クライアントから領収書の発行を求められたけど、書き方が分からない......フリーランスが領収書を発行するときに、気を付けることが知りたい!普段受け取る機会の方が多い領収書ですが、フリーランスは、クライアントから報酬を受け取る際に領収書の発行を求められることがあります。この記事では、領収書の記載事項や発行する際の注意点、管理のポイントなどを解説します。インボイス制度の導入に伴う、適格請求書に対する領収書の発行方法についても紹介します。フリーランスは領収書を発行する必要がある?金銭の取引が発生した際、代金を支払った人は受け取った人に対して、領収書やレシートなどの受取証書の発行を求めることができます。領収書は、商品やサービスを提供する側と受け取る側、双方の間で金銭の授受が行われたことを証明するものです。領収書には、代金を確実に支払ったことを証明し、二重請求や過払いを防いだり、事業の経費支出の証明書としての役割があります。領収書がないものを経費計上していると、ペナルティを受ける可能性もあるので注意が必要です。クライアントから報酬を受け取ったフリーランスは、クライアントから領収書の発行を求められる可能性があります。もし、領収書の発行を求められたのに応じなかった場合は、クライアントは報酬の支払いを拒否できます。これは「同時履行の原則」といって、金銭の取引と領収書の発行は同時に行われる必要があるためです。しかし、必ずしも毎回領収書を発行しなければいけない訳ではありません。クライアントから領収書の発行を求められていない場合や、前もってクライアントと領収書の発行をしないと取り決めを交わしている場合は、領収書を発行しなくても問題ありません。領収書を発行する際に必要な項目と書き方領収書には、記載すべき項目が決められており、抜け漏れがあると正式な領収書として認められません。領収書を発行する際に必要な項目と、項目ごとに望ましい書き方があるため、一つずつチェックしていきましょう。日付フリーランスが取引先から「支払いを受け取った年月日」を、領収書に記載します。領収書に記載する日付は実際に支払いを受けた日付なので、請求書に記載する日付とはずれる場合もあります。例えば、2024年1月31日にサービスを納品して、2024年2月29日に支払いを受ける場合、領収書に記載する日付は2024年2月29日です。表記に関しては、西暦と和暦、どちらでも問題ありません。ただし、「'24」のように省略せず、西暦なら2024年3月1日、和暦なら令和6年3月1日と、正確に記載しましょう。 宛名(取引先の会社名)領収書には宛名として、取引先の会社名や個人名を記載します。宛名に「上様」や「宛名なし」と記載されている領収書は、無効と判断される場合もあるので注意が必要です。株式会社の記載方法は「(株)」と省略せずに「株式会社〇〇」と正式名称を書くようにしましょう。取引で受け取った金額取引で受け取った金額を書く際には、数字の前に「¥」もしくは「金」を付けます。「¥」を付けた場合は金額の後ろに「ー(ハイフン)」を記載し、「金」を付けた場合は「円也」を記載します。金額は3桁ごとに「,(カンマ)」で区切り、記号や文字と数字の間はなるべく詰め、後で数字を付け足して改ざんできないようにしましょう。例:¥100,000-例:金100,000円也但し書き但し書きには「何に対する代金の支払いか」金銭の取引の内容を記載します。「3月分記事作成代金として」「SNS広告運用代金として」など、見ただけで内容が分かるように具体的に記入するよう心がけましょう。「お品代」などの表現は、取引内容が不明瞭なので避けるようにしましょう。発行する側の情報領収書には、発行者の情報も忘れず記載します。屋号や事務所がある場合、屋号名と事務所の住所を記載し、なければ個人名と自宅の住所を記載しましょう。印鑑の捺印はなくても領収書として認められますが、個人印や屋号印があれば押印してください。▼関連記事:フリーランス・個人事業主の屋号の決め方のコツ!センスのある屋号も必見フリーランスが領収書を発行する際の注意点フリーランスが領収書を発行する際の注意点を見落としてしまうと、過怠金(ペナルティ)が発生したり、二重計上に加担したりしてしまう可能性があります。領収書の注意点を把握しておけば、クライアントとスムーズでクリーンな取引ができて安心でしょう。金額が5万円以上なら、領収書に収入印紙が必要金銭の取引に伴う領収書などの書類には、印紙税が課せられるため、領収書に書く金額が5万円以上の場合は収入印紙を貼ります。収入印紙とは、税金や手数料納付のために国が発行する証票で、領収書に貼ると、印紙税を納めたことになります。収入印紙の金額は、領収書の金額によって異なるので注意してください。領収書に書く金額収入印紙5万円未満 非課税5万円以上100万円以下 200円100万円を超え200万円以下400円200万円を超え300万円以下 600円収入印紙を貼り忘れると脱税となり、指摘されると3倍の過怠金が発生するので、貼り忘れがないようにしましょう。収入印紙を貼ったら、割印をします。割印は、収入印紙の再利用を防ぐために必要で、領収書と収入印紙の両方にバランスよく押すようにしましょう。前述のように、5万円以上の領収書には収入印紙が必要ですが、電子化された領収書なら収入印紙を貼る必要はありません。印紙税法によると、課税文書を作成した人に印紙税を納税する義務があるとされていますが、電子化した場合は課税文書の「作成」とならないからです。ただし、発行する際に電子データでよいかどうかは取引相手の判断によりますので、作成する際に必ず確認するようにしてください。領収書は再発行してはいけないクライアントから、領収書の再発行を依頼されても、再発行には応じないように注意してください。経理上、二重計上に加担してしまう可能性があるからです。どうしても必要だと言われたら、領収書に「再発行」と記載して、不正に使用されないようにしましょう。再発行する場合も、金額が5万円以上なら収入印紙が必要なので、忘れないようにしましょう。クレジットカード支払いの領収書はその旨を明記するクレジットカード支払いの領収書を求められた場合は、基本的には発行する必要はありません。この場合は、クライアントではなく、クレジットカード会社から金銭が支払われたことになるからです。クライアントからクレジットカード支払いの領収書を求められた場合、拒否できますが、発行しても構いません。ただし、領収書の二重発行になる可能性もあるため、発行する際はクレジットカードで支払われた旨を記載するようにしましょう。▼関連記事:フリーランスがクレジットカードを作るならビジネスカードがおすすめ!選び方や審査を通すポイントを紹介フリーランスが領収書を受け取る場合のポイントここまで、フリーランスが領収書を発行する場合について解説しましたが、フリーランスが領収書を受け取る場合にもポイントがあります。フリーランスならではの、知っておくべきポイントを紹介します。領収書を発行してもらう場合は宛名は必須領収書を発行してもらう場合は、正しい宛名が書かれているかチェックしましょう。宛名がない領収書は、経費として計上できますが、証憑書類として認められません。税務調査が入った場合、宛名がないために領収書の偽造や不正な経費計上が疑われる可能性もあります。領収書には、必ず正しい宛名が必要となるので、領収書を受け取った時点で、宛名に正式名称が書かれていない場合は正しく修正してもらうようにしましょう。領収書とレシートはどちらでも経費計上できる経費に計上する領収書は、レシートでも問題ありません。発行日、金額、内容、発行者した人の氏名や会社名・住所が記載されていれば、経費として計上できます。ただし、仕入税額控除に使う場合には、これらに加えて、宛名が必要なので注意しましょう。また、発行者と受け取り側の合意があれば、領収書は電子データでも認められます。領収書が発行されない場合は出金伝票を利用する交通費や慶弔費など、領収書やレシートが発行されない場合は、出金伝票を活用します。出金伝票は、現金を支払う取引を記録する伝票です。領収書が発行されなくても、出金伝票があれば経費計上が可能となります。出金伝票には、日付、支払先、勘定科目、摘要(取引内容)、金額、起票者(伝票を書いた人)の記載が必要です。出金伝票は、領収書やレシートと同じく保管しておきましょう。 発行・受領した領収書の管理のポイント領収書を発行したり、受領したりした際には、保存して管理する必要があります。電子領収書ならオンライン上に、紙の領収書ならファイルなどに仕分けして保存しておくと、税務調査などで領収書の提出が求められた際にもすぐに対応できて安心です。フリーランスが発行した領収書は控えを保存しておくフリーランスがクライアントなどに対して領収書を発行した場合は、必ず控えをとっておくようにしましょう。発行したにも関わらず、受け取ってないとして再発行を求められる可能性もゼロではありません。経費の二重計上に加担しないことや、税務調査などで必要になった際にすぐ分かるように、分類して保存しておきます。発行した領収書の控えの保管方法電子領収書で発行した場合は、オンライン上でフォルダを作って保存しておくとよいでしょう。紙で発行した場合は、月別など分かりやすく分類し、ファイルなどに入れて保管しておきましょう。紙で発行した領収書をスキャンしたり、携帯電話のカメラで撮影して電子化し、保存しておく方法もあります。受け取った領収書は7年間の保管義務がある領収書には、青色申告する人なら7年間、白色申告する人だと5年間の保管義務があります。そのため、確定申告を終えても受け取った領収書はすぐ捨てず、帳簿などの書類と一緒に保管しておくようにしましょう。もし税務調査が入った際に領収書が保管されていないのが発覚すると、期間中に経費として計上したものが認められず、追徴課税やペナルティを課せられる可能性もあります。インボイス制度導入後、領収書の発行に必要な対応とは2023年10月から導入されたインボイス制度によって、領収書の取り扱いが変わります。インボイス制度は、正確な消費税の申告・納税を目的とし、課税売上が1,000万円の事業者に適格請求書(インボイス)の発行を義務付けています。▼関連記事:インボイス制度がフリーランスに与える脅威!やるべき対策や今後の予想 フリーランスが免税事業者と課税事業者で発行する領収書が異なるフリーランスが領収書を発行するときは、ご自身が免税事業者か課税事業者かによって領収書の発行対応が異なります。免税事業者の場合:免税事業者は適格請求書を発行できないので、これまでと同様の形式で領収書を発行します。課税事業者の場合:適格請求書発行事業者届を出して、適格請求書発行事業者となった課税事業者は、インボイスに必要な記載事項を備えた領収書を発行します。適格請求書に対応した記載内容が必要領収書は、金銭の取引の証明となる書類ですが、条件を満たせば領収書も適格請求書として利用できます。課税事業者(適格請求書発行事業者)が、領収書を適格請求書として取り扱うには、以下の記載事項が必要になります。・書類の交付を受ける事業者の氏名または名称・取引年月日・取引金額・取引内容・適格請求書発行事業者の氏名または名称、登録番号・8%、10%の税率ごとに区分して合計した対価の額および適用税率・税率ごとに区分した消費税額等・軽減税率の対象品目があれば、税率、軽減税率等の文言また、小売業や飲食店業、旅行業といった一部の事業者は、上記の記載内容を簡略化した「適格簡易請求書(簡易インボイス)」の交付が認められます。領収書を受け取る場合は課税事業者であるフリーランスが領収書を受け取る場合、適格請求書の記載事項があるかどうかを確認しましょう。適格請求書の条件を満たしていない場合は、修正を依頼します。また受け取った領収書には、7年間の保存義務があります。まとめフリーランスは、クライアントから報酬を受け取る際に、領収書の発行を求められることがあります。フリーランスが領収書を発行する際には、宛名を正式名称で書いたり、5万円以上の取引金額には収入印紙が必要だったりといくつか注意が必要です。また、作成した領収書は控えを保存し、受け取った領収書は7年間の保存義務があります。そして、インボイス導入後は、免税事業者なのか課税事業者かによって対応が異なります。慣れるまで対応に迷うこともあると思いますが、領収書を発行する際も受け取る際も、必要記載事項などをチェックして、後々トラブルにならないようにしましょう。