「フリーランスになったものの、業務委託契約書の内容がよく分からない」「そもそも業務委託契約書は、必ず結ばないといけないの?」と疑問を抱えているフリーランスも多いと思います。業務委託契約書は、一見内容が複雑に見えるため、内容が正しいのか、自分に不利な内容が書かれていないのか分かりにくい傾向にあります。けれどもフリーランスにとって、不当な契約をしたり、トラブルに巻き込まれたりしないためにも、業務委託契約書の内容を理解することはとても大切です。この記事では、業務委託契約とは何か、契約を結ぶまでの流れや契約時のチェックポイントを解説します!初めて業務委託契約を結ぶフリーランスの方は、ぜひ参考にしてみてください。【基礎知識】 フリーランス・業務委託契約とは?はじめに、「フリーランス」と「業務委託契約」の言葉の定義を解説します。それぞれの単語の意味を覚えて、この後の説明をより深く理解できるようにしましょう。フリーランスとは?フリーランスは、自分の得意なスキルやサービスを活かして、さまざまなクライアントと契約して個人で働く人を指します。税務署に開業届を出している場合、税務上の表現で「個人事業主」とも呼ばれます。企業には属さず、時間や場所に縛られず自由に、複数のクライアントと働くのがフリーランスの特徴です。また個人で働くため、契約内容の交渉や手続き、請求書の発行などを全て自分で行います。業務委託契約とは?業務委託契約とは、企業がフリーランスに業務の一部を依頼する契約のことです。具体的な業務の範囲や期間、報酬の条件を明確にした上で、企業とフリーランスの間で契約を結びます。会社員の雇用契約との違いは、企業にただ労働力を提供するのではなく、指定された業務を遂行する点です。業務委託契約内容にもよりますが、業務の遂行や完成した成果物の納品を持って、報酬の支払が発生するケースが多いです。フリーランスが覚えておくべき業務委託契約の3つの種類業務委託契約は、大きく分けて3つの種別があります。契約の種別によって、業務の範囲や契約条件が変わるので、それぞれの違いを確認していきましょう。請負契約請負契約は、クライアントがフリーランスに特定の仕事や成果物の納品を目的として、業務を委託する契約です。例えば、エンジニアの場合はWebサイトの制作、Webライターの場合は記事の提出など、明確な成果物が定められています。クライアントにとって、確実に成果物を納品してもらえる点やクオリティの高いものを作れるなどのメリットがあります。報酬は、納品完了後に支払われます。請負契約では、成果物の納品が条件のため、稼働時間や勤務場所の条件は定められていないケースがほとんどです。委任契約委任契約とは、クライアントがフリーランスに特定の業務を依頼し、フリーランスはクライアントに代わって業務を行う契約です。委任契約は、主に法律にまつわる業務を中心とした契約種別で、具体的には、会計士や弁護士、医師などの職業が対象となります。請負契約と異なり、契約した業務を適切に行うことが条件の契約のため、特定の成果物の納品は求められません。準委任契約準委任契約は、委任契約に該当しない非法律行為の業務をクライアントに代わって行う契約種別です。委任契約と同じく、クライアントから依頼された業務を行う契約になります。準委任契約に該当する職業は、現在一般的にフリーランスとして代表されるエンジニアやデザイナー、マーケターなどです。成果物を納品する形式でなく、法律にまつわる業務でなければ、基本的に準委任契約となります。業務委託契約を結ぶときに契約書は絶対に必要?「そもそも業務委託契約を結ぶとき、契約書は絶対に取り交わさないといけないの?」と、思っている方も多いと思います。契約書を取り交わす手間が掛かるので面倒……という気持ちもあるあもしれませんが、トラブルを回避するために契約書は必ず取り交わしましょう。契約書を交わさずに口約束で仕事を進めてしまうと、報酬未払いなどのトラブルになったときに個人で働くフリーランスが不利になってしまいます。また、フリーランスが不当な契約をしないように守るための法律、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」、通称「フリーランス新法」は2023年4月に国会で可決されました。これに伴い2024年からは、今後フリーランスが企業と業務委託契約を結ぶとき、契約書の取り交わしは必須になります。業務委託契約を結ぶまでの流れここからは、実際にクライアントと業務委託契約を結ぶまでの流れを解説します。安心してフリーランス活動に励むためにも、1つずつ確認していきましょう。1:契約内容の打ち合わせはじめに、クライアントと契約内容の打ち合わせを行います。この段階では、クライアントから依頼される業務内容や成果物の詳細、納期や報酬など、請け負う業務の大枠について確認することが目的です。この時点で業務内容に不透明な部分や契約内容で交渉したい部分があった場合は、必ずクライアントに相談しておきましょう。納得していない状態で契約を進めてしまうと、後のトラブルの原因になりかねないので注意してください。2:業務委託契約書を作成する契約内容の打ち合わせで合意した内容を元に、クライアントが業務委託契約書の作成に入ります。契約書に記載される主な内容は、次のとおりです。業務内容納期報酬額支払条件契約期間・契約終了条件秘密情報の取り扱い著作権・知的財産権の範囲3:業務委託契約書の内容を確認クライアントが業務委託契約書を作成したら、内容の確認を行います。ここで必ず、「1:契約内容の打ち合わせ」で合意した内容が正しく反映されているか確認しましょう。万が一間違いや不明点があった場合、この時点で必ず修正を依頼しましょう。修正後、再度内容に間違いがないか確認することを忘れないように気をつけてください。4:業務委託契約を締結する業務委託契約書の内容に相違がないことを確認できたら、契約書にサイン・捺印に入ります。クライアントから契約書を郵送、もしくはオンライン上で契約・捺印の指示が届くので、期日までに対応しましょう。これにより契約が正式に成立し、業務を開始することができます。合意した契約内容に基づいて業務を進めていきましょう。フリーランスが業務委託契約を結ぶときに確認すべきポイント最後に、フリーランスが業務委託契約を結ぶときに確認すべきポイントを5つ紹介します。業務開始後のトラブルを防ぐために、各ポイントを押さえておきましょう。業務範囲・内容業務委託契約書に、具体的な業務範囲や内容が明確に記載されているか確認しましょう。担当業務の範囲があいまいだと、報酬額固定で次々と仕事を追加依頼されるおそれがあります。具体的な業務内容と納品物を明確にして、必要に応じて内容を交渉しましょう。委託料・支払方法報酬額や請求書の送付締切日、支払の期日など、報酬に関わる委託料や支払方法についても必ず確認が必要です。支払条件が不透明な場合、業務を完了しても報酬が支払われない、連絡なく支払が遅延するなどのトラブルになりかねません。金銭面に関わる点を、クライアントに相談しにくいと感じる方もいるでしょう。けれども、自分が提供したサービスや納品物に対して、適切な報酬を受け取れるように、必ず確認しましょう。機密情報の取り扱い業務上で知り得たクライアントの機密情報の取り扱い方法と、どのような情報が機密情報に該当するかの確認も重要です。誤って機密情報を漏洩してしまうと、法的責任を問われます。主に、クライアントから提供されたデータや、プロジェクトで知り得たサービスの情報などが機密情報に該当します。業務委託契約書には、契約終了後も機密情報の漏洩は厳禁であると記載されているケースが多いです。契約期間・契約終了条件業務委託契約の有効期間と契約の終了条件についても、必ず確認しましょう。これには、プロジェクトが早期終了した場合の取り決めも含まれます。契約期間が不透明な場合、プロジェクトの終了時期がわからず他の案件のスケジュール管理ができない、永遠と業務を継続してしまうなどのリスクがあります。またフリーランスの場合、実際に働いてみたら条件が合わないから途中で契約解除をしたい……というケースも起こります。そのため、事前に契約解除の条件を確認し、クライアントやプロジェクトに迷惑をかけず、円満に契約解除するための流れも念のために確認してください。著作権・知的財産権の範囲作成した成果物の著作権や知的財産権が、フリーランスに残るのか、もしくはクライアントへ移転するのかを必ず確認しましょう。特にデザイナーやライターなど、クリエイティブな業務を行うフリーランスにとって重要なポイントです。例えば、納品後に著作権や知的財産権がクライアントに移転する場合、納品後にクライアントがデザインや文章を自由に編集して良いことになります。これらに同意できない場合は、クライアントと相談し、使用範囲や修正範囲を限定することも可能です。このような取り決めを行う場合は、必ず業務委託契約書に条件を表記してもらうようにしましょう。まとめフリーランスにとって、業務委託契約は自分の身を守る大切な契約です。クライアントと業務範囲や報酬、支払条件などを確認し、契約書として形を残すことで、報酬の支払いや著作権などが保証されます。もしも、業務委託契約書を結ばずに、口約束で業務を開始してしまうと、どんどん業務を追加される、報酬が支払われないなどのトラブルに発展する恐れがあります。また「フリーランス新法」の施行に伴い、クライアントとの契約書の取り交わしは2024年内に義務化される見通しです。そのため、新しいクライアントと業務を始めるときは、必ず業務委託契約書の締結をしましょう。