「VARYTEX株式会社」は、国内初の漢方テックのスタートアップ企業です。漢方医学にもとづいて、漢方の適正かつ安全な処方・使用の実現を目指し、医師の漢方診断業務を支援するKAMPO365(漢方診断支援プログラム)、「KAMPO X(漢方業務支援プラットフォーム)」を展開しております。同社は、上記のソフトウェアの開発や機能拡充を進めるための即戦力となるハイレベルなエンジニアを、SOKUDAN経由で採用しました。そこで今回は、代表取締役の平野喜一郎さんと、取締役CTOとして今回の人材採用業務を担当した大竹隼人さんに、SOKUDANを利用して良かった点や、複業人材の採用において重視したポイント、今後のビジョンなどを伺いました。── VARYTEX株式会社の事業内容について教えてください。(平野さん)当社は2021年に創業した、漢方診断支援プログラムの開発を行う企業です。漢方を用いて病気や症状の改善を目指す「東洋医学」の研究をしている団体「一般社団法人日本東洋医学会」と、ソフトウェアの共同開発を行っています。先日、SaaS型の医療機関向け漢方業務支援プラットフォーム「KAMPO X」をリリースしました。KAMPO Xは、患者の方にスマートフォン等でオンライン問診にご回答いただき、そのデータをもとに、参考情報として漢方の適正かつ安全な処方・使用の情報を表示するソフトウェアです。また、「KAMPO X」の上位版であり、厚生労働省の承認審査を通過してはじめてリリースが実現するSaMD※である「KAMPO365」の開発も進めています。「KAMPO365」がSaMDとして認められれば、さらに多くの医師の皆様に届けられます。SaMDとしての承認を得るには、臨床試験などいくつものプロセスを踏む必要があり、現在はその準備も並行しているところです。 ※「SaMD(Software as a Medical Device)」:プログラム医療機器── 貴社の組織体制や役割について伺いたいです。(大竹さん)現在は役員4名と正社員、業務委託のメンバーで構成されています。現在私は取締役CTOとしてプロダクトの改善、エンジニア組織のマネージメント、採用、それ以外にも、プログラム医療機器の相談業務、組織全般のマネージメント等、幅広く業務に当たっております。ハイレベルな正社員のエンジニア採用に苦戦。将来的に正社員になる意向のある複業人材を採用する方針へ── 貴社が抱えていた人的課題を教えてください。(大竹さん)ありがたいことにプロダクトでは様々な要望をいただき、今後機能開発が活発化することや、本格的に承認審査が始まることで開発体制の強化が必要でした。また、私が開発組織だけではなく全体を見ていくことを考慮した際に、次期CTOを担ってもらえるくらい事業にフルコミットできる正社員のエンジニアが必要となっていました。── はじめは正社員で次期CTOを募集されていたんですね。業務委託での採用に切り替えた経緯はどのようなものだったのでしょうか? (大竹さん)正社員での採用に苦戦したためです。シードラウンドのスタートアップであり、漢方という複雑な業界という環境の中で、いきなりフルコミットで参画したい。という全てがマッチしている人材と中々出会えませんでした。当社を支援いただいているVC(ベンチャーキャピタル)の方に相談したんです。すると「VARYTEXのことを知ってもらうためにも、まずは前向きに正社員になってくれそうな人材を業務委託で採用してみたらどうか」とアドバイスをいただきました。そこからは、まずは業務委託で働いてもらって仕事の内容や社内の雰囲気を知ってもらい、ご自身に合っていそうなら正社員になってもらえないか打診しようと、方針を変えることにしました。求人原稿のブラッシュアップで応募者が増加。最適なマッチングを実現── SOKUDANを導入したきっかけを教えてください。(大竹さん)先ほどのVCの方が、SOKUDANをおすすめしてくれたのがきっかけです。SOKUDANであれば、エージェントを利用するよりも手数料を抑えられること、プラットフォームでありながら、求人原稿の作成や面談日程調整などのサポートが付くことを聞いたので、試しに導入してみようと思ったんです。── 実際にSOKUDANを利用してみていかがでしたか?(大竹さん)SOKUDANでは、次期CTO候補という少しハードルの高い条件を提示しましたが、結果的に私たちが求める以上のスキルを持った人材を採用できて良かったです。プラットフォーム自体の話をすると、応募してきたプロ人材の働き方の意向が、タグで一目でわかる機能が便利でした。たとえば、応募者が「複業して良ければ転職も興味あり」とタグを設定していたら、こちらも「この方は将来正社員になってくれるかもしれない」と判断できます。お互いの意向のミスマッチが防げる画期的な機能だと思いました。── お役に立てて良かったです。SOKUDANのサポート面や、費用対効果の面ではいかがですか?(大竹さん)SOKUDANのCS担当者の方には色々と助けていただきました。中でも印象的だったのが、求人原稿作成のサポートです。最初担当の方が作成してくれた求人原稿はあまり反応がなかったのですが、その状況を向こうから察知してくれて、すぐに原稿を新しく作り替えてくださいました。再掲載した求人の反応が非常に良くて、応募者がたくさん集まったんですよね。CSの皆さんがSOKUDANのプラットフォームの性質を良くわかっているからこそ、こうした成果が出たのだと感じています。費用に関しては、率直にいってリーズナブルです。エージェントに比べても利用しやすい価格帯だと思います。エージェントを利用するコストの捻出が難しいスタートアップには、SOKUDANでの採用がピッタリだと思いますね。採用のポイントは「事業への関心」と「スキル」があるかを見極めること── SOKUDANに対してポジティブなフィードバックをいただきありがとうございます。今回の採用フローと、採用にあたって重視されていた点を教えてください。(大竹さん)まずはSOKUDANのCSチームに、今回の求人に関する条件、たとえば「正社員になる意向があるか」などを提示して、条件から外れる応募者はスクリーニングしてもらうよう依頼しました。その後は私が技術試験を担当し、最終的には代表の平野と私を含む役員3人で面談を行いました。面談では、技術面はもちろん「漢方の事業領域に関心があるか」、「当社の事業の成長を真剣に考えてくれるか」などのフィーリング面にも重きを置いて、応募者にヒアリングをしていきました。── 選考で技術試験も実施したのですね。どんな試験を行ったのですか?(大竹さん)今開発しているソフトウェアのフロントエンドの構造を提示して、現状の課題と、パフォーマンスを向上するために改善すべきポイントをドキュメントで提出してもらいました。技術試験からも、今回採用した方のスキルが申し分ないことが判断できました。── 貴社が採用活動を行う際、事業に関心があるか、スキルマッチするかの両方をよく見極めていらっしゃることがわかりました。採用したプロ人材の働きぶりはいかがですか?(大竹さん)今年の11月に業務委託としてジョインしていただき、まだ1ヶ月ほどですが即戦力として活躍してくれています。働きぶりで印象的なのは、こちらから課題を投げるのではなく、自ら課題を抽出して改善まで自走してくれることです。過去に組織のマネジメントを担っていた経験もあるそうなので事業を創っていくコアメンバーとして今後も期待したいです、受け身ではなく、積極的に事業成長に貢献する復業人材が集まっている── 先ほど、貴社の組織体制でエンジニアは業務委託で構成されていると聞きました。普段は複業人材とどのように仕事を進めていますか?(大竹さん)エンジニアチームでの決めごとは特になくて、比較的自由に働いてもらっています。業務委託であればオフィスに出社するか、しないかも自由です。また、当社ではコアタイムのないスーパーフレックス制度を採用していて、今回採用した方も夜から稼働しています。稼働時間がそれぞれ違う分、コミュニケーションは密に取ることを意識しています。主なコミュニケーションにはTeamsやGatherを利用していて、チャットや通話、ビデオミーティング機能を状況に合わせて使い分けています。ソフトウェア開発プラットフォーム「GitHub」に付属したチャット機能でやり取りすることもありますね。── 今のお話から、エンジニア組織のチームワークの良さが伺えます。(大竹さん)ありがとうございます。当社のエンジニアチームの良いところは、「業務委託だから決められた作業しかしない」といった受け身な人がいないこと。新たな機能のアイデアや、事業の方向性に関する意見を積極的に交わしてくれる方ばかりです。雇用形態に関係なく力を発揮して、会社の事業成長に貢献してくれています。── 今後はどんな人を採用していきたいですか?(大竹さん)エンジニアでいうと、組織全体が大きくなれば役割の細分化ができるので、必要に応じて人材を募集して、それぞれの専門性を活かしながら働いてもらえる環境を作りたいです。エンジニア以外だと、臨床試験などを担ってもらえる研究開発人材にご参画いただきたいです。(平野さん)CTOのような重要なポジションを業務委託に任せるのは難しいものの、当社の事業拡大に合わせて、正社員と複業人材をバランス良く採用できれば良いなと思っています。一人ひとりに最適な漢方薬を届けるため、競合がいない漢方テック領域に挑戦── VARYTEXの創業の経緯について、詳しく教えていただけますか?(平野さん)私の大叔父は、世界初のラジカセで知られるAIWA株式会社の創業者です。子どもの頃から仕事の話を聞いていたこともあって、漠然と起業に興味を持っていました。とはいえ、当時は今みたいに学生起業が盛んではなかったので、大学卒業後は「一度社会人を経験しよう」と、漢方薬品メーカーの株式会社ツムラに就職しました。ツムラで数百種類の漢方を扱う中で、「漢方が一人ひとりの体質に合った形で使われれば良いのに」と感じることが多くなりました。この課題を解決すべく、一人ひとりにパーソナライズされた漢方を提案できるようなプログラムを作ろうと、ツムラから独立してVARYTEXを立ち上げたんです。── 漢方を、一人ひとりの体質や症状に合わせて選ぶのは難しいことなのでしょうか?(平野さん)そうなんです。漢方はドラッグストアにも売っていて、気軽に手に取ることができますよね。しかし本来、漢方は漢方理論、漢方医学に則って、一人ひとりの体調や体質を総合的に判断した「証(しょう)」に合わせて使わなければならない前提があります。「証」を見極めるためには、漢方医学を長年学ぶ必要があります。これが習得までに時間がかかり、一般消費者はもちろん医師でも完全にマスターするのが難しいものなんです。実際、日本には約32万人もの医師がいて、およそ9割は漢方薬を処方したことがあるにも関わらず、漢方専門医は約2,000人しかいません。そこで、一人ひとりの「証」と最適な漢方薬をアルゴリズムで診断できるソフトウェアを開発できれば、漢方が有効活用されて、医療現場にも貢献できると考えました。── 創業後は、どんな事業からスタートしたのですか?(平野さん)まずは、一般消費者向けにECサイトで漢方薬を販売するDtoCビジネスを手がけました。「自分に合った漢方を簡単に診断できる」という、今手がけている医師向け漢方診断支援プログラムの前身となるプログラムを作ったんです。消費者の反応は良かったのですが、ある出来事がきっかけで、当初から考えていた医療機関向けのプロダクトに思い切ってピボットをしました。その出来事とは2023年1月に漢方診断支援ソフトウェアの共同開発を日本東洋医学会様と契約した事です。医療機関に広めていくには医師団体との協業が不可欠でした。その際に日本東洋医学会様が私たちの作るプログラムに関心を示してくれ、今の環境を作ることが出来ました。── そういった経緯があったのですね。最後に、貴社の今後の展望を教えてください。(平野さん)冒頭に話した通り、まずは自社開発のソフトウェアがSaMDとして認可されるための準備を最優先で進めていきます。その他にも、構想は色々ありますね。現在医療機関を受診している外来患者の約3割は、「MUS(医学的に説明が難しい症状のこと)」に悩まされているというデータがあります。私たちは、そういった症状にも対応できる可能性を秘めているのが漢方だと考えています。日本で1000年以上をかけて発展してきた漢方の特性を活かして、病気ではない不調を解決する手段を、ソリューションを通して提案していきたいです。もっと広い話をすると、ゆくゆくは漢方薬以外の領域でもビジネスを展開できればと考えています。たとえば、普段私たちが手にする健康食品や栄養ドリンクも、一人ひとりに合ったものがあるはずなんです。薬にとどまらず、その人に最適なものをレコメンドできるプログラムを展開して、事業領域を広げていければと思います。【会社概要】会社名:VARYTEX株式会社設立:2021年3月URL:https://www.varytex.co.jp/事業:漢方診断支援ソフトウェアの開発