「宿を磨き続ける集団」をミッションに掲げ、社名の通り“温故知新”の精神でサービス提供をし続ける株式会社温故知新。今回は、上場準備にあたり「連結決算実務」という専門性の高いスキルを持ち合わせた人材確保のためにSOKUDANを取り入れた当時の課題や背景、そして導入後の効果について、代表取締役の松山 知樹(まつやま ともき)さんにお話を伺いました。悪条件でも、掴んだチャンス。苦労の末にスモールラグジュアリーホテル運営を実現── 株式会社温故知新はホテル運営や企画などの事業をされていますが、事業内容について詳しく教えていただけますか。(松山さん)弊社は『デスティネーション・リゾート』を作る会社です。ホテルや旅館を含め目的地になるような宿を作り、自分達で運営しています。企画も行っていますが、運営がメインの事業ですね。旅の目的地、『デスティネーション』と呼んでいますが、デスティネーションを作ることを通じ、結果として地域活性化に貢献するのが私達の目的です。設立の経緯を説明しますと、私が勤めていた星野リゾートを退職して独立し、2011年2月に創業しましたが、1か月後に東日本大震災が起こりました。取りかかる予定だった案件が流れてしまい、しばらくは震災復興関連や異業種のコンサルティングなど、色々な仕事をして食いつなぎつつ5年目でようやく自分達で宿泊施設の運営するところまでたどり着きました。運営するチャンスを掴んだ施設は『瀬戸内リトリート青凪』いう四国の宿なのですが、安藤忠雄さん設計の建物は巨大で管理コストが高く、部屋数が7部屋しかない。四国は旅先として選ばれにくい地域。ホテルも我々も知名度0からのスタート、とどちらかというとかなり悪条件でした。でも、このチャンスを逃したら永遠に自分達でホテル運営ができないと思い、覚悟を決めて始めることにしたんですね。最初の1, 2年はいろいろと大変でしたけど、そのあと黒字になり、日本初のミシュラン最高評価など色々な賞をいただいたりしていくうちに、おかげさまで今では日本を代表するスモールラグジュアリーホテルに育ちました。ポテンシャルはあると思っていましたが、振り返ってみれば本当によく頑張ったな、という感じです。後から『絶対に上手くいかないと思っていた』なんて言われたこともありました。私自身も今だったら取り組むかどうか悩むくらい厳しい案件だったんですよ。── ご自身でも難しいと思いながらチャンスがあると思われたのは、どういうところですか?(松山さん)目的地としてそれほど人気がない、つまり競合の少ない四国だからこそ、ユニークなポジションを築くことはできるだろうと。部屋数が少なくても単価をきっちり取れれば採算が合う見込みもありました。当時、ホテル建設ブームの手前で、四国での開業は何年かぶりだと言われ、かなりの取材もいただきました。ある意味広告宣伝というか、最初のトライとしては良かったのかもしれません。難しい青凪で実績を出したこともあって、最近は新しい話もたくさん頂いています。『箱根リトリート』など非常に好調です。実はひどい赤字だったのですが、弊社が運営するようになって2か月で黒字になりました。初年度で大幅黒字化、2年目で利益倍増です。あの難しい青凪で黒字を出せたわけなので、箱根みたいに恵まれた場所ならコロナに関係なくまだまだ伸びそうに思います。 現在、会社全体の組織は140人くらいで、最初の2年は完全に私1人、5年前までは10人に満たない個人事業主の集まりみたいな会社でしたが、ここ数年でかなり増えましたね。人事制度も整えましたし、採用力も上がっていて、良い人材を見極めて採用できるようになってきています。ピンポイントなスキルを求める募集でも、即日で4名からの応募が集まった── そんな中、SOKUDANを導入しようと思ったのは、どんな経緯があったのでしょうか?(松山さん)これは非常に特殊な求人だったんですが、具体的に言うと連結会計できる方が必要でした。現在、弊社は上場の準備をしているのですが、連結決算が必要だと指導されたんですね。採用力が上がってきているとはいえ、連結決算できる人をピンポイントで見つけて採用するのは至難の業でした。そんな時、たまたまSOKUDANさんの存在を知り、ちょうど良いタイミングだったのでダメ元で聞いてみようと思ったのがきっかけです。内心、『無理なんじゃないの?良い人材がいたら是非お願いしたいけど…』 とあまり期待しないでおきつつも、『連結決算の実務経験が豊富な人』『社内のコミュニケーションが円滑にできる人』等と要件を明確にお伝えしたら、『わかりました』とすぐに返事をいただきました。間をおかずに打ち合わせをして、『今日中に求人を出しておきます』と言われ、本当にその日のうちに掲載していただいた上に、その日のうちに4人から応募があったんですよ。すごくびっくりましたね。その後3日で6人から応募が来ました。1人来てくれればラッキーくらいだったのが、いきなり選べるくらいの応募をいただいて、効果絶大でした。── 今回その連結決算で採用されたのはどんな方ですか?(松山さん)会計士の方です。今、本業で会社員として勤めている方なので副業として働いてくれます。今後独立する予定で、もういつでも独立できますという段階まで来ているような人です。── その方に決めたポイントは何でしょうか?(松山さん)面談して、会計としてのスキルは十分あることに加えて、1番弊社にフィットしそうだなと感じたからです。業務委託とは言え普通の採用と一緒で、相性が良さそうだなと採用させていただきました。登録者と直接やり取りができるので、労働時間の融通が利くのが利点── 導入検討時に想定した以上の成果は、何かありましたか?(松山さん)まだスタート前の段階で少し相談させてもらった程度なので、これからというところです。今後に期待ですね。導入してみて実感したSOKUDANさんの利点は、完全に間に入り切っていないところですかね。SOKUDANさんが間に入って、業務委託のさらに再委託みたいな感じではなく、こちらが登録者の方と直接やり取りできるので、労働時間の融通が利くんです。間に会社が入ると、例えば『契約上、週に〇時間までと決まっているので、これ以上は働かないで下さい』とか、契約の縛りがあって融通が利かず困ることもあるんです。『1月は少なかったから、2月は多めにやってもらっていい?』とか、お互いの同意のもとで、柔軟に対応してもらえるのは非常にありがたいですね。仕事ってどうしても繁忙期と閑散期があるので、必ず毎月、毎週〇時間と決めるのが難しいんですよ。社員採用ではない外注や業務委託は、調整が利かないと使いづらい部分はありますよね。質の高いアウトプットが必要な仕事こそ、業務委託は費用対効果が1番高いかも── もともと、アウトソーシングも検討されていたとお聞きしましたが?(松山さん)はい、もともと直雇用かアウトソーシングで考えていたので、実をいうと業務委託はあまり考えていませんでした。でもお話を聞いてみたら、リスクはあるけどアウトソーシングよりも費用が安価になることが分かったんです。アウトソーシングだと会社単位で委託するので、間接費用もかかってくるし、構造上どうしても費用が高くなりますよね。アウトソーシングの場合、合わなかった時は『他の人材を連れてきてくれませんか?』と人材の変更依頼が出来る一方で、業務委託の場合は変更が出来ないというリスクはありますが、個人的には逆かもしれないなと思っています。むしろ、業務委託はアウトソーシングより当たりの人がいる確率は高いのではないでしょうか。なぜなら業務委託の人は、腕に覚えがある人が多いんですよ。会社勤めの人の腕が悪いわけではありませんが、独立して仕事を取ろうとしている人は、やはり自分の能力に自信がある人ですよね。なので、弊社も連結決算ができる人という特殊な募集で業務委託をお願いしましたけど、色々な分野で質の高いアウトプットを求められるような仕事を業務委託でお願いするのは、もしかしたら一番費用対効果の高い方法なのかもしれません。── 以前から御社で業務委託として働いている方はいらっしゃるのでしょうか?(松山さん)そうですね。会社を通じての業務委託や、もともと社員だった人間が業務委託として働いているなど様々なパターンがありますが、個人に対して最初から業務委託というパターンはあまりなかったですね。成果主義の自社カルチャーに適応する人材を見極めることが重要── 最後に、業務委託や副業人材を活かすために工夫されていることがあったら教えてください。(松山さん)うちは昔からタスク主義なんですよ。勿論、現場はシフトで動いていくので時間主義的な側面はあります。が、特に間接部門である本部は、時間でお金をもらう感覚ではありません。基本的に、私自身が一貫して成果だけで評価される世界で生きてきたこともあり、会社全体に成果主義的な価値観があります。ですので、副業やテレワークと親和性があり、前からやっていたことがコロナ禍で加速しましたね。会議はZoomを活用すれば無駄に会社に集まらなくていいし、オフィスは手狭になってきても広げる必要はない。効率的に仕事が出来ればいいじゃないかと。最初から個人事業主の集まりみたいな会社です。したがって、弊社で働くには成果と自己管理が求められます。副業人材に限らず、選考の際に自社のカルチャーに適応できるような人材を見極めることが大事なのかなと思います。【会社概要】会社名:株式会社温故知新設立 :2011年URL :https://okcs.co.jp/company/事業 :全国のホテル・旅館のプロデュース・運営・事業承継・コンサルティング事業を展開