「フリーランスは加入できない社会保険があるから将来が不安」「フリーランスは会社員より社会保険料が高いらしい」フリーランスになるにあたって、不安を感じることのひとつが「社会保険」ではないでしょうか?フリーランスと会社員では、加入できる社会保険や保険料が異なるため、違いを理解した上で、将来に向けて対策しておくことが大切です。この記事では、社会保険の基礎知識をはじめ、フリーランスが加入する社会保険の種類や年収別の社会保険料を解説します。これからフリーランスを目指す方やフリーランスになったばかりの方は、ぜひ参考にしてみてください。▼関連記事:フリーランスと会社員の違いに驚愕!独立前に知っておくべき違いを解説【基礎知識】社会保険とは?社会保険とは、病気や怪我、老後の生活保障、失業時の支援などを目的とした公的な保険制度です。社会保険は、健康保険・介護保険・厚生年金保険・労災保険・雇用保険の5つに分類されます。社会保険の種類によって目的や特徴、加入条件などがありますが、フリーランスと会社員という観点でも違いが発生します。会社員では、会社が手続きを行ってくれたり、保険料を半分負担してくれたり、というメリットがあります。フリーランスの場合は、自分で加入手続きと支払いを行う必要があるため、自分が加入できる社会保険と保障内容を理解しておくことが大切です。フリーランスと会社員の社会保険の違いここで、フリーランスと会社員の加入できる社会保険を紹介します。社会保険フリーランス会社員健康保険○国民健康保険○企業保険または健康保険組合年金保険○国民年金○厚生年金介護保険○40歳以上は加入必須○40歳以上は加入必須労災保険△※自主加入可能○加入可能雇用保険×加入不可○加入可能フリーランスが加入する国民健康保険と国民年金の保険料は、全額フリーランスの自己負担です。一方、会社員は会社が保険料の半分を折半で支払う「労使折半」が適用されるため、1人あたりの保険料の負担が少なくなります。またフリーランスは、業務中に発生したケガや病気に対する保障制度である「労災保険」は、自分で申請した人だけが入れる自主加入制度が採用されています。失業時の給与を保障する「雇用保険」は、加入できません。このように、フリーランスと会社員は加入できる保険と保険料が異なるため、自分で入れる社会保険と保険料、どこまで守られているのかを理解しておきましょう。フリーランスが加入する社会保険と保険料ここで、フリーランスが加入できる社会保険と保険料を紹介します。自分が毎月支払う金額を把握しておきましょう。国民健康保険自営業者やフリーランスは、会社員や公務員が加入する健康保険制度の対象外となるため、国民健康保険に加入することが一般的です。フリーランスが支払う国民健康保険料は、主に前年の所得、世帯構成、居住する自治体の条例に基づいて決定します。具体的には、前年の所得税の課税所得に応じた保険料率を適用し、さらに平等割(世帯の人数に応じた均等な金額)と均等割(自治体ごとに定められた一律の金額)が加算されます。前年度の課税所得に応じた保険料が適用されるため、一般的に所得が高いほど保険料が高くなる仕組みとなっています。▼関連記事:フリーランスが加入できる健康保険は?国民健康保険料を抑えるコツやおすすめの制度も紹介国民年金国民年金は、老後の生活保障を目的とした制度です。日本に住む20歳以上の全ての人に、加入が義務付けられています。国民年金の保険料は、年収や年齢関係なく一律16,520円です。※令和5年度(2023年度)保険料は、物価や実質賃金の状況に応じて年度ごとに変更されます。▼関連記事:フリーランスが加入する国民年金とは?将来の年金受給額を増やす方法も解説!【年収別】フリーランスの社会保険料一覧フリーランスは所得に応じて社会保険料が変わるため、年収に応じて1年間で支払う社会保険料は大きく異なります。ここで年収300〜1,000万円の年収別社会保険料を紹介します。年収300万円年収400万円年収500万円年収600万円年収700万円年収800万円年収900万円年収1,000万円国民健康保険244,100円340,000円435,900円531,800円627,700円723,600円832,800円870,000円国民年金198,240円198,240円198,240円198,240円198,240円198,240円198,240円198,240円1ヶ月あたりの社会保険料36,861円44,853円52,845円60,836円68,828円76,820円85,920円89,020円社会保険料年間合計442,340円538,240円634,140円730,040円825,940円921,840円1,031,040円1,068,240円※計算ツール:個人事業主シミュレーション※国民年金保険料は、令和5年度の保険料16,520円で算出※【計算ルール】・青色申告65万円控除を適用・年齢20~39歳、配偶者なし、扶養家族0人の場合フリーランスは、自分で国民健康保険と国民年金を支払う必要があるため、収入から社会保険料を引いた金額が手取り額になります。毎月の保険料を認識しておくことで、フリーランスとして働いて生計を立てられるようになります。毎月の保険料を把握して、収入の目標金額を設定したり、ライフスタイルにあった働き方を考える参考にしたりしていきましょう。▼関連記事:年収別早見表:フリーランスの手取りとは?節税や手取りを増やす方法を解説フリーランスが社会保険料を軽減させる5つの方法フリーランスが社会保険料を軽減させる5つの方法を紹介します。「フリーランスは毎月の社会保険料が高い」と感じている方は、ぜひ参考にしてみてください。保険料が安い自治体に引っ越しする国民健康保険の保険料は、自治体ごとに保険料の計算基準や比率が異なります。自治体ごとに保険料が異なるのは、地域の経済状況や医療費の実績などに基づき保険料率を設定しているからです。一般的に地方の方が、国民健康保険料が安い傾向にあります。フリーランスは、引っ越すことで社会保険料の負担を軽減できる場合があるため、引っ越しを検討するときは、各市区町村のホームページで保険料を確認しましょう。▼関連記事:フリーランスの引っ越し完全ガイド!必要な手続きと経費計上方法を解説家族の扶養に入って働く家族の扶養に入りながらフリーランスとして働くと、健康保険と年金保険の負担をゼロにできます。毎月の国民健康保険料と国民年金保険料(約1万6,520円)の負担がなくなるので、収入面の不安を軽減できるでしょう。フリーランスが扶養に入って受けられる控除には、配偶者控除と配偶者特別控除の2種類があります。それぞれの扶養に入るための所得条件は次の通りです。配偶者控除:納税者の合計所得金額が1,000万円以下、配偶者の年間合計所得金額が48万円以下であること配偶者特別控除:納税者の合計所得金額が1,000万円以下、配偶者の合計所得金額が48万円以上133万円以下であること▼参考:国税庁「配偶者控除」▼参考:国税庁「配偶者特別控除」扶養に入れるかは家族の収入によること、また世帯年収にも関わるので、扶養に入るかは家族間で話し合って決定しましょう。▼関連記事:フリーランスは配偶者の扶養に入れる?収入の条件や必要な手続きなどを解説「任意継続被保険者制度」に加入する会社員からフリーランスに転向する場合、退職してから最大2年間は会社員時代の健康保険に継続して加入できます。この制度を「任意継続被保険者制度」といいます。任意継続被保険者制度を利用すると、保険料は原則2年間変わりません。そのため、国民健康保険に加入するより一時的に保険料負担を軽減できます。2年間の任意継続保険期間修了後は、国民健康保険への移行、もしくは家族の扶養への移行が必要となります。そのため、2年の間に自分にあった働き方や収入を構築することが大切です。▼参考:全国健康保険協会:健康保険任意継続制度(退職後の健康保険)について国民健康保険組合に加入する特定の職業団体や業界組合が提供する「国民健康保険組合」に加入することで、一般の国民健康保険よりも保険料が安くなる場合もあります。国民健康保険組合を運営している職種は、医療や士業など、専門職が中心です。IT系のフリーランスの場合、WebデザイナーやWebライターなど、クリエイティブ系の職種に従事している方を対象とした「文芸美術健康保険組合」に加入できる可能性が高いです。例えば、文芸美術健康保険組合の保険料は1人あたり月額24,800円です。そのため、現時点で国民健康保険料が25,000円以上の場合は、組合に加入した方が保険料の負担を抑えられることが分かります。組合への加入には、加入条件や審査があるので、自分が加入したい組合のホームページをよく確認しましょう。▼参考:(一社)全協ホームページ国民年金の免除・減額申請をする経済状況的に国民年金保険料の支払いが難しい場合、国民年金の免除・減額申請をしましょう。保険料免除制度:国民年金の保険料を一定期間免除免除額は、所得に応じて全額免除・3/4・半額・1/4のいずれか適用される保険料納付猶予制度:経済状況が改善され次第、保険料を納付する制度保険料免除制度は、一定期間保険料が免除される代わりに、将来の年金受給額が減るので注意が必要です。ただし免除から10年以内であれば、免除していた分を追納できます。また保険料猶予制度は、経済状況が改善されるまでの間、保険料の納付を待ってもらう制度です。経済状況が改善され次第、保険料を支払うので将来の年金受給額が減ることはありません。▼参考:日本年金機構:国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度フリーランスが加入できない社会保険を補う方法フリーランスは、業務中の病気やケガに対する保障を行う「労災保険」と、失業時の保障を行う「雇用保険」に加入できません。そこで、フリーランスが加入できない社会保険を自分で補う3つの方法を紹介します。自主的に労災保険に加入する元々フリーランスは、労災保険への加入不可とされてきましたが、該当する職種のフリーランスは労災保険に「特別加入制度」で自主加入できるようになりました。2024年3月時点で、労災保険保険へ加入できる「特別加入制度」に該当するフリーランスの職種は、次の通りです。中小事業主個人タクシー業者個人貨物運送業者建設事業者芸能関係者アニメーション制作作業従事者ITフリーランス 労災保険に自主加入する場合は、自分の職業が該当する団体を通して加入します。例えば、エンジニアやWebデザイナー、Webマーケターなど、IT関係のフリーランスは「ITフリーランス支援機構全国労災保険センター」より、労災保険へ加入可能です。また厚生労働省より、2024年度内を目途に全フリーランスが労災保険に加入できるように動いていることが発表されています。保険料や施行開始日について、今後も動向を確認しましょう。フリーランス向けの補償サービスに加入するフリーランスの場合、プロジェクトの遅延や契約不履行による損害賠償責任を問われる可能性がゼロとは言い切れません。そのため、フリーランス向けの補償サービスへの加入をおすすめします。フリーランス向けの補償サービスには、フリーランス協会やFREENANCE(フリーナンス)などがあります。それぞれ損害賠償保険をはじめ、コワーキングスペースの優待利用などの福利厚生サービスや即日払いなどのサービスも用意されています。フリーランスとしてのリスクヘッジをしつつ、業務効率化や私生活の充実を図れる付帯プランの活用がおすすめです。iDeCoや小規模企業共済制度に加入するフリーランスは、会社員と比較すると年金の受け取り額が低くなるといわれており、さらに退職金制度がないため、自分で退職後・老後の収入源を確保する必要があります。将来の収入確保に適した制度が、将来の年金受給額を増やす私的年金制度「iDeCo(イデコ)」や、フリーランス向けの退職金制度「小規模企業共済制度」です。iDeCoでは、毎月5,000円~6万8,000円を掛け金として投資信託か元本確保型商品を運用して将来の年金受給額を増やせます。小規模企業共済制度では、毎月1,000円~7万円を掛け金として積み立てて、廃業時もしくは65歳以降に退職金として積立金を受け取れます。どちらの制度も課税所得の控除対象になるので、節税対策をしつつ、将来に向けて備えておくことが可能です。▼関連記事:小規模企業共済とは?フリーランスの将来の備えと節税効果を解説▼関連記事:フリーランスがiDeCoに加入するメリット・デメリットは?年代別シミュレーションも紹介フリーランスが収入アップを目指すためにやるべきこと社会保障が手薄なフリーランスは、日頃から収入アップすることで、貯金をしたり、労災保険やiDeCoに加入して万が一に備えたりする余裕が生まれます。最後に、フリーランスが収入アップを目指すためにやるべきことを3つチェックしていきましょう!常に最新のスキルを学ぶ常に最新のスキルを学び、身につけることで、フリーランスとしての市場価値を高めることができます。最新のスキルを身につけて、現場で活用できるようになると、より多くの仕事が獲得しやすくなります。特にフリーランスは、会社員と異なり、クライアントが求める成果を出せないと案件が途切れてしまいます。だからこそ、常に最新のスキルを学び、いま現場で必要とされる結果を出せる状態を目指しましょう。集客活動を怠らないInstagramやX(旧Twitter)、ブログやポートフォリオサイトを活用して、集客活動を積極的に行っていきましょう。自身の作品や実績を公開することで、新規クライアントの獲得やフリーランスとしての独自の地位確立を目指せます。特に集客活動を行うことで、自分から案件に応募しなくても、仕事の依頼が入ってくる状態をつくれます。結果的に、自分の強みや得意ジャンルでの依頼を増やしていきやすくなるので、仕事の合間を活用して、集客活動にも注力することをおすすめします。確定申告を適切に行うルールに基づいて適切に確定申告を行うことで、節税対策を行い、実質的な収入アップを目指せます。仕事で使った経費を適切に計上することで、課税所得を減らし、社会保険料を軽減することが可能です。また医療費控除や生命保険料控除など、課税所得を減らせる所得控除を申請することも、社会保険料の負担軽減に直結します。手間や時間は掛かりますが、確定申告の制度を覚えて、ルールを守りながら社会保険料の負担を減らしていきましょう。▼関連記事:確定申告はフリーランスに必須!やり方や必要書類と経費管理のコツ▼関連記事:フリーランス・個人事業主なら節税は必須!税金の基礎知識も解説まとめフリーランスは、会社員と比較すると社会保障が手薄く、社会保険料は全額自己負担なので金銭的負担が大きい傾向にあります。けれども、加入できない社会保険があるからといって、フリーランスという働き方をあきらめる必要はありません。保険料が安い自治体に引っ越したり、家族の扶養に入って働いたりするなど、社会保険の負担を軽減する方法は多数あります。またフリーランスが加入できない「労災保険」と「雇用保険」に対しては、自主的に労災保険に加入する、フリーランス向けの補償サービスに加入するなどの対策でカバーできます。いま何に対して1番不安を感じているのかを明確にして、自分にあった社会保険の不足分をフォローしていきましょう。