「フリーランスになろうと思っているけど、開業届の提出は必須?」「開業届を出さないことで、デメリットはある?」など、このような疑問を抱えているフリーランスの方も多いのではないでしょうか。筆者もフリーランスになると決めた当初、開業届を出すべきという認識があるものの、何から手をつければいいのかわからず困った経験があります。この記事では、フリーランスが開業届を出すメリット・デメリット・注意点を解説します!また開業届を出すべきケースと出さなくても問題ないケースも紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。▼関連記事:フリーランスになるには?必要な手続きや仕事獲得の方法まで解説開業届とは?開業届は、フリーランスが事業を開始したことを税務署に報告する公的な書類です。正式名称は「個人事業の開業・廃業等届書」です。開業届を提出すると、税務上「個人事業主(フリーランス)」として正式に認められます。また開業届の提出後は、個人事業主として毎年確定申告を行い、必要に応じて納税することが義務付けられています。フリーランスが開業届を提出する5つのメリット次に、フリーランスが開業届を提出する5つのメリットを解説します。開業届を出すべきか悩んでいる方は、ひとつずつチェックしていきましょう。青色申告で確定申告ができるようになる開業届を提出すると、青色申告で確定申告を行うことができるようになります。青色申告は、税務署に申請書類を提出したり、詳細な帳簿の記録が必要だったり少し手間が掛かりますが、最大65万円の所得控除を受けられる点がメリットです。また開業費や家族への給与支払い、光熱費を経費として計上し、節税につなげやすくなります。この節税効果が大きい青色申告を行うためには、開業届の提出は必須です。▼関連記事:フリーランス・個人事業主なら節税は必須!税金の基礎知識も解説事業用の銀行口座を開設できる開業届を提出すると、事業名義の銀行口座を開設できるようになります。フリーランスが事業名義の銀行口座を開設するメリットは、次の2つです。取引先からの信用を得やすくなるプライベートと事業の資金を分けて管理できる個人名義の口座でも問題はありませんが、事業用の口座の方が体制が整っているという印象があります。取引先の企業や顧客から信用を得やすくなるでしょう。またプライベートと事業の資金を明確に分けて、経理業務がスムーズに行えるようになります。小規模企業共済やiDeCo(イデコ)に加入できるフリーランスは、会社員のような厚生年金や、失業時に給付金を保障してくれる雇用保険などに加入できないデメリットがあります。そのため、老後資金や失業リスクの不安を抱える人も多いです。そこでおすすめなのが、フリーランスが将来に備えるための小規模企業共済やiDeCoへの加入です。これらの制度は、将来的な退職金や年金として積み立てができ、さらに所得控除を受けられます。節税しつつ、将来への備えを準備できるので安心を得られるでしょう。小規模企業共済やiDeCoに加入する際も、開業届を出していることが条件になります。▼関連記事:小規模企業共済とは?フリーランスの将来の備えと節税効果を解説▼関連記事:フリーランスがiDeCoに加入するメリット・デメリットは?年代別シミュレーションも紹介就業証明書として利用できる開業届は、フリーランスとして活動している公的な就業証明書になります。個人で働いていることの証明として、以下の場面で利用することが可能です。金融機関のローン申し込み住宅ローン申請保育園の入園申し込みこの他の場面でも、職業を証明する書類を求められたときに開業届を提示できます。フリーランス(個人事業主)としての自覚が芽生える開業届を提出すると「正式にフリーランスになった」という自覚が生まれ、1人のフリーランスとしての責任感やモチベーションアップにつながります。売上が安定する、もしくは継続的な収入が見込めるようになるまで、無理に開業届を提出する必要はありません。けれども、開業届を出さないと「なんとなく」で仕事を続けて、なあなあで動いてしまう人もいるでしょう。「事業」を「開始」したという証明である開業届を提出することによって、積極的にスキルアップや案件獲得に励めるようになるかもしれません。フリーランスが開業届を提出するデメリット・注意点ここからは、フリーランスが開業届を提出するデメリットと注意点をそれぞれ解説します。メリット・デメリットを両方理解して、次のステップを踏めるようにしましょう。▼関連記事:フリーランスは開業届なしだとどうなる?確定申告や経費計上への影響を徹底解説確定申告の準備と帳簿付けの負担が増える開業届を提出すると、毎年2月16日~3月15日の間に確定申告を行う義務が発生します。確定申告はフリーランスのハードルの一つで、正確に帳簿付けをして領収書や資料を適切に保管する必要があり、経理面の負担が大きいです。特に、会社員からフリーランスになりたての場合、簿記の知識がないと苦労する可能性が高いです。フリーランスとして5年目の筆者が、初めて確定申告をしたときは、帳簿の付け方や申請方法が分からず、準備にかなり時間を割いてしまった経験があります。確定申告は申請するまでの準備負担が大きいですが、必ず行わなければなりません。そのため、会計アプリを導入したり、税理士に業務を委託したりして、少しでも負担を減らす工夫をしましょう。▼関連記事:フリーランスが帳簿を付けていないとどうなる?帳簿の種類や記帳方法を解説▼関連記事:確定申告はフリーランスに必須!やり方や必要書類と経費管理のコツ失業保険を受けられなくなる開業届を提出したフリーランスは、失業した際に一定期間の給付金が支払われる「失業保険」の対象外となります。失業保険は、企業に雇用されている人が失業した時の保障になるため、受給資格があってもフリーランスは対象になりません。そのため、会社員からフリーランスになる場合、急に仕事の契約がなくなった……というときの公的な保障がなくなるので注意が必要です。ただし、開業届を提出すると「再就職手当」を受給できます。失業保険は受給できませんが、会社員からフリーランスへ再雇用されたという認識で手当を受けられる点を覚えておきましょう。▼関連記事:フリーランスになるとき失業保険はもらえる?申請の流れや開業届の注意点などを解説個人事業主として開業届を出すべきケースフリーランス・副業ともに、原則として開業してから1ヶ月以内に開業届を提出することが義務付けられています。ただし、場合によっては開業届を出さなくてもよいケースもあります。まずは、個人事業主として開業届を出すべきケースを2パターンみていきましょう。フリーランス・副業で継続的に仕事を続けていく場合フリーランス・副業として、継続的に仕事を請け負っていく場合は、開業届の提出が義務付けられています。提出しなかった場合の罰則はありませんが、個人事業主としてクライアントと仕事をするにあたって、社会的信用と地位を確立することも大切です。クライアントに胸を張って仕事をするためにも、継続的に仕事をする場合は開業届を提出しましょう。青色申告で確定申告をした方が節税につながる場合一定の収益があり、青色申告で確定申告をした方が節税につながる場合も、開業届を提出すべきです。青色申告で確定申告を行うメリットは、次のとおりです。最大65万円の所得控除を受けられる自宅で働く場合は光熱費や通信費を経費計上できる家族への給与支払を全額経費にできる青色申告は複式簿記と呼ばれる少し複雑な帳簿を提出する必要があるので、フリーランスの負担が多いです。しかしその分、最大65万円の所得控除や、光熱費や通信費を経費として計上できるので、節税効果が大きいです。対して開業届の提出不要で確定申告できる「白色申告」は、最大10万円の所得控除のみと節税効果が低くなっています。そのため、毎月安定した収入を見込める方は、開業届を提出して青色申告で確定申告を行えるようにしましょう。個人事業主として開業届を出さなくてもよいケース次に、個人事業主として開業届を出さなくてもよいケースを2パターン紹介します。収入が継続的ではない場合継続的な収入が見込めない場合は、必ずしも開業届を出す必要はありません。継続的な収入に該当しない例は、次のとおりです。フリマアプリでの不用品販売ポイントサイトでのポイント入手趣味の延長で行っているハンドメイド品の販売これらの場合は、収入が不安定で事業として判断されないケースが多いです。事業所得ではなく、雑所得として判断されるので、開業届を出さなくても問題ありません。▼関連記事:【フリーランス向け】事業所得と雑所得の違いとは?確定申告での注意点も解説法人として事業を営む場合はじめから一定の収入を見込める方や、事業資金の調達に向けて社会的地位の確立を目指して法人化する方は、開業届の提出は不要です。法人は個人事業と異なり、別の税制が適用されます。株式会社や合同会社を設立して事業を運営する場合は、開業届の提出ではなく、法人登記が必要です。フリーランスと法人どちらがよいか悩む方は、関連記事:フリーランスが法人化する7つのメリット!インボイス制度後の注意点も解説 を併せてご覧ください。開業届を提出したらインボイス制度の登録も必須?ここで「開業届を提出したらインボイス制度への登録も必須?」という疑問にお応えします。答えは、「開業届を提出したあと、必ずしもインボイス制度に登録する必要はない」です。インボイス制度への登録は、フリーランス1人ひとりの判断に委ねられており、登録するかしないかは個人の自由です。ただし、インボイス制度に登録していない場合、クライアントが仕入税控除を適用できず、税負担が増える可能性があります。結果、インボイス制度に登録していないフリーランスは、仕事を発注してもらえなくなる恐れがあります。企業によって対応は異なるので、登録するか迷ったら、まずはクライアントへインボイス制度への加入が必要かを確認しましょう。開業届提出までの3STEPここまで読んで、「開業届を提出しよう!」と決めた方は、次の3ステップに沿って開業届を提出しましょう!1:開業届の申請書類を入手するはじめに、開業届の申請書類を入手しましょう。開業届は下記のいずれかで入手できます。税務署の窓口国税庁のホームページ開業支援ツール(freeeやマネーフォワードなど)書類の書き方に不安がある方は、税務署の窓口で書類を受け取り、不明点を確認しましょう。税務署へ足を運ぶのが難しい方は、国税庁のホームページやfreeeなどの開業支援ツールから書類のダウンロードをおすすめします。2:開業届に必要事項を記入する開業届を入手したら、必要事項を記入していきましょう。記入項目は次のとおりです。開業日事業内容事業者の情報これらの内容を全て正確に、丁寧に記入しましょう。不明点があった場合は、税務署に問い合わせて内容を確認することをおすすめします。3:開業届を提出する開業届の記入が完了したら、次は提出です。次のいずれかの手段で開業届を提出しましょう。税務署に直接提出する税務署へ郵送するe-Taxから申請する税務署へ直接足を運ぶ、もしくは郵送する場合、必ず管轄の税務署に提出しましょう。管轄の税務署は、国税庁ホームページから調べられます。また確定申告や税金の申請などを行うオンラインシステム「e-tax」からの提出も可能です。フリーランスになったらやること最後に、フリーランスになったらやるべき手続きを4つ紹介します。会社員では経験のない手続きばかりなので、内容を理解した上で進めていきましょう。開業届の提出基本的に、事業開始から1ヶ月以内に開業届を提出しましょう。副業からスタートした場合、事業が軌道に乗り、収入が安定してきたタイミングでの提出でも問題ありません。青色申告の申請節税効果を高めるために、開業届の提出後に青色申告をするための「青色申告承認申請書」を提出しましょう。申請しないと青色申告を利用できないので、なるべく開業届と同じタイミングでの申請をおすすめします。国民年金・国民健康保険への切り替え開業届を提出すると、個人事業主として活動し始めたことが公に認められます。個人事業主は、国民年金と国民健康保険への加入が必須です。開業届を提出したら、早めにお住まいの市町村役場で切り替え手続きを行いましょう。事業計画の立案・案件獲得フリーランスとして安定した収入を得るため、事業計画の立案と案件獲得は必須です。売上目標や事業内容を明確にすることで、フリーランスとしてどのようなポジションを目指すかが明確になり、案件獲得に向けた戦略を練ることができます。SNSを活用して集客したり、フリーランス向けのマッチングサイトを活用したりしながら、自分のスキルをアピールして、案件獲得を目指しましょう。またフリーランス向けマッチングサイトを利用するときは、リモート案件92%・平均時給4,500円を誇るSOKUDANがおすすめです。フリーランス・副業案件に特化しており、週1日~OKの案件から中長期案件まで幅広い案件を保有しています!▼関連記事:【利用者が調査】SOKUDANの評判・口コミを徹底分析!まとめ開業届の提出は、フリーランスとして活動し始めるにあたり、大切なステップの1つです。開業届を提出すると青色申告ができるようになり、節税対策につながることをはじめ、事業用の銀行口座開設や小規模企業共済やiDeCoに申請ができるようになります。何より、「フリーランスとして活動していく」という自覚を持つことは、社会人として責任を背負う上で大切です。開業届の提出は少し手間に感じるかもしれませんが、不明点がある時は税務署に問い合わせたり、国税庁ホームページを確認したりしながら申請を進めましょう。本記事が、開業届の提出を悩んでいる方の参考になれば幸いです。