「フリーランスは、将来の年金受給額が少ないと聞くけど本当?」「国民年金の申請方法や毎月の保険料が分からない」など、このような不安を抱えているフリーランスの方も多いのではないでしょうか。フリーランスは会社員と加入する年金が異なるため、将来の年金受給額が少ないといわれています。この記事では、フリーランスが加入する国民年金の基礎知識をはじめ、国民年金への加入方法やフリーランスと会社員の年金受給額の違いを解説します。国民年金に関する不安・疑問を抱えているフリーランスの方は、将来の年金受給額を増やす方法も参考にしてみてください。フリーランスとして覚えておきたい国民年金の基本年金は公的年金と私的年金があり、国などの公的機関が運営しているのが、公的年金です。フリーランスに一番重要な公的年金の国民年金について、年金の不安を払拭するために覚えておきたい基礎知識を解説します!公的年金制度は「二階建て」構造日本の公的年金制度は、全ての人が加入する国民年金(第一階層)と、企業と雇用契約を結んでいる雇用者が加入する厚生年金や共済組合(第二階層)の2つで構成されています。全ての人が入る国民年金を一階、企業と雇用契約を結んでいる会社員や公務員が加入できる厚生年金を二階と見立て、日本の公的年金制度は「二階建て」構造といわれています。二階建て構造では、一階に当たる国民年金で基本的な老後の保障をカバーし、二階に相当する厚生年金で追加保障を行っているのが特徴です。フリーランスは国民年金への加入が必須フリーランスは、国民年金への加入が必須です。老後の基本的な生活の保障を目的とした国民年金は、日本に住む20歳以上の全ての人に加入義務があります。国民年金の保険料は、年収や年齢関係なく、令和5年度(2023年度)は一律16,520円です。保険料は、物価や実質賃金の状況に応じて年度ごとに変更となります。会社員や公務員が加入する厚生年金厚生年金は、会社員や公務員が国民年金に加えて加入できる年金制度です。対象者は、厚生年金保険の適用を受ける企業や事業所に勤務する70歳未満の会社員・公務員です。そのため、フリーランスは厚生年金に加入できません。厚生年金の保険料率は一律18.3%で、会社側が保険料を半分負担する「労使折半」が採用されています。例えば月給20万円の場合、厚生年金保険料は36,600円ですが、会社側が半分負担してくれるので従業員の納付額は半分の18,300円です。会社員はフリーランスと比べて公的年金の受給額が多いうえ、保険料も会社が半分支払ってくれます。▼関連記事:フリーランスは厚生年金に加入できる?国民年金との違いや代わりとなる対応策を紹介▼関連記事:フリーランスと会社員の違いに驚愕!独立前に知っておくべき違いを解説フリーランスが国民年金に加入する方法フリーランスは、自分で国民年金への加入手続きを行う必要があります。国民年金への加入方法には、市町村役場で手続きする方法とオンライン申請の2パターンがあります。市町村役場で手続きする担当の方と内容を確認しながら国民年金に加入したい方は、お住まいの市町村役場での手続きがおすすめです。市町村役場で年金の手続きするときは、年金手帳もしくは基礎年金番号通知書を持っていきましょう。担当の方と書類を確認しながら加入手続きを進められます。加入手続きが完了した後、数週間以内に自宅へ国民年金の保険料の納付書が送られます。納付書が届いたら内容を確認し、毎月期日までに保険料を納めるようにしましょう。オンライン申請する国民年金は、行政関係の手続きや申請状況を確認ができる「マイナポータル」からオンライン申請も可能です。オンライン環境が整っていれば、24時間どこからでも申請できるので、市町村役場へ足を運ぶのが難しい方におすすめです。申請は「マイナポータル」のサイトにアクセスし、手順に沿って進めれば申請できます。またオンライン申請では、マイナンバーカードが必要です。「個人番号通知書」ではオンライン申請ができないので気をつけましょう。▼参考:日本年金機構:個人の方の電子申請(国民年金)フリーランスと会社員の年金受給額の差フリーランスと会社員の年金受給額差は、毎月約8万円です。国民年金のみのフリーランスと、国民年金と厚生年金の2つに加入できる会社員の年金受給額は、次のように変わります。フリーランス会社員年金受給額平均6.6万円/月平均14.9万円/月保険料納付期間20~60歳まで就職から退職まで※フリーランスの年金受給額は、保険料を毎月満額支払った場合の金額です▼参考:厚生労働省:日本の公的年金は「2階建て」 | いっしょに検証! 公的年金フリーランスが加入する国民年金は、基本的に保険料が一律になるため、毎月の受給額は平均6.6万円と試算が出ています。会社員の場合、厚生年金の保険料は給与の18.3%のため、人によって年金受給額が変わります。いずれにせよ、フリーランスと会社員では、毎月の年金受給額が約8万円異なるため、フリーランスの方が将来の不安を抱えやすいことが分かります。▼関連記事:フリーランスの3大リスクと実際にフリーランスが感じている不安フリーランスが将来の年金受給額を増やす4つの方法ここで、フリーランスが将来の不安を解消するために、年金受給額を増やす方法を4つ解説します!iDeCo(イデコ)iDeCo(イデコ)(個人型確定拠出年金)とは、投資信託もしくは元本確保型商品を運用して、将来の年金受給額を増やせる私的年金制度です。毎月5,000円〜6万8,000円を掛け金として運用し、原則60歳以降に年金または一時金として受け取れます。iDeCoは利息や売却益が非課税であること、さらに所得税と住民税が控除されるのでフリーランスの節税対策としても活用されています。ただし、iDeCoで運用した資金は60歳まで引き出せません。また元本割れのリスクもあるので、分散投資や長期投資を通じてリスクを管理することが重要です。▼関連記事:フリーランスがiDeCoに加入するメリット・デメリットは?年代別シミュレーションも紹介国民年金基金国民年金基金は、フリーランスが任意で加入できる国民年金の上乗せ制度です。毎月追加の保険料を払うことで、基本的な国民年金保険料に上乗せして、将来の年金受給額を増やすことができます。フリーランスは将来の年金受給額を増やせる「厚生年金」に加入できないため、通常「二階建て」構造である年金の一階分しか積み立てができません。けれども国民年金基金に加入すれば、国民年金に上乗せができるので、実質フリーランスも会社員と同じ「二階建て」構造の年金体制を整えることができます。付加保険料付加保険料は、将来受け取る年金額を増額するための追加保険料です。国民年金の定額保険料に、毎月400円上乗せして支払うことで、将来の年金受給額を増やすことができます。付加保険料を納付したい場合は、お住まいの市町村役場か年金事務所に「国民年金被保険者関係届書(申出書)」を提出しましょう。付加保険料の納付は、申請した月の分から開始されます。小規模企業共済小規模企業共済は、フリーランスをはじめ、小規模企業に勤める人を対象とした積み立て型退職金制度です。掛金は1,000円〜7万円の間で、500円単位で掛金を設定できます。小規模企業共済は退職金制度のため、退職もしくは廃業したときに退職金として受け取ることができます。また65歳以上で180カ月以上払い込んだ場合は、事業を継続しながら積立金を受け取ることも可能です。また小規模企業共済の掛金は、全額課税対象所得の対象になるので節税効果も高い点が魅力です。フリーランスが老後の資金不足を解消する3つの方法会社員と比較して年金受給が少ないフリーランスは、老後の資金不足が心配でしょう。ここでは、老後の資金に備える方法を3つ紹介します。資産運用をする長期的に資産運用を行うことで、老後の資金不足を解消して、将来に向けて経済的な自立を図ることができます。投資信託や株式などに少額から分散投資を行うことで、資産がマイナスになることを防ぎつつ、着実に資産を増やせます。将来に向けて確実に資産を増やすために毎月数万円ずつなど、積立投資で資産運用を始めてみましょう。また資産運用はなるべく早いうちにスタートし、長期投資をするのがおすすめです。資産運用の期間が長ければ長いほど、複利効果が期待でき、将来の資産を多く増やすことができるでしょう。健康管理を怠らない将来の不安を解消するためには、健康管理を怠らないことも重要です。良好な健康状態を維持することは、医療費の削減と長く働くための身体づくりに直結します。病気をせず、健康的に過ごして仕事に励むことも老後の資金不足を解消する対策になります。特にフリーランスは、会社員と比較すると病気やケガで仕事ができなくなったときのサポートが限られています。だからこそ、日頃から定期的な運動やバランスの取れた食事、良質な睡眠を心掛けて、フリーランスとして長く安心して働ける身体づくりをしていきましょう。▼関連記事:フリーランスこそ健康診断を受けるべき3つの理由!受診時のポイントも解説スキルアップを図る老後の資金不足を解消するためには、フリーランスとしての収入アップも大切です。今の自分にプラスで身につけるべきスキルや経験を見つけ出して、単価アップや新規案件の獲得を目指しましょう。スキルアップを図り、フリーランスとしてのキャリアを広げて、貯金や資産運用に回せる金額を増やしていきましょう。フリーランスが国民年金の支払いが難しいときの対処法「会社員からフリーランスになったばかりで収入が安定しない」「急に契約解除になってしまって、国民年金の支払いが難しい……」という方もいると思います。けれども国民年金を未納にしてしまうと、将来の年金受給額が減ってしまうので未納にするのは避けましょう。国民年金の支払いが難しいときの対処法を3つ紹介するので、いま保険料の支払いが厳しい方はぜひ参考にしてみてください。保険料の免除制度・納付猶予制度を申請する国民年金の保険料が難しい場合は、保険料の免除制度・納付猶予制度を申請しましょう。収入の減少や失業など、経済的に保険料の納付が難しい場合に申請すると、所得に応じた保険料の免除、もしくは納付猶予が適用されます。それぞれの制度の違いは次の通りです。保険料免除制度国民年金の保険料を一定期間免除免除額は、全額免除・3/4・半額・1/4の4種類免除額は所得に応じて変わります保険料納付猶予制度経済状況が改善され次第、保険料を納付する制度認定された期間は保険料の支払いは発生しません免除制度は一定期間保険料を納付しなくなるため、将来の年金受給額が減ってしまう点に注意が必要です。将来の年金受給額への影響を考え、可能であれば次の見出しで紹介する追納制度の利用を検討しましょう。一方、納付猶予制度は保険料の支払い期間をずらす制度のため、将来の年金受給額は変わりません。▼参考:日本年金機構:国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度収入が安定したら追納する国民年金の保険料を免除した場合、収入が安定したら免除していた分を追納しましょう。追納することで、将来の年金受給額が減少するのを防いで、老後の不安を軽減できます。未納分の追納は、保険料の免除もしくは減額が承認されてから10年以内であれば可能です。ただし、免除や減額の申請から10年以上経過すると追納ができなくなってしまいます。そのため、なるべく早めの追納を目指しましょう。▼参考:日本年金機構:国民年金保険料の追納制度扶養内で働くことを検討する家族と共に生活している人(生計を一にしている)は、収入が安定するまでは扶養に入るのも1つの手段です。所得130万円以下の場合は、フリーランスも家族の扶養に入ることができます。扶養に入ると、国民年金の保険料・国民健康保険の保険料がそれぞれ免除されます。収入によって差はありますが、約2万円以上の負担を減らすことが可能です。保険料の負担を減らすことは、金銭的な不安を減らし、精神的な余裕を生むことにもつながります。扶養に入れる方は、家族と相談して検討してみましょう。▼関連記事:フリーランスが扶養内で働く際の注意点!年収の壁や目安の年間所得を解説まとめフリーランスは、会社員や公務員と比べると、年金の受給額が少なくなりがちです。そのため、自分で将来に向けて備えておく必要があります。iDeCoや国民年金基金、付加保険料制度や小規模企業共済などを活用すると、将来の年金受給額を増やしたり、年金として活用できる資金をつくったりすることが可能です。また一部制度は、確定申告の際に所得税の控除対象となります。そのため、節税対策をしつつ、将来に備えることが可能です。フリーランスとして働きつつ、将来も安心して過ごせるよう、自分にあった対策を取り入れていきましょう。