会社に勤める以外の選択肢やさまざまな働き方が増加し、フリーランスや起業を目指す人も多いでしょう。フリーランスと起業家は、働く場所や時間、自ら仕事を選べる点では共通している一方で、異なる点も多くあります。今回は、フリーランスと起業の違いや、それぞれのメリット・デメリットを解説します。フリーランスや起業を目指している方は、ぜひ参考にしてください。フリーランスと起業の違いフリーランスと起業は、「自由度の高い働き方」という観点では共通しています。自分でスケジュールを調整できたり、好きな場所で働けたりします。一方で、言葉の定義や報酬・売上の発生方法には違いがあります。まずは、フリーランスと起業それぞれの意味や概要を解説します。フリーランスとは?フリーランスとは、「店舗を持たず、企業に属さず、個人で仕事を請け負う働き方」のことを指します。明確に定義が決まっているわけではありませんが、働き方の概念を表す際に使われることが多いです。法律上の名称などではありません。フリーランスは、企業や個人と案件ごとに業務委託契約を結び、仕事を請け負います。成果物を納めたり、任された業務を遂行したりすることによって報酬を受け取ります。起業とは?起業とは、法人・個人問わず、事業を立ち上げることを指します。自ら立ち上げた事業を通して収益を上げます。商品を売ったり、サービスを提供したりと、収益化の方法はさまざまです。フリーランス企業や個人と案件ごとに業務委託契約を結んで仕事を請け負う成果物を納める・業務を遂行することで報酬を受け取る起業事業を立ち上げる自ら立ち上げた事業を通して売上を作るフリーランスと起業家の人口を比較フリーランスとして働く人口は年々増加しています。また、実は起業家の数も増えています。フリーランスの人口総務省の「令和4年就業構造基本調査」によると、2022年時点で、本業がフリーランスの数は209万人です。年齢別にみると、45〜49歳が24万人と最も多くなっています。都道府県別のフリーランスの人口比率は、東京都が4.2%、次いで神奈川県及び京都府が3.6%となっています。起業家の人口総務省の「令和4年就業構造基本調査」によると、起業家の人数は約510万人にのぼるとされています。起業家の定義としては、「自営業を営む起業家」と「会社役員などに就いている起業家」としています。起業家の都道府県別の人口比率も東京都が11%、大阪府が7.2%、ついで神奈川県が5.8%となっています。フリーランスと起業家の収入を比較フリーランスと起業家の収入の比較も気になりますよね。これからフリーランスや起業家を目指す人は、それぞれの実態をみておくとよいでしょう。フリーランスの収入フリーランス協会の「フリーランス白書2024」によると、フリーランスの年収は、200万〜400万円未満が25.2%、200万円未満が23.2%と、過半数近くが400万円未満となっています。一方で、600万円以上と回答した人は全体の約28%で、3〜4人に1人が年収600万円を達成していることがわかります。起業家の収入日本政策金融公庫の「2021年度起業と起業意識に関する調査」によると、月商50万円未満の起業家の割合が48.6%です。つまり、月商50万円以上(年商にすると600万円以上)の割合が過半数となっています。また、月商100万円以上の割合が34.5%で、3人に1人が月商100万円以上(年商にすると1,200万円以上)稼いでいることがわかります。フリーランスと起業のメリット・デメリットを比較フリーランスとしての働き方と、起業家としての働き方はそれぞれにメリットやデメリットがあります。両者のメリット・デメリットを確認しておきましょう。フリーランスのメリットフリーランスは、自分のスキルや得意なことを活かして、自分の好きな場所やスケジュールで働けます。クライアントも自分で選べるので、人間関係のストレスも発生しづらいでしょう。スキルがあり、クライアントを確保できているフリーランスは、データからも読み取れるように年収600万円以上はもちろん、1,000万円以上稼ぐことも可能です。 フリーランスのデメリットフリーランスは、保険や年金などの社会保障が少ないです。支払う年金額も多くなっています。病気や怪我で働けなくなったときの傷病手当や出産時の手当などもないので、自分でしっかりと貯金をしておく必要があります。▼関連記事:フリーランスは貯金が重要!独立前のお金準備や将来の資産形成について起業のメリット自らが事業を立ち上げ、拡大させていく起業家は、事業プランや業績次第で、いくらでも収入を伸ばしていけます。フリーランスよりも、比較的稼げる幅は広いといえます。また、売上が1,000万円を超える場合や、課税所得が800万円を超える場合には、フリーランスとして納税するよりも、法人を作って法人税として納税する方が、節税メリットがあります。起業のデメリット起業する際に法人登記の費用がかかったり、会社をたたむときには、清算のための手間がかかったりします。法人にすると、事業年度ごとに必ず決算を行わなければなりません。そのため、フリーランスよりも税制・行政上の手続きが多くなります。税理士を雇ったり経理担当が必要になったりと業務が煩雑になる可能性があります。結局フリーランスと起業はどちらがいい?まずは、ここまでの内容を踏まえて、フリーランスと起業の特徴を整理しておさらいしましょう。フリーランスと起業の特徴のおさらいフリーランス起業働き方の自由度高い高い収入年収400万円未満が大半年収600万円以上は3割近く年商600万円以上が過半数行政手続きの手間開業届を提出するのみで、あまり手間はかからない法人登記が必要で、手間がかかるリスク特になし(会社員に戻ることも可能)会社の売却や解散をする場合は手続きや清算が大変フリーランスも起業も、働き方の自由度が高く、やる気次第でどこまででも収入を上げていけます。フリーランスは、自身の稼働や納品で報酬が発生します。一方で起業は、自ら事業を立ち上げて売上を作ります。うまく軌道に乗れば、従業員を雇って任せたり、システムを導入して自動化したりすることも可能です。そのため、稼働時間や業務が決まっているフリーランスよりも、起業のほうが稼げる幅は広いといえるでしょう。その反面、起業は行政手続きが多く、事業に失敗すれば、最悪の場合多額の借金を抱えることもあるため、リスクも高いといえます。フリーランスと起業はどちらいいのか?フリーランスと起業は、自分が目指したい方向性や適性によって判断するのがベストですが、どちらがいいか迷ってしまう人は、まずはフリーランスとして独立してみるのがよいでしょう。挑戦してみたいことがある人や、自由度の高い働き方をしてみたい人は、まずはフリーランスとしてスモールスタートし、さらに業務や収入を拡大していきたいと思ったら、起業する(法人化する)というやり方もあります。売上や所得によっては、節税効果も期待できます。フリーランスが起業(法人化)するには?法人化することで行政手続きや決算の業務は増えますが、フリーランスが起業するメリットもあります。適切なタイミングと判断基準を持って決断すれば、ビジネスも加速していくでしょう。フリーランスが法人化するメリットフリーランスが法人を作って起業することによるメリットは以下の通りです。節税対策につながる所得が800万円を超えた場合や、売上が1,000万円を超えた場合には、フリーランスより法人化した方が収める税金が少なくなります。社会保険に加入できる法人化すると社会保険への加入が必須となるため、会社の福利厚生を充実させられます。社会的信用力が高まり、資金調達がしやすくなるフリーランスとして個人事業を行うよりも、法人の代表として事業を行う方が社会的信用が高まります。そのため、事業を拡大させるための資金調達もしやすくなります。役員報酬を経費として計上できる法人化すると、役員報酬や給与、退職金を経費計上できます。仕訳業務の簡素化や節税にもつながります。フリーランスが法人化する適切なタイミング・判断基準フリーランスが法人化をすることでメリットが発生する、具体的なタイミングを解説します。所得が800万円を超えた時フリーランスは所得900万円以上で税率33%ですが、法人の場合は所得800万円以上で一律23.2%です。所得800万円を基準に、所得が同じでもフリーランスと法人では税率が10%も異なります。そのため、所得が800万円を超える際は、法人化した方が節税になります。売上高が1,000万円を超えた時売上高が1,000万円を超えるフリーランスは、課税事業者として消費税を納めなくてはいけません。しかし、フリーランスが法人化すると、課税事業者としての消費税が実質2年間免除されます。また、フリーランスよりも会社の方が信用を得られやすいため、借入や出資を受けたい場合も法人化するのがおすすめです。節税に加え、資金調達の観点でも法人化するかどうかを判断するようにしましょう。フリーランスが法人化するために必要な手続き・手順法人化するためには、必要な手続きと準備があります。フリーランスが起業して法人を作る際は、計画的に進めていくとよいでしょう。①法人設立手続きの準備法人設立にあたって次の内容を決めます。発起人や商号の設定定款の作成と認証手続き資本金の決定から入金法人用の実印作成②法人登記の申請手続き準備が整ったら、会社所在地の管轄する法務局で登記申請を行います。合同会社と株式会社で準備する書類が異なるので注意しましょう。③法人口座の作成登記が完了したら、銀行で法人口座の作成ができるようになります。法人用のクレジットカードを作れたり、事業用とプライベートの経費を分けやすくなったりするため、法人口座を作成すると良いでしょう。④役員報酬の設定法人設立後、3ヶ月以内に初年度の役員報酬を支払う義務があるため、役員報酬の金額を設定します。⑤法人設立届出書の提出法人設立が完了したら、税務署と都道府県・市町村役場の税務事務局に届出を提出して、正式に法人とみなされます。▼関連記事:フリーランスが法人化する7つのメリット!インボイス制度後の注意点も解説 まとめフリーランスと起業は、ともに自由度が高く、上限なく収入や売上を得られる働き方です。一方で、それぞれの働き方にメリット・デメリットがあります。フリーランス目線では、起業(法人化)することで、事業を拡大するきっかけになったり、節税効果を期待できたりします。一方で、起業することで発生する手続きや決算業務に時間を取られたり、フリーランスとしての身軽さを失ったりすることもあります。フリーランスと起業の互いの特徴を比較した上で、自分に合う働き方を目指していきましょう。