。国税庁の「無申告者に対する調査状況」には、「無申告は、申告納税制度の下で自発的に適正な納税をしている納税者に強い不公平感をもたらすこととなるため、的確かつ厳格に対応していく必要があります」との記載があります。適切に納税を行なっている事業者との平等性を担保するためにも、無申告者に対しては税務調査が行われる可能性があります。確定申告をしなくてもバレないだろうと思っているフリーランスは、税務調査の対象になりやすいことを理解しておきましょう。税務調査が積極的に行われている業種や申告漏れ金額が高額な業種上記でも解説した、税務調査が積極的に行われている業種や、申告漏れ金額が高額な業種のフリーランスも税務調査の対象になりやすいです。経営コンサルタントやブリーダー、焼肉店、バー、工事関係などは、申告漏れ所得金額が高額な職種として挙げられています。フリーランスにも多い、システムエンジニアやプログラマも該当するため、注意しておくとよいでしょう。売上が急激に増えている売上が急激に増えているフリーランスは、税務調査の対象になりやすいでしょう。税務調査は、基本的に開業から3年が経っている事業者が対象となります。一般的に、事業が安定し、売上が増えてくる時期とされているからです。課税所得が増えることで、支払う税金も増えるので、確定申告と納税を忘れないようにしましょう。控除ギリギリの申告が続いている控除金額に合わせて課税所得を調整しているような印象を与えたり、不適切な経費計上を行なっていたりする場合には、税務調査の対象になることがあります。また、適切に確定申告ができていたとしても、課税事業主になるかならないかのボーダーラインである、年間売上1,000万円の手前の金額で確定申告を提出している場合にも、税務調査が入ることがあります。売上と経費のバランスが不自然売上に対して、不自然に経費が多かったり、経費計上している科目のバランスがおかしかったりする場合には、税務調査に入られる可能性があります。フリーランスは、仕事とプライベートの境目が曖昧になり、事業とは関係のない費用も経費にしてしまいがちです。しっかりと事業に関係のある費用だけを経費として計上し、税務調査に入られた際にも説明できるように、領収書や明細を管理しておきましょう。雑所得の割合が高い・きちんと仕訳がされていない雑所得の割合が高い、きちんと仕訳がされていないと判断された場合も、税務調査に入られやすいです。自分で確定申告をしていると、雑所得の割合をいじれたり、仕訳が正確に行われなかったりします。経費科目や仕訳の方法がわからない場合は、最寄りの税務署に問い合わせたり、税理士を雇ったりして相談してみるとよいでしょう。細かい経費計上の内訳などはこちらの記事を参考にしてみてください。▼関連記事:フリーランスの気になる経費事情!経費計上する時の注意点やQ&Aも税務調査に備えてフリーランスがやっておくべきこと税務調査に備えてフリーランスや個人事業主ができる対策を紹介します。不備がないように正確に確定申告を行う確定申告を行う際は、正確な数字で申告書を提出するようにしましょう。意図的な無申告や過少申告は絶対に行ってはいけません。こちらの記事を参考に、確定申告の方法を確認してみてください。▼関連記事:フリーランス・個人事業主の税金の種類!確定申告や納税方法を徹底解説定期的に記帳を行う確定申告を正確に行うためには、月々の売上や経費などをコツコツ記帳しておく必要があります。日頃から記録しておくことで、毎年の確定申告の期間に焦ることもなくなります。会計ソフトなどを使って記入すると、ミスが起きにくく、管理もしやすくなるでしょう。▼関連記事:フリーランスにおすすめの会計ソフト8選!選び方・比較ポイントを解説会計知識をつける基本的な会計知識を身につけるとよいでしょう。フリーランスが経費計上できる科目や節税対策を知っていると、事業を行う上での経理業務にも役立ちます。フリーランスは家賃を家事按分して経費にすることも可能です。家事按分については、下記の記事を参考にしてください。▼関連記事:フリーランスは家賃を経費計上できる!家事按分の計算方法や確定申告の注意点を解説しっかりと帳簿や書類を保管する確定申告が終わったからといって、領収書や事業に関する資料などは処分しないようにしましょう。税務調査では、基本的に過去3年分の調査が行われます。場合によっては、5年分や7年分行われることもあります。一定期間の帳簿や書類はしっかりと保存しておくと、税務調査に入られた時にも説明がしやすくなるでしょう。税務調査が来たらどうすればいい?では、実際に税務調査が来た場合に、フリーランスはどのような対応をすればよいでしょうか。「税務調査が来たら人生は終わり」と思わず、適切な申告をしていることを証明できるように対処しましょう。税務調査の流れや必要な対応を解説します。税務調査の流れ税務調査は、基本的に以下の流れで実施されます。①事前通知税務調査の実施が決まると、まずは対象者に事前通告が来ます。税務署の判断により、事前通告がない場合もあります。②実地調査2〜3日間の実地調査が行われます。場合によっては5日間程度かかることもあります。実地調査では、事業主への聞き取りや領収書などの調査が行われます。③結果報告実地調査が終了すると、調査結果が通知されます。問題がない場合には「是認通知書」が届きます。過少申告や無申告が見つかった場合は、修正申告や期限後申告が必要となります。帳簿や書類を確認する事前通知を受けたら、実地調査が行われる前に、帳簿や書類に目を通しておくことが重要です。聞き取りの際にスムーズに回答できるように、領収書などもしっかりと用意しておくとよいでしょう。もし書類に不備があり、実地調査で指摘されそうな箇所があれば、あらかじめ把握しておき、調査の際に答えられるようにしておくと安心です。実地調査では誠実に対応する実地調査の際は、冷静に誠実に対応するようにしましょう。余計な話はせず、聞かれたことだけに対して答えるようにするとよいです。ごまかしたり、適当に答えたりはしないようにするのが鉄則です。まとめ税務調査は、フリーランスや個人事業主にも起こり得ます。「税務調査に入られたらフリーランス人生が終わる」と考えている人もいるようですが、適切な方法で確定申告を行い、納税していれば問題ありません。税務調査の対象になりやすい職種やタイミングのフリーランスは、事前に税務調査について理解しておくことで、しっかりと対応ができるでしょう。